ほんの少し慎重になったスバル君を異世界に投入する話   作:面白い小説探すマン

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十二話

「ロズワールさんって一体いつ来るんだ?一週間後?」

 

 場所はユークリウス邸の応接室。エミリアの訪問にも使用した部屋だ。ナツキ・スバルは同席しているアナスタシア、ユリウス、エミリア、レムに質問する。

 

「辺境伯はもうすぐ来られるだろう。それこそ一時間もしない内にね」

 

 ナツキ・スバルの質問にはユリウスが代表して答えた。

 

「ロズワールさんの家とユリウスの家って結構近いところにあるんだな」

 

「そうではないよ。ロズワール辺境伯は宮廷筆頭魔術師と呼ばれるルグニカ1の魔法使いだ。あの方は空を飛んでこられるから、あまり時間がかからないんだ」

 

「空飛べんのか!!魔法使いってスゲーな。俺も魔法使えるようになれば空飛べる?」

 

「それは難しいだろう。空を飛ぶには全ての属性の魔法を高い次元で操る器量が必要なんだ」

 

「ユリウスも無理なのか?」

 

 六属性の精霊と契約を結んでいるユリウスならば空を飛べるのではないかという可能性にナツキ・スバルは思い至る。

 

「今の私では無理だ。重力を緩和させることなら出来るけどね。だが、私の蕾たちが成長すればいずれ出来るようになるだろう」

 

「お前もお前で何でもアリだな」

 

 この男、最優に付き。ナツキ・スバルは改めてそれを理解した。

 

「てかさ、俺たちロズワールさんとの約束をドタキャンした訳だろ?その人怒ってねぇかな?」

 

「ロズワール様はほんの少しだけですけど、怒りの表情が見えました」

 

 レムがロズワールとの連絡手段である対話鏡を通して得た情報を伝える。

 

「だよなぁ。俺は正真正銘の無一文になっちまったから、詫びの品とか出すの無理だぜ」

 

 先日のアナスタシアとの取引によって身ぐるみ剥がされたナツキ・スバルは予め自分が戦力外であることを告げた。

 

「ナツキ君が心配することなんて何もあらへん。言い出したのはウチやからな。辺境伯との交渉。腕が鳴るわぁ」

 

 アナスタシアが気後れするナツキ・スバルに腕を捲りながら応える。

 

「なんでアナスタシアさんはこんなこといきなり言い出したんだ?ユリウスから聞いたけどエミリアちゃんの陣営を敵に回してまで俺を引き留める価値はないと思うぜ」

 

「ナツキ君にもう一つの価値があると判断した結果や」

 

「もう一つの価値?」

 

 ナツキ・スバルはその言葉に聞き覚えがあった。

 

「そういや、アナスタシアさんと初めて会ったときにもそんなこと言ってたな」

 

 ナツキ・スバルはユリウスとの決闘を利用してアナスタシアの居場所を暴き、道中に遭遇したレムと共に部屋へ押し掛けた時の事を思い出す。

 

「一つ目の価値は俺が他陣営の間者である可能性を差し引いても会う価値があったってことだろ?」

 

「そうや。けど、それだけやないってゆうたよな?ナツキ君にエミリアさんとこの辺境伯と対立してもええってくらいの価値があるかどうかをあの3日間で測っとったんよ」

 

「やっぱり、俺が感じたアナスタシアさんとの勝負って見解は間違いじゃなかったんだな」

 

「結果だけ見れば、ウチのユリウスと引き分けたんやからな。そして、ウチとの取引で魔女教やら色んな奴らを撃退した」

 

 ナツキ・スバルは死のループを回避することに夢中で気付かなかったが、客観的に見ればなかなかの成果を上げていた。

 

「ナツキ君から回収した物品やけど、ますます製法が分からんし、分かるものでも画期的や。ウチなりにナツキ君がユリウスん所に来る前の経歴を調べてみたけど、ユリウスが出会ったあの日、王都に突然出現したって感じや。それ以前は全く辿れへんかった。ナツキ君が別世界の人間ってことも信じたってええ」

 

「アナスタシアさん……」

 

「ナツキ君の未来視に関しても信じる価値はあるとウチは思う。ナツキ君があの襲撃勢力と繋がってる可能性も捨て切れへんけど、王都以前の経歴を抹消し、あの勢力を動かす力があるならこんなまどろっこしいことせぇへんやろ?」

 

