ようこそ天の御遣いのいる教室へ   作:山上真

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20話

 状況の進展は思いの外早かった。少なくとも、オレはもっと時間が掛かるだろうと踏んでいた。

 だが――

 

「何で……ッ!? 何でなんだよ雫!? 校則があるから、僕の言葉に返事が無いのも我慢してたのに! テスト期間だからって、会いたいのを我慢してたのに! 何だってそんなヤツと一緒にいるんだよ!? 手を繋いでなんかいるんだよ!?」

 

 現在進行形で目を血走らせたオッサンがオレと愛里の前に立ち塞がっているとあれば、嫌でも認めないわけにはいかなかった。

 如何に危ないことを口走っているとは言え、武道の心得がある様には見えない。ならば、無力化することなどオレにとっては容易いことだ。

 なので、北郷から借りた小型録音機の電源を入れつつ、取り敢えずは状況の確認から入ることにした。

 

「知り合いか、愛里?」

「えっと、どこかで見覚えが……。そうだ! 家電量販店の店員さん!」

「そうじゃない、そうじゃないだろ、雫!? あんなに君は、僕に笑顔を向けてくれたじゃないか!」

 

 愛里は悩んだ末に思い至ったようだ。この時点で、2人の関係性はそれほどでもないことは明らかだ。

 また、現在の愛里の恰好は普段のそれだ。伊達眼鏡をかけ、髪を結び、地味な雰囲気を放っている。一見しただけでは、彼女のもう一つの姿であるグラビアアイドル『雫』と結び付けることは不可能だろう。――にも関わらず、このオッサンは愛里に向かって雫と呼んだ。つまりは、それだけ彼女のことをよく見ているということだ。

 総合的に考えれば、このオッサンこそが雫のブログに妄言を書き込んだコメント犯で間違いあるまい。……が、所詮は状況からの推測に過ぎない。現段階でこちらから手を出してしまえば、お咎めはオレたちにも向くだろう。それは旨くない。

 幸い、愛里の言葉がお気に召さなかったらしいオッサンは、更にとち狂ったことを喚いている。

 なので、オレはそれに輪をかけることにした。

 

「あ~、なんかよく分からんが、取り敢えずそこをどいてくれないか、オッサン。愛里――オレの友だちも怖がってる」

 

 面倒くさげに、かつ迷惑そうに言いながら、オレは愛里と繋いだ手をさり気なく見せびらかした。

 

「あああああぁぁあぁぁ……ッ! お前えええええぇぇえぇぇ……ッ!」

 

 するとどうだろう。オッサンは雄叫びを上げながらオレに突っ込んでくるではないか。……まあ、元からそれを狙ったわけだが。

 

「おいおい、何だってんだよ一体? 逃げるぞ、愛里!」

「う、うん!」

 

 困惑した態を装いつつ走り出す。

 何故ならこの場には監視カメラがないからだ。敷地内の至るところに存在しているとは言え、やはり設置されてない場所や死角というものは存在する。……オッサンにも、ある程度の理性はあったということだろう。

 オレだけならば軽く走っただけでもオッサンを置き去りにしてしまう可能性があったが、握った手の先にいる愛里の存在が必然的にブレーキを掛けさせる。それがいい塩梅となり、オレたちとオッサンの距離を一定に保たせた。

 オレと愛里の手が繋がれていることにより、オッサンは平常心を失った。更には愛しの雫が自分から逃げていることもあり、更なる視野狭窄に陥った。……そうなってしまえば、手玉に取ることなど実に容易い。

 一定距離を保ったまま、オレたちは監視カメラの、そして人の目に触れる場所まで逃げてきた。戸惑いの表情で逃げる高校生男女2人組と、奇声を上げて追いかけるオッサンだ。どうしたって人目は惹くし、どちらが悪人かなど状況的に明らかだ。

 まして、そこそこの距離を走ったために愛里の息は荒くなり、体力も限界を迎えようとしている。オレはまだまだ余裕だが、それに合わせて速度を落とす。

 

「頑張れよ、愛里……ッ!」

 

