このSSは天子と衣玖さんの出会いを描いたものとなっております。
少しだけガールズラブ成分を入れました。
オリジナル設定も少し多いです。

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今回初めてSSというものを書かせていただきました、赤雛菊と申します。
いろいろと拙い部分が目立つと思いますが、ご感想やご指摘など頂けたら幸いです。
読んで楽しんでいただけたらそれ以上の幸福はありません。
どうぞよろしくお願いします。


では、ゆっくりしていってね!


不良天人の『相談役』

「あぁ、こんな所にいらしたのですか。総領娘様」

 

「……何の用よ衣玖、人をいきなり起こして」

 

 現世とは隔絶された人と人ならざる者たちが住まう土地、幻想郷。

 

 その中でも上空に位置するここ、天界の片隅にある草原で天人・比那名居天子はその従者である竜宮の遣い・永江衣玖にその眠りを妨げられ、不服を訴えた。

 

「『何の用』じゃないですよ、また勝手に緋想の剣を持ち出して。名居様がお怒りですよ?」

 

「別にいいじゃないの、少しくらい。昔から何回もやってることだし、他に使う奴もいないでしょ?」

 

「駄目です。この前の異変のときだって剣の力に頼って油断した挙句、逆に霊夢たちに気質の力を利用されて痛い目にあったじゃないですか。」

 

 ――緋想の剣。

 

 「気質を見極める程度の能力」を持ち、天人にしか扱うことができないといわれている道具である。

 

 今から三ヶ月ほど前、この剣と地震を鎮める力を持つ『要石』を持った天子は「退屈しのぎ」のためにある異変を起こした。

 

 まず、自分の『大地を操る程度の能力』を用いて幻想郷の最東端に位置する博麗神社に局所的な大地震を起こし神社を倒壊させた。また、それと同時に剣の力で大地を目覚めさせ大地震を起こさせる効果を持つ緋色の雲や、各人の周辺のみ特定の天候になるという異常気象を起こさせた。

 

 しかしこれらの異変は全て、天子が「異変を起こすことによりそれを解決しにきた敵と戦う」ためのいわば『異変解決ごっこ』をするためのものであった。

 

「あー、そんなこともあったわね……。でも今回は異変を起こそうってわけでも無いしいいじゃないの」

 

「だからと言って剣を持ち出してもいい理由にはなりません。早く名居様のもとへ剣を返しに行きましょう。じゃないと『アレ』、してあげませんよ?」

 

「まったく、衣玖は相変わらずお堅いわね……。わかったよ、返せばいいんでしょ返せば。今日はもう剣を使うようなこともないしいいわよ」

 

 そうぶっきらぼうに言いながら不良天人は起き上がり、気怠そうに背伸びをした。

 

「……でも、だからこそ信用できるのかもね、衣玖のこと」

 

「はい? 何かおっしゃいましたか?」

 

「何でもないよ。ほら、行こう?」

 

(もうどれくらい経ったのかしらね。最初に衣玖と話したのもここだったな……)

 

 ――不良天人と空気を読む竜宮の使い、一見すると少し奇妙な組み合わせの二人。これはそんな少女たちの出会いを描いた物語。

 

 

 

 

 ――今から数百年前のことである。

 

 そのころの地上ではある一族が天人になろうとしていた。その一族の性は「名居」といった。この名居一族は代々天に仕えてきた上級神官の家系であり、その功績が天に認められ天に昇ることを許されたのである。

 

 それと同時にこの名居一族に仕えていた下級神官の家系である「比那名居」一族もいわばおまけのような形で天人になることを許された。

 

 この比那名居家にはある一人娘がおり、その名を「地子(ちこ)」といった。地上にいたころの彼女は年齢に相応した少女として日々を過ごしていた。だが、名居一族とともに比那名居一族が天人となったことで彼女のそうした生活は変わった。

 

