「私の仕事は幻想郷の落葉樹を秋に紅葉させること、それは私が葉を塗ることで起こしているの。」
静葉は妹紅が隙間から取り出した細長い物、絵筆を受け取り、隙間から取り出し窓際に設置した大きな物、キャンバスの前に移動しながら呟く。
「塗っているのですか!?」
「ええ、私が塗ることで紅葉になりますよ。」
そうして、静葉は東京都庁から良く見える新宿御苑の絵をキャンバスに描き始める。
その絵の描き方は普通と違って、下書きをしないでいつの間にか絵筆に付いていた絵の具で迷い無く描き出していた。
『いやー、見事なもんだ毎年数多の木の葉を塗っているからか筆に迷いが無いな、実は芸術の神だったりして、な~んてね。』
実際、静葉の絵は下書きをしていないとは思えない程、美しくはっきりとした新宿御苑の風景画を描き出していった。
「これで、完成ね。」
そうして、描き始めから僅か5分程で静葉は新宿御苑の風景画を完成させた。
「美しい絵が出来ましたね…ですが、これでどうやって紅葉にするの…です…か…?」
完成するまで何も変わらず懐疑的な様子だったアナウンサーだが、みるみるうちに新宿御苑が絵の通りに紅葉していく様子を見て言葉を失った。
絶句するアナウンサーに「普段は直接塗っているのですが、この世界に長居する訳にもいかないので、このキャンパスを通してここから良く見える、あの新宿御苑を秋に染め上げました。」と答える静葉。
「ちなみに~私の仕事には姉と同じように~未熟な果実を塗って、完熟させたり~なんてことも~しているんだ~。」
それに追随して穣子も自分の仕事について話す。
「ねぇ、私が塗って作った紅葉は美しいでしょう、この世界の皆さんも私の作った紅葉を見て楽しんで欲しいわ。」
カメラを見ながら静葉は視聴者に語りかける。
「あの…すみません、一つ質問なのですが今紅葉させて紅葉シーズンをあちらが考えていたら迷惑にならないでしょうか?」
アナウンサーがごもっともな意見を言うが「それは問題無いですよ、私は落葉も司っているのでこのまま二月の間、落葉させないでおきましょう。」常識を越える方法で解決される。
少し経って、落ち着いたアナウンサーがふと思ったことを尋ねる。
「すみません、今ふと気になったことを質問させてください。」
「はい、なんでしょうか?好きなことを聞いて構わないですよ。」
「静葉さんは、幻想郷の紅葉を毎年起こしているとのことですが、幻想郷では静葉さんが仕事をしないと紅葉にはならないのですか?」
その質問はある意味根本的なことだった。
「そうですねー…答えるとするならば、私がやらなくても構わないですが私の仕事になっていますね、幻想郷には様々な妖怪が存在しており例えば季節の妖精もいますし、賢者の一人である摩多羅隠岐奈も四季を操れますからね。」
「でも~他人の仕事は被っていても~独り占めしたり~奪わないのが基本的だよね~、だって私以外にも~豊穣を司っている神は沢山居るけど~私も祀られているからね~。」
静葉が質問に対して適当と思われる答えを言い、それに穣子が追随して補足説明をする。
「説明してくれてありがとうございます。」
アナウンサーが二柱の説明に感謝した後、今度は静葉が作った紅葉に話題が移りその話題でこの番組の終了時間まで話した。
「それでは本日はもうお時間なので終了とさせていただきたいのですが、ゲストの皆様は何か最後に話したいことはあるでしょうか?」
アナウンサーがそう三人に尋ねる。
「私はね~特に無いよ、楽しいトークだったよ~」
「私は今回こうして秋姉妹とこの世界で交流が出来て嬉しいですね、もっと多くの人に幻想郷のことを知って欲しいですからね。」
「私はそうですね…、あの絵はどうしましょうね?あの絵自体には特殊な力がある訳では無いので、切り裂こうが燃やそうが何も起きないですが、折角描いたので出来れば貴女方が貰ってくれませんか?」
静葉はアナウンサーにそう提案した。
「貰ってもよろしいのですか?それでは有り難くいただきます。」
