彼の誕生日
5歳の誕生日、それはこの世界では特別な意味を持つらしい。
5歳10歳15歳の誕生日は盛大に祝うモノなのだ、80やそこらになってもなぜその歳だけが特別なのか、その理由今も俺は分かっていない。
その日アイツが何やら床の上に木の棒や魔石をバラ撒いてうーんうーんと唸りながら、あからさまな様子でこちらをチラチラと見てくる。
『何をしてるんだ?』
一応聞いておく、何をしているかなんて見れば丸わかりだが、聞いて欲しそうにしているので聞いておく。
「シルフの為に杖を作ってるんだ」
『? 作り方知ってるのか?』
今なら多少分かるが、この頃に杖の原理を理解していた覚えはないし、俺が教えた覚えもない。
「分からないので教えて下さい」
即答だった。
バシッと音が立ちアイツが絶叫を上げながら床を転がり回る。
「い"い"い"い"い"い!!」
俺は土魔術で作った金属棒に雷魔術を纏わせ頭を叩いたのだ、さぞや痛かろう。
『最初から何でもかんでも人に頼るな…、少しは自分で悩んで解決する努力をしろ』
最近のコイツは俺を頼り過ぎて弛んで来ているのが分かる。
確かにコイツに魔術師として色々な事を叩き込んで教師の様な事をしているが。
それで自分で解決する能力を失い俺の人形になられても困るのだ。
「ウウゥ、シルフがもうすぐ誕生日らしいから、杖でもあげたら喜ぶんじゃ無いかと思ったけど、ロキシーから貰ったのをそのまま渡すのも良くないと思うし…」
そう言われると弱い、シルフィはもうすでにコイツを意識し始めている。
恋ってなぁに?な感じだが他人から見れば、コイツを好いているのは明らかだ。
そんな奴から手作りの杖なんて貰ったらきっとベッドの上で小躍りする程喜ぶだろう。
「ルディから貰った杖♪ ルディから貰った手作り杖♪」
なんて言ってシルフィのお母さんに「家の中で魔術は使わないでね」なんて窘められて…
そんな事を妄想すると自然と口角が釣り上がる。
もう彼女達に触れる事すら出来ない俺だが、彼女達が幸せそうにしているのを見るだけで幸せな気分になる。
それの礎になるのならもう少し位コイツを甘やかしても良いんじゃ無かろうか?
「泣きながら笑わないでくれ、怖ぇよ…」
気付くとアイツがドン引きしていた。
無論 涙を流しても床に水が滴り落ちる筈も無く、言われて今初めて泣いているのに気付いた。
やはり、感情の変化が涙を流しているようにコイツに見せているのだろうか。
少しバツが悪くなりで頭をポリポリと掻いて俺は溜息をついた。
『仕方ないか…』
「じゃあ、教えてくれるのか?」
『教えてやるが、あんまり俺をアテにしすぎるな、俺だって何時までこうしてられるか分からないんだぞ?』
「分かってますよ、でも爺さんそう言ってなんやかんや…」
分かってなさそうなのでもう一回電気棒を生成し…
「うわっ!! それはもう勘弁してくれ!」
と飛び退いた所を生成を破棄し、重力魔術で捕獲しグルングルンと縦横無尽に回転させる。
三半規管の限界に挑まされた、コイツは宙空でゲロを巻き散らかした。
取り敢えず宙に浮いたゲロで窒息されても困るのでゲロだけ外へ投げ捨てておく。
そう言えばシルフィの誕生日が近いと言う事はコイツの誕生日も一ヶ月後になるという事だ。
何か送っ…
『って、オイ待て お前そもそもどうやって、その素材用意した』
コイツはまだパウロから金を貰っていない筈だ、この数ヶ月で行商人が村に何回も来ているのは知っているが、金も無いのにどうやって魔術杖の素材を掻き集めたのだろうか。
ギクリと身体を硬直させて、露骨に目を逸らす、まるで後ろめたい事があるように。
『まさか盗んだのか!?』
真っ先に思い付いたのはそれだった、杖の部分はそこ等の木でもと思いそうだが、魔石がそこらに落ちている筈がない、魔石はどんな安物でもアスラ銀貨一枚になる、ソレを捨てる馬鹿はいない。
目玉位のサイズを3個も用意している、盗める技術が有るだけにあり得る話だ。
「いやいやいや!これは盗んでない!」
そう言って、魔術杖の素材全てを指差す。
『これは?』
「あ、えーと、前に人体の構造を教えてくれた時に作ってくれた、あの精巧な人形があったじゃないですかソレをちょっと…」
「セットで売ったらアスラ金貨2枚になりましたなんて…ハハハ」
頭が痛くなった、
そりゃ、女 子供に男の戦士の身体について詳しく教えるために、精巧に作ってレクチャーし役目を終えたが、そのまま消すのも忍びなかったので、てきとうに保管したがまさかパクって売り飛ばすとは思わなかった。
油断し過ぎた。
しかも金貨2枚って俺の処女作のロキシー人形の倍だ。
もう2回同じのを売ったらラノア魔法大学にだって二人で入れる。
「やっぱり駄目でしたかね…」
と少し申し訳無さそうな顔をみて弛みきってると思ったコイツより俺自身をどうにかせねばと思った…。
余談だがシルフィの誕生日に彼女がスカートを貰っているのを見て、その日ようやく彼女が女の子だとわかったらしい。
思わず「お前女の子だったのか」と言ってその場が凍りついたのは言うまでもないだろう…