正体不明にされた人々で溢れかえったパリ市
ここは一週間の間、このまま永遠に正体不明のままにされるか、戻してもらい他人に正常に認識してもらえるようになるかを懸けて、誰が敵で誰が味方なのかも解らずに一人一人が只闇雲にぬえを探す、孤独なかくれんぼをさせられていた。
だが、最終日のハロウィンでかくれんぼは終わり、漸くこの悪夢が終わるのかと、悪夢を終わらせた張本人である妹紅を含め皆が思っていた。
只一人、ぬえを除いて。
「妹紅の推理も終わったし次はね、おめでとう、パリ市内の皆、喜ぶといい私は見つかったから約束通り正体不明を解いてあげるよ。」
その言葉と共にぬえは指をパチンと鳴らし、正体不明の実を消滅させる。
その瞬間、パリの各地から喜びの声が上がる。
「うん、ちゃんと約束を守ったな。」
妹紅は安心するように声を出す。
「そりゃそうさ、私は嘘が嫌いな鬼じゃないけどこれだけ大々的にした宣言を嘘にはしないよ、だって自分で決めた敗北条件を突き付けられて、逆ギレして嘘に決まっているとか叫んで暴れる、な~んてダサいじゃない。」
妹紅のその言葉に嘘つきのレッテルは張らないでくれとばかりに、不満げにそう言う。
「嘘つきでないなら帰るぞ、ぬえにはいろいろと聞かないといけないことがあるからな。」
妹紅はそう言って後ろを向きカードを取り出してスキマを出そうとするが、
「あれれ?私、幻想郷に帰るなんて言ってないよ?」
後ろから心底不思議そうな声が聞こえてきた。
バッ
「今なんて!」
妹紅は慌てて後ろを振り返ると、そこには先ほどの声とは裏腹にぬえがこちらを心底嘲るような笑みを浮かべていた。
「だ~か~ら~言っているでしょ、帰るなんて言っていない!始める時も!今も!決して!何故なら未だ!復讐は終わってないからな!」
確かにぬえはゲームに勝ったら正体不明を解除するとは言ったが、帰るとは言っていない。
でも、これはないだろう。
「…!そうか、なら何をすれば来てくれるんだ?」
妹紅は帰らないと言っているのに、後ろを向いた時に逃げなかった事実から、ぬえは何かを妹紅に求めていることに気付く。
「本当は、パリの人に見つけられたのなら帰るつもりだったよ、でも見つけたのは私と同じ幻想郷の住人の妹紅でしょ…だったら幻想郷流に異変を終わらせようか。」
その言葉と共にぬえは飛び立つ。
「はぁ、分かったよ…命名式決闘法に乗っ取って弾幕ごっこをしよう。」
それに続いて、妹紅もぬえを追いながら決闘を申し込んだ。
ぬえを追ってパリ市の上空300メートル程に付くと、ぬえは何かを、
ヒョイッ
パシッ
妹紅に投げ渡して二人は話し出した。
「そのマイクを装着してね、まだ生放送は続けるから音声が聞けないと困るでしょ。」
その言葉に応じて、マイクを装着すると妹紅はルール決めをする。
「スペカは四枚、範囲は今の私達の間から縦横50メートル、高さ20メートルでいいよね。」
尋ねる形式を取りつつ、文句を許可しない強い口調で言う。
「まぁそれくらいが丁度いいでしょ、これは余興長過ぎるのはつまらないからね。」
その言葉の直後にぬえは距離を取り、妹紅も決闘のために距離を取る。
「さあこの悪夢を終わらせに来るといいよ、まぁ…」
そこまで言うとぬえは一旦言葉を溜めて、次の瞬間彼女は威勢良くキメ台詞を吐き出す
「お前はここで終わりだがな!!」
その言葉に妹紅は一瞬面食らうが、直ぐに合わせて、
「言ってくれるね、なら私も…」
対抗して妹紅は強気に笑みを浮かべながら、叫ぶ。
「本気で来なきゃ貴女の人生ゲームオーバー!!」
そうして、世紀の大事件の最後の演目が始まる。
先手は妹紅から、妹紅はスペカを右手に掲げて宣言する。
「先ずは私から行こうか、不死「火の鳥-鳳翼天翔-」」
不死鳥を模した火の弾幕が妹紅の手元に生まれて、ぬえを目掛けて飛び出す。
「いいね、そのお手本通りの美しい弾幕、こういうのはスー、っとね。」
その言葉通り、対象を目掛けて直線に飛ぶその段幕をぬえはスーっと軽やかに生み出される不死鳥を避けていく。
「これは小手調べ、だけど未だ未だいくよ!」
その直後、不死鳥が三つに増えてばらまかれる。
「フフッ、いいねそうこなくっちゃ。」
そのまま、弾幕ごっこは苛烈さを増していく。
正体不明「忿怒のレッドUFO襲来」
ぬえを中心とした螺旋軌道に赤いUFOが弾幕を設置していくスペカ。
不滅「フェニックスの尾」
決闘の範囲の中心から前後にばらまかれる火の弾幕のスペカ。
正体不明「哀愁のブルーUFO襲来」
レッド同様に螺旋状に周りながら無秩序にレーザーをばらまく青いUFOのスペカ。
正体不明「義心のグリーンUFO襲来」
ぬえの背後から左右に並べた緑のUFOが螺旋状のレーザーを飛ばすスペカ。
何れも言葉にすれば簡単だが、外の世界の者からすれば芸術品のようでいて、触れたら死ぬような弾幕の応酬が繰り広げられる。
だが、物事にはいつか終わりが来る。