 ナツキ・スバルが5日目の襲撃に対処するために動いていた時間でアナスタシアはナツキ・スバルについて念入りに探っていたらしい。結果としてそれがナツキ・スバルの身の潔白を証明することになった。

 

「それにや。例えナツキ君がそんなまどろっこしい方法を選んでいたとしても全く問題はあらへん」

 

 そう言うとアナスタシアはナツキ・スバルと結んだ契約書を取り出す。それはナツキ・スバルがアナスタシアに『鉄の牙』を呼んでもらうために結んだ契約だ。『ナツキ・スバルが日本から持ってきた物全て』をアナスタシアに譲渡するという契約。

 

「ここに書いてある『ナツキ君が日本から持ってきた物全て』をウチは押さえとる訳やからな」

 

「ん?」

 

 ナツキ・スバルがアナスタシアに渡した私物がどう関係するのか。

 

「あのガラケーとかが、なんか関係あんの?」

 

「鈍いやっちゃなぁ。ナツキ君」

 

 アナスタシアは意味深な笑みを浮かべている。

 

「契約書にあるのは『ナツキ君が日本から持ってきた物全て』。すなわち、ナツキ君の身柄も含まれとるんよ」

 

「は?」

 

「ナツキ君自身にもう一つの価値がないと分かった場合、ロズワール辺境伯には素直に搾りカスとなったナツキ君を渡すつもりやったんやけどな。ナツキ君でさえも渡すのが惜しくなったんや。ウチは一度欲しいと思ったものは絶対に手放さへんねん」

 

「え?」

 

 アナスタシアの言葉の意味をナツキ・スバルはやっと理解した。

 

「ちょっと待て!!俺がアナスタシアさんにあげたのはガラケーとかカップ麺とかだけの筈だぜ!!」

 

「甘いなぁナツキ君。商人相手に『全て』とか言うたらあかんへのよ。本当に『全て』持ってかれるでな。ナツキ君は今日からウチの奴隷や!!」

 

 ニヤリと笑いながら指を指してくるアナスタシアにナツキ・スバルは恐れ戦く。

 

「お、おいユリウス。お前の姫さん、とんでもないこと口走ってるぞ。なんとかしてくれ」

 

「素晴らしいじゃないか、スバル!!これこそがアナスタシア様の美徳だよ。アナスタシア様の奴隷なんて誰でもなれるわけではない。アナスタシア様の騎士である私でさえも羨ましいと思ってしまったよ」

 

「まじかよ」

 

 あらゆる物事を最優にこなす目の前の騎士は何故アナスタシアに関することになるとこんなポンコツになるのだろうか?

 

 その日、ナツキ・スバルはアナスタシア・ホーシンの奴隷となった。元より無一文のナツキ・スバルにアナスタシアを振り切る術はない。ナツキ・スバルはがっくりと項垂れた。

 

 

 そして、ロズワール辺境伯がユークリウス邸に到着した。ロズワールはエミリアの隣に座り、後ろにはレムが控えている。その三人と対面してアナスタシアとナツキ・スバルが座り、その後ろにユリウスが控えていた。

 

「まずは、はぁーじめまぁーしてだぁーね。ナツキ・スバル君」

 

「お、おう」

 

 目の前のピエロが軽快に話しかけてくる。

 

「あんたがロズワール…さんだよな?」

 

「そうだとも。身内の恥を晒す様で気が進まないけぇーれど、君がエミリア様の助けになったということだぁーね。本当は私の屋敷で行いたかったが、礼として君の願いを叶えたいと思う。ロズワール・L・メイザース辺境伯の名の元に望みは思いのまま、さぁなんでも望みを言いたまぁーえ」

 

 ロズワールは王都でエミリアを助けた報酬としてナツキ・スバルの願いを叶えてくれると言った。しかし、ナツキ・スバルに思い当たる望みはない。少し前なら襲撃者を倒してくれと願ったかもしれないが。

 

「俺は特にないなぁ。アナスタシアさんは何かあるか?」

 

 何も思い浮かばないナツキ・スバルがアナスタシアに話を振ると、それを見たロズワールが笑みを深めた。しかし、その目は笑っていない。

 

「何故アナスタシア様に話を振るのかな?私は君の望みを聞いているんだぁーよ」

 

「だって俺、アナスタシアさんの奴隷になったっぽいし」

 

 

「は????」

 

 そこでロズワールは初めて真顔になった。左右で色の異なる瞳の瞳孔が開く。

 

