ガタガタと気分の悪くなる不規則な振動で俺は目を覚まし、まず一言。
「コンチクショウメ」と思わず歯軋りした。
勝ったと思った。
最後のあの一瞬ストーンキャノンを使わずに別の魔術を使えば勝てたのかは分からないが…。
「剣を足場にするとかマジかよ~」
パウロに殴りつけられた頭をさすり敗北を痛感する。
正直叫びながらゴロゴロと地面を転がってから、穴があったら入りたい程の羞恥心に襲われている。
丁度木箱に入ってるしもう少し不貞寝しようかと思ったが、ガタリと大きな音と揺れで我に返る。
ここはどこだ。
家じゃ無いのは確かだ。
木箱から這い出て周りを確認すると、少し豪奢だが狭い小部屋の様な場所に木箱が置かれその中に居る状態らしい。
窓からオレンジ色の夕日が差しこんでいる所を見ると、もう夕方らしい。
後方を確認するとパウロと話していた筋骨隆々な獣耳褐色美人さんが俺を見ていた。
この人に売られたのかな?
いや、流石にパウロもそんな酷い事はしない筈だ…。
取り敢えず話かけて様子を探ろう。
「どうも、こんにちはルーデウス グレイラットです、こんな格好では何なのでこの縄を解いても良いですか?」
「パウロの息子にしては礼儀正しいのだな」
「母様の子ですしうちのメイドが色々教えてくれたんですよ」
「なるほど…、あたしはギレーヌだ、とりあえず縄は解いてやろう」
「あ、いえお気になさらず」
俺は火魔術で縄を焼き切り縄を解いた。
「…さすがだな」
何が流石なのだろうか、ただ無詠唱で火を着けて縄を焼き切っただけだ…。
などと無自覚系強キャラごっこなんてしない。俺は無詠唱魔術が希少な技術だという事を理解している。
しかし、俺はジェントル、謙遜だけしておこう。
「いや〜、それほどでも〜」
どこぞの嵐を呼ぶ園児の様に後ろ髪を掻きながらニヤケながら言ったが、俺も嵐を呼べるし肉体の年齢も近いし問題ないだろう。
「正直あの時お前が勝ったかと思ったぞ」
「いや〜、僕も勝てると思ったんですけどねぇ、
やっぱり父様には敵いませんよ」
「そう言うな、パウロ相手にあそこまで追い詰めた魔術師を見たことが無い、自信を持て」
「それはどうも…」
そう、会話しているとギレーヌが何かを思い出したようにそのキレイな灰色の獣耳をピクリと動かし、懐から一通の手紙を取り出し、俺に手渡した。
「パウロからの手紙だ、あたしは字が読めんから読んで聴かせろ」
「わかりました」
俺は手紙を開けて、ギレーヌに言われた通り読み始めたが、長くなるので割愛する。
要約すると。
この手紙を俺が読んでいる頃にはパウロは死んでいるという事や、それが冗談であるという事。
そして目の前のこの女性が剣王でパウロより強いらしく、これから俺に剣を教えながら、俺は彼女ともう一人ワガママなお嬢様とやらに、勉強や魔術を教える事になっているという事が綴られていた。
その随所随所でギレーヌを煽り散らかす文言があり彼女の怒髪天を衝き、俺が冷や汗をかく事になった。
そして最後に、5年間の帰宅禁止とシルフィへの手紙のやり取りを禁止すると書かれていた…。