オーガの里で刀を打ち続ける鍛冶師   作:あSづいぐいあD

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依頼を全うするためだけに

「これは凄いな」

 

「はあ、私からすれば普段通りですけど」

 

 

 あれから何故かついてきた若を追い払うわけにもいかず、俺の仕事場である小屋への侵入を許してしまっていた。

 別に入られて困るというわけではないが、私生活を覗かれているようでなんだかむずかゆい。

 

「あそこにあるのは全部刀か?未完成なものは見て分かるが、どう見ても成功作のが混じっている気が……いや深くは言及しないが」

 

 む、そこに目をつけるとは若も中々にやりますな。

 あれ―――――――というかゴミの山なのだが、俺が認められなかった駄作の捨て場所みたいなものだ。

 色々と血迷っていた時期の刀や未熟だった頃の刀も捨ててある。

 中にはかなりの年代物の刀もあるし、すきま時間には興味本位で漁ったりしている。

 ときどき面白い発見があるからやめられないんだよねー。

 

「おっ?」

 

 俺の許可も得ずに勝手にゴミの山を漁り出した若は、ある一振りの刀を手に取って疑問の声を上げる。

 

「…………なんだコレ?なんで刀身に刀身がブッ刺さってるんだ?」

 

 アレは、確か数年前に作ったものだな。

 某鬼を滅ぼす漫画に登場する六つの目の鬼が所有する、気持ち悪い刀を再現しようと頑張ってみたんだが……。

 当然の如く失敗。

 刀身をくっつける際に溶かした接着部分が爆発してえらい目に遭った。

 とはいえ、過去の失敗はもうしないのでもう一度作ろうと思えば成功するだろうが。

 

「有り得ない軌道で敵を襲う武器を作ろうと思ったんですけどね、当時の私には難しかったようです」

 

「そもそも鞘に収まらないと思うんだがな」

 

 うるさい若。

 俺は刀を作る専門家であって、鞘を作る専門家ではないのだ。

 文句を言うのならば俺に言わないで鞘職人に言って欲しい。

 

 それからも、片腕に仕込ませておく刀だったり口に咥えて扱う刀の話をしたりと、いい具合に盛り上がった。

 何故か若からの視線が恐ろしいものを見る目に変わっていたのだが、自分がヤバいことなどとうに理解できているので気にしない。

 ……俺が刀を手に取っただけで無言で半歩下がるのは心にくるものがあったが。

 

 久しぶりに他人と話し込んだことに多少の満足感を覚えていると、若が顎に手を当てて言ってきた。

 

「なあ、頼みたいことがあるんだが」

 

「なんですか?結婚ならお断りですが」

 

「いや、それは俺もちょっと…」

 

 真顔で返すな、殺すぞ。

 

「そんなことはどうでもよくてだな。頼みってのは俺の刀を作って欲しいんだ、最近折れちまったし」

 

「はあ、私は構いませんが。ですが何故私に?もっと腕の良い鍛冶師はいるでしょうに」

 

「……いや、お前がいいんだ。できれば赤い刀身にしてくれると嬉しい。それと柄の部分は朱色の炎で」

 

 なるほど。

 貴様まさかあのゴミ山に感化されたな?

 あそこには前世の夢だった中二臭い武器がゴロゴロ転がっている。

 たぶんだが、煉獄さんの刀を見たんだろうね。

 男たるものその考えは理解できなくもないが、俺に頼むまで好きになったのかよ。

 

「分かりました。ですが、柄の部分は素人なのでお粗末になってしまうでしょうから、他の鍛冶師に頼んでもいいですか?」

 

「おう、全部お前に任せる」

 

 ニカッと笑う若は嬉しそうだが、対照的に俺は全力で肩を落としていた。

 

 いや、俺は嫌なわけではない。

 ただ、人生初任務がこんな若造からの依頼とは思っていなかっただけなのだ。

 初めては長とか師匠から任されると思っていたのに……まあ早いことに越したことはない、か。

 

「納品日時はそっちの好きな具合でいいぞ。数年は余裕で待てるから」

 

「数年はかからないです私のこと舐めてるんですか。……納品日時は、そうですね。今日から丁度一か月後、貴方の家まで送り届けさせてもらうことにします」

 

 彼の有名な「村正」を作った千子村正も言っていた。

 例え依頼人が悪だとしても、鍛冶師は鍛冶師のやることを全うするだけだと。

 若のような戦場に出たことのない子供でも、これは立派な依頼。

 俺は全力を尽くして、若の期待に応えなければならない義務がある。

 そう思うと、なんだか胸が熱くなってきた。

 

 これが恋……!トクゥン……なんてのはなく。

 ただ、前世の仕事マンだった頃の感情が沸き上がってきただけである。

 

「あ、もしかしたら俺の仲間もお前に依頼しにくるかもな」

 

「は?」

 

「いやなに。俺の修行仲間のアイツらにもお前のことを以前紹介したことがあったろう?」

 

 覚えてないのか?みたいな顔されても、記憶にないものは思い出せない。

 紹介されたというのなら会っているはずだが……。

 

「ほら、アイツらだよ。紫髪の女と、青髪の男。結構仲良さげに喋ってたじゃねぇか」

 

 青髪……紫髪……ねぇ。

 

 あっ。

 

 ……思い、出した。

 確か、あれは数ヶ月前のこと。

 あまりにも閉鎖的な()を心配してか、俺の親父が若たちの所に連れて行ったことがあった。

 

 残念ながら、そこで彼らとは仲良くなることは出来なかったけどね。

 刀の錬成の邪魔をされ不機嫌MAXだった俺と、師匠にボコされていて同じく不機嫌MAXだった二人の間で喧嘩が起きてしまったのだ。

 師匠と親父はたぶん子供同士の喧嘩だと甘く見ていたんだろうけど、俺からすれば初めての戦闘である。

 緊張と高揚で不思議な気分になりつつも、あたふたと焦っていた若の手から木刀を奪い取り、二人相手に殴りかかった。

 今でもあれは大人げなかったと思っている。

 三十路の俺がするようなことじゃないよなホント……。

 

 しかし、当時の俺からすれば知っちゃこったない。

 錬成された刀を何度も素振っていたのが功をなしたのか、二人を相手取って勝ってしまったのだ。

 流石に子供相手に(俺も身体能力的には子供だが)直接攻撃をすることはなく、木刀を破壊―――――――つまり武器破壊することによって事なしを得た。

 事なしを得たのだが、それのせいで彼らとは確執があるのだ。

 

 ……あのときの俺はマジでどうかしてたよな。

 我ながらそう思うわ。

 

「だからさ、そんときはよろしく頼むぜ?」

 

 馴れ馴れしく肩を叩いてくる若。

 それを手で払いつつも俺は苦情を出す。

 

「そうですかね。私と彼らの間にはそんな気安い関係はないと思いますが」

 

「そうか?この前なんてアイツらお前のこと話してたぞ?今度会ったら喜んで歓迎してやろうって」

 

「絶対嬉しくない歓迎だと思うのは私だけなのでしょうか……」

 

 そう呟いて俺は目頭を指で押さえる。

 

 はあ、こんな勘違い野郎が次期里長で大丈夫なのだろうか……。

 

 

 

 




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