予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「お姉ちゃん。メスガキになってぇ?」
妹が人生で初めて私におねだりした。
……しわを刻んだ眉間を揉み揉みする。
先輩達との3連続コラボを乗り越えた日の朝のことだった。
「ま、待って伽夜ちゃん? も、もう一回行ってもらえる?」
「おねぇたぁん♡! あたち、おねぇたんにメスガキムーブしてほちぃのぉ♡! 散々調子こいた挙げ句にぃいいい! 無様に屈服させられてほしいのぉーーーっ!!!!」
「わかった! わかったから朝の通学路で萌え
私と伽夜ちゃんは、中高一貫の同じ学校に通っている。
何が言いたいかと言うと妹よ、人の目あるからティガ〇ックスにならないで。
「分かった。やめる」
「素直で良い子っ♡」
頭を撫でてあげよう。
伽夜ちゃんの頬がどんどん吊り上がってく。
カワイイ。
「でも割と本気でお姉ちゃんがメスガキムーブかましたらおもろ……受けると思うの!」
「ちょっと伽夜ちゃん? 朝から痙攣する?」
指の骨を順繰りに鳴らす。
伽夜ちゃんはハッと顔を青くして、びくびくと縮こまった。
「やめて……やめてほしいのだぁ……抉るなら見えないところでして欲しいのだ……もぉ苦しいのは嫌なのだぁ……」
「ちょっ伽夜ちゃん⁉ 言い方に悪意あるよそれは! ただのこちょこちょじゃない⁉」
「おねいぢゃ……おねいぢゃ、もぉやめてほしいのだ。昔のやさしいおねいぢゃに戻って 欲しいのだ」
「朝陽を浴びながら闇深いこと言わないで⁉ それに私は今も昔も、伽夜ちゃんに優しいお姉ちゃんでしょ? ……でしょお⁉」
……あれ?
自分で言ってて、全然そうじゃない気がしてきたよ?
なんかむしろ闇の深さを肯定しちゃった感があるんだけど。
「うぅ……そ、そうなのだ。おねいぢゃはいつだって優しいおねいぢゃなのだ……
「屈してるんじゃん! やめてよ言わされた感出さないでよぉ‼」
「――――はいこれ。こういうことやってほしいの」
目元を擦って怯えていた伽夜ちゃんが、急に元のクールな表情に戻った。
な、なに? どういうことなの?
目を白黒させる私に、伽夜ちゃんがキランと解説し始めた。
「今わたしのことをこちょこちょで脅したように。眷属――リスナーともこんな感じで脅したり突っ込んだり、言い合いしてほしいの」
「おどっ⁉ そ、そんなの無理だし駄目だよ! だって眷属さんは、私の配信見に来てくれる、云わばお客さんなんだよ⁉ そんな乱暴にできないよ……嫌われちゃう」
「……お客さん、ねぇ」
伽夜ちゃんはがっくりと肩を落として、深くため息をついた。
そして頭を抱えながら、
「でもさ? 鳴神クレアの太鼓達はどう? けっこう配信者とリスナー同士でバチボコに言い合ってなかった?」
あっ、と息を呑む。
たしかにクレア先輩、けっこうリスナーのこと煽ってたけど……むしろ太鼓さん達がその倍ひどいこと言って煽り返してた気がする。
それはステラ先輩のコメットさん達にも、リエル先輩のご主人様達にも言えることだった。
「そりゃ、根っこはエンターテイナーだからサービス精神は大事よ? でもみんながVtuberに求めてるのってね、『友達感覚』なのよ」
「――――とも、だち?」
「そう。バカなこと言い合ってどつきあう気軽さっていうか……フレンドリーさ。煽って煽り返して、リアルタイムで時間を共有する楽しさ」
将来の進路とか、クラスでの立ち位置とか、学校でのキャラとか。
そーいうのぜーんぶ放ったらかして、マク〇ナルドとかでだらだらお喋りする。
そういう感じなの、って伽夜ちゃんは言っていた。
「お姉ちゃんも分かるでしょ? こういう感じ。お姉ちゃんは優しいから、そういうこと言えないかもだけど。別に眷属の人達は今更」
「…………分かんないなぁ」
放課後にそんな、ゆったり話せる時間なんて。
いや、そもそも―――――
……目を細めて、私はアドバイスをくれた妹の頭を撫でる。
「ごめんね伽夜ちゃん。でも大丈夫! 友達感覚だね? これからはそこを意識して配信してみるよ。アドバイスしてくれてありがとっ」
にこっと微笑みかける。
伽夜ちゃんはうつむいて唇を尖らせていた。
「……そうじゃ、ないのに」
聞かなかったことにした。