世界をさまよう少年~リリカルなのは編~   作:十文字@クロス

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第六話『執事と仮面と強盗と』

 

 

時刻は午前10時過ぎ

 

佑介「お帰りなさいませ、お嬢様方」

 

翠屋に入ってきた二人の女性を丁寧な言葉使いと綺麗な一礼をし『ニコッ』と、柔らかい笑みで出迎える。

 

この言葉でほとんどの人が察してくれるだろうと思うが、今の俺は黒いタキシード一式を身に纏って接客をしている。俗に言う執事喫茶のような格好だ。

 

女性A「はぁい、帰ってきましたぁ♪」

 

二人の内の一人が頬を赤く染めながら答え、もう片方の人は無言のまま『コクッコクッ』と頷いている。

 

佑介「席のご用意が出来ておりますので、こちらへどうぞ」

 

絶えず柔らかい笑みのまま、慣れた動作で二人の女性を空いている席へとエスコートする。

 

佑介「では、ご注文の方をお決まりでしたら、遠慮なくお声をお掛けくださいませ」

 

メニューをテーブルへ置き、一礼をしてから席を離れる。

 

士郎「佑。このサンドイッチセットとコーヒーを3番テーブルまで頼む」

 

佑介「了解致しました」

 

次から次へと一息を入れる間もなく、士郎父さんから渡された料理をトレイに乗せて3番テーブルへと持っていく。

 

あぁそうだ。何故に俺はこの格好をして働いているのか説明しないといきなりで意味がわからないよな。えーと、あれは朝の出来ごとだった。

 

 

 

 

時刻は午前7時30分頃

 

今日は土曜日。俺が起きてから誰とも会話をしていない。というか会えていないと言ったほうがいいだろう。

 

桃子「お願い佑君!今日お店の手伝いをして欲しいの!」

 

珍しく一人で朝の鍛錬を終え、序に朝食を食べ終わった所に桃母さんから店を手伝ってと両手を合わせてお願いをされた。まぁこれまで何回か手伝ってはいるし、この後は特にこれといって予定はないから別に構わないんだけど。

 

佑介「い、いきなりどうしたの?」

 

今日の桃母さんは何か今までより気迫があるというか、何か興奮しているというか…少し怖い。

 

桃子「今日は大切なイベントの日なのよ。だから今日はいつもより多くのお客さんが来る予定なのだけど…」

 

ふーん、イベントねぇ…そういうのがあるなんて聞いたことないが、過去に開催した時は結構な盛り上りだったのだろう。だからそんなに気迫があるのか、と桃母さんを見て納得する。

 

桃子「今日に限って美由希は急用で学校に呼ばれるし、恭也だけじゃ捌ききれないかもしれないのよ」

 

佑介「あー、だから美由姉さんは朝から忙しそうにしていたのか」

 

今日は土曜日なのに学校に行く準備をしている美由姉さんを目撃したときは何をしているのかと思ったけど、なるほどねぇ。恭兄さんも朝から店の手伝いをしているから見なかったのか。

 

ちなみになのはについては、昨日からアリサやすずかと出掛けてくるというのを聞いているので居ない事に疑問はない。

 

桃子「だからお願い!佑君も手伝って欲しいの!」

 

桃母さんが俺の手を取り、ウルウルとした目でこちらを見てくる。

 

佑介「まぁ別に断る理由なんてないし、俺でいいのなr

桃子「ホント!助かるわぁ、じゃあ早速隣に準備してあるから着替えて頂戴さあさあ!」

…え?ええ!?」

 

一瞬の出来事だった。最後まで言葉を発する事なく、桃母さんは一瞬にして俺の背後に回り込み、抵抗する間もなく隣の部屋へと背中お押されてしまった。今思えば、何故了承する前に何のイベントなのかを聞かなかったのだろうと後悔したよ…

 

 

 

 

 

