予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第15話 リエル先輩は男の娘⁉(ASMR配信、頼りにしてます!)

【旭日リエルの敗北伝説列伝】

 

・ウシ娘のガチャ配信……推しが当たると何故か毎回データ消える

・EGOのガチャ配信……3千の石と引き換えにして、☆4どころか☆3も来ない

・バリオカート配信……高レート行くまで耐久を行って、49時間後にダウン。

・ス〇ブラ配信……視聴者に勝つまで耐久配信で、リスナーの半分と勝負し、敗北

 

・跳躍王配信……女性Vtuberとコラボ対決→罰ゲームで『初体験喪失ASMR』 

・壺姉配信……Vtuberと以下略→罰ゲームで『ベッドで愛撫ASMR』

・天界村配信……女性Vtuberと略→罰ゲームで『ビキニローション風呂ASMR』

 

 エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ……。

 

 500本の配信中、ただの一度も勝利は無く、数多の女性Vtuberから『罰ゲームASMR』でセクハラされてきた敗北の少女(♂)が――――今、私の目の前にいた。

 

「先輩ぃいいいいいひっく‼ ぅううええ強く生きてぇえ~~~わぁぁぁーーーーん‼」

 

「ねぇ初対面の後輩にさぁ! 出会い頭に号泣されて励まされる気持ち考えてみてぇ⁉」

 

 放課後直行した事務所にて。

 私は初めて【旭日リエル】もとい『天海渚』とご対面した。

 

 すごい……っ! 年上相手に見下ろすなんて初めて! 

 というか雰囲気がハムスター! こんなに小さくて儚い存在、初めて見た!

 

「……~~っ! 強ぐ! いきてぇえええ~~~~~!」

「ちょっとぉぉおおおおおおおおおっ‼‼ わたし、先輩だよ! もうちょっと尊敬してくれたって……」   

 

「ぁの、だ抱きしめても! 良いですか⁉」

「話を聞けぇ!」

 

 天海先輩は憤慨した様子で地団太を踏んでる。19歳♂が全力で地団太踏んだ音が――――――たむ、たむ、たむ、たむ。

 

「かわいいいいいいいいいいいいいいいい‼‼‼」

「うるせぇぇえええええええええええええ‼‼‼」

 

 つやつやの黒髪(なでなでしたい!)。

 丸顔だけれど滑らかなフェイスライン(指でさわさわしたい!)。

 女子より華奢な体つき(ぎゅ~って抱きしめたい!)。

 

 こんな見た目なのに……………………男子、だと?

 つーーーー、っと、視線が下に行く。

 

「あ~~~~もうほらこれよ。わたしと会った人、みんなそうなるの。股間見て全てを知った気になるんだよ、宇宙猫みたいになるんだよ‼」

 

 そう言いながら、彼は頬を赤らめ、目をキッと吊り上げて、内股になって、服の裾を引っ張って、お股を隠してた。

 

「きゃわいいいいいいいいいいい!!!!!」

「うるせぇええええええええええ!!!!!」

 

 そう、これは【旭日リエル】の御主人様《リスナー》は知らない事実。

 

 

 旭日リエルは―――――――バ美肉Vtuberである‼‼‼‼‼‼‼‼

 

 

 ただ中身の魂が、ボイチェン要らずのプリティボイスで仕草が完全に乙女でなんか髪めっっちゃ良い匂いするだけの――――――男の子である‼‼‼‼‼‼‼

 

 

「受肉の工程、要りますか?」

「それどういう意味⁉」

 

「だってそのままでもすごい美少女じゃないですかぁ!」

「マシュマロ食べる?」

 

 旭日リエルの大好物をご本人から貰って、私はもきゅもきゅ食べる。

 先輩も両手でマシュマロをちょこんと持って、もきゅもきゅ食べる。

 二人でマシュマロを無言で食べてたら……だんだんぼーっとしてきた。

 

