梅を貰って早一年、なんと丸っと一年の間花が散らなかった。そんなことがあるのか、と思いながら毎日過ごしていたが事実散らなかった。そして鉢の一個はピンクから完全に紫へと色変わりして「紫色の梅」という最早新種としか言えないものになっていた。無論こちらも花は散っていない。
ぽかぽかと日差しが当たって暖かいリビングに置かれた梅の鉢二つは日光をしっかり浴びてそこそこ大きくなっていた。盆栽は普通外に置いておくものなのだろうが、なんとなくこの二つの盆栽は家の中に置いておきたかったのだ。
「丸々一年花が散らないのはびっくりだねー。…うん、今日も元気そうで何より!」
鉢を回して虫がいないか、病気で枯れている部分がないか、土の水はけは問題ないかを確認し、いつもの日がよく当たる場所に置きなおす。朝起きてからの日課である。
静かに鉢を置いて、ぐいーっと背伸びをする。今日は休日なので一日家でのんびりするつもりである。とりあえず朝ごはんに何を食べようかと迷いながら冷蔵庫の扉を開ける。
「卵とチーズ、後は昨日切った玉ねぎの残りか…卵焼きにでもするか。あとはー、納豆とごはんでいいかな」
「ヒメも食べるー!」
「わ、わあああああ!?ヒメだめ、見えてる、見えてる!」
突然聞こえてきた2つの声にバッと振り返る。人間、驚きすぎると声も出ないのかというのを実感した。
振り返った視線の先、テーブルの上にちょこんと一人、もう一人は窓辺の鉢の影にいた。そう、小さいのだ、とてつもなく小さい。
テーブルの上にいるのはピンク色の髪の女の子、鉢の方には紫がかった青のような色の男の子がいる。着ている服は着物と洋服が合体したデザインの物なので割と最近の生まれなのだろうか、と変な方向で考えてしまう。
そんな見当違いの考えをしている私を前にピンクの子はこっちを見てはしゃいでるし、鉢の影にいる紫の子はびっくりして完全に隠れてしまった。
私は完全に何が起きてるか分からなくて固まっている。人、の姿ではあるが小さいし、何より二人(?)とも頭に角らしきものも生えているのだ。大きさも相まってこれは小人とか妖精と言った方がいいだろう。
「…えっ?」
「わっ、見えちゃった?」
「ヒ、ヒメ!見えてるから、ヒメが出ちゃったから僕も見えてるから!」
「いいじゃーん!この人ならきっとだいじょーぶだよ、ね!ミコトもこっちに来ればいいじゃん!」
話からしてピンクの髪の女の子がヒメ、鉢の影にいる紫の男の子がミコト、らしい。
何が起きているのかよくわかっていない困惑と、目の前ではしゃぐ(推定)妖精に対して「かわいい」と反射で反応している感情が喧嘩をしてフリーズしている。
その間にヒメちゃんはテーブルから降りて私の足元をぐるぐる楽しそうに回り始め、鉢の後ろからソファーの陰へと隠れながら移動してきたミコト君はちょっと不安げにこっちを見てきていた。
そんな姿を見ていた私の脳はどうやら困惑が勝ったようで。
「どうして…?」
宇宙猫が頭の中に浮かんでいた。
大きさは500mlのペットボトルよりちょっと大きいくらいを想定し、ヒメは女の子、ミコトは男の子としております。