 まず、地上の穢れを彷彿させるという理由からその名を「天子(てんし)」と改名した。また、今までは退屈などというものを感じることさえ無かった彼女の生活は酷く面白味のないものへと変わってしまった。

 

 というのも、天人の暮らしというのは働く必要も悩む必要もなく、毎日飲んで歌って踊って暮らすという大人の人間たちにとっては夢のような生活であった。しかし、逆にそれくらいしかすることのない生活は元々人間の少女である彼女にとってただの味気のないものでしかなかった。

 

 そんな日々を過ごすなか、天子はとうとう日頃の鬱憤をはらすかのようにある行動をおこした。

 

 それは名居家の屋敷にあった『緋想の剣』を持ち出すというものであった。そして剣の力を用いて他の天人に対して悪戯をしかけたり、気質の力を利用して天界には降るはずのない雨などを降らせたりした。

 

 そのうち、彼女に手を焼かされる周囲の天人たちは、彼女のことを「不良天人」などと呼ぶようになっていった。

 

 ――そんなある日のことである。

 

「本日から比那名居様に仕えさせていただくことになりました、竜宮の遣いの永江衣玖と申します。以後、お見知りおきを」

 

 父である非想非非想天が新しい従者を連れてきたのである。

 

 紺色の美しいセミロングの髪にリュウグウノツカイの触覚のようなリボンがついた黒い帽子、背にまとった天の羽衣とそれに似たひらひらとしたロングスカートを身につけ、顔は美しく整っていた。

 

 そして衣玖は天子の方を向き、

 

「貴方が総領娘様ですね、総領様からお話は伺っております。どうぞよろしくお願いします」

 

 と言ったが、天子はその美しい微笑みに見とれて返事をすることができなかった。

 

 

 

 

 衣玖が比那名居家に仕えるようになって数日、少し衣玖のことが気にはなっていたものの、あれから特に天子は衣玖と話すこともなくまた自由奔放に振る舞っていた。その日は緋想の剣を持ち出し、天界の片隅にある草原へと赴いていた。

 

 特にすることもなく近くに生えていた大きな桃の木を呆然と眺めていると、突如、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「あら、総領娘様ではありませんか。奇遇ですね」

 

 あの日見とれた美麗な顔立ち、忘れるはずがない。衣玖だった。

 

「衣玖さん……だったっけ? 貴方はどうしてここにいるのよ?」

 

「衣玖でよろしいですよ。私は少し空気を吸いに来ただけです。総領娘様はどうしてここに?」

 

「私? 特に理由なんてないわよ、ただの暇つぶし」

 

「なるほど、つまり『剣を持ち出そうとしたら名居様に見つかり、剣を持ったままここに逃げてきた』、ということですか」

 

「っ……、なんで衣玖が知ってるのよ?」

 

「ふふ、私の能力は『空気を読む程度の能力』ですよ? サトリ妖怪のように心を読むというところまではいきませんが、これくらいなら容易いことです」

 

(そんな能力聞いてないわよ……)

 

 微笑みを浮かべながらそう答えた衣玖に対し、天子は心の中でぼやいた。

 

「よろしければお聞きしたいのですが、どうして総領娘様は剣を持ち出したり、その力を悪戯に用いたりなさるのですか?」

 

「……唐突ね。なんでそんなこと聞くのよ」

 

「いえ、以前総領娘様のお噂を小耳にはさみまして。ですがこのように直接総領娘様とお話しするのは今回が初めてだったのでお聞きしました」

 

「そういえば確かに衣玖と話すのは初めてよね……。別に大した理由じゃないよ?」

 

「差支えないのならぜひお願いします」

 

「なら立ち話もなんだし、少し座ろうか」

 

 二人は桃の木の下へ移動し、腰をおろした。

 

「衣玖、いきなりだけど貴方は天人の暮らしをどう思う?」

 

