冬の寒さが強くなり始める12月10日
妹紅は今日特に予定が無いので、大使館で幻想郷から訪れた面々を見つつも縁側でゆったりと過ごしていた。
「いやーやっぱり寒い、流石に12月はこっちでもちゃんと冬だな。」
そんなことを呟く妹紅だが、直ぐに反論が飛んでくる。
「そうかしら?雪は降ってないし、微妙に気温が高いし、こんなのが今の冬なんて、こっちの世界は随分温かくなったものね。」
そう呆れたような反論をするのは、雪女である冬の妖怪レティ・ホワイトロック、幻想郷ではくろまく~の名言(迷言)で有名である。
「まぁそれだけじゃなくて、ここは東京だから黒潮の影響で暖かいし、飛騨山脈で雪雲は日本海の方で押し留められるから、仕方ないよ。」
若干不満気なレティに妹紅はそれだけじゃないと説明する。
「そういえばそうだったわ、幻想郷と東京を比べるのは酷だったわ、それなら仕方ないわね。」
妹紅の説明に納得したので、レティは話を切り替える。
「ところで話は変わるけど、彼女が来てるけど居ても気にしないの?確か貴女は彼女と仲悪いんじゃなかったかしら?」
妹紅と仲が悪い彼女とレティが呼ぶ人物に妹紅は少し考え込む。
「彼女?……ああ輝夜のことか、いや確かにあいつは気にいらないけど…」
「けど?」
そう、今日は妹紅のライバル蓬莱山輝夜が来ているが、妹紅は何もするつもりは無いようだ。
「こう言うのは難だけど私が八つ当たりしてるだけだから、あいつが楽しんでいるのを邪魔するわけにはいかないよ。」
妹紅は門の方を見ながら、そう言った。
一方その頃話題の輝夜は外の世界の人間達と話していた。
「おや?そこの高貴そうで美しいお方、取材させてもらって宜しいでしょうか?」
「あら高貴だなんて見る目あるわね、いいわ取材をお受けしましょう、私は蓬莱山輝夜、貴方達にはかぐや姫と名乗った方がいいかしら?」
高貴と言われて輝夜は目に見えて上機嫌であり、彼女は喜んで記者と話す。
「おや、貴女は藤原大使を任命したあの、蓬莱山輝夜だというのですか!?」
そう輝夜は永遠亭の主人として署名したので、外の世界でも名前だけは知られている。
「ふふんっそうよ!妹紅を任命した一人それが私よ!」
「それに、あの!かぐや姫なのですか!?」
輝夜は記者が自分を知っていることに気を良くしているので、記者はテンションを高くして話を盛り上げる方向で話す。
「そうそう!確かに私あの頃は有名だったけど、まさか今でも語り継がれているなんて、皆私が好きだったのね!」
「はい、皆さん蓬莱山さんにそれだけ骨抜きにされたのでしょう。」
実際、輝夜の美貌は現代でもと言うか、時代を、性別を、年齢を越えて誰が見ても美しい。
「それにしても、話の通り本当にお美しいですね、これは貴族の方々が放っておかないわけですね。」
記者はこの美貌には飛鳥や奈良時代の人々、例え貴族であってもデレデレしても仕方ない、と褒め称える。
「うふふ!そうでしょ!そうでしょう!」
褒め称えられて、輝夜の機嫌は頂点に達する。
そこで頃合いと見た記者はとある質問をする。
「そう言えば、蓬莱山さんは月のお姫様だったという言い伝えがありますが、それは本当なのでしょうか?」
「ええ、そうよ私は元月の姫だけど、それがどうかしたの?」
頃合いを考えて輝夜に重大な質問をしたつもりだったが、彼女はあっさりと答える。
それどころかそれがどうしたのと言われて記者は少し困惑する。
「そ、そうですかでは本当に元々は月の住人で尚且つ、お姫様なんですね。」
記者はあっさりしすぎていて困惑したが、あっさり答えてくれるのなら、と輝夜と話を続ける。
「あっ、そうそう昔は地上に一時的に追放される刑を執行されたけど、これでも愛されているのよ。」
そう思って話していたら、輝夜は少し曖昧なことを言う。
「はて?愛されているとはどのことを指しているのでしょうか?地上に降りて貴族の方々に愛されていたことでしょうか?」
輝夜の発言には具体的な時期が欠如しており、竹取物語でも語られている頃の地上のことか、刑期が終わった後の月でなのか、それとも何らかの事情で住んでいると思わしき幻想郷でのことなのか、が分からない。
「それは違うの、私って確かこっちの世界の話だと、最後は月の使者達に連れ戻されることになっていたと思うのだけど。」
「はい、竹取物語ではそうなっていますね。」
記者は高校や中学で習う日本の一般常識と言っていい、竹取物語の知識を引っ張り出しながらそう言う。
「実はその使者の一人が私の元家庭教師でね、その人に私が帰りたくないっていったら、なんと全てを投げ出して一緒に逃げてくれたのよ。」
