―――次の日の朝
佑介「改めまして、これから高町家にお世話になる秋月佑介と言います。出会ったばかりだというのに、私みたいな訳の分からないのを暖かく向かい入れてくれて心から感謝しまs
桃子「はーい、堅苦しい挨拶はそこまでー♪」
昨日と同じ、皆がいる居間でこれから世話になる家の人たちに改めて挨拶しているところに、和やかな笑みで遮ってくる桃子さん。
士郎「そうだな。これから一緒に暮らすんだから、お互いに敬語とかは無しにしようじゃないか」
士郎さんも桃子さんに続く。なんとなくは察していたけど、最初くらいはしっかりと挨拶をさせてくださいよ…
桃子「士郎さんの言うとおりよ、佑君。それじゃあまずは、私たちから言ってみましょうか♪」
ゆ、佑君って……少しこそばゆいな…
佑介「い、言わなきゃいけない…?」
桃子「ワクワク」
士郎「ワクワク」
わーお、お二人共さらに満面な笑みでいらっしゃるー
佑介「は、恥ずかしいんでこのまま士郎さんと桃子さんで…」
このままでは流石に気恥ずかしいので、ここは少し冗談交じりで言ってみたが
桃子「え、なに?ごめんなさい、聞こえなかったわ♪」
聞こえているはずなのに再度聴き直してくる。さっきと同じ笑顔なのに目が笑っていなかった。二度目は無いということですねわかります。
佑介「…はぁ」
誰にも気づかれないように小さく息を吐いた。これは覚悟を決めるしか…というか、ただ言葉に言うだけなのに何故に緊張しなくちゃいけないんだろうかね。
佑介「これからよろしくね。桃母さん、士郎父さん」
少し恥ずかしそうに二人を呼んだ。
士郎「ああ、よろしくな」
桃子「桃母さん…いい響きねぇ!」
最初と同じくニコッと笑顔な士郎さ…士郎父さんと、そんなに気に入ったのか、少しうっとりとしている桃母さん。
美由希「それじゃあ次は私と恭ちゃんだね!」
次は私だ!という感じに美由希さんが輝いた目で詰め寄ってくる。
うーん、呼ぶとしたら今の俺の状態的に兄さん姉さんといった感じかな。俺には妹が一人いるけど、兄さん姉さんはいなかったから少し憧れていたし、これはいい機会かもしれない。
佑介「えっと、美由姉さんと恭兄さん、でいいかな?」
美由希「うん、いいね!」
恭也「…これは少しこそばゆいな」
士郎父さんみたいに笑顔な美由姉さんと少し気恥ずかしそうな恭兄さん。うん、こっちも言ってて気恥ずかしいです。
佑介「こりゃあ慣れるまで時間が掛かるかも」
なのは「みんな楽しそうだね」
佑介「…そうだな」
なのは「あ、宿題!」
佑介「宿題?」
歓迎パーティーを終えて数時間後、今日はみんなでそれぞれテレビとかを見てゆっくりとしているところになのはが急に立ち上がった。
なのは「うん、金曜日にたくさん出されてたんだけどすっかり忘れてたの…」
どよーんとした感じにがっくりと肩を落としている。そ、そんなに多いのか?
佑介「手伝おうか?分からないところだけでいいのなら」
なのは「いいの!?ホントに!?」
目を輝かせながらズイっと顔を近づけてくるなのは。わかったから、近い近い
なのは「ちょっと待ってて!今すぐ宿題を持ってくるからー!」
言い終わると同時に自分の部屋へと急ぐなのはを転ぶなよー、と思いながら見送る。
恭也「俺もそろそろ自分の部屋に戻るか」
恭兄さんもそう言って自分の部屋に戻っていった。
美由希「そういえば、佑介はこれからどうするの?」
二人が出て行ってから少し後に美由姉さんが俺を見ながらなんとなく思った質問をする。
そうだなぁ、この世界に呼ばれた理由を解決するのが先決だけど、このまま高町家にお世話になりっぱなしというわけにもいかない。
佑介「うーん、特に決まってないけど、今のところは翠屋の手伝いをしながら考えようかと」
解決をするにしろ、何をどうしたらいいのか間ではわからないし、適当に探すわけにもいかない。とりあえずは手伝いをしながら考える、しか浮かばなかった。
美由希「へー、じゃあ学校は行かないんだ?」
学校?やだなぁ美由姉さん。昨日説明したけど、俺こう見えていい大人だよ?まぁ、最低でも高校生は何回か異世界でやってたけどね…
佑介「それはないない、行くとしても小学校でしょ?冗談きついよー」
それもそうだね、と二人で笑い流す。それにしても何に故学校の話に?