「何故君がアナスタシア……様の奴隷になっているんだい?」

 

「昨日色々と襲ってきた奴らがいてな。そいつらを倒すのにアナスタシアさんに『俺が日本から持ってきた物全て』を渡す条件で力を貸してもらったんだ。いつの間にか俺自身の身柄を含まれてたらしい」

 

「な、なんという……」

 

 ナツキ・スバルの目に映るロズワールは一気に老けてしまった様に感じた。しかし、ロズワールは良い考えを思い付いたのか再び息を吹き返す。

 

「ならば、私が君を奴隷の身分から解放しよう!!君は騎士ユリウスに憧れているそうだね?私が君を騎士にしようじゃぁーないか!!」

 

 ロズワールの渾身の想い。

 

「いやいいよ」

 

 しかし、ナツキ・スバルには届かない。

 

「な、何故?!!」

 

「俺はユークリウス邸に来てからユリウスの騎士としての振る舞いを見てきた。なんか俺、騎士って柄じゃねぇわ。俺はユリウスみたいには振る舞えねぇよ」

 

「確かに君と騎士ユリウスは違って当然だ!!だが、君は君にしか出来ない騎士をやればいいんだぁーよ!!」

 

「それは無理だなぁ」

 

「……どうしてだい?」

 

「俺の中の騎士って言ったらユリウス以外いねぇんだわ。確かに他のやり方の騎士でもいいのかもしんないけど、俺はこれからどんなことがあっても騎士であるユリウスの姿が消えることはない。だから無理だ」

 

「…………」

 

「それにいいこと思い付いてな」

 

「いいこと?」

 

「ユリウスがアナスタシアさんの『一の騎士』なら、俺はアナスタシアさんの『一の奴隷』ってのはどうだ?アナスタシアさんに俺以外の奴隷はいないらしい。騎士と奴隷じゃ釣り合わないけど、ユリウスと同じで『一の~』って付くのはカッコいいだろ」

 

 ナツキ・スバルの説得は無理だと悟ったロズワールはエミリアに助けを求めた。

 

「エミリア様、あなたはよろしいのですか?徽章を取り戻してくれた命の恩人でもある彼が奴隷となるのですよ!!」

 

「確かに……奴隷って響きはよくないかも」

 

 その言葉にロズワールが心なしか笑顔になる。しかし、その後に続く一言でその笑顔は凍りついた。

 

「でも、それって嫌々やってるからだと思うの。自分から進んでやりたいっていうならいいんじゃないかしら」

 

 場が静まり返る。

 

 タイミングを見計らってアナスタシアが口を開いた。

 

「辺境伯、ウチの奴隷のスバル君にどうしてもお礼がしたいっていうんやったら、いつか恩を返しておくんまし。ナツキ君もそれでええか?」

 

「俺もそれでいいぜ」

 

 何も考えていないナツキ・スバルはアナスタシアの提案にノータイムで同意する。

 

 ナツキ・スバルの同意を皮切りにロズワールとアナスタシアによる回りくどい様で相手の喉元を互いに狙い合う交渉が始まった。

 

 ロズワールはあらゆる事象を引き出してナツキ・スバルをなんとしてでも己が屋敷に引っ張ろうとする。要約:このままでは、エミリア陣営とアナスタシア陣営の致命的な傷となりますよ!!

 

 対して、アナスタシアはロズワールの言い回しを的確に見抜き、ナツキ・スバルをロズワール邸に送る要求を尽く却下する。要約:お好きにどうぞ。陣営の関係に亀裂が入る不利益よりもナツキ君を得た利益の方が大きいですから。

 

 白熱する口論。ナツキ・スバル、ユリウス、エミリア、レムの四人は空気と化していた。

 

「なあユリウス」

 

「なんだい?」

 

「言葉って刃物なんだな」

 

「刃物で済めばいいね」

 

「俺ってよくアナスタシアさんとの取引成功させたよな」

 

「ああ、それに関しては見事だったと取引をした夜にも言ったね」

 

 アナスタシア相手にどうやってもナツキ・スバルを手に入れるのは無理だと悟ったロズワールは話を変えた。

 

「エミリア様はナツキ・スバル君との関係が悪くなるのは嫌でしょう?」

 

「え、ええ」

 

「そこで、アナスタシア様。エミリア陣営とアナスタシア陣営の同盟は如何でしょう?」

 

