山を下りて色々探索した結果、どうやらここは海鳴市という海に隣接した街で、山もあれば丘もあり、果てには温泉宿やスーパー銭湯も備えていると至れり尽くせりな街みたいだ。(山を下りて近くにあったコンビニの新聞で知った)
そしてコンビニを出たあと、街の中を適当に歩いていたところに巨大なガラスに自分の姿が目に入って軽く落胆しかけ…いや、した。
だって180cm近くあった身長が小学生低学年の平均ぐらいまで低くなってんだぞ?改めて体が縮んでることにさらに溜め息が出る。未だに縮んだ原因は不明だし…
佑介「(今まで色んな世界を渡っているが、こんなケース初めてだぞ…)」
いい思い出なんてない小学時代。目の前で一番大切な人を殺され、何もできず無力だった自分を恨み、力を求めて血が滲むような地獄の日々の記憶が蘇る。ホント何度死にかけたことやら…
佑介「(けど今となっては過去の話だし、もう終わったことだ)」
まぁ過去にふけるのもいいだろうが、今の状態をどうにかするのが先決だな。
佑介「(街の中をこのまま歩くってわけにもいかない…し?)」
ふと視界に宣伝用の電気店のテレビが入り、よくわからない番組やっているみたいだがそれ無視して左上に時刻が表示されているのを見る。
佑介「(……今の時間は8時過ぎか)」
やばいな…これ以上街中にいると警官とかに補導されるかもしれん。今は子供の体だ、もし捕まって家はどこだとか親はどうしたとか聞かれても答えれないし、ましては異世界から来ましたとか言っても信じてもらえるわけもない…
佑介「(探索の続きは明日にするか)」
そうと決まれば、どうにかして今晩の水と食料と宿を探さないと……お金が一切無い状態で
佑介「(どの世界でも最初に困るのはいつも金なんだよなぁ…はぁ)」
ついに心の中でため息が出る。そう、いくらお金を貯めてもその呼ばれた世界での目的が果たせば強制的に違う世界に飛ばされるので意味がないし、どの道持っていても違う世界では通貨が違うし、ただの荷物になるので飛ばされる前に置いていっている。
佑介「(ここが誰もいない山奥だったら猪かと川魚とか探しに狩りに行くんだけど)」
もちろんここは人どうりの多い街の中なので狩りなんてできるわけがない。最初にいた森でも野良犬や小鳥などしかいなかったため、それも却下。
佑介「(……しょうがない、ちょっと悪いけがコンビニで分けてもらうか)」
どうしようかと考えながら歩いていると、最初に利用したコンビニとは違うコンビニを発見。もちろんお金なんて一銭もないので、勝手に拝借する形になる。
俺は店内に入る前に自分の能力で存在を消し、目の前の入口が開くのを待つ。そして人が通るために開いたドアを慣れたように人とぶつからないようにかいくぐり、そのまま経験で知っている廃棄物のある事務室へと行く。事務室に侵入し、人がいないことを確認しつつ、今日のでた廃棄物を飲み物と一緒に数個を袋に入れていく、そして廃棄物が残っている数とその数の記録をしてあるパソコンを違和感がないように弄り、来た道を戻ってコンビニを後にした。
コンビニを出た後は人気のいないところまで移動し、雨風がしのげそうな廃墟ビルを発見。今日はここで休むとするか
廃墟ビルの中に入ったあと、まず人がいないかを確認してから存在を消している能力を解いた。
佑介「さて、明日からはどうしたもんかねぇ」
3階まで上って休憩室だろうと思われる部屋に入り、ボロボロだが地べたに座るよりはマシなソファーがあったのでそこに座った。目の前に埃だらけのテーブルの上にコンビニで拝借したものが入っている袋を置いて、その中から弁当と飲み物を取り出す。
佑介「……ふぅ」
食事を終えて一息つく。まだ袋に残っているがこれは明日の朝食用だ。
佑介「明日から一体どうしましょうかねぇ」
ボロボロのソファーでゆっくりしながらこれからのことを考える。とりあえずは今日の探索の続きが妥当か。どう行動するにもここがどこなのか把握する必要があるし。
佑介「他には何故俺の体が縮んでしまったかは未だに不明だけど……致命的な状態じゃないし、別にいいか」
縮んだ以外はこれといって何も変わってはいない。力が弱体化したわけでもないし、ただ体が幼くなっただけ。
佑介「……あ、子供だとお酒買えないじゃん」
これまで普通に買えていたのが、買えなくなる……これはちょっと不便ですわ。
佑介「まぁいいか。それらも含めて明日になったら考えることにしま『離して!』……すか」
今座っているソファーをベット替わりにして今日は早めに寝ようとしたら、下の階から女性の悲鳴が響いた。
佑介「……どうやらめんどくさい場所を選んじまったか」
人気のいない場所を選んだのが運の尽きだったみたいです……不幸だ。
佑介「ゆっくり寝るためにもさっさと片付けるとしますかね」
チャラ男「おいおい別にいいじゃねーか、そんなつれないこと言うなよー」
ゴツイ男「そうだそうだ。これからみんなで気持ちいいコトをしようぜって言ってるだけなんだから、なぁ?」
デブ男「デュフフwwwビデオカメラの準備準備www」
チビ男「おい、ちゃんと撮れよ?高く売るんだからなぁ」
ヒゲの濃い男「早くヤッちまおうぜ?最近ヤレてなくて溜まって仕方ねーよwww」
気配を消して一階まで降りてみると5人くらいの男達が1人の女性を見つける。見るからに穏やかな状況じゃない。
女性「いやッ離してよ!誰か助けて!」
見た感じOLの格好のした女性の涙声が虚しく響く。
チャラい男「ヒャハハハハッ!助けを呼んでも誰も来やしねーよ。大人しくしろって、の!」
そのうちのチャラい男が逃げようと抵抗する女性の腕を掴み、はじめから持っていたと思われる縄で両腕を縛った。
佑介「(どの世界でもクズな奴は変わらんのう)」
見慣れた光景に慣れた自分。あ、今のはちょっとジジ臭かったか?
