予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第6話 身バレこわいよぉ!(クラスメイトが私を推してました)

 バイトやめてきた。

 というより「やめさせられた」って言った方が近い。

 

『いいねいいねぇ! お姉ちゃんやっぱ最高だねぇ! 登録者数じゃ、もう収益化の条件クリアしちゃったよ⁉ すごいよぉ! これからも一緒に配信頑張ろうね、お姉ちゃん! あ、ちなみにバイト先に辞表出しといたから、もう行かなくてよいよ』

 

 これが、妹が起こしにやってくる微笑ましい日常シーンのセリフである。

 ぅぅうう、朝から胃が縮んだよぉお。

 

 妹目覚ましが早い時間だったから、学校に行く前にバイト先のコンビニに行って確認してきた。

 マジだった。

 

「怖い……もう怖い……伽夜ちゃんが怖い」

 

 私の筆跡そっくりの辞表を見た時の寒気は、未だに収まらない。

 春のお日様はぽかぽか温かいのに、胸の中は冷え冷えだった。

 

 冷え冷えな原因は分かってる。

 朝日に照らされた通学路からスマホに視線を落とす。そして【宵月レヴィア】のYUTUBEチャンネルを見る。

 

 わぁ~~、4桁超えてりゅ~~~~~。

 

 色々悟った私の顔をパァ~~とお日様が照らす。

 そして笑顔のまま、私はガ君と膝から崩れ落ちた。

 

「どう、しよ……どうしよどうしよどうしよどうしよぉ~~~~⁉」

 

 不安に叩き伏せられた私は、ひしっと電柱にすがりつく。

 ――――バレてたらどうしよう⁉

 

 昨日、配信が終わった後ふと考えちゃったんだ。……もしクラスの誰かがあの配信を見ていたら? って。 

 

 そんなのあるわけないじゃーんと思って寝ました。起きたらチャンネル登録者1万人超えてました。

 

「お願ぃ、嘘だと言って……」

 もう一度、【宵月レヴィア】のチャンネルを見る。数字は変わらなかった。

「あぅぅ……こ、こんなことならボイチェンすれば良かった……いや、日頃からボイトレしていれば……」

 

 どれだけ後悔しても、もう遅い。

 まぁクラスに友達はいないし、名前も覚えてもらえてるかどうかって感じだし。

 

 声を掛けられる時なんて、宿題写さしてと頼まれた時とか、放課後の掃除を頼まれた時とか、クラスの雑用を頼まれた時しか無いし………………良いように使われてるなぁ〜〜〜。

 

 それでも私と宵月レヴィアの声は同じだ。

 クラスで【Vtuber界隈】に詳しい人はいないと思うけど、でもチャンネル登録者が増えれば、認知度が増えれば、それだけバレる確率高くなるわけで!

 

「……いや、よく考えてみて」

 

 私は努めて冷静さを取り戻しながら、校門をくぐる。

 クラスの誰かにバレると言ってもさ、この世界にはすごいエンターテイナーはたくさんいるわけで。

 

 クラスで話題になるレベルなんて、登録者ウン十万超えのトップVtuber位にならないと。

 

 つまり……そこまで気にしなくても、良いかも。

 そんなこんなで教室の前に着く。

 いつもの習慣で度無しメガネを掛けてから、自分に言い聞かせる。

 

「うんそうだ絶対そうだ! そうだよ、私が思う程、みんな私なんかに興味ないじゃん! アハハッ、胸が軽くなってきた!」

 

 気付かない内に自意識過剰になってたよ。はーぁ、杞憂杞憂♡

 私は胸を撫で下ろしながら、教室の戸をサラッと開けた。

 

 

「好きなVtuber? 【宵月レヴィア】かな。昨日、初配信したばっかの子なんだけどさ……切り抜きあるよ。見る?」

 

 

 クラスの中心《イケメン》がおもっきり布教してた。

 

「 三波くぅーん‼ ちょっと私と一緒に来てほしぃィィィなぁァァあああ‼⁉ 」

 

 談笑中、否、布教中の彼の袖を引っ張って、私は彼を教室から引きずり出した。

 ホームルーム開始を告げるチャイムが後ろから聞こえてきた。

 

 そうして教室とは反対側の校舎、その裏の日陰まで来た時に、彼――三波恭介君が声を掛けてくれた。

 

「あの~もうそろそろ良いんじゃない?」

「え……っ⁉」

 

 だから今気付いた。

 袖をつまんでるだけと思っていた私の手は……三波君の手を握ってた。

 

「ひゃあ⁉ ご、ごごごめんなさいっ!」

 

 私はパッと彼の手を離すと、慌てて頭を下げた。

 彼は後ろ手で頭を掻きながら、首を傾げた。

 

「いいって謝んなくて。で、俺を連れ出したのはなんで?」

 

…………………………まずい。

私は頭を下げて顔が見えないことを良いことに、たらたらと汗を垂らす。どうしようどうしようどうしよう何か言わなきゃ、でも何言ったらいいの⁉ 

 

「え、はっ、その、あの……あ、の」

 

 う~~うるさいよ心臓ぉ! 

 前髪をサッサッと降ろして、赤くなっちゃった顔を隠す。

 なんで! 

 よりによってなんで……三波君が【レヴィア】を知ってるの⁉

 

 彼の名は三波恭平。学校を代表するイケメン君だ。

 スポーツ万能・成績優秀で『フィクションご出身です』と言われても納得しちゃうくらいの美男子。

 

 そんな人が、彼が、どうして。

 

 そうこう考えてる内にどんどん辺りに静寂が包んで――――サァァァァッとどこからか風が吹いた。

 

 日陰に咲いた桜の花びらが、私と彼の間に舞い込む。

 

「もしかしてさ――――姫宮さん……好きなの?」

「……ひぃえ⁉」

 

 バクン‼ と心臓がひと際強く胸を叩いた。ぼわって顔が熱くて熱くてアダメだ訳分かんなくなってきた! 

 

「そ、そんな! ちが……っ! 私なんかが三波君と」

「宵月レヴィア、好きなの?」

「だなんて………………エ?」

 

 桜の花びらを押しのけて、ぐいっと一歩踏み込んだ彼の顔。

 その切れ長クールな瞳の中にある輝きは……伽夜ちゃんと同じだった。

 

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