美由希「それじゃあ、あそこで母さんたちがいそいそと学校の準備とかしているのは何だろうね?」
佑介「…え?」
美由姉さんがある所に指を指す。俺も釣られるようにその場所を振り向くと
桃子「制服や教科書はすぐに準備できるけど、カバンとかどうしましょう」
士郎「うーん、カバンは確か昔、恭也が使っていたのがまだあったかな?無かったら買えばいいんだろうけど…」
真剣に話し合っているお二人がいた。
佑介「お二人共ちょっとストーップ!すみませんが一体何をしていらっしゃるんですかね!?」
俺はすかさず二人に対してツッコミを入れる。
士郎「何をって、そんなのもちろん」
桃子「佑君が行く学校の準備だけど?」
いや、「何を当たり前なことを聞いているの?」みたいなキョトンとした顔をされてもこっちが困るのですが…
佑介「ごめんなさい、全然理解できません」
桃子「あのね佑君。子供はね、学校へ行く義務があるの」
桃母さんが真剣な顔で俺の両肩を掴み、士郎父さんは腕を組んでうん、うんと頷いている。まぁ、普通の子供なら行く必要はあると思うけど…
桃子「佑君は子供なんだから、ちゃんと行かないといけないのよ」
そうか、俺は子供だから学校へ行かないといけないから仕方ないか…ってなんでや!
佑介「ちょい待って!俺昨日説明しましたよね!?今は子供の姿だけど元々は大人だって」
桃子「ええ、ちゃんと聞いていましたよ」
聞いていたうえで行かせるの!?
士郎「あ、お金のことなら心配するな。ちゃんと準備はするぞ」
いやそういうはいいから、お願いだから人の話を聞いてくださいよ!
なのは「一体どうしたの?」
二人に対してツッコミを入れているところに、何時の間に自分の部屋から戻ってきたなのはが宿題を持ってそこにいた。
桃子「あらいいところに。喜んでなのは、佑君も学校に行くことになったから♪」
なのは「え、本当?わーい♪」
桃母さんの言葉に無邪気に喜んでいるなのは。
佑介「ちょッ!勝手に決めないでよ。俺は行くなんて一言も言ってないって」
桃子「佑君は学校行きたくないの?」
泣きそうな顔で俺を見つめてくる桃母さん。いや、行きなくないのと聞かれても、行く必要がないというか…って昨日の説明聞いていたんじゃなかったのか
なのは「え、一緒に行かないの?」
な、なのはまで泣きそうな顔で見ないでくれよ…
士郎「佑!女性を泣かせるとは男として情けないぞ!」
美由希「プッ。そ、そうだそうだー」
佑介「……」
士郎父さんよ、笑いをこらえながら言っても意味がないと思うのだが…美由姉さんに至ってはお腹を抑えながら笑っているし…そして何時の間にか俺が悪者になっているのは何故なのだろうか。
佑介「…はぁ、わかったよ。行けばいいんでしょ学校に」
ここはもう諦めよう、その方が気が楽だよ…。俺の周りには味方はいないし、ここに恭兄さんがいたら多少はフォローしてくれたんだろうけど、この場にいないのならしょうがない。
なの桃「イエーイ♪」
先程までの泣き顔が嘘のように笑顔に切り替わり、お互いにハイタッチをしていた。
佑介「おいそこ、絶対に打ち合わせでもしていただろ」
随分と息が合っている二人に軽く睨むが効果はなかった。
士郎「さて、佑が学校に行くことが決まったし、さっさと準備を済ませようか」
昨日からそうだけど、もしかして俺ってこの世界に来てから結構流されやすくなってる?もしそうなら気を付けないといけないな…
ちなみに俺が学校に行く理由を桃母さんに聞いたが
桃子「だって、恭也の小学生の頃の写真がほとんど失敗していて少なかったし…せっかくの機会だから佑君を目一杯撮ろうかなぁと♪」
だそうです。もう何も言えませんでした。
――キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ると同時に担任が教室に入り、生徒たちはそれぞれ自分の席に座る。
担任「はーい、ちゅうもーく。今日からこのクラスに新しく入る転校生を紹介するぞー」
あまりやる気のない男の担任が二回ほど手を叩いてクラスの視線を集め、おや?マジで?とざわつきながらクラスの面々の注目が担任へと向く。
担任「ちなみに男だ。喜べ女子ー、そして残念だったなー男子諸君よ」
「おおお!」と喜んだり、「チッ、男かよ…」と残念がるなどの様々な声があがる中、なのはだけは誰が来るのか既にわかっているため、一人でニコニコとしている。