 などと、一言を付け加えて。 

 地味な格好をしているとは言え、愛里は女の子だ。雄叫びを上げて追い縋ってくる奇人に追い付かれた場合どうなるかなど、想像するに容易い。平常であれば『有り得ない』と一蹴するような考えも、オッサンとオレたちの様子が楽観的な判断を下すのを妨げる。

 加え――

 

「生徒会の者です! その男を止めるのを手伝ってください!」

 

 オッサンの後ろから華琳の一声が掛かれば、学生然り社会人然り、聴衆たちが善意の協力者へと変化するのは自明の理。

 そう、ここまでの流れはほぼほぼオレたちの筋書き通りだ。

 今頃、別方面で囮役を務めていた堀北と生徒会長、北郷と波瑠加もこちらへ向かっているだろう。……囮の本命は愛里だが、流石に犯人の行動を完全に予測するのは難しかったため、次点の囮たる堀北と波瑠加とは別行動を取らざるを得なかったのだ。

 同時に『学校も雫にはきちんと気を配っていた』という体裁を整えるため、生徒会長と副会長たる華琳も手分けしてオレたちについていたわけだ。

 波瑠加と堀北は友人で、堀北と生徒会長は兄妹であり、生徒会長と北郷は親友である。その事実関係を知っていれば、4人で行動していてもそうおかしなことではない。また、事実を知らない者にとっては、2組のカップルと見られる可能性もある。

 この『カップルに見られる』というのが重要なのだ。妄言を書き込むような人物が、愛しの雫が男と仲良く出歩いているのを見ればどうなるか? 十中八九に何らかの行動を起こすだろう。直情的な行動に出てくれれば、早期解決を図る上では尚ありがたい。

 その様な意図の下、オレもまた愛里と連れ立って歩いていたのだ。……ただ、そうなると人数的に華琳があぶれてしまうため、彼女は離れた所から俺たちを監視していたわけだ。タイミングよく華琳の声が響いたのも必然である。

 

「おい、あの男を取り押さえるぞ!」

「警察を呼べ、警察を!」

 

 華琳の一声により、『生徒会のお墨付き』という大義名分を得た協力者たちはそれぞれに動き出す。ガタイのいいヤツらはオッサンへと向かい、そうじゃなくても警察を呼んだり、オレたちを囲ってバリケードになってくれたりと様々だ。……実にありがたい。

 

「どけえええええぇぇ……ッ! 邪魔をするなあああああぁぁ……ッ!」

 

 オッサンも思いっ切り抵抗したが、所詮は武道の心得もない凡人だ。数の暴力には勝てず、その身を取り押さえられることとなった。

 やがて警察が到着し――

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「とまあ、その様な流れで件の男は御用となった。また、ここという特殊な環境に加えて様々な証言、更には佐倉から提出された参考品のこともあり、即座に男のことは調べられた。そしたらまあ、出るわ出るわだったそうだ。

 以前も言った通り、敷地内にある店はどれもこれも『大手』だ。ポイントカードといった会員サービスがあるのは、半ば必然と言っていい。佐倉にとって不運だったのは、それに登録してあったことだな。犯人はそこから佐倉の個人情報を調べた、というわけだ」

「そうだったんですね。誰かに教えたこともないのに、おかしいとは思ってたんですけど……」

「ともあれ、犯人は捕まったのだ。ここから先は上の仕事であり、俺たちに情報が下りてくることは基本的にあるまい。……まあ、話の推移次第ではどうなるかも分からんのは確かだから、特に佐倉はいつ呼び出されても大丈夫なように心構えだけはしておけ」

 

 数日後。

 朝も早くから生徒会室に呼び出されたオレ、北郷、華琳、堀北、波瑠加、そして愛里は、生徒会長からそのような報告を聞かされた。多少なりとも関わった以上、説明責任があるらしい。

 中間テストが金曜日。それから土日を挿んで、月曜日の放課後には件の騒動だ。既に6月は迎えてしまったが、ストーカー事件としてはスピード解決と言っても過言ではないだろう。策が上手くはまった形になる。