チビ男「おいカメラはまだかよ」
デブ男「よし、録画モード準備おk!いつでも行けるよwww」
ヒゲの濃い男「やっとかwww今回は朝までヤろうぜwww」
ゴツイ男「おいおい、まずは順番を決めんのが先だろーがwww」
チャラ男「お前ら毎回興奮しすぎだwwwこの女も楽しませなきゃ面白くねえだろ、なぁ?」
チャラ男は同意を求めるように女性の胸を触りながら聞く。
女性「いやッ!気持ち悪い手で触らないでッ!」
チャラ男「ッカー!いいねぇ嫌がる感じ!たまんねーよwww」
ヒゲの濃い男「お前が一番興奮してんじゃねーかwww」
ヒゲの濃い男がツッコミをし、他の男達が爆笑する。これ以上は見てられないな
佑介「(さて、気持ち悪いし吐き気がするのでさっさと終わらして寝よう)」
うーむ、どうやって片付けるか…お?丁度いいところに手頃な石発見。まずはこれで行くか
佑介「(では、ピッチャー秋月。今振りかぶって…投げました!)」
――――ガッシャーン!
チビ男「な、なんだ!?」
デブ男「ああああああああああ!!ぼ、僕のビデオカメラがああ!!!」
佑介「ストラーイク」
投げた石は狙い通りデブ男が準備したビデオカメラにヒットし、見事に砕けた。やりー
ヒゲの濃い男「誰だ!」
声を荒げて石が飛んできた方向。つまり俺の方を見る。
佑介「やあやあどうもクズの皆さん。勝手に盛り上がってるところ申し訳ないが、ここから消えてくれないか?気持ち悪いので」
ニコニコと営業スマイルで男達にできるだけ優しく忠告する。
チビ男「んだとオラァ!」
ゴツイ男「おいおいガキが俺達になんのようだ?まぁ逃がさねーしここで殺すけど」
デブ男「僕のビデオカメラが…あのクソガキ、嬲り殺してやるぅ!」
ヒゲの濃い男「さっさとガキ殺して早く続きをしようぜ?このままだと萎えちまう」
チャラ男「つーわけで、かっこよく登場したとこ悪いんだけどぉ。壊してくれちゃったカメラ代として…死ねよ、ガキが」
5人が今にもこちらを殺そうと殺気立てる。まぁわかってたよ、簡単に聞いてくれそうにないことは
デブ男「クソガキィィィィィ!!!」
そんなにカメラを壊されたのがムカついたのか、まずはデブ男が俺の方に殴りにかかってきた。
佑介「やれやれ、人がせっかく忠告してやってんのに」
ヒョイっと楽に避け、足を引っ掛けてデブ男を派手に転ばし、そのまま思いっきり壁に激突した。
ゴツイ男「ガキ相手になにやってんだ。血の上りすぎだ。確実にコレでやれよ」
やれやれといった顔をしながら懐からサバイバルナイフを取り出す。
佑介「あらあら、そんな物騒なもんなんか持って」
ゴツイ男「死ねやオラァ!」
こちらに向かいながらサバイバルナイフを振り下ろす。
佑介「うわー、こわーい(棒)」
明らかに棒読みの声を出しながらヒョイヒョイと避ける。
ゴツイ男「クソッ!ちょこまかと、動きまくりやがって!」
ゴツイ男は何度もサバイバルナイフを振りまくるが一向に当たる気配はない。
佑介「そんな素人丸出しの振り方なんて当たるわけがないでしょ。お前さん、それ最近買ったばかりか?」
使い古されたような痕跡もないし血の匂いもしない、ただのカッコつけか。
ゴツイ男「ッ、このっ!」
そして突き出してきたサバイバルナイフを内側に避けてゴツイ男の懐に入り、突き出している腕と胸ぐらを掴んでそのまま流れるように背負投で頭から地面に叩きつけた。
佑介「あ、やっべ。体が小さいこと忘れてた…」
予定では背中からいくようにしたつもりだったんだけど……うわ、口から泡吹いてる
佑介「あぁー…まぁ大丈夫だと信じよう。うん」
ちょっと申し訳ないと思いながらゴツイ男からサバイバルナイフを拾う。
ヒゲの濃い男「よくも俺の仲間をやってくれやがったなぁ!」
背後からどこから拾ったのか、鉄パイプを持ったヒゲの濃い男が横に思いっきり振る。が、最初からわかっていたのでしゃがんで避け、相手の足を半円を描くように後ろ払い蹴りをしてバランスを崩させてそのまま顔面に向かってアッパーを喰らわす。