そして、初めから用意されていたタキシード(何故かサイズぴったり)に着替えさせられ、翠屋へと強制連行された俺は、流されるままに本日の予定をオーナーの士郎父さんから説明を受けて、今現在に至るというわけです。ちなみに内容を簡潔に説明すると、今日だけ翠屋は執事喫茶になるというイベントのこと。それとこのイベントは、多くて1年に2回くらいやるかもという桃母さんの気まぐれで開催するそうです。

 

佑介「お待たせいたしました、お嬢様。こちらサンドイッチセットとコーヒーでございます」

 

3番テーブルに座っている女性客の前に、慣れた手つきで音を立てずに置く。もちろん、爽やかな笑みを忘れずに。

 

女性C「ありがとう、可愛い執事さん♪」

 

料理を置き、笑顔でお礼を言ってくる。

 

佑介「お褒めの言葉ありがとうございます。ですが、お嬢様の方がとても可愛らしく、お美しいですよ」

 

俺はお返しとばかりに女性客に優しく微笑む。人からお礼を言われるのは働いている者として嬉しいのだが、可愛いと言われるのはあまり好きではない。他から見れば今の俺は子供だが元は大人の男性だ。中には言われたて嬉しいという人もいるかもしれないが、俺はそうではない。

 

女性C「あ、ありがとうございます…///」

 

佑介「では、ごゆっくりとどうぞ」

 

ちょっとした仕返しを終えて、一礼をして離れようとした時、「すみません、注文いいですか?」という声が聞こえた。俺は即座に呼ばれたお客さんの応対をしようと体を向けた時は、既に俺と同じ黒のタキシード姿の恭兄さんが応対をしていた。

 

恭也「畏まりましたお嬢様。では少々お待ちくださいませ」

 

慣れた手つきでお客さんが注文したものを注文票にメモし、きちっとした一礼をしてその場から離れる。恭兄さんは俺と違って営業スマイルはせず、凛々しく仕事をこなしていく。無駄なく動くその姿を、俺は流石だなぁと思った。

 

 

 

 

 

その後、どんどんお客さん(というか全部女性客)が来客し、13時過ぎまで忙しいのが続いた。ほとんどのお客さんが恭兄さん目的だったが、何故か俺目当てで来るお客さんもいた。俺が料理を運んでいる所にお客さんから小さい声で『ショタっ子…いいわね!』『ハァ、ハァ…あの子、お持ち帰りしたいなぁ♪』などの声が聞こえた時は正直、身の危険を感じたよ…きっと気のせいだったと信じたい。

 

佑介「ハァ…腹減ったなぁ…」

 

そして今は翠屋から出て街中で買い物袋をぶら下げながら歩いている。途中から美由姉さんが帰ってきて参戦してくれたおかげで余裕ができ、士郎父さんから休憩をするよう言われた。そして休憩兼昼食をしようと外に行こうとした時に、桃母さんから『序にお使いをお願いね』と柔かにメモとお金を渡された。んで、さっさと買い物を済ませて、昼飯をどこにしようと考えながら歩いていたというわけです。

 

佑介「ん?なんだありゃ」

 

どこにしようかと探しているところにガヤガヤと銀行の入口に人集りができているのを見つけた。深く関わる気はないが、一応何かあったのか気になったので近くの人に聞いてみるか。

 

佑介「どうかしたんですか?」

 

男性「ああいや、それが入口に鍵が閉まっているみたいで」

 

ほーう、まだ昼過ぎがというのに入口が閉まっている、ねぇ…

 

女性「それに変なのよ。中から大きな音が」

 

男性B「お、おい!? いきなりシャッターが下りたぞ!?」

 

男性Bが驚いた声を上げ、そちらを見てみると『ガシャン』と音を立てて入口と窓のシャッターが下りたのを目撃する。あー、こりゃあもしかして銀行強盗か?訓練にしちゃあ近くに警官の車が見当たらないし、何より全てのシャッターを下ろす意味がないので多分間違いはないだろう。

 

佑介「…どうしますかぁ」

 

