幻想郷の接触   作:ゼロ・ワン

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すみません、また遅れました。
最近間に合わなくなってきたので、次回は思いきって少なくとも月三回投稿を目処にします。

今回は前回の続きとして、マミゾウとの会話からです。

たまに思うのですが、幻想入りしたいとか幻想入りを果たしたという歌詞の歌は何か間違っている気がします。


蚕食鯢呑亭での一幕

蚕食鯢呑亭で一緒に酒を飲みながら楽しく話す妹紅とマミゾウだが、その内容とは妹紅が先ほどまで読んでいた報告書についてだった。

「それで、自分が日本国民という大きな単位で好かれているのを知って照れた、ということじゃな。」

もとい、報告書を読んでいる時の妹紅の様子についてだった。

「いや待てっ!そうは言ってないだろ!」

妹紅の話を聞いてそう結論付けるマミゾウに、妹紅はそんなことは言っていないと、反論するものの。

「ほ~う、違うと言わないということは~やっぱり照れたのは本当なんじゃな。」

「あ、えっと、…はい。」

妹紅の言葉に否定が無いことからマミゾウにそう図星を指摘され、ボソッと言って認める。

「ほうほう、文章で読んだだけで照れるとは儂より年上にしては、可愛らしいところがあるのう。」

「いや辞めてくれ!」

からかわれたことに恥ずかしくなって妹紅は酔って赤くなった顔を更に赤くする。

 

そんな押せ押せで妹紅をからかうマミゾウに、カウンターの向こう側から水を差す者が現れる。

「マミゾウさん、その辺にした方がいいんじゃないですか?ほら、妹紅さんが拗ねそうですよ、拗ねて折角の新しいお客さんが来なくなったらどうするんですか。」

そんな呼び掛けをした者は、いつもトレードマークの鯨の帽子を被っている鯢呑亭の看板娘、その名を奥野田美宵という。

「おやまぁ、それもそうじゃなこの辺で止めておくとするわい。」

「はぁ~助かったよ、…私が拗ねるは兎も角、ありがとう美宵ちゃん。」

「いいんですよ、それより何のために妹紅さんは外の世界で仕事をしているのか、聞いてもいいですか?」

「う~ん、どうしようかな………うん、他のお客さんも居ないしここだけの話としてなら、いいよ。」

「儂は紫に聞いたが、妹紅殿からの話も聞いてみたいのう。」

美宵に頼まれたので、妹紅は何故外の世界に行くのかを話すことにする。

 

 

「先ず、私が外の世界で仕事をする理由は簡単に言ってしまえば紫に、外の世界に行けるようにする代わりの条件だったからだな。」

「うん、それなら美宵は知っておる、ここによく訪れる天狗から聞いていたわい。」

「はい、文さんはよくここに来るのでそれは聞いたことがあります。」

その理由を聞いて妹紅は納得しながら、もう少し詳しい説明する。

「へぇ~、あいつここに来るんだな~今日初めてだから知らなかったよ、なら具体的な理由に移るが私の仕事の真意としては、科学の発展で妖怪が暮らしにくくなった外の世界を再び妖怪が暮らせるようにすることだな。」

「成る程、外の世界は妖怪がもうまともに生きていけないと聞きますね、…マミゾウさんは別ですけどね。」

妹紅の話に納得するが、直後に直ぐ側にいる例外のマミゾウを苦笑しつつあげる。

「儂はその辺の木っ端妖怪とは違って大妖怪であり、神でもあり、人間の社会にも溶け込んでいるからじゃな、逆に言えばあの時、これくらいでないと幻想が存在出来ない外の世界で、炎を纏って派手に飛ぶ妹紅殿を見て驚いたものじゃ。」

妹紅の初めての遊覧飛行の際、動揺のし過ぎでネットに一言溢したあの当時を思い出しつつマミゾウはそう言う。

「でもなんで科学が発展したから外の世界の妖怪は衰退したのでしょう?科学なら幻想郷でも河童が発展させているのに不思議ですね。」

「そういえばそうだな、幻想郷でも河童が居るから科学は発展しているんだったな、なんでだろうね。」

外の世界は科学が発展したから妖怪が衰退した筈だが、河童による発展という矛盾によって二人が困惑する最中にマミゾウが話を始める。

「二人とも困惑しておるしちょうどよい、わしら妖怪と妖怪の天敵である科学の基本とその相関について話をしておこうかの。」

そうして、先ほどまでの話と少し逸れたように感じるマミゾウによる科学のカラクリの解説が始まった。

 

 

「先ず二人が知っている通り基本妖怪とは人間等の通常の生物とは違う、何故ならば我々は精神にその生命の重きを置き、自らの存在に沿った行動をとりそれによって自らの存在を強く固持し、自ら以外の精神を持つ者にその存在を確実視される必要がある、それすなわちコギト・エルゴスムと多くの幻想を信じる者が居なくては生きていけないということじゃ。」

「ああ~そうか、あれか!妖怪の完全な死の方法があれなのはそれだからか。」

「私のような座敷わらしも屋敷という容れ物に居ないでいると、消滅しますからね。」

マミゾウが言っていることは小難しいが二人とも、妖怪は自らの存在で説明された現象が別の理論で説明されると死ぬ、そのことを知っているので理解する。

「そして、差はあれど幻想郷と外の世界で両方共に科学が発展していて、それでいて何故外の世界だけが妖怪の生存に科学が関わるのか、それは科学の性質によるところが大きいじゃろう、勿論一番は結界の影響だと思うがの。」

