ザノバ・シーローンがそこに居たのだ。
もう一度言う、シーローン第3王子にして怪力の神子。人形狂いの王子がそこに居たのだ。
その時老人の頭の中は壊れたビデオテープを突っ込んだvhsプレイヤーの様にテープが絡まり。ギュルギュルと薄汚い音を立てながらガガガッガガガッッ!!!と色々な物にテープを引っ掛からせながら強制排出が行われたていた。
これまで用意していたプランが吹き飛び、なにかあれば国際問題しか呼ばないうえ、前回には居なかった不確定要素の塊の様な男を前に、哀れ。老人は思考の初期化を実行するしか無かった。
デレレレーレー。誠に残念ながら、老人のぼうけんのしょは消失してしまいました、サイショからやりなおしてください。
時間遡行を行った人物が必ず経験するであろうバタフライエフェクトとかカオス理論とかの事象が老人の前に現れたのだ。
思考の崩壊からの初期化も致し方なしだった。
しかし、老人の頭の中はvhsなど過去の物。最新外付けHDDのバックアップから情報を構成し直し思考を再インストールする事に成功した。
とってて良かったバックアップ
全く、バックアップは最高だぜ!!
え?今はSSDが主流?知るかバーカ!!
というわけですぐさま自我を取り戻した老人だったが…。
いや、待て、ほんとに待って、なんであいつココに来たの? 馬鹿なの? 死ぬよ?
ただでさえ もうあの日まで三カ月を切ってるのに面倒事を増やすな!! マイ・フレンド!!
一人、混乱し散らかしている老人を誰も観測出来る筈もなく。
一方で挨拶を一通り済ませたザノバはアイツへと向き会い会話をし始めた。何やら懐からいくつか物品を大事そうに持ち出し何かを確認しアイツが頷いた瞬間、突如感極まった様子でアイツを上空十数メートルへと放り投げた。
まるで新しい玩具を買ってもらった子供の様だ。
空中に放り出され、落下を開始したアイツと目が合った。
(タスケテ)
と瞳が語っていたが、重力魔術でなんとかしろ。とだけジェスチャーで伝える事に止める。
そこじゃねぇヒトデナシ、とでも言うかの様な且つ、絶望感を醸し出したあとは、しかし、助言通り重力魔法で自由落下を無効化し、アイツは即座にザノバから距離をとった。
そしてすぐさま五体投地で謝罪を始めたザノバにアイツ含めた周囲が少し引いている。
歯牙にもかけないのはサウロスやフィリップそしてギレーヌといった面々だ。
「申し訳ありません、師匠!! 貴方にお会いできた感動のあまり、つい!!」
「つい。で 、人をぶん投げないでください!僕じゃ無かったら死んでましたよ!!」
と言うか誰が師匠じゃ!!とブチ切れた。
どうやらアイツからザノバへの第一印象は最悪の様だ。
とは言ってもエリスへの第一印象から今の好感度への上昇率を考えれば基本的に従順なザノバに対して態度が軟化していくのにそう時間はかからなかった。
気付けば雛鳥の様にアイツの後ろをついて行くザノバとそれに着いていくジンジャー、そしてザノバに反抗する様にアイツの隣を陣取るエリスの姿が見られた。
ザノバにアイツを取られないようにするためだろう。
フィリップの差し金かはたまたエリス自身の意志かは分からないが、必死にアイツの気を引こうとしているエリスは可愛らしく見ていると気分が良くなる。
今改めて見てみると、当時は気付かなかったがこの頃からルーデウス・グレイラットへの恋心が芽生えていたのが見て取れたが、やはりアイツがそれに気づく様子は無い。
話進まねぇ、なんだこれ…。