周りの人たちが驚き騒ぐ中、俺は冷静に考えていた。先程思考していた通り、別に関わる気はない。面倒事に巻き込まれるのはごめんだし、さっさと昼飯が食べて翠屋に戻らんと店も大変だろうしな。けどまぁ、警察に教えるためにも強盗犯の人数くらいは把握しとくか。

 

そう思いながらその場で目を瞑り、俺の能力で銀行の中の人の存在を確認する。

 

佑介「(強盗犯は…16人か)」

 

おいおい、たかが金を盗るのに少し人が多すぎるんじゃないですかねぇ…。まぁ理由なんて興味ないし、別にどうでもいい。おっと逸れたな…えーと、まず10人は広いロビーで多くの人…これは人質か、を囲むように立ち、その内4人は人質の中を動いたり止まったりしているな。多分身動きできないよう手足を縛っているのだろう。残りは建物内を別れて探索するように移動している。

 

佑介「(……おいおいマジかよ)」

 

強盗犯の人数を把握するために人質含めてこの銀行内にいる人の存在を探っていたが、人質の中に俺がよく知っている奴らの存在を感じ取った。

 

「ハァ…」と溜息が漏れる。何でいるんだよ…アリサにすずかになのはよ。朝からどこに遊びに行っていたのかは知らないが…まぁ理由どうあれ、先ずは助け出さないと。

 

佑介「(正面の入口はシャッターで塞がっているし、入るなら裏か)」

 

確実に開いているとは限らないが、まずは行動あるのみだ。

 

俺は誰にも気づかれないよう、銀行の裏へと移動する。

 

 

 

 

 

佑介「よっと、楽に侵入成功ー」

 

裏口を見つけたが案の定鍵が閉まっていたため、窓から侵入することにした。ちなみに1階には窓がなく、2階からならあったのでそこから壁を蹴りながら登って入った。流石に地上から少し高い2階から侵入してくる奴なんていないと考えていたんだろうな。鍵が掛かっていなかったし、おかげで楽に入れた。

 

佑介「ここは…物置部屋か」

 

侵入した部屋を見回すと資料やらポスター、看板、着ぐるみや衣装などの様々なものが入ったダンボールを見る限り、この部屋は物置だと認識する。

 

佑介「ふーむ、一応何か使えそうなものがあるか探すか」

 

手に持っている買い物袋を近くの机に置き、何かないかとダンボールの中身を開けていく。武器なら俺の中に刀があるが、使う気は一切ない。というか、たかが強盗に刀を使うまでもないし、素手か周りにあるものだけで簡単に殲滅できる。

 

佑介「お、いいもん見っけ」

 

一つ目のダンボールから運良く使えそうなのを見つける。見つけたものは新聞や雑誌などを縛る紐とガムテープを数セット。まぁ、実際もうこれだけで十分だな。別に強盗犯を誰一人殺す気はないし、第一なのは達の前で人殺しなんて刺激の強いものは出来るだけ見せたくはない。精々気絶させる程度かな。

 

佑介「あとはこれといって使えそうなのは……ん?」

 

他にないかと開いているダンボールを軽く見回してみると、宣伝用なのかは知らないが、暑苦しい着ぐるみやその他の衣装物の入っているダンボールが視界に入る。

 

興味本位で中を調べると、オペラとか劇団に出てくる怪人辺りが身に付けていそうな白いアイマスク…ファントムマスクを衣装が入っているダンボールの中から見つける。

 

佑介「…一応、身に付けておくか」

 

手に持っているファントムマスクを顔に装備する。なぜ身に付けたのかは、特にこれといった理由はない。強盗相手なら俺の能力無しに顔を見られる前に即効で潰せるが…強いて言うなら念の為?…って、自分で疑問を持つなよと思うのだが、まぁもう一つ理由を上げるのならばこのアイマスクの魅力に魅入られたから、かな。

 

