第二話『出会い』
佑介「…んー、朝か」
朝日がカーテンのない窓からボロボロのソファーで寝ている俺を直に照らす。
佑介「ふぁーあ」
欠伸をしながら大きく伸びをする。昨日助けた女性を駅まで送り届けて廃墟ビルまで戻る頃には深夜をかなり過ぎていたので正直言って少し眠い。
佑介「日の高さからして朝の5時くらいかぁ」
眠い瞼をこすりながら立ち上がり、体内にしまっていた刀を取り出して日課である素振りをしに一度廃墟ビルから出て広い空間へと足を運ぶ。
―――チャキン
佑介「……フー」
素振りを終えたあと何回か居合い抜きと相手がいると仮定して刀を振り下ろし振り上げ突き出し薙ぎ払いと連続で振り、最後を締めるように刀を鞘に納めて息を吐く。
佑介「いい時間だし、そろそろ朝飯食って昨日の探索の続きをするか」
昨日と同じく刀を光の粒子に変え、体内に収めて休憩室へと向かう。
佑介「はぁ…どうしたもんかね…」
小さくため息を吐く。
佑介「探索と言っても適当に歩くしかないんだよなぁ…」
朝食を終えて街の中へと足を運ぶが、何も手掛かりがないのでひたすら歩くしかなかった。
佑介「そして何時の間にか昼過ぎてるし…」
そして今は休憩がてらに公園のベンチに座っている。時刻は公園に立っている時計台で知った。
だが少なからず収穫はあったぞ!まずは安くて品揃えのいいスーパーを見つけたし、土曜日に数百個限定で売っているパン屋を発見したしな!(今日がその土曜日だったのか、長蛇の列が並んでいるのを目撃した)
まぁこれといって意味はあまりないんだけどね……
佑介「……そろそろ行くか」
座っていたベンチから立ち上がり、公園を出た。
???「にゃああ!」
佑介「ん?」
なんだ今の声。公園を出てしばらく歩いていると女の子の悲鳴みたいな声と倒れる音が聞こえた。
佑介「…あらら」
気になったので声が聞こえた方に向かうと茶髪の髪をツインテールにした女の子が道端に座って右足首を抑えていた。周りにはビニール袋と多種多数の果物たちがバラバラに散らばっている。多分石か何かに躓いて転んで、その拍子に足首を軽く捻ったのだろう。
佑介「大丈夫か?」
ここまで来て見て見ぬふりをするわけにはいかないので近くに転がってきた果物を拾いつつ、怪我をしている女の子に近づく。
???「ふえッ?!だ、誰ですか?」
優しく声をかけてつもりだったが、目の前の女の子は驚いた声を上げる。ちょっと凹む…
佑介「別に誰でもいいだろ。もう一度聞くが、大丈夫か?」
女の子を心配しつつ、テンポよく果物を拾ってビニール袋に入れる。
???「え、あ、だ、大丈夫で―――いつッ」
無理に立ち上がろうとしたのか、痛がってまたその場に座る。
落ちていたものを全部袋入れ終えたが……立てそうにないな。捻った足首を見たら少し青くなっている。余りにも酷いようだったら氣でも使って直そうと思ったが、これならシップでも貼れば大丈夫だな。
佑介「…ほれ」
???「え、え?」
乗れと言わんばかりにしゃがんで女の子に背を向けるが、女の子は状況が飲めずにいる。
佑介「乗りかかった船だし。家まで送るよ」
???「あ、で、でも―――あ」
いつまでも乗ろうとしないので少し無理やりに女の子を背負った。あっけにとられていたのか抵抗なく簡単に乗せることが出来た。
???「ご、ごめんね。重たくない?」
佑介「大丈夫だよ。寧ろ軽いくらい」
聞かれたことを素直に口にした。別に嘘は言ってないし、逆にちゃんと飯食ってんのかと心配になった。
佑介「んで、君の家は?」
歩き始めると同時に家をどこかを女の子に聞く。
???「え、えと、翠屋って言うお店なんだけど」
佑介「翠屋?何のお店なんだ?」
???「うん、洋菓子類を売っている喫茶店なの」
へぇー、洋菓子類ねぇ……
佑介「それはすげーな。お母さんとかが作ってるのか?」
???「うん!お母さんが作るケーキはすっごく美味しくて評判なの!」
佑介「ほうほう」
???「他にもね、シュークリームとか―――」
混乱状態からやっと慣れてくれたのか、女の子からどんどん喋ってくれた。他にもいろんなお菓子を作っていることを話してくれる………ハッ!お菓子の話を聞いて最低でも一週間に一度はお菓子を作らないといけない病が…!クソッ静まれ!!
