予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
わいわいと、数人の女子達が私の周りに集まる。
ざわざわと、数人の男子達が遠巻きに人だかりを眺める。
人影に囲まれて、暗くなった視界の中……正面にあるスマホの画面だけが白く浮かび上がっていた。
「この、よ……なんて読むのこれ。まぁ、レヴィア? って配信者の声、声がね? 姫宮さんと似てるなぁ~って皆で話してたんだぁ」
私にスマホを見せてきた女の子が、笑顔で噂の話題を振ってきた。そしたら私を囲んでる女子達が次々と曖昧な返事で遠回しに肯定する。
曖昧な返事も、この人だかりの中だと反響して、まるでクラスの総意のように聞こえてくる。
でも、それを笑いながら否定する声が出てきた。
「いやいやいや、でもさぁ、ありえないっしょお? だって姫宮さんだよ? 配信なんて無理でしょ? ごめんねぇ~、こいつが突っ走っちゃって」
「えぇ~ちょっとっ、やめてよぉ。あたしが問い詰めてるみたいじゃあん」
私の前で、女子二人がきゃいきゃいとはしゃいでいる。
それに合わせて周りの女子達も盛り上がってる風を作っていく。
私もほおを緩めて、微笑みを作る。
「だいたい、そしたら姫宮さんがこれ言ってることになるんだよぉ?」
――――ぇ。
誰が言ったのか分からなかった。
けど笑い混じりの口調のまま、囲んでる誰かがスマホをタップして。
『ふぁーはっはっは! 待たせたな眷属達! さぁ、邂逅を告げし鬨の声を上げようぞ! こんレビぃ!』
大音量で、それは流れた。
「きゃあああああああああーーーー! やっっばぁーーい!」
「はっず! はっずぅ~~~!」
「これアレじゃん! 電車でイヤホン抜けた時のアレじゃんアハハハハハッ‼」
女子達の黄色い笑い声が、直前の堕天使よりも大きく響き渡る。
――――ぎゅうっと、奥歯を噛んだ。
赤くなった顔を伏せて、垂れ落ちた髪で隠す。
椅子を前に寄せて、スカートの端を握りしめた手を机の裏側に隠す。
「あっ、ごめん姫宮さん。うるさかったよね?」
「………………ぅぅん、へぃき」
顔を、上げなきゃ。笑わなきゃ。合わせな、きゃ。
まぶたが熱いのを悟られないように、瞳が揺れてるのを気付かれないように。
「ぉ、面白ぃ、よ?」
「あぁ~~~そうなんだぁ~~~~! よかったぁ、あんた達うるさすぎって思われたらどうしよっかなぁって!」
また笑顔が咲き誇る。黄色い花畑が咲き誇る。
私も、わら、って。
「ぇへ……へへ」
「他にもさぁ、このレヴィアって子ヤバくてさぁ。なんか他の配信者とのコラボでもやらしい目に遭ってたりさぁ、はっず! むりむり、あたしあんなのできないよぉ」
「……ぁ、はは」
「結局さぁ、こういうのって、見た目だけイラストの配信者じゃん。イラスト越しにちやほやされて虚しくならないのかなぁ? ……それで満足する方も、持ち上げる方もちょっと気持ち悪いよね~~~。ねぇ? そう思うよねぇ姫宮さん?」
視線が刺さる。
肌が粟立つ。
びくびく肩が震える。
だ、め。なにか、いわないと。でないと、また、私だけ、浮いて…………。
「そ、そぅだね……きもちわるい、ね」
「やーーーーーっぱりぃ。そうだよねぇ!」
「うん、なんか安心したわぁ。姫宮さんらしい」
「あっは、姫宮さんがVtuberだなんて。そんなのらしくないもんねぇ~」
「ごめんね姫宮さん、誤解して。またはなそーねー」
思い思いに女子達が私に声を掛けていって、自分の席に、グループに戻っていく。
――――――――今、私、なんて言った?
いつものお昼休み、いつもの校舎裏に、私は行けなかった。