ほんの少し慎重になったスバル君を異世界に投入する話 作:面白い小説探すマン
四話
それは、とある屋敷にある一室での会話だ。
「それでね、スバルっていうんだけど私、助けられちゃった。ユリウスを連れてきたのもスバルだし今度会ったらちゃんとお礼しなきゃ。徽章を取られちゃった時はどうしようかと思ったんだけど、スバルが持ってきてくれたし、すごーく助けられちゃった。最初は私のことを迷子って言ってたんだけど、私が迷子の親を探すのを見てたっていってたわ。あんなに珍しい格好なら一度見たら忘れるはずないのに私は見てないのよね。スバルは住むところがないっていってたから、このお屋敷に来たら?って誘ったんだけど断られちゃった。ユリウスのお屋敷に行って、なんでも剣を習いたいんですって。本当に男の子ね。あとね、すっごく驚いちゃったことがあってね、刃物を持ったこわーい女の人が襲ってきて、もうやられちゃうって思ったんだけど、いつの間にかその人のナイフがなくなってスバルの手元にあったのよ。一体どうやったのかしらね?何か心臓が痛いとか言ってたから今度、私の治癒魔法で見てあげることにするわ。それでね──」
エミリアの弾丸トークを聞くのは一人の男。この屋敷の持ち主でもあるその男はエミリアの言葉が止んだタイミングを見計らって口を開く。
「なぁーるほど。つまり君はそのスバル君に助けられたと」
「そうよ」
「しかしスバル君は私の屋敷へは来ず、最優の騎士、ユリウス・ユークリウスの屋敷へ行ったと?」
「そうなのよ」
「なぁーるほどねぇーえ。エミリア様、お話ありがとうございます。今日はゆっくりと休んで下さい」
「わかったわ。おやすみなさいロズワール」
「おやすみなぁーさい」
エミリアが退室したのを確認すると男は懐から黒い本を丁寧に取り出した。
「記述とのズレはないけれど、これはまた難儀なことになったねぇーえ」
様についた仕草で本をめくる男。
「彼にはいずれこちらへ来てもらわなければならない。何としても。私の目的の為に」
その瞳は激情を湛えている。
「ナツキ・スバル。君は私のものだぁーーよ」
男の決意が屋敷に響き渡った。
「うぉぉぉぉ!!」
場所はユークリウス邸。その庭で木剣を持った黒髪の男が同じく木剣を持った長身の男に斬りかかった。しかし、黒髪の男の剣は長身の男の剣にことごとく弾かれる。
「脇が甘い、剣にばかり意識が向いている。立つ場所にも気を配るんだ」
長身の男は黒髪の男の剣を弾き飛ばした。
「やっぱスゲーなユリウス」
「これでも近衛騎士だからね、スバル。少し休憩しようか」
これがナツキ・スバルとユリウス・ユークリウスの日常の一端である。ナツキ・スバルがユリウスの屋敷の世話になってから2日が経った。こうして空いた時間にユリウスに剣の稽古を付けてもらっている。
「スバル。今日はエミリア様がいらっしゃるようだ」
「エミリアってあの王選候補者の子か」
王都に出現する獣を倒す為に奔走した結果、成り行きで助けた銀髪の少女が王の候補者だったという偶然。
「そういやユリウスは王と崇める方がいるって言ってたけどエミリアじゃないのか?」
「ああ、エミリア様とは違うまた別のお方だ」
「それなら、政敵を助けたってことにならないか?」
「私は騎士としての矜持に従ったまで。スバルが気にする必要はないさ。それに私の主はそんなことでとやかく言うような人ではないよ」
とやかくは言わないだろうが、最大限利用はするだろなと思いながらユリウスは答える。
「そっか、それならよかったぜ。俺の頼みを聞いた挙げ句ユリウスが怒られるのは何か違うからな」
ユリウスに飛ばされた剣を回収すると、近くに座って水を飲んだ。
「ユリウスの主ってどんな人なんだ?」
ユリウスは少し思案すると口を開く。
「わかった。君には話そう。私が王と崇めるお方はアナスタシア・ホーシン様だ」
「へぇー。そのアナスタシア……さんか」
「ああ、アナスタシア様はカララギ随一の商会であるホーシン商会の会長で鉄の牙と呼ばれる私兵団を抱えている。どんなことにも貪欲で、自分が王になれると分かれば、このルグニカすら手に入れようと欲する方だ。そして、アナスタシア様が一度手に入れた物は他の誰よりも上手く扱う。あの人がこの国の王となれば、ルグニカの繁栄は約束されたも同然だ。私は騎士として身命を賭してアナスタシア様に仕えることを誓った。此度の王選、私は何としてでもアナスタシア様を王にする」
「お、おう。その人のことになると饒舌になるんだな」
鬼気迫るユリウスの熱弁に若干引いたナツキ・スバル。
「王の候補者って全部で何人なんだ?」
「5人だと言われているが、既に4人が見つかっている。最後の一人が見つかり次第、王選が始まる」
「アナスタシアさんとエミリアって子と他に3人もいんのか。他の候補者にもユリウスみたいな近衛騎士が付いてんのか?」
「ああ。近衛騎士が付いているのはアナスタシア様を含めて二人だ」
「へぇー、そうなのか。ところで、ユリウスとアナスタシアさんってどうやって知り合ったんだ?」
「あれは私が任務でカララギへと赴いた時だが……スバル、そろそろ着替えよう。ゆっくりと話したいがエミリア様がいらっしゃる時間だ」
「そうだったな。んじゃ行くか」
ナツキ・スバルはこの2日間でユリウスとかなり打ち解けていた。