 オレが愛里の相手役に選ばれたのは単なる消去法だとばかり思っていたのだが、どうやらそれ以外にも理由があったらしい。

 波瑠加によると、オレは1年生女子による『イケメンランキング』と『根暗そうランキング』で上位に入っているそうだ。……そう聞けば然もありなん。自分でも納得が出来てしまった。

 イケメンであっても根暗そうな男が――人目のないところ限定とはいえ――愛里と手を繋いでいるのだ。その行為はこれ以上ないほどにオッサンを煽ったことだろう。

 まあ、役得もあったから別にいい。……そう思えるほど、愛里の手は柔らかかった。

 不思議なものだ。異性との接触など施設にいた頃から何度となく行っていたというのに、今までそんな風に感じたことは無かった。

 環境が変わったからか。それとも愛里が特別なのか。

 ともあれ、あの柔らかさを体感すれば、なるほど、男子たちが女子に熱中するのも理解出来るというものだ。

 

「あとはこの誓約書にサインしてもらえばお開きだ。……他言されては困る、というわけだな」

 

 それは至極当然のことであり、誰もが拒むことなくサインを入れる。取り敢えずは、これで愛里のストーカー問題については解決だ。……まあ、実際のところ解決と言うには後始末なりがまだまだ残っているようだが、それはオレたちが直接関われるようなものじゃない。ならば、解決したと判断しても構うまい。

 今日は朝のホームルームで中間テストの結果が発表される。そのこともあり、こんな時間に呼び出されたのだろう。

 CPに関しては、変化は無いに等しかった。先月より若干下がったが、それでも700ポイントを下回ってはいない。十分に誤差の範囲内と言える。

 当初、中間テストの結果が今月のCPに反映されると思っていたのだが、期待に反し、5月中に結果が発表されることはなかった。それがようやく発表されるのだ。ある意味では、『待ちに待った』と表現しても間違いじゃない。

 生徒会室を退室したオレたちは、どんな結果になっているかを話し合いながら、和気藹々と教室に向かっていた。オレ自身は満点の自信があるが、過去問と解答のおかげで、愛里や波瑠加も高得点の自信があるらしい。自己採点が正しければボーナスポイントが貰えそうだ、と笑顔で語っている。

 確かにお金は大切だ。生活する上で欠かすことは出来ない。……だがオレには、そんな当たり前のことじゃなく、それ以外のことで2人が喜んでいるように見えた。

 

「清隆くんも、ありがとうね。今回のこともだけど、勉強を見てもらったこと。授業よりも分かりやすくて、だから余計に身に着いた気がするんだ」

「そうそう、本当に分かりやすかったからさ。……キヨポンって、案外教師に向いてるんじゃない?」

「それは……どうだろうな? オレはまだ、感情ってやつがよく分かっていないから。――ただ、2人の勉強を見ていた際、オレも思い出したことがある。

 施設には嫌な記憶しかなくて、普段なら思い出すことも苦痛だったんだが、その時は違ったんだ。その理由は今もってよく分からないが、巡り巡って2人の役に立ったんだとしたら、オレの過去にも意味がある。……それはきっと、とても喜ばしいことだと、オレは思うんだ」

 

 愛里と波瑠加から礼を言われたオレは、そんなことを言っていた。考えての言葉じゃない。気付けば勝手に紡いでいたのだ。

 その事実に困惑するも、不思議と嫌な気分じゃない。

 そこで、ふと気付いた。

 オレを見る周囲の顔が驚きの表情を浮かべている。愛里に至っては、心なしか頬が赤らんでいるように見えた。

 

「いい笑顔を浮かべるじゃないか、綾小路。これも青春だな!」

「笑っていた? オレがか?」

 

 北郷が笑いながら肩を組んでくる。……が、そんなことよりも、オレはその言葉に驚いていた。

 基本的に、笑顔とは感情の発露によるものだ。自発的に笑みを浮かべる作り笑いなどもあるが、オレはそんなことをした覚えはない。

 ならば、考えられる可能性は一つ。

 オレの感情が高まった結果、意図せぬところで笑みを浮かべたのだ。

 