そんなことを思っていたらどこかの三国志の美と正義の使者が反応しそうだ…が、なぜだろう。このファントムマスクを付けていると、悪党共を懲らしめたいこのどこからか湧いてくる衝動は……星も初めてあの仮面を見つけた時は、きっとこんな気持ちだったのだろうな。今ならわかる気がする。

 

佑介「よし。準備もできたことで、久々にスニーキングミッションと行きますか」

 

ダンボールから見つけた紐とガムテープを持ち、扉の外に人がいるかの気配を探りながら扉を開けて廊下へと出る。

 

 

 

 

 

強盗1「ったく、なんで俺等が見回りなんかしなきゃならねーんだよ」

 

強盗2「しょうがねぇだろ?俺たち下っ端なんだから」

 

黒い覆面を被り、手にはアサルトライフルを持った強盗犯の二人は愚痴を吐きながら無警戒で目に止まった部屋を適当に見るだけといった感じに廊下を歩いていた。

 

強盗2「それにしても、まさかこの銀行にバニングスグループの令嬢に月村家のお嬢さんがいるなんてなぁ。嬉しい誤算だよな」

 

強盗1「それ俺も思った。このまま計画通り、ここから脱出するときの人質をあのガキ共にして、逃げ切ったあとから身代金を要求すれば計画以上に金が入る!」

 

強盗2「マジでたまんねぇよな!おっと、ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

強盗1「おいおい、早くしろよ?」

 

徘徊中の強盗犯の一人がトイレに入っていき、もう一人はトイレの入口の前で待つように立っている。

 

強盗1「あーあ、早く終わらせて酒と女で優雅に過ごしたいもんだなぁ」

 

佑介「あー、それ無理だわ」

 

強盗1「あ?なん―――がッ!?」

 

強盗犯の一人が自分の口から漏れた言葉に対して答えてきた方を振り向こうとすると、振り向く前に後ろ首に強い衝撃が襲い、訳も分からず意識を刈り取られてその場に倒れる。

 

佑介「お前らは仲良く刑務所行きだから」

 

スタッ―――と、倒れた強盗犯の一人の後ろに先程まで空中で蹴りを入れた俺は廊下に着地する。

 

佑介「つか、幾ら何でも警戒しなさすぎ」

 

能力を一切使わず、ただ足音を立てずに付いて行っているだけで簡単に一人を落とした。

 

佑介「バレたらその場で二人をやろうとしたのに…こっちが声をかけるまで気づかないって…ハァ」

 

正直言ってこのままだと10分しないうちに全部終わるぞこれ…と愚痴を零しながら気絶している強盗犯を物置部屋から持ってきた紐で腕と足を縛り上げる。

 

佑介「お、マヌケな強盗なのにイイモノ持ってんじゃん」

 

縛り終わった強盗犯の腰にハンドガンがあることに気づき、ホルスターから引き抜く。

 

佑介「アサルトライフルよりこっちの方が使えるな」

 

最初はアサルトライフルを拝借しようかと考えていたが、ハンドガンの方が服の中にしまえるのでこっちを拝借させてもらう。

 

ハンドガンの残弾を確認し終わり、いつでも引き抜けるように腰に差す。

 

『~~♪』

 

佑介「ん?」

 

男子トイレの中から水が流れる音と鼻歌が聞こえる。これはもうすぐもう一人出てくるな。

 

強盗2「ふぅーお待たせー」

 

ガチャッ―――トイレの扉から出すもの出してスッキリとしたもう一人の強盗犯が出てきた。

 

強盗2「なっ!?お、おい、大丈夫k―――」

 

普通なら扉の前で待っているはずの仲間が倒れていることに気づき、近づいて起こすようにしゃがんだところを音も無く近づき、後ろから首を絞めて落とす。

 

 

 

 

 

気を失っている強盗犯の二人を紐で締めるのとガムテープで口を閉じ、一人ずつトイレの個室へ動かす。

 

佑介「さて、このフロアの残りをやったらさっさと一階に行くか」

 

移動しながら能力で残りの強盗犯の位置を確認する。

 