???「それでねそれでね―――」
それから他愛もない会話を(女の子から一方的に)しながら目的地の翠屋へと向かった。
???「お母さん、ただいま」
???「あら、おかえりなさい…ってどうしたの!?」
目的地に到着し、店内に入ると女の子からお母さんと呼ばれた女性の店員に出迎えを受ける。
佑介「(見た目、すっげー若いお母さんだなぁ)」
???「にゃははは…」
そして女の子は苦笑いしながら俺に助けてもらったことや足首を捻ったことを説明する。
???「そんなことが…ならすぐに冷やさないとね」
???「うん、わかったの」
素直に頷いた女の子は店内の奥へと消えた。とりあえずは無事に送ったし、そろそろお暇とするか。
???「あら、ちょっと待って」
帰ろうとした時に先程の見た目お若いお母さんらしき女性の店員に呼び止められる。
???「すぐ来るからそこに座って待っててね」
と、こちらの返事を聞かないまま、俺が渡した袋と一緒に女性店員も店内の奥へと消えた。
数分は経過しただろうか、座れと言われて待っていると湿布を張ったツインテールの女の子と先程の女性店員、そしてこの店のオーナーらしき男性が来て
桃子「うちのなのはを助けてくれてありがとうございます。私はこの子の母親の高町桃子です」
士郎「ああ、君がうちのなのはを助けてくれたのか。どうもありがとう、私は父親の高町士郎だ」
佑介「いえ、偶然その場に居合わせただけですし、それに困ったときはお互い様ですよ(この人がお父さんか…この人も見た目わっけー)」
なのは「それでも助けてくれて本当にありがとうなの。私は高町なのはって言います。えーと…」
ん?…あぁ、そういえば名乗ってなかったな
佑介「俺は秋月佑介と言います」
なのは「佑介君って言うんだ。改めてありがとうなの!」
笑顔で感謝してくるなのは。そう何度もお礼を言われると少し気恥ずかしいな。
なのは「ねえお母さん、お父さん。佑介君にお礼がしたいんだけどいいかな?」
桃子「そうね、助けてくれたお礼もまだだったわね」
士郎「そうだな」
佑介「あ、いえ、気持ちだけでも結構ですよ。お礼が欲しくてやったわけではないので」
これ以上長居するわけにもいかないと思い、断ってこの場を去ろうとしたが
なのは「帰っちゃだめなの!」
と、なのはに手を捕まれて少し無理やりといった感じに店内の奥へと連れてかれた。え?強制ですか?
桃子「あらあら、大胆ねぇ~♪」
士郎「……そうだな」
にこやかな笑顔の桃子さんと何か少し考え事をしている士郎さんに見送られる。
なのは「ちょっと待っててなの♪」
気分がいいのか、少しテンションが高いなのはに居間と思われる部屋に連れてこられて椅子に座らされる。待っていると桃子さん達と一緒にショートケーキを数個運んできた。
佑介「んぐ…このケーキ美味いな」
どうぞと言われて出されたショートケーキを食べ、素直に思ったことを口にした。
なのは「でしょでしょ!お母さんの作ったケーキはすっごく美味しいの!」
桃子「口にあったみたいで良かったわ♪あと、この翠屋自慢のシュークリームもどうぞ♪」
佑介「あはは、いただきます………ヤベェ何これすごく美味いんですけど」
確かにこの美味さなら評判が高いのも頷ける。どうしよ、後でレシピでも教えてもらおうかな。
士郎「…佑介君、ちょっといいかな?」
佑介「はい、なんでしょう?」
一個目を食べ終え、二個目にいこうとしたら士郎さんに呼ばれ、手を止めて士郎さんの方を向くと少し真剣な顔をしていた。
士郎「君はどこかで剣道を…いや、刀を使っていたことはあるかい」
佑介「へ?」
やべ、突然の質問に変な声を出してしまった。
なのは「お父さん?」
桃子「あなた、いきなり何を」
なのはと桃子さんも士郎さんの発言に少し驚いている。いやね?剣道の話で竹刀とか木刀とかならまだしもいきなり確信的に刀を使っていたかどうかを聞いてきたら誰だって驚くと思いますよ?
