予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「くくくく……計画通り」
さっきまでうつ伏せ痙攣していた妹は、涙目でにたりと顔を上げた。
よっこいせ、と動けないように妹の上へまたがる。
「伽夜ちゃぁん? どういうことか詳しく教えてもらおうじゃないかぁ~?」
「ひぎぃっ! や、やだぁ! もうこちょこちょやめ……ァンッ‼ だめっ、だめだめだめ脇はだめぇ! だめだかっ――――あっっひぃいいいーーーーーーあはははははっははははははあゆるっ、ゆるひてぇえええええええーーーーーーーーーーー‼‼‼」
えぇい、じたばたと暴れおってからに。
上から抑えつけて、指先で脇の奥まで抉って細かくかき混ぜる。私のくすぐりは本気出せば、大人でも白目剥かせる自信がある(( -`д-´)キリッ
でもあんまりやり過ぎると喋れなくなるから、くすぐるのを止めた。
むっくりと体を起こした伽夜ちゃんはぷるぷる震えながら、
「し、しぬかと思った……っ! 一日に二回もだなんて……ひんじゃうぅ」
そんな大げさな。
呆れてため息も出ないけど、姉の威厳を精一杯引き出して、腰に手を当てた。
「さぁ、言いなさい! どうして予防接種って騙してまでVtuberのオーディションを受けさせたの⁉」
「Vtuberになってスパチャでじゃんじゃか稼いだらお姉ちゃんもうバイト行かなくて良いかなーって思ったのー♡」
「考えあっっさ⁉」
うそでしょ、伽夜ちゃん⁉
そんなにおバカさんだったっけ伽夜ちゃん⁉
そんなの上手くいきっこないじゃない!
でも伽夜ちゃんはムッと眉毛を吊り上げて、じたばたと反論する。
「浅くなんかないよぉ! 現に受かったじゃん! あたしからすれば予防接種だって勘違いしたままどうやって合格したのかが謎だよ! いやホントなんで?」
「ぃ、いや……そもそも変だなーとは思っていたのよ? 微妙に話嚙み合わないというか……今更だけどスパチャ1億って何? 金の盾? いや盾より注射針ください」
「その時点でなーんで気付かないかな、このお姉ちゃんは」
う、ぅぅぅうううるさい!
鼻で笑うな! ため息つくなぁ!
二回くすぐり泣かされても妹のふてぶてしい態度は変わらなかった。
まぁそれはいつものことだけど……私は家に届いた合格通知に目を落として、息を吐く。
「伽夜ちゃんには申し訳ないけど……迷惑かけちゃう前に合格断らせてもらうね」
「――――なんで?」
どうしてって……そんなの分かり切ってるでしょ。
家族みんなでちょっと深夜にコンビニ行ったら、家にメテオ降って粉砕。
通帳もクレカも家の財産は文字通り木っ端みじん。
保険でなんとか六畳二間のアパートに住めたけど……とてもじゃないけど配信活動なんて出来る環境でも状況でもない。
「そんなの分かり」
「――――
ハイライトが消えた妹の目に、言葉を遮られる。
その一瞬の隙に、伽夜ちゃんは押入れのふすまを勢い良く開いた。
しばらく見ていなかった押入れの中身が……なんということでしょう。
壁に敷き詰められた防音素材、うなりを上げる配信用PCに機材諸々。
極め付けはPC画面に流れるコメント欄と――その横にいる2Dモデルの美少女。
劇的なアフターを見せられて呆然としてる私に、伽夜ちゃんは……にっこぉと満面の小悪魔スマイルを浮かべた。
「あと5分で初配信なのに?」
「………なにこれぇええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーー‼︎⁉︎‼︎⁉︎」
天の川のように流れる白銀の長髪。
円らで大きな空色の瞳。
元の私よりもご……ご立派なお胸ぇ。
良い感じにむ……むちっとした太ももぉ。
そういうエ……エッチなところに限って切れ間《スリット》が入った、白基調のドレス。
でも何より特徴的なのは、背中と頭に生えた四枚の――黒い翼。
「これがお姉ちゃんのガワだよ♡ 堕天使【宵月レヴィア】!」
可愛すぎて神が
堕天の際、落下地点の宵月家を大破させる。
お詫びとして下界で働きながら、宵月家に居候している――――という設定が事務所の公式サイトに載ってた。
悶絶した。
畳に転がった。
可愛すぎるっておま……神が死にそうになるておま……堕天使っておま!
「厨二かぁ!」
「中二ですが?」
そうでしたぁ! って、言いたいことはそこじゃなくて!
いけしゃあしゃあと答える妹の肩を掴んで、私は突っ込んだ。
「これ私ん家じゃん! 宵月家って姫宮家じゃん! 堕天使ってこれ、私ん家に落ちたメテオじゃーーーん!」
「どっちも落ちてんだから変わらないよ」
「あっ、なるほど……ってならないからね?」
「とにかく! あたしはこの日のためにずーーーっと『お姉ちゃんVtuber化計画』に専念してきたの! だから配信部屋に行って! ほら早く行って! 挨拶は【こんレビ】だよ!」
「待ってぇっ⁉ お姉ちゃんに考える時間ちょうだい⁉ お願いだからぁあああ!」
その時、私は思い出した。
私の妹は大人顔負けの天才で。
その能力を全部【私のため】に全振りしてくるシスコンだって。
「じゃあ、トラブルあったら後ろ向いて? あたしがカンペで指示するから」
「この……状況がもう……トラブル」
「うん大丈夫そうだね! でもとりあえず第一声のセリフだけ書いといてあげる!」
伽夜ちゃんはカンペとなる大きめのスケッチブックに、さらさらっと書いていく。
――――え、これ言うの?
「あっ、ほら始まるよ!」
「えまってまってまって!」
「大丈夫だよ――――お姉ちゃんは綺麗だから」
「ぅううう〜〜〜、私は傲慢な堕天使私は傲慢な堕天使私は傲慢な堕天使ぃ!」
自分にしっかりそう言い聞かせながら……もうどうにでもなれって気持ちで、第一声の挨拶を読み上げた!
「ふぁっ、ふぁーはっはっは! 待たせたな眷属達! さぁ、邂逅を告げし鬨の声を上げようぞ! こ……こんレビぃ‼」
[ コメント ]
・は?
・は?
・は?
・ハ?
・はぁ?
塩対応のコメントを前に、私はプルプル震えながら、真っ赤になった顔を覆う。
「殺して……殺してくださひぃ……!」
デビュー後1秒で死を望む堕天使が今、生まれました。