この後は2階にいる強盗犯共をものの数分で片付け、1階へと移動する。

 

 

 

 

なのはside

 

た、大変なことになっています。

 

今日は前の日からアリサちゃん達とお買い物に行く約束をしていたので数十分前には街中にいたのですが、重そうな荷物を持ったおばあちゃんを見つけたので、アリサちゃんとすずかちゃんと一緒に荷物を持ってあげました。

 

目的地は銀行とのことで軽くお話をしながら向かい、無事に着いたのはいいのですが、荷物をおばあちゃんに返して銀行から出ようとした時に黒い覆面の銃を持った強盗さんが数人押し寄せてあっという間にみんな捕まってしまいました。

 

強盗リーダー「おい、まだアイツ等は戻ってこねぇのか?」

 

強盗犯さんのリーダーみたいな人は周りにいる部下の人たちにこの銀行の2階に移動した人達の行方を聞いています。

 

強盗3「それが、いくら連絡しても反応がないんスよ」

 

強盗リーダー「チッ、何やってんだよ」

 

強盗3「どうします?」

 

強盗リーダー「ほっとけ、自分の仕事すらできねぇ奴は捨てればいい。それよりさっさと金とこのガキ共を連れてずらかるぞ」

 

強盗犯さんのリーダーがそう言うと、自分の近くにいるアリサちゃんとすずかちゃんを見る。

 

アリサ「んー!んー!!」

 

すずか「んんー!」

 

アリサちゃんとすずかちゃんの今の状態は、人質となっている私たちと同じで手足は縄で縛られ、口にはガムテープで塞がれています。

 

強盗4「おい、暴れんじゃねえ」

 

強盗犯さんの一人がアリサちゃん達を持とうとしますが、二人は必死に抵抗をしています。だけどそれも時間の問題。

 

なのは「(どうしよう、このままじゃアリサちゃんとすずかちゃんが連れてかれちゃうよ…!)」

 

声を出したくてもガムテープで塞がれ、ただ見ていることしたできない自分が悔しい。

 

なのは「(お願い…誰か助けて!!)」

 

何もできない今の私は心の底から想いながら、目を強く瞑った。

 

 

 

 

強盗4「ぐえぁッ!」

 

強盗さんの悲鳴が聞こえ、次に『ドンッ』と音が聞こえた時に瞑っていた目を開けると何時の間にか強盗さんは壁まで吹き飛ばされていて

 

??「おやおや。男性足るもの、レディーには優しくしないといけないんですよ?」

 

それまでいた場所には顔の上半分を隠すような仮面を着けていた男の人が立っていました。

 

 

 

 

 

佑介「(あぶねぇ、なんとか間に合ったかな)」

 

強盗犯に向かって蹴り飛ばした足をゆっくりと下ろす。流石に1階のロビーは広く、隠れるところがないのでコソコソとするのはここまでみたいだな。

 

佑介「大丈夫でございますか?お嬢様方」

 

俺はアリサとすずかの方を向き、安心させるように優しく声をかける。よし、見た所どこも怪我はしていないな。なのはも無事みたいだし。

 

アリすず「……」

 

アリサとすずかは今の現状に未だ追いつけていないのか、ただ小さく頷いていた。

 

強盗リーダー「なッ!?誰だお前は!」

 

突然の出来事に呆然としていた強盗犯のリーダー(以後リーダー)がようやく俺の存在に気づく。

 

佑介「私ですか?私は主人の為にこの身を尽くす執事でございます」

 

リーダーの方を向き、本物の執事のようにお辞儀をする。

 

リーダー「執事だァ?ただのガキじゃねぇか」

 

「驚いて損したぜ」と驚いた表情から余裕のある顔へを変わっていく。

 

リーダー「んで?その執事がどうしたんだ?ダセぇ仮面つけてヒーロー気取りかぁ?」

 

リーダーが笑うとその周りにいる強盗犯共も笑い出し始めた。

 

佑介「いえ。私はただ、こういったものは見過ごすことができない質なので…」

 

