すみません、展開に悩んでいたら少し遅れました。
「それで?私を急に呼び出して何の用?」
突然、妹紅に呼び出された紫はまるで、私は特に悪いことはしていない、と言わんばかりの態度で隙間から出現した。
「惚けるつもりなら具体的に言ってやるが、久佗歌の件を私に押し付けたことだ!」
そうなのだ、この程度の問題を賢者が思い付かない筈がないため、前日の妹紅が久佗歌を宥めることも含めて全部読めていて計画していたであろうことは容易に想像が出来る。
「隠岐奈の実行したリリーホワイトを使った作戦もだが、今回の久佗歌の暴走は幾ら何でも私の負担が大き過ぎるだろ。」
「まあ、そうでしょうね、外の世界では貴女が幻想郷に関係することで責任や対処をしなくてはならないものね。」
紫は素直に妹紅の負担が大きいことを認めるが、そこで止めずに言葉を続けた。
「ですが、隠岐奈の時は仕方ないという態度だったようですし、今回も抗議ではなく文句という表現ということは貴女も本当は自らの負担については諦めていて、実は別件…そう例えば…庭渡久佗歌のことかしら?ねぇ…そうでしょう。」
「なんだ、結局お前には全部お見通しということか、ま、あわよくば待遇を改善してほしいのも嘘ではないが…そうだよ認めるよ、今回は久佗歌のことについてだ。」
ちなみに待遇の改善については、隠岐奈の時に言わなかった理由は、あの時も言おうかとも思ったが胡散臭いで済む紫と違って隠岐奈には得体の知れない恐怖を感じたため、待遇の改善の話は止めておいた。
それはともかく、久佗歌のことだ。
「未だ、外の世界は妖怪が全力を振るうことはもとより、ある程度の知名度と土地による補正があってもあんだけの力を振るうのはかなり厳しい筈、今頃久佗歌は家で寝込んでいても可笑しく無い筈、なのにこんな無茶をするように仕向けてどういうつもりだ。」
久佗歌のあれはどう考えても危険なオーバーワークだった。
それをこの賢者が気付いていない訳がないことから、これも作戦の一部なことは明らかと言っていい。
「仕向けるとは言ってもあれは庭渡久佗歌が自発的にしたことで自己管理の範疇、では貴女は納得…しないでしょうね。」
「そうだな、納得していたら呼んでいないさ。」
そんな会話をして漸く、紫は妹紅に目的を教えるつもりになったようで、「そうね、今なら教えても問題は無いですし、良いわ目的を教えてあげましょう。」そうして、妹紅は理由を聞くこととなった。
「庭渡久佗歌にあれ程自由に行動するよう仕向けた理由、それは外の世界の人間に幻想は身近であることを実感させるため、よ。」
その理由は単純だが、よく分からない内容と言っていい。
「身近に感じさせる?今回の計画で本当にそうなるものなのか?それだけじゃ分からないからもう少し頼む。」
妹紅は懐疑的な様子であり、具体的な説明を求める。
「構わないわ、一から説明して差し上げます。」
紫はこう前口上して話を続ける。
「先ほど貴女が言った通り、未だ外の世界は妖怪が住むには適した状態ではないわ、そのためにも今まで幻想郷から貴女を含め様々な人物を外の世界に出したわ。」
前提を紫が今までの再確認をするように、幻想郷の住人を外の世界に出した一番の目的を話す。
「特にリリーホワイトの暴走の時、首都である東京の広い範囲で派手に目立つことで幻想の存在を認めさせる、そんなつもりだったのです。」
「ですが、」と紫は言い淀む。
「中断していた3ヶ月で出来るだけ正確に調べた所、幻想の肯定する割合は予想よりも増加していなかったことが判明しました。」
「ふ~ん、予想だとどれくらいの予定だったんだ?」
「幻想郷での幻想の強さを1000とした場合、リリーホワイトが来る直前で40程だったので、70前後になって欲しかったのですが、結果は50程と芳しくないものでしたので、計画の方向性を変えることにしました。」
「ああ、ここ最近神ばかりだったのはそういうこと、か。」
紫の言う作戦の方向性を変えるということに妹紅は想像がついたらしくそう言って、紫はその想像の答え合わせをするように、まだ話を続ける。
「貴女が開いた記者会見で神という種族は、幻想郷や他の世界に住み肉体を持つ本体と、祭られている御神体に宿る肉体を持たない分霊から構成されているという、神社等で身近な存在であることは説明しましたが、本当に身近だと思っている者は少ないでしょう、なので今回の件です。」
紫はそこまで前提を話して漸く本題の今回の件に繋がるらしい。
「やっとか、思ったより前提の説明には長い時間を使ったな。」
「あらせっかちね、今から説明しますからもう少し落ち着いてくださいな。」
「なら聞かせてくれ、何故久佗歌の暴走が必要だったのか。」
妹紅の催促により紫が話を続ける。
「先ほどの説明の通り神の分霊という幻想が身近にあるのに、それを本当だと思う者は少ないでしょう、なのでそれが本当だと示すために今日、外の世界で信仰されているニワタリ神の本体である、庭渡久佗歌に各地の神社を巡ってもらいました。」
「成る程、本体は分霊の見ていた光景を共有出来るから久佗歌が各地の神社で見守っていたことを、本人の口から話してもらう、と。」
妹紅もどういうことなのか具体的に予想がついてきた。
「そして、昨日今まで連れて来た者達と比べて自らは目立てていない、すなわち地味であると自覚してプライドが傷つけられた庭渡久佗歌は、元々の性格を加味しても予想通りに自らの名誉のため、予定より多くの場所を巡り、必死に思い出して神社によく訪れていた者の名前を呼んだり、頼みごとを快く引き受けたり、近くで困っている者を助けたり等々してくれました。」
「そして、それらの行動が分霊の存在を強く意識する切っ掛けとなり、引いては幻想を信じることに繋がるということか。」
そんな話を一時間程暫く続けた。
久佗歌の話が終わると、急に紫があることを妹紅に言い出す。
「そうそう、今年最後に行く人員が決まったわ。」
「へ~もう決まったのか今回は早かったな、で誰が行くんだ?」
妹紅がそう尋ねると紫は改まった態度で告げる。
「我々賢者は、最後は幻想郷でも重要な存在が行った方が良いと判断しましたので、私が向かいます。」
「お前が行く?!賢者であるお前が直接行くのか!!」
妹紅からすると普段他人をこき使う紫が直接赴くとは思わず、驚愕する。
「ええ、元々最後の来訪者が行ったら幻想郷に外の世界の人間を招き入れる予定だったでしょう、だからその準備も兼ねて、ということよ。」
そう言うと紫は話はもう終わりと言わんばかりに隙間を開いて、驚愕で動きが止まっている妹紅を尻目に去って行った。
紫が去った後、妹紅はまるで機械が再起動したように動き出すと「はぁ~、今までも忙しかったがこれから今年で一番忙しくなる…な。」と言って溜め息をついた。
今回で外の世界の人物が幻想郷に行く前に来る来訪者は終了です。
そして、作中の新年から外の世界の人間が幻想郷に入る新しい章です。
追記
今日から忙しくなるのと、最近執筆の勢いがどんどん低下しているので五日に一度更新にします。
後、今回の話し改めて見ると終わりが気になったので少し追加しました。