佑介「おおぉー、綺麗に円を描きながら飛んでったなー」
自分でも綺麗に決まったことに感心する。
チャラ男「お、おい!止まれクソガキ!」
佑介「あ?」
声をかけられたのでその方を向くとナイフを持ったチャラ男が女性に向けて人質にしていた。
チャラ男「う、動くんじゃねぇ!いい一歩でも動いたらこの女の命がどうなっても知らねぇぞ!」
女性「ヒイイィ!た、助けて!」
うわぁー…ヤバくなったら人質を取るとか在り来りすぎるわぁー……
佑介「なぁ、お前さん仮にも男だろ?無関係な女性に刃物を向けるじゃありません。怪我でもしたら危ないでしょ」
チャラ男「う、うるせぇ!」
オカン口調でチャラ男に注意するが一向に聞く気がない。
佑介「しゃーない」
一歩、チャラ男向かって進む。
チャラ男「お、おい聞いてんのか!?止まれって言ってんだよ!!」
佑介「どんだけ危ないか、身をもって知ってもらうか」
―――サクッ!
チャラ男「…え?」
先ほどのアッパーを繰り出す前に拾ったサバイバルナイフを躊躇なく投げ、ナイフを持っているチャラ男の手の甲に当てる。
チャラ男「ぎゃあああああああああナイフが手にいいいいいいいいいいい!!!」
持っているナイフを落としてその場に派手に転がる。ちょっとしか血が出てないのに大袈裟すぎんだろ
佑介「まぁこんなもんか」
ふぅ、と一息を入れる。
能力無し、刀無しの丸腰の状態でもチンピラ相手は楽に倒せるな
佑介「さてと……おいそこのアンタ」
チビ男「お、お助けぇ!!」
最初から見栄だけを張っていたのか、今までビビって腰が抜けていたチビ男に声をかける。
佑介「そこの派手に転がってるバカ含めて、伸びてる奴らを叩き起してサッサとこの場から消えろ」
止めを入れるように殺意を込めて低い声で脅す。
チビ男「は、ハイィィィィィ!」
元気良く答えると同時に一人で伸びている奴ら全員を連れて、乗ってきたであろうボックスカーに乗せてアクセル全開でこの場から消えた。
佑介「すげぇー、全部一人で運びやがった」
あれが火事場の馬鹿力なのか…案外あの中で一番強かったのってあいつなんじゃね?
佑介「それはさて置き、大丈夫ですか?」
いつまでも縛られたまま放置というわけにもいかないので落ちていたナイフを拾い、女性に縛られている縄を切る。
女性「あ、ありがとう、ございます」
先程までの光景が信じられないのか、若干放心状態のようだ。
佑介「見た感じひどいケガもないみたいですね、よかった」
縛られた跡は時間が経てば勝手に消えてくと思うから、とりあえずはこれからの生活に支障は出ないだろう。
佑介「もう大丈夫だとは思いますけど、一応何が起こるかわかりませんので街まで送っていきますよ。立てますか?」
少しでも落ち着くように、優しく声をかけながら手を差し伸べる。せっかく助けたのにこの後にまた変な事件に巻き込まれても後味悪いしね。それに二人なら見回りの警官に捕まることもないだろう。
女性「はい、大丈夫、です」
女性は俺の手をとって立ち上がる。
佑介「よし、では行きましょうか」
俺が先頭に立って歩こうとした時に何か落ちているのに気づく。
佑介「これは…財布か?」
黒革で折りたたみの財布みたいだ。一応中身を確認する前に女性が落としたものかどうかを聞く。
女性「私のじゃないですね」
他に考えられるのはあの男達の誰かの落し物だなと思いながら中身を確認する。中には適当に入れられたと思われるグチャグチャのレシートと数十万の札束、その他のカード達。
佑介「(そしておまけに覚せい剤なんて入ってやがるし…)」
まぁ、アイツ等はもうここには戻ってこないだろうからこれは有り難く貰っておくか。もちろん覚せい剤とか捨てて。
佑介「(しかし、最近の若い奴らは平気で危ないことやってんなぁ……多分人気のない夜のビル裏とかで取引してる奴らだったんだな)」
それだったらもっと痛めつけたほうがよかったなと思いながらズボンのポケットに財布を入れる。
佑介「時間を取ってすみません。それでは行きましょうか」
改めて海鳴市の街中に向かって女性と歩を進める。