変な老人に取り憑かれたらしい。   作:オスミルク

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長い事おまたせしてしまい申し訳ありませんでした。


予言

 

老人視点

 

 

まぁ、そんなこんなで始まった週末の花の金曜日 ドキドキ深夜の実技授業はアイツにとってあまり良くないスタートをきった訳だが、ボコボコにされている割にやる気は萎えてないらしい。

 

想定どおりの反応だが、想像以上のやる気に俺は少し困惑していた。

まさか、訓練の最中に俺を狙ってくるとは思わなかった。

別に怒っている訳じゃ無いが確実に当時の俺とズレているのを感じる出来事だった。

確かに当時の俺もパウロ相手に打ち込みの練習中に魔術を使った事もあった気がするが、あくまで隙を作る目的だった。それが今回のはなんの意味もなく石砲弾(ストーンキャノン)を仕掛けてきた。

当たらないのはアイツも分かっていただろうが、アレでは撹乱にもならない。完全な八つ当たりだった。

たしかこの頃の俺自身だったなら、意味のない事はあまりしない、いわゆる事なかれ主義の人間だった筈だ。

前世の俺達を考えれば、感情に任せて暴れる様な事はあまり良くないが、それに囚われすぎてもそのうちストレスが溜まりアイツ自身にとっても毒になる可能性だってあるので、オレに向ける分にはあまり気にしない方向で行こうと思う。

 

しかし、それが良い事なのかは分からない。

ロキシー達を失うまでは真っ当な人間だったと思うのだ。

今までも思っていたが、あの時までの俺からズレると言う事は、それに至るまでの前世への反省が無くなるかも知れないと言う事に他ならない。

それについてもどう考えさせるか…。

 

とそこまで考えて、まるで息子の育成方針を悩む親の様な事を考えている自分に気付くと「自分の娘を育てなかったくせに自分の育成には熱を入れるのだな」と自己嫌悪に告げられた気がした。

『チッ…』

舌打ちを一つし、胸焼けを吐き出す様に溜め息をついて実践授業について考える事にする。

そっちについて考えるのもどうかと思うが、アイツを強くする事は未来的にパウロや皆んなを守る事に繋がるのでアイツの為ではなく俺の為なのだ、と誰に言うでもないのに言い訳をした。

 

とりあえずアイツの射撃精度と精製速度は及第点に達しているが、色々な予測はまだ上手く行かないらしい。

そこら辺は経験を積むしかないので、今の訓練を継続するしかないのだ。

フラストレーションが溜まっているアイツを思えば、多少手心を加えてやっても良いかもと思うが、一応魔大陸の魔物に見立ててやっている以上明らかに見え見えな弾道は当たってやってもアイツの為にならないので、色々な工夫をアイツ自身が考えつく事を期待する他ない。

 

俺の記憶通りに行けばあと3年でナナホシが召喚され転移事件が起こる筈だ。

ほんの少しでもズレて来ているのだから、俺の記憶通りにならないかも知れない。それはつまりルイジェルドには会えないかもしれないという事だろう。

それどころかエリスと一緒に転移出来るかだって分からない。

アイツなら即死する様な場所以外なら何処に飛ばされても無事に帰って来れるだろうが、3年後のエリスが無事でいられる場所は限られている…。

 

それを言い出したらパウロだってシルフィだって、前は無事だった他の被災者だって、前の様に無事でいられる保証なんて何処にもない…。

 

 

『…なんて、そんなこと考えて何になるんだ…』

 

時刻は丑の刻すら過ぎた深夜、暗く静まった部屋で一人で考え事をして居るとどうしようも無い事ばかり考えてしまう。

何処ぞの眠れない鎧になってしまった少年錬金術師の気持ちがよく分かる。

 

 

これは精神衛生上良くない。

 

気分が悪くなる。

 

期限が刻一刻と迫っているのが分かるせいで、どうしようもない現実に頭がおかしくなりそうだ。

 

足掻けるだけ足掻いているが、どうせそれも微々たるモノだろう…。

 

最近は気を紛らわせる為にアイツに買って来て貰った色々な材料で小型魔道具の開発をしていたが一段落して暇になったら直ぐにコレだ。

 

 

また明日から別の魔道具の開発を始めるとしよう…。

 

空に浮かぶ赤い珠を見上げながらそう思った…。

 

 

 

 

 

 

ルーデウス視点

 

今日も今日とてエリスやギレーヌとあんなことやこんなことを(主に剣で殴り合ったり机の上で頭をなやまさせたり)しているうちにドキドキ深夜の魔術実技授業のお時間となった。

最近ではTRPGでエリスを釣らなくても授業を聞き始めてくれた成果か四則演算の割り算以外をほぼ完璧に習得してくれた。

彼女も順調に成長しているようで安心だ。

ギレーヌの心が冷え込む苦労話やTRPGのシナリオで追体験し、挙げ句苦労して育てた4代目エリスが迷宮の奥底で何も出来ずに飢え死にしてしまったのが効いたのだろう。

割り算の重要性が身にしみたらしい。

食料が尽きたあとモンスターを食料にしようともしたが餓死するまでエンカウントゼロだとは流石に俺も予想できなかった。

 

しばらくの間「サイコロなんて信じないわ!!」が彼女の信条になったのは言うまでもないだろう。

 

この調子で俺の方も分かりやすいスキルアップが出来ると嬉しいのだが、相変わらず老人にびしょ濡れにされているし、互角だった剣術も時々エリスに勝ち越される日があったりするしでままならぬモノだ。

 

少し疲れたので深夜の野原に寝転がり、満天の星空を見上げた。電気がないこの世界では星が驚くほどよく見える。

空を見ていると、そういえばと少し気になっていた事を思い出した。

 

「あ、そう言えば爺さんあの赤い珠みたいのって何かわかる?」

 

『…あまりに良いものだとは思わないが、知らん』

 

少し考えて老人はそう言った。

しかし、その声色や表情は嘘を言っている時のモノだった。

やはりなにかしら心当たりがあったりするのだろうか? それにアレが良いものじゃないとはどういう事だろうか…。

しかし、わざわざ嘘をついたのだ、答える気があるならこの老人は最初から嘘なんてつかない。

 

『ああ、そうだ話が変わるんだが、ちょっと頼みが有るんだ…』

 

赤い球を物憂げに見上げていた老人は改まった様子でコチラに目を向けた。

 

『この先の未来、もしも俺が消えたりした時、必ずやって欲しい事が有るんだ』

 

「まぁオレに出来る事なら…」

 

『お前はいつかこの先の未来で長い黒髪をした十代中盤位の女に会うはずだ。

いつかその女に会った時ソーカス草という薬草を渡しておいてほしい…』

 

と何やら予言めいた事を言う老人は非常に辛そうだった。

 

 

 




4ヶ月とか嘘やろ?
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