変な老人に取り憑かれたらしい。   作:オスミルク

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老人が最も信用していないのは自分ととある邪神だと思います。


地雷

老人の提案を聞き入れ色々な勉強会が催された。

普通のこの世界の国語に始まり、歴史そして数々の魔術を教わった。

生前は勉強なんざクソ喰らえと途中から全て投げ出して生きてきたが、不思議と続いている。

老人の教え方が上手いのか、それともこの世界の事を知るのが楽しいのか、はたまたこの体の物覚えが良いだけなのかはわからない。

多分その全てなのだろう。

 

そしてやはりというべきか、当然と言うべきか学んでいて一番楽しいのは魔術だった。

まず呪文の詠唱をして魔術を発動、そしてその感覚を体に覚えさせてから無詠唱で行うという練習を行った。

最初は2~3発で気絶していたが、慣れてくると6発10発とどんどん増えていき気付けば100では利かない数の水玉や石ころを作れる様になっていた。

老人曰く、魔術は体が幼いうちに多く使えば、使うほど魔力総量が増え、魔力切れを起こさない様になっていくらしい。

量が増えれば出来ることも増えていき、あっという間に基礎と呼ばれる6種の魔術を覚えた。

「なぁ、爺さん何で魔術って小さい水滴を作るより拳大の大きさの水を作る方が魔力消費量が節約できるんだ?」

そして、この老人も凄かった。ためしに魔術教本には書いていない事を聞いてみると、物凄く納得の出来る理論を分かりやすく教えてくれた。

 

『そうだな、大量の水の入った桶からほんの少しの水を垂らして水滴を作るより、ポットから水を出して同じ大きさの水滴を作る方が簡単だろ? それと同じで魔術ってのは腕の先端から作っていくものだから、どうしても拳大の物になるんだ』

 

ほらと、水桶からどうやってか拳大程度の水をシャボン玉のように浮かせて、そこから少し水を垂らす様に溢した。

『こうやって水出す量を調整するより、このまま落っことした方が簡単そうだろ?』

ボチャンと音を立てて水玉が水桶に落下する。

なるほど、分かりやすい。

そもそも、どうやって水を浮かせて居るのかとても気になるが、いつか教えてくれたりするのだろうか?

『だから、肩から腕を切り飛ばされると魔術が使えなくなるから気を付けろよ』

そう言いながら肩口をトントンと叩いて見せる。

切り落とされた事があるのだろうか…、あるんだろうな、老人の言葉には実感が籠もっているし、年齢のせいもあるのだろうがパウロ以上の歴戦の猛者だと物腰から感じる。

 

『あとこれも魔術教本にも載ってないからあんま人に言いふらさない方がいいぞ』

 

「一子相伝の極意みたいな話ですか?」

 

『ちげーよ、知り得ない情報を持ってると警戒されたり不気味がられるって話だ』

 

「なるほど、それもそうですね…」

 

この老人の事は相変わらず誰も知らないらしい。幽霊との事だったが、普通の幽霊ならば他の家族にも見つけられている筈だ。

そう、この世界では珍しくはあるが、幽霊、つまりレイスが存在して居る。

前世では、居る訳ねぇだろと心霊番組や自称霊能力者を嘲笑していたが、この世界では誰でもその存在を確認出来てその対処法まで確立されている…、と要約するとそう本に書いてあった。

しかし、この老人にはレイスの特徴は殆どない。強いて上げれば普通の壁をすり抜けるぐらいしかないし、意識もしっかりあり魔術まで使えるし、何より足がある。本当に幽霊なのだろうか…。

 

「生きていた頃はさぞや立派な魔術師だったんでしょうね…」

 

心の底から褒めたつもりだった。魔術教本にも載ってない事を知っていて、実戦経験も豊富。時々語られる経験談や知識についても驚く事ばかりだった。

何も知らない俺でもその経験が凄まじいものだと分かる。

しかし老人は真顔になった。オッドアイの両目がパチクリと俺を射抜いていた。

 

『俺が? 立派?? 愛する妻を救えず、愛する妻を傷つけた挙げ句戦地にまで逃げさせ、俺を生涯を掛けて愛してみせた女の真意にも気付けず、親友を守れず死なせ俺を見捨てず支え続けてくれた妹すらも無惨な死体にした俺が???

フヒっ…、フフフ…………アァッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ……!!!!!

 

面白い冗談だ!!

そんな奴より、戦場で気を抜いた馬鹿な息子を庇って死んじまった親父の方がよっぽど立派だ!!

そいつを差し置いて俺なんかが立派? クククッ、アアァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ !!!! 』

 

髪をグシャグシャと掻き回し嗚咽混じりに笑い、嗤い、嘲笑う。

 

自嘲する様に、自虐する様に、最後フザケルナと泣き崩れた。

 

 

「うぅえっと…」

あまりの変容に黙るしかなかった。数十年引き籠もっていた俺に掛ける言葉なんて無かった。

 

「すいませんでした…」

頭を下げて書斎を後にするしかなかった。

後ろから『ごめんな』とだけ聞こえた。

 

前に結婚とかしてたのかと聞いた時の反応によく似ていた。その時は『してたよ。でも二人共俺が馬鹿なせいで死なせちまったよ』と口元を歪め、止めどなく涙を流していた…。

 

 

 

 

 




ちょっとぶっこみすぎたかな? と反省中
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