予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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肩の温かな重み(――溶けだす、声)

見ないで……みないでぇええ……っ!

 すっごい自分の顔が熱くなってるのを感じながら、私は自分の両肩を抱いた。

 片方の手はズボンの方へ伸ばして、下を隠そうとしたけど……なんかよくわかんない恰好になる。

 

「~~~~~っ」

 

 羞恥心に歯噛みする。なんでぇ? 

 

 なんでこんな時に限って、私……っ! だらしないところ見られた恥ずかしさが、耳にまで届いて――――――フワっと布生地が肩に掛かった。

 

 びっくりして顔を上げたら、三波くんがすぐ隣で目線を逸らしていた。

 

「は……春先でも……夜にパジャマは寒いでしょ」

 

 何が起こったのか分からなくて、温かくなった肩を見やったら……ブレザーを羽織っていた。もう一度顔を上げると、ワイシャツ姿の三波くんが照れくさそうに顔を逸らしていて……っ! 私はブレザーの襟を引き上げて、口元を隠す。

 

 ……すぅ、はぁ、と俯いて深呼吸を繰り返す。

 息がこもって口元が熱くなる。

 ちらりと見上げて……ひときわ大きく息を吸った。

 

 

「 あっ 」

 

 

 喉に手を当てたら――――声がとろけ出た。

 

 襟の中でこもった、小さな小さな声に潤みながら……私は声を溶かし出した。

 

「あ、りがと」

 

 ずっと堰き止められていた声が川のように、さらさらと流れ出した。

 あれ、私、変だなぁ……。

 

 眦が垂れるのに、口角が上がる。

 ずっとこもって淀んでいた胸の中が晴れ渡っていくのに……きゅうっと切なく締め付けられる。

 正反対の想いがないまぜになってる私を、三波くんは不思議そうに見つめて。

 

「どっ……どういたしまして」

 

 やっぱり照れくさそうに返事を返してくれた。

 私はまだ喉に手を当てながら、ゆっくり小さく発声する。

 

「今日、どうした、の? なんか……変だよ?」

 

 小首を傾げる私に、三波くんは困ったように眉を下げる。

 突かれたくないとこを突かれたような。

 彼は頬を指先で搔きながら、視線を泳がせた。

 

「いや、その…………最近、姫宮さんと話せなかったから……話したいなぁ~ってずっと思ってた時に――――来てくれたから」

 

「…………っ!」

 

 走ってきた時の、駆け巡ってた想いがよみがえる。私はブレザーの襟をもっと、もっと引き上げて目の下まで覆い隠した。

 ぱくぱくと脈打つ音が、吐息に熱っぽさを引き起こす。

 

 ――――ありがとう三波くん、ブレザー貸してくれて……本当にありがとう。

 

 一向に下がらない口角を襟で覆いながら、私は三波くんと目を合わせる。

 

 いつもだったら、三波くんがレヴィアについて推し語るから……お互い一向に話し出せずに見つめ合う。

 

 その、見つめ合いが、なんだか……っ、変で、変な空気で。

 ――ふいっ、と視線を逸らすタイミングが全く一緒だった。

 

「「 あ 」」

 

 そしたら、いつもお話しする時決まって二人で座る、アスファルトの小さな段々が目に入った。

 

 私たちはそろりそろりと、その段々にそろって腰を下ろした。

 


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