「今までのやり取りでナツキ君は無理やと悟ったんね。この流れでウチがそんな同盟に同意すると思てはるん?」

 

「……………私も陣営同士の対立は避けたい所なのです。この同盟に同意するか否かは私の提示する条件を聞いてからでも遅くはないのでは?」

 

「聞くだけ聞いたるわぁ」

 

 

 ロズワールが提示した条件は以下の5つ。

 

(1)エミリア陣営とアナスタシア陣営は対等な同盟関係を結ぶ。

 

(2)上記の(1)の条件にはどちらか一方の陣営が危機に陥った際、もう一方の陣営が援助を行う事も含まれる。

 

(3)エミリア陣営はアナスタシア陣営に対して、所有するエリオノール大森林の魔鉱石の採掘権を一部譲渡する。

 

(4)エミリア陣営はアナスタシア陣営に対して、メイザース家がルグニカ親竜王国に代々秘匿し、所有している土地である『聖域』を解放する。

 

(5)エミリア陣営はアナスタシア陣営に対して、筆頭宮廷魔術師であるロズワール・L・メイザースが魔法に関する情報を提供する。

 

 

「なるほどなぁ。特に(3)は中々大きいなぁ」

 

 エミリア陣営とアナスタシア陣営の同盟が成立すれば、王都へ流れ出る魔鉱石の市場をホーシン商会が一手に引き受けることが出来る。

 

「せやけど、同盟条件でいくつか気になる項目があるなぁ」

 

 アナスタシアは順に気になる要項を述べた。

 

「(2)やけど、ウチは『鉄の牙』っちゅう戦力を提供できる。そちらの戦力はどないなん?少なくとも『鉄の牙』と張り合える戦力でないと話にならんで?」

 

「私が何故、辺境伯という地位であるかをお忘れで?」

 

「辺境伯自ら戦ってくれはると考えてもええんか?」

 

「……ええ。もちろんです」

 

 ロズワールがたいした手駒も持たずに辺境伯という重要な役割をルグニカから任されている理由。それはロズワール自身が一軍に匹敵する戦力であるからに他ならない。

 

 ロズワールからきちんと言質を取ったアナスタシアは次の項目に移る。

 

「(4)の『聖域』ってなんや?」

 

 アナスタシアでさえも耳にしたことがない『聖域』という言葉。当然、詳細を求める。

 

「『聖域』とは……」

 

 ロズワール曰く、メイザース家が400年もの間守り続けてきた秘密の土地。誰の目からも秘匿されたその場所はその土地ならではの特産品があると言う。

 

 そこでアナスタシアに新たな疑問が生まれた。

 

「お宅が400年間守ってきた大切な土地をこの交渉で出す理由が分からんなぁ」

 

「同盟を組むに当たって互いの腸はある程度見せ合う必要があります故」

 

「少し弱い気もするけど、それで納得したるわ」

 

「それで、如何でしょーうか?」

 

 ロズワールがアナスタシアにこの同盟に対する如何を尋ねる。

 

「それに答える前にウチとしては辺境伯に聞かなあかんことがあるねん」

 

「なんでしょーうか?」

 

「昨晩なウチらは魔女教徒含む勢力に襲撃されてん」

 

 それはこの場においては自明の理だ。ロズワールもレムから逐一報告を受けている。

 

「まずは『腸狩り』。王都でもエミリアさんを助けるついでにユリウスが撃退した相手や」

 

「ついで……」

 

 エミリアが悲しげな声を出すが、今反応する者はいない。

 

「それに関して今はええ。魔獣の群れについても同様や。問題は魔女教徒。そこのレムちゃんからナツキ君には魔女教徒と同じ臭いがするって言われててな。今回の魔女教徒の襲撃はナツキ君の魔女の臭いが原因ってことにして乗り越えたんやけど、本当にそうやとはウチは思ってへん」

 

「と言うと?」

 

 アナスタシアがルグニカにおける常識を改めてエミリア含む全員の前で言った。

 

「銀髪のハーフエルフ。400年前世界の半分を飲み干したっちゅう嫉妬の魔女と同じ存在であるエミリアさんが魔女教徒を呼び寄せてるんとちゃうの?」

 

 エミリアは顔に影を落として俯く。しかし、ルグニカの常識はナツキ・スバルにとっての非常識。この重い空気の中でも遠慮なく手を上げた。ナツキ・スバルに空気を読むといった高度なテクニックは存在しない。