「うん、とってもいい笑顔だったよ! 残念だな、シャッターチャンスを逃しちゃった」

 

 愛里が笑顔でそんなことを言ってくる。両の手は顔の前に持ち上げられ、カメラを持っているようなポーズを取って。

 その笑顔と仕草が、愛里にはよく似合っていて。

 

「……そうか。どうやらオレはシャッターチャンスを逃さなかったようだ」

 

 気付けば、オレは携帯で愛里を撮っていた。

 

「まあ、素人故に出来は散々な様だが……」

 

 手ブレが酷く、狙いもいまいち。これでは折角のチャンスも台無しだ。それでも、愛里が笑っているのだけは辛うじて分かる1枚となっていた。

 

「も、もう~撮るなら言ってよ。恥ずかしいなぁ」

 

 恥ずかしがる愛里が、殊の外可愛く思えた。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「さて、お待ちかねの結果発表だ」

 

 教室に入るや否や、茶柱はそう言った。

 CPや小テストの結果発表と同じように、白く大きな紙が黒板に貼り付けられる。

 小テストの時とは異なり、今回の並びは五十音順。つまりは出席番号順の様だ。5科目それぞれの点数が算出される以上、それが最も簡単なのだろう。

 そのため、オレの名前は簡単に見つけられた。何せ名字が綾小路だからな。結果は想定通り、5科目全て100の数字が並んでいる。

 

「いやはや、正直に言って驚きだよ。小テストからは考えられんほどの高得点だ。それが1科目だけならまだ理解出来ないわけでもないが、誰も彼もが大幅に点数を上げている。複数の科目で満点を取った者も少なくはない。……まあ、そもそも上がりようのない例外も中にはいるがな。

 赤点を取った者も誰1人としていない。本当に素晴らしいよ。この調子で7月の期末テストも乗り越えてもらいたいものだな。

 さて、それでは約束通り、90点以上を取った者にボーナスポイントを配布しよう、と言いたいところだが、流石にこれほどの人数は私としても想定外だ。よって、今すぐの配布は難しい。……心配しなくても今日中には配布するから、そう不安そうな顔をするな。これでも担任だからな。お前たちの頑張りには素直に感激しているとも」

 

 茶柱の言葉通り、10人以上もの生徒が複数の科目で満点を取っている。少し点数が下がり、90点台を取っている者も少なくはない。中には50点台や60点台の者もいなくはないが、普通に考えれば小テストからはとても考えられない結果だろう。感激するのも無理はない。

 だが、そう宣う茶柱に浮かんでいるのは挑発的な笑みである。とてもじゃないが感激している様には思えない。……まあ、所詮今回の中間は裏技ありきの出来レースだからな。教室に監視カメラがある以上、オレたちが裏技を用いたのは学校側も了承済みの筈で、それでこの結果を素直に喜んでたら教師として失格だろう。

 裏技に気付けるだけの実力があることには喜んでいるかもしれないが、本来測られるべき学力という点では信用の置けない結果なのだから。

 

「例年通りであれば、中間の結果発表でホームルームは終わりなんだがな。今回はそうもいかない理由がある。……今から資料を配布する。お前たちにも非常によく関わってくるものだから、よくよく注意して聞くように」

 

 表情を真剣なものにして茶柱が言った。

 それだけ、これから配られる資料とやらには重要なことが書かれているのだろう。

 茶柱の雰囲気に当てられたか、騒がしい生徒たちも自ずと口を噤んだ。

 

「さて、全員に行き渡ったな。届いてない者はいるか? ……いないようなので進めさせてもらう。

 生徒会からの申請により、今月から新たな制度がSシステムに加わることになった。この資料はそれについて説明されたものだ。本来であれば今月の1日から実施される予定だったのだが、学校側でちょっとしたゴタゴタがあったようでな。末端の私には詳しい説明は下りてきていないが、それに伴って実施も後回しにされたらしい。

 タイトルを見てもらえば何となくの想像はつくだろう? 『クラストレードシステム』。それこそが、今回新たに加わった制度だ。……正確に言えば、以前からあった制度に手が加えられた形だな。

