ある日、傷だらけの狐を拾った。   作:嘘吐き

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 コヤンスカヤの小説少ないからザックリ短く書いてみました。


狐を拾いました

 

 俺の名前は森崎守(もりさきまもる)

 何処にでもいるような普通のサラリーマンだ。月給の高い会社で働き、週五仕事してはお金が貯まっては旅行を繰り返す特に珍しくもない普通の人間だ。

 

 彼女なし、童貞、スペックはやや高いと、まあ現代社会をフツーに生きるだけのフツーの人間だ。大事な事なので2回言った。

 

 まあ、何もない。

 やる事もなければ、目標もない。ただ与えられた仕事をこなして、ストレスの溜まった日々を趣味で消費する。そんなありきたりの人生を生きている俺だが……

 

 

「おい妲己、稲荷寿司とカレー、どっちがいい?」

「稲荷寿司でお願いします♪」

 

 

 まさか拾った狐が超絶美女になるって、どんなありきたりな人生なのか説明してほしい。

 

 

 ★★★★★

 

 

 今日は雨だった。

 会社帰りの満員電車を降り、駅からアパートまで傘差して歩いて帰る。今日は疲れたから酒でも飲みたいと思い、コンビニでチューハイと日本酒をいくつか買ってごーまいほーむである。

 

 枝豆と牛すじ煮込みは外せない。

 帰ったらだし巻き卵作って一杯やろう。

 

 

「ん?」

 

 

 突如、足を止めた。

 俺の前に血だらけの狐が倒れていた。車に轢かれたのか、所々に切り傷があって、雨で血が更に広がっている。いや、もう死んでいるのか?

 

 

「っ、まだ生きてんのか」

 

 

 とは言え、死にかけだ。

 手足が少し動いているが、もう少しで死んでしまいそうなくらいに重傷だ。

 

 

「次にこの道通った人がどうにかしてくれんだろ」

 

 

 俺じゃどうしようも出来ない。

 精々見て見ぬフリさせすれば厄介な事にはならない。連れ帰って死なれたらもっと面倒になる。そう言う意味じゃ見て見ぬフリが正解なのだろう。恨むなら、轢かれた自分を恨んでくれ。

 

 そう、心の中で言い訳を並べて足を運ぼうとしたのに……

 

 

「………あー、くそっ」

 

 胸糞悪い。助ける気なんてサラサラなかったのに、素通りした道を逆戻りして血だらけの狐を鞄に入っていたタオルで包み、小走りでアパートに向かった。

 

 見て見ぬフリして呪われるよりはマシだ、と助けた言い訳を愚痴りながら傘を閉じて両腕で狐を抱えてずぶ濡れになりながらも俺は走っていた。

 

 

 ★★★★★

 

 

 寒い。寒い。寒い

 

 そうだ、私は敗北したのだ。

 あの忌まわしき人類に、勝てる筈だった。万全を期して、自分の全てを以てカルデアと戦って負けた。

 

 身体が崩れていく。

 霊核が崩れ、身体が維持できなくなって、やがて声まで失った。呪う事も、罵倒する事も、そして何も出来なくなる。

 

 人類悪は壊れてしまえば次はいつ現れるのだろう。

 終末装置なんてものが簡単に現れるほど世界は容易くない。

 

 暗闇に落ちていく、獣としての座を維持出来ず、私の力は全て失われていく。

 

 

 ああ、愛玩の獣が消えていく。 

 私の全てが……無に消えていく。

 

 なんともまあ、寂しい最期なのでしょう。

 目的も果たせず、人間を愛すことも憎むことも中途半端に終わって。

 

  

 呆気ない最期……笑えますね……

 

 自虐に吐いた言葉は宙を舞って消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ここ、は?

 気が付けば私は毛布の上に居た。

 

 知らない天井、知らない部屋、そして知らない人の匂いが鼻を刺す。明かりはついていて、身体を見渡すが私の身体は霊核を失って狐の姿になっていた。

 

 獣の残滓があったのか、身体は維持出来ている。だが単独顕現というスキルは最早スキルと呼んでいいのか分からないくらいに崩れて壊れていた。まあ精々、この小さな狐姿を維持する程度のお粗末なものだ。期待できるほど強くもない。

 

 包帯が至る所に巻かれていた。

 右足、左腕、お腹や頭にも巻かれて、意外と的確な処置をされていた。

 

 

「んあ、起きたのか?」

 

 

 風呂に上がってタオルを首にかけている男を見る。

 顔はそれなりに整っていて身長も高い、どうやらこの家の主人に拾われたようだ。私の霊基は全くと言っていいほど回復しておらず、獣の特性も殆ど失われ、人間の肉体に戻る事も出来ない。とは言え、最低限の形だけを残したようだ。

 

 無駄な事なのに。

 最早、愛玩の獣ですらない私にこれ以上何をすれば良いと?

 

 

「血は、染みてないな。生命力が高えのか?」

 

 

 不憫だ、これからどうしようと考えている中、男は私の両手を上に持ち上げた。何をしているのか分からないが、もうこの身体だと弄ばれても仕方ない。身体に力も入らない中、ため息混じりで視線を落とす。

 

 そして男が漸く口を開いた。

 

 

「コイツは……雌か」

 

 

 元々人間の身体を持っていたせいか、全身を隈無く見られ、湧き上がる羞恥心に私は男の手に強く噛み付いた。

 

 

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