変な老人に取り憑かれたらしい。   作:オスミルク

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変な老人に取り憑かれたらしい。

失敗した。

まず最初にそう思った。ヒトガミに騙されロキシーを死なせてしまう寸前に飛ぶ予定が、気付いたら、もう記憶の彼方にあるかどうかも分からない風景が目前に飛び込んできた。

 

息も絶え絶えのゼニスに飛び回るかの如く喜んでいるパウロ。そして今しがた産まれた筈なのに産声も上げず不気味に「アダー」と声を発する赤ん坊とそれを抱き上げホッと息を撫で下ろすリーリャ。

みな十代後半から二十代前半の若々しい姿で三者三様の面持ちでいた。幸せそうだ。

 

なんだろうかこれは、夢でも見ているのだろうか俺は、だとしたら質の悪過ぎる酷い夢だ。

ひょっとしてあのクソガミのせいだろうか、失敗した俺に追体験の如く幸せだった皆が不幸になって行くのを見て、泣き崩れる俺を見てまた嘲笑いたいのだろうか。

もう、勘弁してくれ。こっちは過去転移魔術の失敗だけでも吐きそうなぐらい辛いのに、これ以上追い打ちをかけないでくれ、と叫びそうになったが、思考が止まった。

ソレは俺を見ていた。所作そのものは何気ない物だった。しかし、ソレは俺の知らない事だった、

体験したことの無い行動だった。

 

 

俺が俺を見ていた(・・・・・・・・).....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーデウス視点

 

異世界に転生したと認識してから数日が過ぎておかしな事に気付いた。

正確には最初からその存在には気づいていたが違和感を覚えたのは最近だ。

 

最初は自分を除き祖父と父と母そしてメイドの裕福な四人家族かと思ったが、老人は誰とも喋らず時折今にも泣きそうな表情で家族を見ていた。

 

しかし、俺の事は嫌いなのかメイドのパンツを被ったり母親の胸を舐めようとすると異常とも言える眼力で睨み俺をギャン泣きさせた。

あんなゴミ以下のモノを見る目で睨まれれば誰だって号泣間違いなしだ、決して俺が泣き虫だとかそう言う話ではない。

 

しかし、メイドのパンツをいじった赤子を人でも殺せそうな眼つきで睨まなくたって良いじゃないか。それに赤子が母親のおっぱいを飲むのは義務だ、怒られるのは納得が行かない。がまぁそれはひとまず良い。

 

そう、違和感を覚えたのはその老人だ。

誰とも喋らないどころか、赤子である俺を酷い眼つきで睨んで泣かせても咎められ無いどころかスルーされている。

おかしな事だ、本来なら最低でも(お爺さん子供を泣かせないで下さい)ぐらいの注意を受けそうなモノだが、老人は何も言われず、それどころか俺が唐突に泣きだした、と安心される始末だ。

 

俺はようやく老人の正体に気が付いた。

 

「アナワハ ユウレイ レスカ」

 

書斎まで監視するかの様について来た幽霊(暫定)に語りかける。

この世界の言葉はまだ堪能じゃ無いし発音だってろくにできないが、何とか絞り出す。良くもまぁ生後半年でここまで喋れたと自分で褒めたくなるものだ。

そして、老人は少し驚いた様にしてから喋り始めた。

 

『驚いたな、本当に夢じゃ無いのかコレは』

 

そんな事を言った様に思う。何度も言うがこの世界の言葉はまだ完璧ではない。リスニングにも自信はない。

 

『まぁ、それもそうか。俺自身魔術も多少使えたし、オレもオレに反応していた。指定した時間も何もかも違うが…』

 

と一人ブツブツと俺を無視して考え込んでしまい、

『だが、まぁいい。どちらにしても失敗したのは変わらない。消えるまでこの風景を見て…』

 

一人自嘲げに呟くも、「いや待てよ」となにかしら思いついたのか口を不気味にニヤつかせ俺へと向き直る。

『ああ、とりあえずさっきの答えはそうだと言っておく。俺は死んで幽霊の様なものだ。

そんな事より折角書斎に来たんだ、文字の勉強でもしないか? それとも魔術でも教えてやろうか?』

 

そんな事を提案してきた。

 

 

 

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