佑介「は、はい…まぁ」
多分だけど士郎さんは俺を見て何かを感じたんだろう。ここは素直に答えておく。
士郎「そうか。よければこの後、道場に案内するから来てくれないか」
佑介「…わかりました」
別に断る必要もないので了承する。
そしてケーキを食べ終えて約束通り士郎さんに道場へと案内されると、そこには黒髪の少年と少女が木刀で打ち合っていた。
士郎「恭也、美由希。鍛錬中に申し訳ないがちょっと時間をくれ」
恭也と美由希という二人は自分の名前を呼ばれたことに気づき、打ち合いを止めて俺と士郎さんの前へと近づく。
美由紀「どうしたの父さん。それにその子は?」
美由希と思われる少女が俺を見ながら士郎さんに質問する。
士郎「紹介しよう。今日なのはが怪我をしたところを助けてくれた秋月佑介君。そしてこっちがうちの長男の恭也と長女の美由希だ」
士郎さんは俺と二人の間に立って簡単にそれぞれを簡単に紹介していき、俺達は軽く会釈をする。
恭也「それで、一体どうしたんだ父さん」
恭也という少年も俺の方を見ながら士郎さんに疑問に思ったことを言う。
士郎「いやなに、お前と佑介君で一つ。試合をさせようと思ってな」
佑介・恭也「「え?」」
士郎さんの発言に二人の声が重なる。いや唐突すぎでしょ…
恭也「…いきなりだな。理由がわからない」
恭也さんとまったくの同じ意見だ。美由希という少女もありえないといった顔で驚いている。
士郎「理由は単純。イイモノが見れると思ってな」
にこやかに笑う士郎さん。いやそんな少年みたいな笑顔で言われても
佑介「まぁ俺は別にいいですけど…」
恭也「…わかったよ父さん」
恭也さんは諦めたのか、素直に従う。抗議しても無駄だと悟ったんだろう。……あ、そうだ。
佑介「すみません、ちょっといいですか」
恭也さんを初めて見て思ったことを言う。三人も何だ?といった感じにこちらを向く。
佑介「手合わせを始める前に恭也さんの膝の怪我を治してからでいいですか?」
折角の手合わせなんだし、やるならお互い全力でやりたいしね。
恭也「何故それをッ!」
驚いた顔をする恭也さん。あれ、なんか言っちゃいけなかった?
佑介「見た感じですけど重心が若干ですが、庇うように片方によってますし、最初こちらに近づいたときに何か歩き方に違和感があったので」
多分過去に怪我でもしたのだろうな。
佑介「ではちょっと失礼して」
恭也さんをその場に座らせて怪我をしている膝を見せてもらう。
恭也「…治せるのか?」
恭也さんが半信半疑…いや9割ほど疑った感じで聞いてくる。そりゃあ疑うわな。だっていきなり子供が怪我を治すとか言い出すんだし。普通なら『巫山戯るなッ!』と怒鳴られても仕方ない。
佑介「まぁこのぐらいの怪我なら大丈夫ですよ」
実際見ても……うん、かなり痛めているみたいだ。下手に無理すると簡単に壊れるし、それに何回か壊しているのがわかる。まぁ最低でも足が繋がっているのなら大抵のことは俺でも治せるから問題ないな。
佑介「ではこれからから治していくんで、痛くても我慢してくださいね」
言い終わると同時に痛めている膝とその周りのツボを気を込めた手でマッサージをする。少し荒く治療するけどその分効果は覿面だ。様々な異世界を旅している時に習って良かったよ
恭也「ッ―――!」
声には出さないが相当痛いのか顔を歪める。普通ならちょっと痛いだけで済むんだけど、怪我をしているとマジで痛いんだよなぁこれが。と経験者は語る…ってな
他にも魔力を使った方法で痛み無く治すこともできるが、それだと魔力の縁のない一般人の前だと話がややこしくなる。その反面、武道をやっている人なら気だと簡単に説明ができるから。
佑介「さて、終わりましたけど…どうです?まだ痛みはあると思いますけどそれは直に治まると思います」
恭也「あ、あぁ。重く感じていた足が嘘のように軽く感じる」
美由希「ホント!?」
マッサージを終えた恭也さんはスッと立ち上がり、先程まで重心が片足によっていた姿勢だったのが今は痛めていた片足で立ってみたり思いっきりジャンプしたりと痛みがないことを確認する。治ったことに美由希さんや士郎さんも喜んでいる。よかったよ、喜んでもらえているようで
佑介「まぁ、治ったと言っても無理な動きはしないほうがいいと思いますが、改めて手合わせをお願いします」
恭也「あぁ、わかった。こちらこそお願いする」
そして改めて俺と恭也さんの手合わせが始まろうとしていた。