「さてと。姫宮ちゃん、今日はありがとね。コラボ受けてくれて」

 

 もきゅもきゅ………だ~いすきなのは~ひ~まわりのマロ~。

 

「わたし、ヘブンズライブの中じゃ一番後輩だったからさ。姫宮ちゃんみたいな可愛い子が後輩になってくれて本当嬉しかったっていうかさぁー」

 

 25こ~はいるよネズ次郎~。

 

「……ねぇ聞いてる?」

「ふっふーん……ぇ?」 

「聞いてないねぇ?」

 

 瞬間、私の血の気がサァっと引いた。アッまずいまずいまずい!

 マシュマロで意識がぽわって飛んでた! 

 

「ぁぇ、あ、き! 聞いてましたよ⁉」

「嘘つけ! なにご機嫌にとっとこしてんだよ! 鼻歌ぜんぶ聞こえてんだよぉ‼」

 

「すすすみませ、へ⁉ じゃあ2番と3番まで聞かれ……」

「熱唱してんじゃん! なにもうわたしだけベラベラ喋ってめっちゃ恥ずかしいわ!」 

 

「ぁっ、いやその、まったく聞いてない訳じゃなく! こ、こちらこそコラボのお誘いありがとうございます!」

「嘘つけ、とっとこ堕天使が‼」

「ほ、ほほ本心ですよぉーーーーーーー‼」

 

 本心だった。

 三波くんに仕込まれた【リエ虐】の歴史では、旭日リエルのASMR配信(罰ゲーム)は50本以上。ヘブンズライブの中で一番の経験者だった。

 

 だからすごく頼もしくて――――ということを言ったら。

 

「えー? いやた、頼もしいって……そっ、そんなまたまた心にもないことを」

「本当ですよ! 私、その……色々事情を割愛しますけど、いつの間にかVtuberになってて。初配信もクソね……キャスパーさんにも」

 

「あっ、あいつのこと『さん付け』しなくて良いよ。あの女の敵。わたしも被害者」

「あのク・ソ・猫(声でかボイス)とのコラボしか経験してなくて……そもそもVの世界のことも配信のことも分からなくて。そんなんだから実は『ASMRやる』って言ったのに全然ASMRのこと分からなくて……」

 

 だから、嬉しかった。

『ASMRやるんだって? 僕、詳しいから色々教えてあげるよ!』

 

 ビィスコードで先輩のメッセージが来た時。

 初めて、ヘブンズライブのつながりを感じて。

 

「だから私、その……本当に……頼りにしてます。リエル先輩」

「…………ふ~ん」

 

 天海先輩はそっぽを向いたまま、くるくると毛先に指を絡ませる。

 

「ふーーん……ふーーーーん。そっか、ふーーーーん」

「? せ、先輩?」

「――じめ、だ」

 

 ? 先輩の口がもごもご動いてる。

 よく聞こえなくて、耳を澄ます。

 そしたら先輩は両手で目元を隠しながら、ぽそっと呟いた。

 

「頼られたの……はじめて」

 

 しっとりした喜びに染まった眼差しが、私に向かう。

 そうして先輩は「ふふん」と胸を張った。

 

「良いでしょう、存分にこの先輩に任せなさいな。ASMRも……女磨きも、ね」

「へ?」

 

「へ、じゃないわよ! なにその恰好は! 学生期間の制服マジックに頼りっきりじゃ、ファッションセンス腐るわよ⁉」

「せ、制服マジック⁉ いや、その……家で一番高価でしっかりした服、制服《これ》しかなくて……」

「服は高けりゃ良いってもんじゃないの! 今度、ショッピング付いてってあげるわ! 今よりもっと可愛くしてあげるから」

 

 にっこりと吹かせた先輩風が、私の目を輝かせる。

 女の子より女の子を心掛けてる先輩に、私の心はもう…………っ。

 

「はいっ! お世話になります、先輩!」




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