そう輝夜の忠実な従者は高い地位があったのに、輝夜への愛だけで逃避行をしてくれたという過去がある
なお、輝夜はわざと言っていないが、輝夜の従者は他の使者を全員虐殺したので、悠々と逃避行が出来たのである。
「ほうほう、ではその愛の逃避行をしてくれた従者さんのことをお伺いしても?」
記者は少しロマンチックな表現をするが、どうも輝夜の方も少し嬉しそうな様子。
「あらあら、愛の逃避行だなんて~それで私の従者は月においては所謂ところの建国の功臣なのよ。」
「!?本当ですか!建国の功臣である方を従者にしているのですか?」
記者は輝夜から驚くべき情報が飛び出る。
「ええ、月の皇帝である月夜見と共に月に私が住んでいた都市を作り上げたの、そしてその名前は月の言葉では八意☓☓と呼ばれ、こちらの世界での名前は八意思兼神であり、そして幻想郷では八意永琳と名乗っているのよ。」
そう輝夜の従者は八意永琳、月の都を創設した神である。
「なんとあの!八意思兼神なのですか!と言いたいところですが、すみません、私はそこまで神様に詳しくありません、なのでどんな神なのかすら分かりません、ですので少し概要を教えていただけないかと。」
ズコー
ふふんっとか、ドヤーとか、自分の従者は凄いでしょ、と言いたげだったが、知らないということで輝夜はズッコケる。
「そ、そう、それなら私の永琳について教えてあげるわ。」
そう言って輝夜は永琳について自慢し始めた。
その後半日の間、輝夜はその美貌と話しの上手さで群がって来た記者達を惹き付け続け、楽しい一日を過ごした。
その日の夜、晴れて美しい満月が映るそんな夜。
今日、昼にレティと話して少し黄昏ていた妹紅と、記者達にちやほやされて満面の笑みを浮かべていた輝夜は今日のことを、妹紅の執務室で楽しそうに話していた。
先ず妹紅が輝夜に語りかける。
「それで、今日はどうだった?楽しかったか?」
「ええ!楽しかったわ~やっぱり誰かに褒め称えられたり、ちやほやされるのって楽しいのよね、最近は皆私に慣れてここまでになることは減ったもの。」
本当に輝夜は嬉しそうに、そう若干興奮しながら微妙な早口で言う。
「それなら今日来て良かったな、幻想郷でも永遠亭に閉じ籠っているわけではないけど、いつも行く場所だけじやなくて他の場所に行くのも楽しいからな。」
「うんうん!外の世界は技術が凄いわよね、流石に月と比べれば劣っているけど、それ以上に発展の速度が凄いわ、私が幻想郷に入ってたった千年でここまで発展しているんだもの。」
「それは楽しそうで良かったな、私も連れて来たかいがあったよ。」
そう興奮している輝夜にいろいろな話をさせて、輝夜が落ち着いたところで妹紅は別の話をする。
「それで、なんで今日来たんだっけ、確か月の都が外の世界と関わるための前振りだったと思うけど。」
「それはほら、私達って月から狙われていたじゃない。」
輝夜は昼に記者に言ったことと関連する、輝夜含めた永遠亭の前提を話す。
「まぁそうだけど、それがどうしたの?今は放置されているんじゃなかったっけ。」
「今まではそうだったけど、そこで今回幻想郷がこうやって外の世界と関わるようにしたじゃない、そこで自分達も外の世界と関わるための準備として、外の世界に月に別の世界が存在することを情報として確定させて、と言われたの、それをしてくれればもう時効ということで不問にするからって。」
彼女が語ったことは、何か迂遠で効果が薄そうな印象を妹紅は抱き、また何か裏があるのかと警戒する。
「何か随分面倒だな、効果も限定的な雰囲気を感じるしさ。」
「という名目で、私が何回でも外の世界に行けるように永琳と月の上層部にしてもらったのよ、ほら永琳には私以外にも上層部に何人か教え子が居るからね。」
それを聞いて妹紅は肩透かしを食らう。
「なーんだ、ただの永琳の親バカか、また賢者達の策略かと思って損したよ。」
「うふふっ、永琳は私が大好きだからね、多少の無茶は簡単に飲んでくれたわ。」
そうしてその夜は過ぎて行った。
後日、12月20日
その後、輝夜が何回か外の世界に赴いて月の都についての話をして回った後。
幻想郷と地獄が使った部屋でまた、記者会見が行われる。
「それでは、私達三人が揃ったので記者会見を始めましょう。」
今回、遅くなってすみません。
どうしても今回のエピソード、筆が乗らなかったです。
一応更新までの間も、前々から執筆していた連投用のエピソードを少しづつ、執筆してはいましたけどね。