 

「エミリアちゃんが魔女教徒を呼び寄せてるってどゆこと?」

 

 その質問に答えたのはアナスタシアの後ろに控えるユリウスだ。

 

「魔女教の目的はアナスタシア様の仰られた嫉妬の魔女の復活ではないかと言われている。その嫉妬の魔女は銀髪のハーフエルフであると伝わっているんだ」

 

「つまり同じ嫉妬の魔女と同じ身体的特徴を持つエミリアちゃんも俺と同じで魔女教に狙われてるってことか?」

 

「まあ、君が本当に魔女教に狙われているのかは定かではないが、今回の魔女教徒の襲撃がアナスタシア様の仰られた通り、エミリア様が間接的に引き起こしたのではないかという事だ」

 

 ユークリウス邸一度目のループでナツキ・スバルはロズワール邸へ向かう道中で魔女教徒と遭遇した。魔女の臭いを持つ自分が引き寄せているのかと思っていたが、本当はエミリアの存在が引き寄せていたのかもしれない。

 

「エミリアちゃん」

 

「は、はい」

 

 ナツキ・スバルの呼び掛けにエミリアは怯えながら返事をする。

 

「こればっかりは君はなんにも悪くねぇよ。しょうがねぇじゃん自分の容姿の事でとやかく言われてもさ。むしろ悪いのは全部魔女教の連中だよ。銀髪のハーフエルフと見れば誰にでも欲情するアイツらが悪い」

 

 それがナツキ・スバルの出した結論だった。

 

「え?」

 

 エミリアは呆気に取られた顔をする。

 

「俺たちは全員で力を合わせて昨日の襲撃を乗り越えたんだぜ!!ここにいる奴らでエミリアちゃんを側だけで判断するやつなんていねぇよ!!」

 

 後ろのユリウスもその通りだ、という顔をして頷いていた。しかし、当のアナスタシアがコホンと咳払いをしてその空気を打ち切る。

 

「ええ空気になっとるところ悪いんやけど、それとこれとは別問題や。確かにエミリアさんは容姿が同じってだけで嫉妬の魔女とは違う。でもな、エミリア陣営と同盟を組むっちゅうことは必然的に魔女教徒の相手をせなあかんちゅうことや」

 

「だからアナスタシアさんはエミリアちゃんと同盟結ばないのか?」

 

「そうや」

 

「それだと既に俺がいる時点で魔女教徒と戦うことになってるんじゃね?今、魔女教徒を引き寄せてる原因ってエミリアちゃんか俺のどっちかだろ?原因がエミリアちゃんだけじゃなくて俺もだった場合、同盟結んでも結ばなくても魔女教と戦うことになるぜ」

 

 思考するアナスタシアにロズワールが更に追い討ちを掛けた。

 

「では、ナツキ・スバル君がアナスタシアさまの奴隷をクビになった暁には行く宛のないスバル君を私の屋敷で丁重にもてなすこととしようじゃーあないか」

 

「…………」

 

 ナツキ・スバルとロズワールの思わぬ連携にアナスタシアがいぶかしむ顔をする。

 

「ナツキ君、本当は辺境伯の回し者とちゃうやろな?」

 

「ちげぇって!!このピエロのおっさんとは今日初めて会ったばっかだっての!!」

 

「それならなんで、同盟を組むように促すねん?」

 

「促してねぇって!!俺はただ、エミリアちゃんの容姿が原因で同盟却下されんのはなんか違うと思っただけだ!!アナスタシアさんがそれ以外の理由で同盟を却下するなら俺は何も言わねぇよ」

 

 全員の視線がアナスタシアに集中する。そんな中、アナスタシアは大きく息を吐くと同盟に対する答えを告げた。

 

「しゃぁーないなぁ。ロズワール辺境伯。同盟の件、了承したるわ」

 

 

 夕刻、ロズワールは空を飛んで帰ることになった。エミリアとレムは翌朝、竜車で帰宅するそうだ。

 

 ロズワールの見送りには同盟相手であるアナスタシア、その騎士ユリウスとその奴隷ナツキ・スバル。そして、エミリアとレムだ。

 

 飛び去るロズワールを見ながらナツキ・スバルはロズワールから個人的に掛けられた言葉を思い出していた。

 

 

──これから先、君は選択しなければならない。スバル君、君はほんの少し慎重になるべきだぁーよ──

 

 

 

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