 お前たちも知っての通り、2千万ポイントさえ用意すれば個人でのクラス移動も可能となる。見方を変えれば、これは『金銭トレード』と言えるだろう。今回の制度の発案者によれば、『金銭トレードがあるのなら、他のトレードがないのはおかしい』そうだ。まあ、言われてみれば然りだな。

 そして協議の結果、多くの者がトレードと聞いて真っ先に思い浮かべるであろう『人同士の交換』が組み込まれることになったわけだ。それに伴い、以前からあった2千万ポイントでの移動を正式に『金銭トレード』と称し、今回組み込まれた部分を『交換トレード』と称することに決まった」

 

 資料にズラズラと書かれている内容が、茶柱によって分かりやすく説明されていく。

 これにより、オレは以前に堀北が言っていたことがようやく理解出来た。タイミング的に、これを発案したのは華琳に間違いないだろう。こうなるとは知らなくとも、何かしらが華琳によって起こされると堀北は踏んでいたのだ。

 交換トレードを行う場合、一切のポイントは必要ない。その時点で金銭トレードとはえらい違いだ。そこだけを聞けば夢と希望に溢れている。――だが、そんな優しいだけのものが新たな制度として組み込まれる筈もなかった。

 

 ・トレード希望者は、基本的には月初めの1週間以内に、己が意思でその旨を申請しなければならない。そしてそれは、必ず朝か帰りのホームルームの時間でなければならない。……なお、長期休暇明けなどの場合、時期はズレるものとする。また、強制的な申請であると判断された場合、対象者には罰則が適用されるものとする。

 ・申請があった場合、翌日の朝には希望先のクラスに担任からその旨が伝えられなければならない。

 ・伝えられた生徒たちは、それから一定期間内に結論を出さなければならない。……なお、期間は申請件数により前後するものとし、最短で当日中とする。

 ・申請を受け入れる場合、必ず代わりの誰かを送らなければならない。希望者がいればその者とするが、いない場合は多数決で決めるものとする。……なお、部活動参加者はそちらへの参加を優先しても構わないが、その場合、意見は通らないものとし、結果への異論も受け付けないものとする。

 ・トレードが成立した場合、翌日からクラスの入れ替えが発生し、当月中に再度トレード対象になることは不可能とする。

 ・申請件数の上限はないが、成立は一つのクラスから月に先着3名までとする。

 

 箇条書きで並べられた内容だけでもそれは明らかだ。

 クラスメイトの前で表明しなくてはならないのだ。トレードが成立した場合はまだしも、不成立だった場合、その生徒は針の筵となるだろう。

 トレードが成立して送られてきた生徒に対しても同様のことが言える。その生徒がスパイでないと、どうして言えるだろうか。

 だが、そういった不安要素を加味しても、それを凌駕するほどの旨味がこの制度には存在する。利用する者は間違いなくいる筈だ。

 しかし、これはどちらかと言えば2年や3年に向けてのアピールだろう。

 オレたち1年は入学してまだ2ヶ月ちょっとしか経っていない。他クラスの生徒と交流を持っている者も中にはいるだろうが、『実力を知っているか』と訊かれれば首を傾げる者が大半の筈だ。

 何故ならば、オレたちはまだ他クラスに対して大々的に実力を披露する機会に恵まれていないからだ。こんな状態では、よほどの理由でもないと1年の間でトレードが成立することはないだろう。

 ざわつくクラスメイトを余所に、オレは1人トレードシステムに対する結論を出していた。




おや、綾小路の様子が……?

ストーカーについてはこんな感じで、敢えて大衆の目に触れさせての捕り物劇となりました。

あとはトレード制度を突っ込みました。ポイントで移動出来るなら、人同士の交換で移動出来てもいいだろと。
初期のクラス分け――つまりは学校側の評価が絶対じゃないことは、他ならぬ学校側が認めています。
また、『可能性』という一点において、全生徒は同格です。
更に言えば、どうにかして有栖やひよりを早く一刀と同じクラスにしたかった。
それらが絡み合った結果ですね。

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