さて、アイツが聖級治癒魔術師になり随分たった。
あまりに楽しげな授業風景にエリスも授業に参加し始め、アイツの仕事は軌道に乗り既に半年程時がたった。
その間に7日に一度の休日を設けたり、ペルギウスの空中城塞について聞かれたり。
媚薬を手に入れたと騒いでたと思ったら、直ぐに落として割って騒いでいたのが記憶に新しい。
だが、やはりというべきか、なんと言うべきか剣術を学ぶ側に回るとそっちの方は芳しくない。とは言っても魔術程の著しさが無いだけで、アイツのやる気とパウロから学んだ下地も相まって才能の無い人間にしては授業に遅れを感じさせない。
俺の時とは違い、予め感覚派ではないリーリャに水神流の型をキチンと教わったのが良かったのか、エリスとの打ち合いの授業では4回に一回の確率でエリス相手に勝利を納めている。
水神流の真髄である型としてのカウンターを打ち込むのには届かないが防御で怯んだ隙に考えればまずまずだ。
初日の襲撃時にも思ったが驚くべき成果だ。
俺の時は為す術も無くエリスに叩きのめされていたが、アイツは何とか対応出来ているのだ。
防御姿勢や、相手の剣のいなし方。相手の殺気を察知する方法や衝撃を最小限にする方法は、臆病なアイツに相性が良かったのだ。
それに元来俺やあいつには剣の才能が無いと思っていたが、実はパウロから剣の才能が多少遺伝していた可能性だってあるのかもしれない。
しかし、アイツは自身の前世を含めると遥か年下の小娘に敗北していると考えればまだまだ修行不足だ、と考えている様だが、水神流を学んだ半年という短い時間に、彼女の才能や剣を持った時期の差を考えれば、アイツの進歩は目覚ましい。
と、なれば…
ルーデウス視点
『そろそろ魔術の実戦訓練を始めようと思うがどうする?』
ある日の夜の事だ。その日の授業も無事に終わり、老人はそんな事を言い出した。
最近魔力コントロールの為に熱中していたロキシー人形の制作も完成に至り。ちょうど夜に暇な時間ができ始めていたのでラッキーだ。
というか、だからこそ言い出した事なんだろう…。
俺はこっそりと屋敷から抜け出して、街の外の平原まで連れてこられた。
本来なら少し遠いが重力制御によって身体を軽くすれば、身体能力が一般人の俺でも飛びながら来れるので軽いジョギング感覚で街の外まで行けた。
『ここまでくれば流石に良いか…』
そう呟くと老人は俺に座るように言ってきた。
深夜ということもあって、人の気配は無いが魔物の気配はする。しかし老人も居るし、色んな人の話を聞く限り、ここら辺の魔物なら俺でも退治出来るらしいので適度な緊張感を持ちながら老人の話を待つ。
『実戦訓練と言ってもなにか特別な事をするわけじゃない、ただ速く動く
老人はそう言うと拳大の水弾を一つ作り出しふよふよと宙に浮かせ、その横に目玉サイズの少し大きい鈴を作り出した。
『一応ルールを決めておこう。まずこの鈴を真上に投げるからそれと同時に距離を取り魔術の生成を開始し、コレが地面に着地したら打ち合いの合図とする。俺は水弾を動かしてお前に当てて、
お前はその水弾を躱しながら高威力のストーンキャノンを動く水弾に当てればいい。高威力のストーンキャノンなら一撃で水弾を蒸発させられるからそれで威力の有無を確認する。
お前が水弾にストーンキャノンを当てるまで俺は水弾を作り続けるのでお前は避けるかいなすかしろ。で以上だ。何か質問があれば挙手するように』
「あ、はい」
『はい、質問どうぞ』
「制限時間とかは無いんですか?」
『あ〜、そうだな…』
考えていなかったのか老人は何か目印でもないかと辺りをキョロキョロと見回した。
明日は休日でいくら疲れてもいいとはいえ、いつ終わるか分からない試合は流石に嫌なので一応時間は決めておきたい。
老人の視線は最終的に夜空へ向けて何かを思いついた。
『よし、こうしよう』
と言うと同時に気付く間もなく白い陶磁器の様な2m程の棒が地面に突き刺さっていた。
無詠唱で作られた土の棒が月明かりに照らされて影が伸びているのがわかる。
『この影がここまで来たら一旦休憩に入りその時まだ行けそうなら、またその時に話をするとしよう。まだ質問はあるか?」
「いえ、もう大丈夫です」
『分かった、じゃあ、スタート』
という掛け声と共に鈴が宙を舞った。
互いに後ろへ飛び、俺は即座にストーンキャノンを生成し威力を貯めて一撃目の準備を完了させると、ちょうど良く鈴が落下し開始のゴングがなった。
久しぶりなのに短くて申し訳ないですが許して下さい…
次はなるべく早く投稿したいです…。