ゼニスが遂に妊娠した。
恐らく来年近くにノルンと名付けられる可愛い女の子だ。
つまり来月程にアイシャを身籠ったとリーリャが顔を青くしてその報告をしてくる。
その時はアイツが何とかする筈だが、本当に大丈夫だろうか?
一応保険をかけておこう。
『ちょっといいか?』
「爺さんから なんか言ってくるなんて珍しいな何か用か?」
この選択が彼女との出会いを阻害になるかも知れないが、それで彼女と出会わず終わるのなら、それでもいいのだろうとソレを口にする。
『お前の練習風景を見て思ったんだが闘気は纏わないのか?
闘気を纏わないでやっても意味なんてないだろう』
「闘気ってなんだ?」
そりゃ、そうだろうコイツはパウロからそんな話は聞いていない。
感覚派であるパウロはソレを無意識でやっている、ソレの名前すら曖昧かもしれない。だからパウロは彼女に任せた。
『闘気ってのは魔力だ、体に纏うイメージでやってみろ』
しかし、ソレを無くす事を俺は言った。
それはかつて知恵の魔王に言われた台詞と同じだった。
それは剣神流の才能がお前には無いと言う言葉だ。
剣神流の基礎は闘気ありきのモノだ、それが纏えないのだから剣神流の王である彼女に任せる理由が無くなる筈だ。
ぐぬぬと魔力を放出したり、どこぞの戦闘民族の様に唸るが当然の様に纏えない。
「どうですか!?」
『全然出来てないな…』
ガビーンという効果音が聞こえそうなショックを受けたようだが無視する。
『剣神流より水神流か北神流を学んだほうが良いんじゃないか?』
「父様に言ったら教えてくれるかな?」
『水神流ならリーリャに聞いてみろ、確か彼女の実家は水神流の道場だ、感覚派のパウロよりリーリャの方が分かりやすく教えてくれるだろう』
聞いてみろと言うとアイツは微妙な顔をした。
『あ、間違ってもリーリャに直で行くなよパウロにリーリャについてを聞いてから言えよ?
余計に警戒される事になるからな…』
「教えてくれるかなぁ、なんか俺嫌われてるみたいだしなぁ…」
と思うところがあるようだが、次の日には聞いていた。
剣術への関心はまだ失われていないらしい…。
そして、その一ヶ月後やはりと言うべきか、起きるべくして起きた、と言うべきか。
リーリャの妊娠が発覚し、アイツの説得で難を逃れたようだ。
ルーデウス視点
あの老人の助言を聞き入れリーリャに水神流について聞き始めた。
当初 彼女は通常業務を盾に断ろうとしたがパウロからの説得もありしぶしぶといった感じで教えてくれた。
ちょっと大雑把な感じでパウロ達ほど真剣な様子は見受けられなかったが俺が理解出来る程度には分かりやすく教えてくれた。
パウロの授業の3分の1程の時間を割り当てて教えてくれるようになった。
そんな、最中だった。
リーリャの妊娠が発覚した。
その時の光景は凄かった、俺とゼニスは犯人に心当たりしか無く、犯人は直ぐに白状した。
そこからはゼニスのパウロへの平手打ちに始まり、酷く陰鬱な空気が空間を支配した。
パウロは強制的に口を封じられ、ゼニスによるリーリャへの審問が始まった。
リーリャは全て正直に話して出て行く覚悟を決めていた。
その道が自分の死に繋がる事を覚悟しながら…。
しかし、それが良いはずがない。
リーリャには数々の恩がある、ロキシーのパンツに始まり日常の家事に水神流の授業、これで恩に思わない薄情者にはもう、なりたくない。
そう思い必死に俺はゼニスの説得に当たった。
とは言っても全てパウロのせいにしたが許して欲しい。
老人からは何の助言もなく俺の頭ではそうするしか無かった。