「ですのでさっさと無駄な抵抗はせずに投降してくれませんか?」と優しい声で付け足す。

 

リーダー「この状況が分かってねぇな…こっちには『コレ』があるんだぜ?」

 

リーダーが手を上げるとその部下たちが一斉に俺に向かって銃を構え始めた……おせーよ。

 

最初に拝借したハンドガンを腰から引き抜き、同時に相手の銃口に狙いを定めて流れるように撃った。

 

「ギャァッ!?」「手がァ!!」と一瞬の出来事で銃を落とす人、撃つ直前に暴発して気絶する奴が数名…あぁー、何発か銃口から逸れたか…俺もまだまだだな。

 

佑介「どうしたんですか?早く見せてくださいよ。それともつい先程のがそうでしたか?」

 

リーダー「なッ…」

 

余程ありえなかったのか唖然としているリーダー。ふーむ、リーダーも含めて残りは四人か。

 

リーダー「…ぐッ。お前らたかがガキに何やってる!さっさと殺っちまえ!」

 

リーダーが命令し、ヤケになった三人の強盗犯がナイフを取り出して突撃してきた。

 

俺は俺から一番近い強盗犯に向けて残弾が無くなったハンドガンを投げる

 

強盗5「ガッ!」

 

顔面に当り、一瞬よろめいたところに瞬時に近づいた俺は相手の鳩尾に掌底を叩き込み、そのまま胸倉を掴んで近くまで来ていた強盗犯に向けて投げ、巻き込まれるように地面に転がっていった。

 

強盗9「おい動くんじゃねぇ!このガキがどうなってもいいのか!!」

 

なのは「んー!んー!」

 

ヤケになっていた残りの一人が近くにいた人質―――なのはを掴んで顔にナイフを近づけている。お前さん、俺じゃなく士郎父さんや恭兄さんが相手だったら即殺られるぞ……しょうがない、一度だけ『アレ』やるか

 

佑介「…私だけ動かなければいいのですか?」

 

強盗9「そ、そうだよ!」

 

佑介「成程、分かりました。…なら貴方の後ろにいる」

 

『私』は動いても良いと捉えていいのですね?

 

強盗9「へ…?ぐえァッ!」

 

強盗9は後ろを振り向こうとしたが横っ面に蹴りをもらい、壁まで吹き飛ばされる。

 

一体何が起こったのかを簡単に説明すると、俺の能力―――存在を操る程度の能力で俺の存在を重ねるように生み出し、俺本体は消えて強盗犯の後ろに移動して空中回転蹴りをかますという俺の得意とする戦術。

 

佑介「大丈夫ですか?お嬢さん」

 

強盗9の腕から解かれたなのはを優しく抱き止めた。よし、ナイフで顔とかに血は出ていないな!これでもし傷でもあったとしたら俺が士郎父さんと恭兄さんに殺される…

 

なのは「……」

 

幸い怪我もなく、なのはは小さく頷いて答えてくれた。

 

リーダー「な…あ…」

 

佑介「さて、残っているのは貴方だけですよ?」

 

抱き上げていたなのはをゆっくりと下ろし、一人だけ残っているリーダーに問いかける。

 

リーダー「そ、そうだ!な、なぁ誰に雇われたのか知らねぇがお前俺の執事にならねぇか?金ならほら、たくさんあるぜ!」

 

そう言うとリーダーの後ろにあるトランクに入っている大金を俺に見せてくる。おいおい、もう勝てないと思ったら金で釣るのか…

 

佑介「…いいでしょう。ですが、私を雇うのでしたら一つ、やらなければいけないことがあります」

 

リーダー「ま、マジか!」

 

リーダーはまさかダメ元で言ってみたことが通ると思っていなかったのだろう。絶望していた顔から一気に喜びの顔へと変わる。

 

リーダー「で、なんだ?契約書にサインとかか?」

 

早くしろよと言うような声で俺を急かしてくる。

 

佑介「私はご主人様を正しい道へと導く教育係も請け負っております」

 

リーダー「…へ?」

 

間抜けな声を出し、希望に満ち溢れていた顔が一気に絶望へと変わっていく。

 

佑介「ですので、私を雇いたいのでしたら……まずは刑務所で反省しやがれ!」

 

―――ドゴッ!