「確かに一番は結界だろうが、科学の性質って?」

最後に一番は結界の影響と言いつつも、幻想郷が妖怪の楽園なのは科学の性質での差というマミゾウの言葉を妹紅は理解出来ない様子。

そんな、よく分かっていない妹紅を見ながらマミゾウは話を進める。

 

「科学は帰納法と演繹法を繰り返すことで、事実を確認することだと言える。」

「すみません、帰納法と演繹法って何ですか?」

そこまで、話したところで美宵が疑問の声を上げる。

「おおそうじゃの、そこは話しとかんとな、簡単に言えば帰納法は多くの事実から法則を導き出すこと、演繹法は帰納法で導き出された法則から別の事象を導き出すことだのう。」

「流石はマミゾウさん、そんなに難しいことも知っているなんて、外の世界と幻想郷を往き来しているだけありますね。」

そうして、そんな説明をして美宵が納得したところで直ぐに続きを言う。

「先ほど言ったとおり、科学は帰納法と演繹法を繰り返すことで事実を導き出す、その一番の獲得方法はやはり実験だと言える。」

「そして外の世界の科学の実験は、大抵の場合は手に入れたい事実のために出来るだけ邪魔が入らない実験室で行うものじゃ、その場合当然妖怪の邪魔は入らず、妖怪の影響を受けない純粋な結論が手に入る。」

そこまでマミゾウが話したところで、妹紅は理解して話を先読みする。

「成る程、前提が違うってことか。」

「そういうことじゃ、妹紅殿も外の世界によく出ているから話が早いのう。」

それで、うんうんと納得した二人に対して「あのぅ、私は外の世界に行ったことないので、わからないんですが…。」美宵が苦言を呈する。

 

「あっごめんね、話を途切れさせた挙げ句、二人で完結させてしまって。」

「儂もすまんの、では話の続きとして、それらの実験で得られた、妖怪の影響を受けなかった事実が公表されることで、しっかり調べたからと妖怪が引き起こすその結果と反する一部の事実は無視され、妖怪が引き起こすと考えられた現象には科学による説明が入る、それらで二重に妖怪は弱体化して、どんどん外の世界での影響力を失ったということだのう。」

マミゾウの話はそこで一旦終わったので「じゃあ、こっからはさっき私が言った前提の話だが、私から話させてもらうよ。」妹紅が話を引き継ぐ。

「単純な話なんだけど、前提として外の世界は人間が科学を発展させるから、さっき旦那が話してくれた理由で妖怪の要素が無い科学になるが、幻想郷なら妖怪が居ることが前提だから妖怪の要素を持つ科学になっているってことだな。」と、妹紅が話を完結させる。

 

「そういうことなんですね、解説ありがとうございます、ところで、解説していただいたところでお聞きしたいんですが、なんであの時点で結論が分かったんですか?マミゾウさんは外の世界に出ているからと言っていましたが、それだけにしては早すぎるような?」

「それは、私の主な行動指針は外の世界に幻想を持ち込むことで、幻想が存在することを常識にしてしまうことだから、…今まで大して考えていなかったけどよくよく考えてみれば、それは外の世界の幻想が存在出来ないという前提を変えることだと気が付いたんだよ。」

そんな妹紅の言葉と共にこの話は終わった。

 

 

話が終わって暫く、二人で美宵が出す料理を食べて酒を飲んで居るとふと思い出したかのようにマミゾウが妹紅に質問をする。

「そういえば、妹紅殿が見ている報告書はどうやって入手したんじゃ、いくら友好関係でも流石に妹紅殿に見られると不味い名前が書かれたものを当人に渡すわけはあるまいし。」

「やっぱり、旦那も気になるのか?」

マミゾウの質問に妹紅が少し可笑しな言い回しの質問を返す。

「も、とはなんじゃ?それだとまるで妹紅殿も知らないようではないか。」

「実はこれ、いつの間にかあったメールに添付されてたんだよ、メールそのものの内容は暇なら読んでもいいってさ、ちなみに送り主は賢者の摩多羅隠岐奈だったよ。」

妹紅は外の世界において人気なのでメールが沢山来ることが予想されるため、メールを設定で受け付けなくしている筈だが、どうやって突破したか妹紅にはわからない。

「ふ~む、あの噂に聞く賢者がのう、妹紅殿も好き放題されているものじゃな。」

「まぁ、私以外に外の世界にもそうする予定らしいからな。」

 

そこで話が終わってまた暫くすると今度は八雲紫の話をしていた。

「ああ見えて、実はかまってちゃんなところがあるんじゃ、あの賢者は。」

「紫がかまってちゃん?あいつそんなところがあるんだな。」

そんな風に二人で話して酒を呑んだくれて、「このまま朝まで飲む感じですね、分かりましたよ~。」美宵が出す料理に舌鼓を打って、二人は夜明けまで蚕食鯢呑亭で楽しんだ。




作者は美宵ちゃんの最初の人間組には悪戯して、悪い笑みを浮かべていたのに、途中からの大妖怪達にはあたふたするしかないの可愛くて好きです。

今まで明言をあんまりしていませんでしたが、描写はしていたので読者の方々は理解していたとは思うのですが、ここで明言します。
本作品の幻想郷の目標は外の世界を幻想で塗り替えることです。

追記
恐ろしく恥ずかしいことにまたタイトルを入れ忘れていました。
タイトルは蚕食鯢呑亭での一幕です。
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