「天人の暮らし……ですか? 我々のような身分の低い者たちとは違って苦労も無く毎日困ることもない、言うならば『楽園の生活』……でしょうか」

 

「『楽園』、ね……。確かにそうかもしれない」

 

 天子は立ち上がると木に生えていた桃を一つもぎ取り、それを食べながら言った。

 

「でもね、少なくとも私にはそうは思えなかった。私たち比那名居一族と私たちが代々仕えてきた名居一族が元は人間だったのは知ってるよね?」

 

「はい、存じ上げております。名居様の功績が認められた際に総領娘様たちも天人になったとか」

 

「ええ、そうよ。そして元々人間だった私にとって天人の暮らしなんて地上にいたころと比べればただの怠惰で、つまらないものでしかなかった」

 

 桃をかじりながら天子は再び地面に腰をおろした。

 

「地上にいた私は退屈なんてもの知らなかった。屋敷は今とそんなに変わらないけど、そこから一歩外に踏み出せば面白いものがたくさんあった。里の友達や仲間と日が暮れるまで遊んだわ。身分なんて気にもせず、それこそ自分が上流階級だなんて自覚さえなかった。みんなで道を歩く人に悪戯を仕掛けては怒られたりもした。屋敷で堅苦しい作法を学ぶのがいやになって、仲間が通っていた寺子屋に勉強しにいったこともあったっけ」

 

 半分ほど桃をかじった天子は少し遠くを見るような眼をしてからまた語りだした。

 

「でもそんな生活も長くは続かなかった。一族みんなが天人になって、天に昇ることになったわ。当然私は拒否した。地上のみんなと離れたくなかったからね。でもお父様たちは許してくれなかった。そして今まで『地子』と名乗っていた私は今の『天子』、天人の天子としてこの天界に暮らすことになった」

 

 まあ名前は今の方が気に入ってるからいいんだけどね、と付け足しまた話を続けた。

 

「それからの毎日は起伏のない、つまらないものだった。お父様や一族のみんなは酒に浸っては踊ったり遊んだりして私のことなんて目もくれなかった。私自身は天人になっていたから生きる上じゃ困らなかったけどね。昔のように遊んだりふざけあったりする友達や仲間なんていない、勉強をする寺子屋なんてない、そもそも働いたり学んだりする必要なんてない。ただ怠けて日々を暮せばいい。そんな生活に嫌気がさすのに時間なんて必要なかったわ。そんなときに私はこの『剣』に出会ったの」

 

 微笑んだ天子は少しだけ楽しそうに話した。

 

「お父様の付き添いで名居家の屋敷に飾られていたこの緋想の剣を見たとき私は久々にあのころの気持ちを思い出した。もちろん、名居様には剣には触れないように言われていたわ。でもそんなこと関係なしに私はこの剣を手に取って、持ち出していった。そしてまたあのころのようにいろんな人たちに悪戯をしかけたわ。とても楽しかった。まるであのころに戻ったみたいだった。私の中の空っぽだった何かをこの剣は満たしてくれたの。さすがにそのあと名居様にお叱りを受けたけどね。それでもまたこの退屈感を満たすために剣を持ち出した。それからずっと今も剣を持ち出しては悪戯をしたりしているわ。そのうち他の天人に『不良天人』だなんて呼ばれるようになったけど何故か本気で糾弾されたことはないのよね……、名居様も剣が勝手に持ち出されないように対策をしたりしたことはないのよ?」

 

 桃をいつの間にか食べ終わっていた天子は、「剣を持ち出したりする理由はこんなところかな」と付け加えて話を終えた。

 

「そのような理由でしたか……。私の能力もまだまだのようですね」

 

「あはは……、でも衣玖はいい従者だと思うよ。こんな話誰にも話したことないし、最後までちゃんと聞いてくれてたみたいだし……」

 

「そう言っていただけると仕える身としてもうれしい限りですよ。それにしても、『誰にも話したことがない』ということは、この話を知っているのは私だけ、ということでしょうか?」

