予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「私は起きました窓の外天蓋の彼方は光に満ちていたしかし今私の部屋は暗い泥闇に覆われ蒼い脳漿を分泌する黑き猟犬が蠢き私の手の中でまどろむ不定形のモノは確かに覚醒の時をまっていまるのを確かに感じそす私はすぐさまおはレビしました――――眷属の愚者《みんな》……いあいあ」
【 コメント 】
・SAN値ピンチ!SAN 値ピンチ!
・あいさつ昨日と変わってるんだが
・もうおはようではない
・ゆっくり寝ろ堕天使
………はっ!
私はほっぺたを叩いて、脳裏にこびりついた眠気と狂気のブレンドを振り払った。
「す、すまぬ眷属よ。ちょっとまだ意識が飛び飛びで……ぃやっ、だからって許されることじゃないけれど!
そのっ――――
肌がざわついて、胸の奥が時折ひんやりする。
これあれだぁ、バイトに遅刻した時とおんなじ感覚だぁ……っ!
完全にやらかしてしまった事実だけが頭の中でぐるぐる渦巻く。日が昇るまでは【絡繰マキナ】ちゃん自作の壺〇じ(邪神)をやってるのは覚えてる!
そして夢の中で粘液生物に襲われたのも覚えていて……目蓋を開けたら、もう窓の外がとっぷり暗かった。
「ぅぅ……あうぅっ! ティンダロスがっ、ショゴスが……っ! 夢にまで出てきて……はれ? 頭の中に、中に、なにか……いる、よ?」
【 コメント 】
・やめろやめろやめろ!
・もどってこぉい!
・だから寝ろって
・起きろ堕天使なんてもうつぶやかないから!
・ゆっくり寝ろ堕天使にタグ変わってるww
……ほんとだぁ~~☆。私はもぉ自分が起こした事態に苦笑するしかなかった。
ついさっきまでBwitterのハッシュタグには「#おきろ堕天使」のつぶやきが多かったけど今では「#ゆっくり寝ろ堕天使」のつぶやきがどんどん上がってた。
「ぅぅぅ~~~ごめぇん……ほんとにごめんなさぁい……優しい、みんなが優しいよぉおぅわぁぁぁ~~~~~ん‼‼」
あの邪神ゲームの後だと、人のやさしさがものすごく沁みる……っ‼
ふぅっ、ちょっと回復してきたかも(心が)。胸に手を当てて深呼吸を繰り返してから……私は眷属のみんなに声を掛けた。
「それじゃあ、みんな――――いくよ」
時刻は20時!
そう! これから二人目の二期生がデビューするのだ!
私は眷属と共に身構えて、震える指でマウスを動かし……同時視聴を開始した!
「ひぃいいい……ひぃいいい! ど、どんな娘かなぁ? 楽しm、ひぃいいいい!」
【 コメント 】
・おぃ、半〇狗がいるぞ
・「朗報」上〇の四、Vtuberデビュー
・「悲報」うちの娘が半〇狗だった件について
・ひぃいいい!
・楽しみより恐怖の方が勝ってンダガ?
そうして新たな狂気の到来を恐れる堕天使とその眷属達は固唾を飲んで、二人目の二期生の待機画面を見守り――――映ったのは、ドスケベだった。
細くも柔らかい足を強調するハイレグ!
脇腹と胸にしか布面積がないボンテージ!
私はたまらず叫んだ。
「これぜったいステラ先輩の性癖だぁぁーーー‼」
あの太もものむちっと感!
慎ましやかなのにボンテージで妖艶に見えるちっぱい!
そのこだわりようは、レヴィアにも通ずるモノがあった。
更には魔女っぽい三角帽子に黒いローブ、片目を隠す眼帯などはすごく中二感があって……なんだかレヴィアとすごく共通点《シナジー》を感じた。
【 コメント 】
・エッッッッ
・これはシコい
・肌色面積ランキング1位
・魔女っ娘か、良いね!
・眼帯良きぺろぺろしたい
・両目つむってるの可愛い
・キス待ち顔……ッテコト⁉
ぅううううううまたみんなすっごく褒めてるぅうううう!
でも――――悔しいかな、すごく可愛い。
眷属が言う通り、表示されたアバターはいま両眼をつむっている。だからかな? なんだか……目を開けた所を想像すると、胸がすごくドキドキしてきた。
「へ、へーーんだぁ‼ どっ、どうせまた変な人なんでしょ⁉ もう妾分かってるんだから! だってここヘブンズライブだもぉん!」
もうお決まりだもん!
どうせまた変態ムーブかまして、私がセンシティブにイジられるんだから!
――まぁマキナちゃんはまた別次元のイジリをかましてくれたけども。
邪神に傷ついた心が警戒し、子犬のようにフーフー牙を剥く。
いないんだ、結局、妾にまともな同期は…………来ないん
『ふふふっ、そんなにじろじろ見て――――イケナイ小鳥さんだね』
その声は、もう消えてしまった桜の花弁のようにひらりと私の耳に届いた。
その声音の柔らかさは、意固地になっていた心を解いた。
え? なに? なにこの――きれいな声。
アバターの魔女っ娘は表示されてから少しも動いてない。
眠り姫の如く目を、つむったまま。でも、声は優しく、ささやきかけてくる。
『そんなに食い入るように見ないで欲しいな……くすぐったぃよ』
はぅっ⁉
恥じらいのこもったささやきが、きゅうっと切なく締め付ける。
『たしかに僕はこんな格好しているけれど……そんなところより、もっと……見てほしいところがあるんだ』
そしたら魔女っ娘のアバターがどんどん拡大されて――――目蓋を閉じた、きれいな顔が画面いっぱいに近づいた。
『ほら、見える? 僕の、まぶた。
まだ何も映したことのない、この瞳に最初に映るのが君なんだよ。
卵から孵った小鳥が、初めて見たものに無償の愛を抱くように――――この眼を一度開ければ、僕と君の間に、唯一つの恋が始まるんだ』
さわさわと触れるか触れないかくらいの、フェザータッチのようなささやき声が私の耳に入り込む。彼女が吐息を、いや声を発するだけで、私の肩はびくっと跳ねる。
『それじゃあ……開けるよ』
目蓋が、開かれる。
ゆっくりゆっくり、眼帯に塞がれていない片目が開いていって――――その翡翠の輝きがガチ恋距離で輝いた。
そうして彼女は、強く、強く、命じる。
『見て』
『みて』
『みて』
『僕を、見て』
『見たね?』
彼女は穏やかに頬を緩めて――――チュッと。
感触すら覚えるリップ音が、ときめく胸に鳴り響いた。
『もぅ絶対離さないよ、小鳥さん。これで君は……【夢乃クロア】の使い魔《ファミリア》さ』
コメント欄がメス堕ちしていく。
圧倒的な演技力と抜群のウィスパーボイスが、初配信のリアタイ勢をガチ恋にさせていく。
そして。
「ぁっ…………しゅき」
堕天使もその例に洩れなかった。