予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「ねぇ姫宮さん! 俺悔しいよ!
レヴィアたんに俺の初めて捧げられると思ってたのに……どうして
「鼓膜破いてもらいたい人なんて少数だからだよぉ‼」
後日。
いつものお昼休み、いつもの校舎裏で、三波くんの悲嘆に暮れた声が響き渡った。
ほんとどうしようもないなと思った。
「やっぱり理解できないよ……鼓膜は処女膜じゃないよ……それに三波くんの鼓膜を破ることで数百人の鼓膜が犠牲になるんだよ? それはギルティだよ」
「ぐぅうううううぐぅの音も出ないぃぃっ! そうだよね、俺の欲望で同志の鼓膜を犠牲にする訳にはいかないよね。さすがレヴィアたん! 優しい好き!」
「うんうん、分かってもらって良かった」
あぁ、『好き』なんて言葉じゃぜんぜん動揺しなくなっちゃってるなぁ……(遠い目)。
初めて三波くんと話した日がずいぶん昔に思えた。
この間もずっと三波くんの推し語りを聞き流してたけど、不意に彼が腕を組んでがっくりと首を落とした。
「どうしたの?」
「いやね? 実は昨日の配信さ。訳あって途中でコメント欄から追い出されて……リアタイ最後まで追えなかったんだぁ~」
「そうだったんだ……残念だったねぇ」
「そうなんだよぉ~、貴重な発情レヴィアたんを聞き逃すなんて……っ! どころか、リエルんとレヴィアたんの心音サンドイッチも最後まで聞いてないんだよぉ‼ だから姫宮さん! 今から二人で一緒に、天使と堕天使のパイに包まれないか?」
「キリッとしてるところ申し訳ないんだけど、誘い文句もうちょっと考えなよ」
私はジトッとした目でそう言ってから、ぷいっとそっぽを向いた。
「ぁぁぁあああ! そんなぁ! そんなこと言わずに聞いておくれよだって素晴らしいんだよレヴィアたんのASMR! ほんと才能あるんだよ! ぜひVオタ初心者の姫宮さんにも体感してほしんだよぉおおおおお‼」
その後、三波くんは涙ながらに宵月レヴィアのASMRの上手さを語り続けてくれた。
私はそっぽを向いたまま…………ずっとそれに耳を傾けていた。
*************
『起きなさい、我が娘……起きるのです、レヴィアちゃん』
「―――――ふや?」
落ち着いた声に揺り起こされて初めて、私は寝ていたことに気付いた。
ぁれ……学校、終わって……家に帰ろうと……ぅーーーまだ頭の中ぽやぽやする。
『あらあら、まだお眠なの? ……少し盛り過ぎたかしら』
大人びた声を『ふふふ』と震わせて、神秘的な幼女が年相応の幼い笑顔を見せた。
白金色のおかっぱ頭に、ウサギさんみたいな丸くて紅い瞳の幼女が、宙をふわふわ浮いていた。
なんだか服装も相まって、星の王女さまって感じだった。
「ど、どなたですか?」
『ステラは【星の妖精】よ☆ アニメで語尾がうざい小動物いるでしょ? あれよ』
「こ、ここは一体……」
辺りを見回すと、私は星空の中にいた。
真っ黒な空間に散りばめられた星の光がラメみたいに安っぽく輝く。
『ここは精神世界。頭の中と言っても良いわ。気を失う前に、ステラの切り抜き見たから影響受けちゃったんでしょうね。ふふふっ、単純で可愛い♡』
切り……抜き?
ていうか……あれ……うん、やっぱりそうだ。
「ステラ先輩、ですか?」
【明星ステラ】。
絵師系Vtuberにして、ヘブンズライブに所属するVtuberのガワを手掛けたヘブンズライブのママ。
それがなんで……私の目の前に⁉