 

「まあそうなるわね。それがどうかした?」

 

「いえ、先ほど申し上げました通り、私は総領娘様とお話したのは今回が初めてですからなぜそんな私めに話しいただけたのかと」

 

「ああ、それね。実は私もよくわからないんだけど、衣玖になら話していいかなって思えたのよ。まるで昔の仲間たちといるような……、貴方といるとそんな気持ちになれたの」

 

「それは遠回しな告白と受け取ってよろしいのですか?」

 

「こッ……! 違うわよ!」

 

「ふふ、冗談ですよ」

 

「はあ……、まったく。こんなやつ信じてあんなこと言うんじゃなかったわ……」

 

「でも私を信じてくれていた、というのは素直にうれしいですよ。そうですね、私も何かお礼ををしなくては……」

 

「別に礼なんていらないよ? もらうほどのことなんてしてないし」

 

 そんな天子の言ったことなど聞かず、衣玖は唐突に口を開いた。

 

「では私が総領娘様の『相談役』になりましょう」

 

「相談役? どうしてそんなものを選んだの?」

 

「先ほど総領娘様さまは私といると『昔の仲間たちといるような気持ちになれる』とおっしゃいました。日頃の退屈による不満を私と相談することで少しでも解消していただけたら、と思いまして」

 

「うーん、まあ面白い発想ね、気に入ったよ。じゃあこれからお願いできる?」

 

「もちろん、喜んで。その代わりと言ってはなんですが、剣を持ち出して悪戯をする回数を減らしてはいただけませんか?」

 

「努力はしてみるよ。じゃあそろそろ行こうか、衣玖。今日もそろそろ剣を返さなきゃだしね」

 

「ええ、これからもよろしくお願いします、総領娘様」

 

「こちらこそ」

 

 ――そうして不良天人と空気を読む竜宮の遣いは屋敷へ向け草原を後にした。夕日に二人の少女の姿が照らされる。その二人の姿はまるで仲良く家に帰る親友のようであった。

 

 

 

 

 いつものように従者に連れられて剣を本来の主に返した不良天人は、聞き飽きた説教を聞き流しながら昔のことを思い出していた。しばらくして解放された天子は自分をここに連れてきた従者である衣玖と合流し、比那名居家の屋敷に向かいながら話し合っていた。

 

「総領娘様も昔よりは悪戯が減ったとはいえ、相変わらず何をするのか予想がつかなくて困ります」

 

「あはは、その程度の空気の流れも読めないんじゃ衣玖の能力もまだまだだね」

 

「私は皮肉を言っているつもりだったのですが……。もういいです……」

 

 呆れてしまっている衣玖に、天子は思い出したかのように話しかける。

 

「あ、衣玖。帰ったらまた『アレ』、よろしくね?」

 

「もちろん、わかっていますよ。今回はどんな相談ですか? また前みたいに某中華料理レストランについての相談はやめてくださいね?」

 

「あれは仕方ないじゃない、みんな私の帽子のこと『バー○○ン』って言ってくるんだよ?」

 

「まあそう興奮なさらずに。早く帰りましょう?」

 

「そうね、相談したいこともいっぱいあるし……」

 

 夕日に二人の少女の姿が照らされる。その二人の姿はまるで仲良く家に帰る親友のようであり、仲睦まじい恋人のようでもあった。

 

「これからもよろしくね? 私の『相談役』さん」




ガールズラブを少し混ぜたかったのですが思うようにいきませんでした……
さて、いかがでしたでしょうか。
初めて小説を書いたのでお見苦しいところも目立っていたかもしれません。
そういうときは感想欄でぜひご指摘ください。
また、「面白かったよ!」という方、本当にありがとうございます。
差支えなければでよいのでご感想など頂けたらな、と思います。

みなさん、こんな稚拙な文章をお読みくださり本当にありがとうございました。

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