 

一気に距離を詰め、思いっきりリーダーの腹を正面から蹴り抜いて壁まで吹き飛ばした。

 

佑介「ふぅ…これで終わりかな」

 

念の為に能力を使って気配を探ってみるが…よし、いないな。

 

佑介「さて、そろそろ…」

 

『全員突撃ー!』

 

佑介「やっと来たか」

 

誰かが連絡したであろう、ようやく来た警察の声が聞こえた。後は任せても大丈夫だな。

 

佑介「さて、皆さん。もうすぐで警察が来ますのでご安心ください」

 

「それでは私は失礼いたします」と皆に向かってお辞儀をし、警察が来る前に買い物の荷物が置いてある物置部屋へと走っていった。

 

人質を解くことなく急いで逃げるようにした理由は、あのままあの場に居たらまず警察に事情聴取されること間違いないし、折角正体を隠しているのにバレたらもっと面倒になることが予想出来るのでさっさと離れることにした。

 

この後は俺がいなくなった数十秒後に警察が押し寄せて無事に人質全員を保護し、強盗犯は気絶している、又は縛られた状態で発見し、全員捕まえることができたそうだ。

 

ちなみに俺はというと、仮面を外して侵入してきた所から置いていた買い物袋を持って脱出し、能力を使って存在を消しながら翠屋へと帰宅した。もちろん、結構この事件に時間を取られたせいで昼食は食べることが出来ていない。おかげで午後の接客は少し苦だったよ…

 

 

 

 

 

 

なのは「それでね―――」

 

美由希「へーそんなことがあったんだ」

 

皆で食卓を囲みながら晩御飯を食べている途中になのはが皆に今日起こったことを話していた。

 

士郎「確かにあの映像に写っていた仮面の男は凄かったが、俺としてはなのは達が無事でほんとによかったよ。な、佑、恭也」

 

佑介「そ、そうだね」

 

翠屋に戻って夕方頃にニュースで大体的に報じていた時は正直言ってかなり焦った。まさか監視カメラの映像を公開するとは思っていなかった。

 

まぁ幸いロビーでの出来事だけの映像だったし、写っていた俺も俺だとバレるようなものはなかった。顔もちゃんと隠れていたし。

 

恭也「ああ、俺もなのは達が無事でよかった。しかし、中々の動きだったなあの仮面の男は…佑介もそう思うだろ?」

 

佑介「そ、そうだね」

 

やべーよ、絶対この二人は分かって言ってるよ。しかも俺もさっきから同じことしか答えれてねーよ。……まぁこの二人ならバラすようなことはしないとは思うが、当分弄られるなこれ……

 

なのは「あとね―――って、佑介君ちゃんと聞いてるの?」

 

佑介「ちゃんと聞いてるよ」

 

桃子「ウフフ♪」

 

再び話し始めるなのなに桃母さんもなのはを見て柔かに笑っている。

 

佑介「(ハァ…今日は疲れる一日だったな)」

 

けどまぁ、こういう疲れる日もたまには……いいものなのかね…

 

 

 

 

後日、新聞の見出しに『謎の仮面の執事が現る!』という俺が強盗犯に蹴りを放つ瞬間が大きく一面を飾っていることに気づくのは別の話。

 




この度は更新が遅くなってしまい誠に申し訳ありませんでしたァ!

言い訳としましては仕事が忙しくなってしまい、まともに自分のPCに触れる機会があまりありませんでした…

今回の話は少し飛び飛びだったと自分でも思っています。(時間がありましたら修正するかもです)

これからも更新が遅くなると思いますが、途中で投げ出すようなことは絶対にしませんので、どうか温かい目で見守ってください。
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