担任「それじゃ入って来て簡単な自己紹介でもしてくれー」
教師としてそんな投げやりな形でいいのかと思いながら、教室の入口の前にいる転校生―――秋月佑介は「失礼します」と言ってから、引き戸をガラガラと音を立てて中へと入る。
佑介「初めまして、今日からこのクラスに転入することになりました、秋月佑介です。両親の都合で、突然この街に来てから友達があまりいません。ですので、皆さんとは早く仲良くしていきたいと思っていますので、気楽に話しかけてくれると嬉しいです」
自己紹介を終えて、よろしくお願いしますといった感じに頭を軽く下げると、みんなから拍手をもらう。
担任「さて、秋月の席はー…そうだな、後ろが空いてるからそこに座ってくれ」
佑介「わかりました」
担任に指定された席へと移動し、カバンを置いて席に着く。
担任「秋月への質問は休み時間にでもやってくれ。それじゃあ授業を始めるぞー。えーと、教科書のページは―――」
俺が席に着いたのを見届けたあと、担任は教科書を広げて授業を始めた。
佑介「(まさか俺がもう一度小学校に通うことになるとはね……つか、なのはと同じクラスになるとは思わなかったよ)」
学校に行く時に何やら笑顔だった士郎父さんと桃母さんの顔を思い出した。
佑介「(狙ってやったのか?)」
授業を受けながら、そんなことを思った。
佑介「はぁ、やっと昼休みか」
授業は特に何事もなく終わったが、休み時間になるとクラスの殆どから質問攻めにあって答えるのに追われていた。昼休みになると、サッサと教室を出て今は屋上のベンチに座って小さく溜息を漏らしている。
なのは「あ!やっと見つけたの!」
佑介「ん?」
なのはの声が聞こえて視線を動かすと、なのはとその近くに金髪の子と黒髪の子の二人の女の子がこっちに近づいてきた。どうやら俺を探していたようだ。
???「へー、あんたがさっきなのはの言っていた秋月ね」
こっちに近づいたと思ったら、いきなり金髪の子にアンタ呼ばわりされた。ほー、随分と元気がよろしいようで
佑介「確か同じクラスの…」
なのは「紹介するね。私の大事な友達のアリサちゃんとすずかちゃん」
アリサ「アリサ・バニングスよ」
すずか「私は月村すずかって言います。よろしくね、秋月君」
金髪の元気の良い子がバニングスで黒髪で大人しそうな子が月村ね。
佑介「朝にも言ったけど、俺は秋月佑介。改めてよろしくな、バニングスに月村」
それぞれ簡潔に自己紹介をする。
アリサ「なのはの友達ならアリサでいいわ。その代わりに私も佑介って呼ぶから」
佑介「ああ、わかった」
そう言って俺とアリサは互いに握手をした。
すずか「私も、いいかな?」
佑介「別に好きに呼んでも構わないよ」
アリサの次にすずかとも握手をしようとした時
佑介「(ん?)」
俺はそこで違和感を覚えた。
ただ会話をしていただけでは普通に見えたが、握手をしようと近づいたら何故かレミリアとフランを思い出した。
佑介「(何でここでレミリアとフランが出てくるんだ?)」
なのは「どうしたの?」
なのはの声で思考中だった俺は「ハッ」と現実に引き戻された。俺の前にいるすずかは不思議そうな顔をしている。
佑介「いや、なんでもない。それより、すずか。ちょっとだけ動くなよ」
すずか「え?」
誤魔化すように握手しようと止まっていた手をすずかの左耳近くの髪にくっついている小さな埃へと伸ばして取った。
佑介「いきなりでゴメンな。埃が付いてたもんで」
優しく微笑みながら取った埃を見せた。よかったよ、タイミングよく見つけれて…
すずか「あ、ありがとう…」
お礼を言いながらすずかは俯いてしまった。俯くとき、若干だが頬が赤く染まっていたが気のせいだろう。まぁ少し苦しいけど、これでなんとか誤魔化せたか?
アリサ「何許可なく乙女の髪に触ってんの、よッ!」
佑介「あぶねッ!」
突如真横からアリサから放たれた拳が俺へと飛んできたが、ヒョイッと躱す。
佑介「なんだよ突然」
アリサ「ガルルルルル…」
と何故か俺に威嚇しているアリサと
なのは「ムー…」
不機嫌な顔で頬を膨らましているなのは。全然意味がわからん。
すずか「えへ、えへへ…」
そしてすずかは俺が触れた場所を軽く撫でるように触っていた。
佑介「(俺、何かやっちまったのか?)」
さっきまで感じた違和感を再度考える余裕はなく、今はこの場を鎮めるのに精一杯だった。