リーリャの妊娠発覚から数ヶ月が経過し、2人は難産や早産を無事に乗り越えて、子供を出産し平穏な日々が続いた。
今日も今日とて早朝にノルンとアイシャの面倒を見てリーリャから水神流について聞きパウロに敗北し、シルフィと遊んでノルンとアイシャと遊んで深夜に老人の魔術の授業を受け一日を過ごす。
その甲斐もあって俺はパウロから学んだ元々の研鑽もあり人より少し早く水神流初級の認可を得たがもう半年も前の話だ。
「なぁ、爺さんアンタより魔術が上手い奴ってどれくらいるんだ?」
『? 結構いると思うぞ?』
そう言って老人は指を折り始めるが3本程で指が止まり。いや、しかしあの分野でなら俺は勝てない、と呟いて指を折り進め両手が埋まる。
『10人以上は居るな…』
ぜってぇ嘘だ。
多分純粋に老人より魔術が上手いのは最初の3人だけだろう。老人の一挙手一投足を見張りながら生きてきて、この世で最も老人の表情を理解している俺には分かる。
まぁ、この老人が見えるの俺だけだけど。
『何だ、いきなりそんなこと聞いてきて、挑むのか?』
殺されるぞ と老人は苦笑する。実体験だろうか?、彼自身が殺されかけたのだろう。
無論そんな恐ろしい事をするつもりなんてない。
「いや、ロキシー師匠から手紙を貰ってさ、もっと先に進むなら他に勉強する方法とかあるのかなぁって」
最近の老人の授業は中級魔術や初級魔術の威力アップや魔術操作の訓練ばかりで、飽きてきた訳じゃ無いが自分自身に進歩を感じられない。
居住まいを正して老人に頭を下げる。
「なぁ爺さん、王級魔術を教えてくれ」
老人からはキックが飛んできた。
思わぬ素手の攻撃に回避が遅れその場でグルングルンと何処のハイパーヨーヨーかよ、と見事な回転を宙空で踊ってからベッドヘ着地する。痛みは驚くほど無かったが目が回った。
「幽霊の癖にどうやって物理攻撃を…」
いつの間にこの老人は物理攻撃の手段を手に入れたのだろうか、この老人の成長もシルフィのように留まる所を知らない。
そのうち帽子と後髪の境界線が曖昧な男子高校生のスタンドの様に時を停めたりするのだろうか。
成長性Aなのだろうか。
『物理じゃ無い 只の混合魔術だ』
メラゾーマじゃ無いメラだ、という魔王の文言が頭をよぎった。
魔王…、はっ!
まさか今のが実は王級魔術クラスの魔術とでも言うのだろうか!
その証拠に老人は出来栄えに感心した様に頷いている。
「王級魔術って実は地味なんですね…」
『は? 今のが王級魔術なわけ無いだろ』
「デスヨネー 重力魔術の応用ですかね?」
最近、重力魔術で遊ばれすぎて三半規管が丈夫になってきた気がする。
と言うかさっきの論法からすると王級魔術どころか上級魔術じゃ無くて初級魔術だ、という話になる。
『あぁ、重力魔術と風魔術を同時にやったら出来た、そっちなら教えてやる。
と言うか何でいきなり王級なんて望んでるんだお前』
「いい加減次に進みたくって…」
『それで王級か、王級なんて身に付けて何処を目指してるんだ』
「えーと…」
俺は最近停滞気味の授業に不満を言わない様にしつつ、周りの進みが尋常じゃない程早く感じる事や自分自身に成長感じなくなってきた事を打ち明けた。
『要は俺とリーリャの授業は飽きたし、パウロには勝てないのに、シルフィエットの成長と何故か俺の成長に焦って来たのか』
「ちがッ…、くない…です、はい。」
ドストレートな物言いに色々言いたいが、ぐっと堪える。こういう時何やかんや言いつつ老人は解決案を出してくれる筈だ。
『とは言ってもなぁ、まだ次に行く段階じゃ無いんだよなぁ』
しかし、老人から出てきたのは現状維持という対案だった。
『そんなにバカスカ新しい技術を取り入れたって仕方ないだろ? 今は魔術に関しては地固めの期間なんだよ』
確かにそうかも知れない、この間作った戦闘中パウロ ジオラマはアスラ銀貨5枚になった。
相場はわからないが商人が凄いと褒めてくれたので鼻高々だ、あれも魔力操作あってのものだろう。
老人の言う通り王級は少し早かったかもしれないな、なんて思った。
しかし、なんだろう。
結局俺はそう言われるまでに進んだが何処に向かえば良いのだろう、まだ俺の体は7歳程度だ。世の中でどのくらいモノが出来るだろうか?
迷宮とか冒険者はまだ怖いし、俺にはまだ早そうだ。
取り敢えずそれらはプランcくらいにして、俺は魔術師としてではなく、人としてどれくらい成長したか挑戦してみるべきではないだろうか?
老人視点
さて、どうしたものだろうか?
俺の影響なのか現状に対して飽きてきたのか不満を言う様になって来たと思ったらアイツがパウロに仕事がしてみたいと言い出した。