戦況は既にスペカはぬえが三枚使用し、妹紅も三枚目を使用する。
「滅罪「正直者の死」!」
これは霊夢との初の闘いでは、始めの方に使用したスペカである。
そんなものは決闘が白熱した現状では格落ちするスペカであり、
「そのスペカはどうしたのさ!生温いね!」
実際ぬえは、大きな隙間を開けてぐねぐねと動くそのスペカを笑いながら避ける。
「なら、これはどうかな。」
妹紅はその言葉を買って、このスペカの由来ともなった青白いレーザーの射出を始める。
「フフフッそれも知ってるよ!」
ぬえはその言葉と共にレーザーに体当たりをして、
「これ当たり判定は無いんでしょ!」
その言葉通り無傷で通り抜ける。
「知ってたか。」
妹紅は意外だな、という表情で言う。
「知ってるに決まってるよ、これ大きくなぎ払うレーザーを避けようとして、弾幕との激突を誘発する有名な初見殺しでしょ、だけど…」
ぬえはそこまで言うとレーザーから逃げるように動く。
「これも避けよう、簡単過ぎるからさ!。」
その言葉通り、レーザーから避け続けながら弾幕も避ける、妹紅を公転するように避ける通称、正直者大回転をする。
「出来るならやってみなよ。」
妹紅の作戦とも知らないで。
「あれ?いつの間にか場外寸前まで追い詰められてない!?」
調子に乗って避けていたら、気が付くと反則負け寸前の位置に居たぬえは困惑の声をあげる。
「引っ掛かったね!追い詰めたよ!これでこの悪夢も終わりにする!」
ぬえを設定した場外ギリギリに追い詰めた妹紅は、両腕を胸の中心に構えながら叫ぶ、己の最終奥義を宣誓するいい加減全てを終らせるために。
「ラストワード!『こんな世は燃え尽きてしまえ!』」
そう妹紅が宣言した瞬間、真夜中であるのにもう昼であるかの如くパリが明るくなり、曇り空は一瞬で妹紅を中心に晴れ上がる。
「こ!これは!?そうか!これが妹紅のラストワードか!全てを燃やし尽くすって!ラストワードに相応しい、妹紅らしい自爆か!」
ぬえが全力で感嘆し称賛するそのラストワードは、妹紅が両腕を胸の中心に合わせて作り出した青白色の火球をどんどん拡大させるものだ、…と言葉にすれば単純だがその実それは天変地異と言って良いものである。
ところで、皆様は炎の色の相関について知っているだろうか?
炎は基本的に赤や黄色のイメージがあるだろうが、実は炎の温度が低いとそれらの色になり、逆に高くなれば炎は青くそして白くなっていく。
つまり、妹紅の炎は現在通常ではあり得ざる高温へと変化している。
そう、大妖怪ですら燃え尽きる程の業火へと。
「さぁ!二度とこんな異変を起こせないように、燃え尽きてしまえ!」
妹紅は興奮しながら叫び、拡大させた城一つ包み込める程の巨大なサイズとなった火球を爆発させる。
ぬえもただでこの威力の攻撃を食らうわけにはいかず、
「素晴らしい弾幕だけど、足掻かせてもらうよ。」
先ほどから使っていたUFOシリーズ最強のスペカ
「正体不明「恐怖の虹色UFO襲来」!」
によってぬえの背後から大量のUFOを出現させる。
バシューン!
出現させるが、UFOは爆発に触れ次々消し飛んでいく。
その爆炎はUFOを全て飲み込んでそのまま一瞬でぬえを包み込み、「はははっ!ここまでなのか!でもパリは楽しかったな~!」清々しく爽やかにぬえは爆炎に消えていく。
その様をヨーロッパの人々はぬえの恐怖から解放されることの歓喜と、自分達を苦しめた強大な化け物が報復されることへの一摘みの虚しさと共に、見つめ続けていた。
「ふー終わった終わった、さてと、ぬえは何処かな?」
先ほど一気に燃やした筈なのに、何故かぬえを探す妹紅だが、その頭は正気である。
『都市一つ乗っ取って更に配信することで、世界中の感情を食っていたんだ、消し炭にも成らずに普通に生きてるだろうからね。』
妹紅は現状からそう推測したので、爆炎に飲み込まれて上空に吹き上げられたであろう、ぬえを探す。
ヒュ~
ぬえを探して少しすると、そんな風切り音と共に真っ黒焦げになって、恐らく気絶したであろうぬえが落ちてくる。
「あ、居た居たよいしょっと。」
ぬえを発見すると妹紅は『画面の境界』を振って、スキマをぬえのすぐ下に開く。
その直後にぬえがスキマに落ちて、今度はスキマから出られないよう即座に閉じる。
「これにてぬえは討伐いたしました。」
マイクに向けて、妹紅は終了の挨拶を始める、元には戻れないだろうがそれでも絶望が終わったことを告げるために。
「絶望に抗った方も、怯え隠れていた方も、これ幸いと暴れた方も、全てを正体不明にしたこのゲームは終わりました。」
その言葉を最後に妹紅もスキマを開いて、幻想郷に帰ると同時にハロウィンの夜が明ける。
ここで暴露しますが、正直変更のせいで詰まって毎日投稿を明日にし続けていたのですが。
水曜日に変え忘れて、そのまま腹を括ったのですが連日投稿はどうにか出来ました。
遅くなった日はすみませんでした。
お付き合い頂ありがとうございます。