こうして、静葉の描いた絵は番組の物となって以降スタジオに飾ることとなった。
「ア~ッハッハッハ~、それにしても妹紅が敬語とか~違和感が凄いから笑えるね~。」
番組が終了した夕方、大使館の代わりとして妹紅が使っているホテルの一室で穣子は爆笑していた。
ちなみに幻想郷の大使館は現状必要が無い。
現在、幻想郷から来る者は妹紅の目に届く場所に居て尚且つ一人か二人しか来ないためビザ等の対応は必要無い上、幻想郷から持って来た様々な物を置いたり大使である妹紅が住むといった、用途として使うことも妹紅が隙間を開く「画面の境界」を所持していて必要無いので大使館を建てなくても何も問題が無い。
なので、大使館用に貰った土地ではなく政府に貸してもらったこの部屋が実質的に外の世界における幻想郷の土地である。
それはさておき。
「そこまで笑わなくてもいいだろ!」
爆笑されて憤慨する妹紅に「穣子、笑いすぎだと思うのだけど、妹紅も怒っているしそこまでにしておいたら?」静葉が加勢してくれる。
「いや~ごめんね~普段は幻想郷の中でも~若干荒くて中性的な口調だから差が~フフ~。」
「はぁ~そんなに似合わないかな、私は元とはいえこれでも大貴族の娘で四人の兄は当時の政治を牛耳ったくらいの高貴な一族なんだぞ、場に応じて敬語くらい使えるよ。」
自分を元は高貴だと妹紅は言うが、そこまで本気で言っていない。
「そう言えばそうだったね~忘れてたわ~、普段の性格からかけ離れている経歴だからついね~。」
そうして穣子が落ち着いてから、妹紅が秋姉妹に質問をする。
「それでさー、秋姉妹はこの世界に来てどう思ったのさ?、ここは外の世界でも特に大都市だけどね。」
その質問に先ず静葉が答える。
「私は意外にかなり森林が多い…と思ったわね、確かに幻想郷とは比べるまでもない建物ばかりだったけど、それらが発展しているわりにはかなりの面積を森林が占めていたわね。」
「ま、今回選んだ場所はこの街でもそういう場所だったからな、そもそも静葉の力を見せるには良い立地だったから選んだんだからさ。」
「それでも、大都市にあちこち森林が有るのは凄いことだと私は思うわ。」
静葉の感想は東京を褒める内容だった。
「感想ありがとうな静葉、それなら…穣子はどう思った?」
次に穣子に尋ねる。
「私はね~気配であんまりここ近郊の農地がさ~使われていないのが判ったわね~。」
「今の外の世界は新しい技術で新しい仕事が沢山出来たから、そちらに流れてあんまり農業をしないらしいな。」
「あ、やっぱり~そうなんだ~折角あるなら使えばいいのにな~。」
穣子は農地が余っている外の世界の現状に疑問を呈する。
「まぁ、幻想郷だと誰の物でも無い土地が溢れていて、例え領有権を主張しても放置すればまた誰の物でも無い場所になるからな、幻想郷と外の世界だとそういう差が出るんじゃないかな?」
「確かに~それなら~そうなるのかもね~。」
そんな風に夕食の時間まで会話をした。
翌日の朝
秋姉妹は、昨日穣子が見せられなかった力を見せるために、届けてもらった柿のプランターで完熟させそれを妹紅が食べる様子を動画で撮って、前に開設した幻想郷のチャンネルで流したり朝食を取ったりした。
それから、「いや~皆さん見送ってくれて~ありがとうね~楽しかったわ~。」「私もこの世界に来て楽しかったですし、見送ってくれて凄い嬉しいです。」二柱がそう言った後、「では、開きますよ。」妹紅と共に見送られながら隙間を通って幻想郷に帰った。
静葉がキャンバスで土地一つを紅葉させるのは原作で出来るかは知らないですが、普通に直接塗ってたら時間がかかりすぎるので、前に動画で見た懐かしい名作をリスペクトしたとある二次創作ゲームでやってた方法にしました。
これなら常識を超越した存在なのが、作品内で視覚的に分かり易いので採用しました。
でも、穣子が未熟な果実に色を塗って完熟させるのは、原作の東方酔蝶花で柿にやっていましたね。