予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第24話 オフの日デート、緊張します(相手は……だれだと思いますか?)

姿見の前で、くるりと回ってみせた。

 

 ふわっと浮かび上がる赤チェックのミニスカート。

 ちらりと見えちゃうダメージストッキング。

 そして右肩だけ露出した、黒の長袖Tシャツ……。

 

「伽夜ちゃん……本当にこれで大丈夫かなぁ︎? へ、変じゃないかなぁ?」

 

「ん〜良いんじゃない? 厨二心忘れてない乙女みたいな感じで」

「それは遠回しに変って言ってない⁉︎」

 

 スティック野菜をぽりぽり食べながら「だいじょぶだいじょぶ」と棒読みする妹。

 こ、この妹め……っ! 姉がオシャレに真剣に悩んでるってのにぃ……。

 

 私の恨みがましい視線に気づいたのか、伽夜ちゃんは問うた。

 

「何がそんなに不安なの? 普通に可愛いと思うよ?」

「〜〜〜っ、それが問題なの」

 

 このコーデはリエル先輩に選んでもらったものだ。

 夜中にビィスコードで通話しながらネットショッピングで買ったコーデ。

 可愛くない筈が無い。

 ただ……。

 

「自分とその服が釣り合わないとでも思ってるの?」

 

 呆れ気味の伽夜ちゃんの言葉に私はゆっくりと頷いた。

 すると伽夜ちゃんは腰に手を当てて、これ見よがしにため息をついた。

 

 うぐぐ……中々辛いなぁ、妹のため息。

 

「お姉ちゃんさ、先輩に勧められたから無理に着てる訳じゃないんだよね?」

「そ! それは違うよ! 私、ちゃんと」

「なら大丈夫」

 

 私の声を遮って、伽夜ちゃんが私の手を取る。

 姉の手を包みながら、妹はまっすぐにはにかんだ。

 

「お姉ちゃんは可愛いよ。自信持って」 

「――伽夜ちゃん」

 

「デート、楽しんできてね」

「……ぅん」

 

 私は妹のおでこに自分のおでこをくっつける。口に出すには気恥ずかしい言葉を伝えるために。

 

         ****************

 

 学校もバイトもない休日なんて、何年ぶりだろう。

 

 電車の揺れにもたれながら、隣町の駅へ向かう。

 改札をくぐると、少しだけざわざわしてる人だかりを見つけたから、小走りで手を振った。

 

「お待たせしてすみません! ―――クレア先輩!」

「こ〜〜ら、姫宮さん。そっちの名前で呼んじゃダメでしょ?」

 

 人だかりができる程の美形を少しだけしかめっ面に変えて、ヘブンズライブの歌い手V――――【鳴神クレア】先輩が私を嗜めた。

 

 そ、そうだった。バカだ私……。

 

「ご、ごめんなさい。来栖先輩」

「……ふふふっ、そんなシュンとしないで。『奏先輩』で良いわよ。久しぶりねぇ、オーディション以来?」

「はいっ! そうです!」

 

 『来栖(くるす)奏』先輩はオーディションの時、私が看護師さんだと勘違いしていた人だ。

 

 白いワンピースと黒のカーディガンにハイヒール。

 そんなシンプルなコーデなのに……ちょっと一度見たら忘れられないくらい綺麗。

 

 たまらず「ほわぁ」とため息が出る。

 それに相まって、オフ特有の緩さが妙に私の胸をドキドキさせた。

 

「まさか予防接種と勘違いしてたとはねぇ〜。わたしが女医って……アハハッ」

「そ、そのお話は、その、触れないでほしいです……っ」

 

 どうかしてた、あの時は本当にどうかしてた! 

 でもしょうがないんですよ! だって、家計のピンチだったし……恥ずかしくて俯いていたら、

 

「え~~~駄目なのぉ?」

 

 奏先輩がニヤニヤした顔で、私の顔を覗き込んできた。

 先輩のプラチナブロンドの髪が、目の前に垂れる。

 

「みっ、見ないで……ほしいです」

「え~~~? 我が儘な後輩だなぁ……じゃあ何なら見ていいの?」

 

 ――――ぃ、言って、良いのかな?

 

 奏先輩の袖をおそるおそるつまんで、少しだけ顔を上げて、言ってみる。

 

「ふ、服……リエ、あ、天海先輩に……相談して、その」

 

 鼓動が激し過ぎて、顔が熱くなっていく。

 耳の奥、ばくんばくんうるさい。

 それでも……っ! 

 

 ぐっと溜めてから、口を開いた。

 

「――へ、変じゃ……ないですか?」

 震える声を喉から絞り出した。

 

 

「(*´Д`)ハァハァ あぁん……すこ。すこすこのすこぉ(*´Д`)ハァハァ」

 

 

 うん? 

 思わず瞬きする。

 

 なんか今、奏先輩から変態《キャスパー》の波動を感じたような……。

 

「あの、奏先輩。今なんて」

「可愛い服ねって言ったのよ。もぉ~~そのぼんやりした感じ、オーディションの頃から大好き」

 

 先輩は口元を隠したまま、にっこりと微笑んだ。

 き、気のせいかな? 

 

 奏先輩は袖をつまんだ私の手を取って、駅前のショッピングモールへ歩き始めた。

 

「我が儘な後輩は可愛がりたい性分なの。おいで、姫宮さん」

 

 ヒールの音をかっこよく鳴らして、颯爽とエスコートする奏先輩。

 ――やっぱり、すごいなぁ。

 

 尊敬に胸を膨らませてから、密かにホッと撫で下ろす。

 可愛い……だって。

 

 キュッと、少しだけ先輩の手を強く握った。

 




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