「今日の服は一段と引き締まってんな」
礼服に着替えたナツキ・スバルは騎士の服装を身に纏うユリウスと共に応接室でエミリアの訪問を待っていた。
「スバル。相手はアナスタシア様と同じ、王選候補者の方だ。礼を尽くしても尽くしすぎることはない」
「意識たけーな。流石は近衛騎士」
近衛騎士として求められる姿勢にユリウスを見て感心していると、部屋の扉が開かれる。
「この前ぶりね、ユリウス。それにスバル」
先日助けた銀髪の少女─エミリアが青髪のメイドを引き連れて現れた。
「先日はご無事で何よりですエミリア様」
「おーエミリアちゃん。この前ぶり」
エミリアが王選候補者と知ってもなおナツキ・スバルの態度は知る前と変わらない。権力には屈しない男なのだ。
「改めまして、先日はありがとうございました」
「私があなたを助けることが出来たのも偏にスバルがいてこそです」
「気にしないでいーって。俺たちは獣退治のために動いてただけで、助けられたのは偶然だから」
ユリウスが何か言いたそうな顔をするが、言葉を飲み込んだ。
「でも、何かお礼をしたいの。何かしてほしいこととかあったりする?」
「特にないなぁ。ユリウスと剣の修行する日々が充実し過ぎててな。ユリウスは何かないのか?」
「私はアナスタシア様の一の騎士。困っている人を助けるのは当然です」
「そ、そうなのね……」
何のお礼も出来なくて落ち込むエミリアにナツキ・スバルは慌てる。
「あー、えっと、それなら。ユリウスとの修行で所々筋肉痛でな。それを治してもらえたりできる?」
「治癒魔法は使えるけど、そんなことでいいの?」
「ああ!!これで更に修行が捗るってもんよ!!」
「そう言えば前に心臓が痛いとか言ってなかった?それは大丈夫なの?」
「心臓?」
思い出すのは死に戻りを明かそうとした代償である心臓の痛み。脳裏に刻まれたあの痛みに背筋が寒くなる。
「あー、それは大丈夫。一時的なものだからな」
「そう。でも一応痛いって言ってた心臓にも治癒魔法をかけてあげるわね」
「あ、ありがとう」
笑顔ではにかむエミリアにナツキ・スバルは苦笑いした。すると、エミリアに続いてお付きの青髪のメイドが話し掛けてくる。
「ナツキ・スバル様。この度はエミリア様を助けていただき誠にありがとうございました。当主であるロズワールに代わってお礼申し上げます」
「お、おう」
この世界で初めて見るメイドにテンションが高まるナツキ・スバル。
「つきましてはロズワール様が是非とも直接お礼がしたいとのことですので、どうかメイザース領にある当屋敷へお越しいただけないでしょうか?」
「うーん。俺はユリウスの屋敷で充分満足なんだけどな」
「スバル」
「ん?」
今まで静観していたユリウスに話し掛けられた。
「エミリア様の後見人であるロズワール様は辺境伯という地位におられるお方だ。君は先ほどエミリア様の顔を潰すような発言をしたが、これを断ればロズワール様の顔をも潰すということになる」
「えーと。つまり?」
「ロズワール様の招集には応じた方がいいだろう」
「ちなみにその場合ってユリウスは付いてきてくれるのか?」
「それは難しいだろう。私はアナスタシア様の一の騎士。必要以上にエミリア様の陣営に踏み込む訳にはいかない」
「俺はいいのか?」
「君はまだどの陣営にも属してないだろう?」
「陣営って5人の王選候補者の中から一人選んで応援する人のことだよな?」
「まあ、平たく言えばそうなるな」
「なら俺は陣営に属してないってことになるが、ロズワールって人の家に行ったら俺ってエミリアちゃんの陣営に入ったってみなされないか?ユリウスと敵対するとか嫌だぜ俺」
「少し高度な話になるが、スバル。君は今ユークリウス家の食客という立場だ」
「ああ」
「その君がロズワール様の招集を断った場合、君はロズワール様、ひいてはエミリア様の陣営との関係に亀裂を入れることになる。そうなれば君を食客として抱えるユークリウス家もまた同様だ。そして私はアナスタシア様の陣営の一の騎士。王選が始まってすらいないこの状況でアナスタシア様とエミリア様の関係を悪化させることになりかねない」
「つまり、ユリウスに迷惑がかかると?」
「そういうことだ」
ユリウスにそこまで言われればナツキ・スバルは納得せざるを得ない。
「ロズワールの屋敷に行っても、剣の修行付けてくれるよな?」
「ああ、それは約束しよう」
「分かったよ。メイドさん、俺行くよ」
「ありがとうございます」
青髪のメイドは恭しく礼をした。話が纏まりかけたその時、部屋の扉が開かれて使用人がユリウスに耳打ちする。
「なんだと?」
その内容を聞いたユリウスが驚いた声を出した。
「エミリア様、それにスバル。私は急用ができました故、ここで一度失礼させていただきます」
そう言うとユリウスは応接室を出ていく。部屋に残されたのはナツキ・スバル、エミリア、青髪のメイドの三人となった。
「ユリウスったら突然どうしたのかしら?」
「確かにアイツらしくねぇな。エミリアちゃんのこと王選候補者の一人だから礼は尽くすとか言ってたのにな」
ナツキ・スバルも机のお茶をすすりながら同意する。
「やあ!君がナツキ・スバルだね!!」
顔をあげると目の前には宙に浮かぶ小さな猫がいた。思わずお茶を吹き出しそうになるのをぐっと飲み込んで尋ねる。
「確か、パックだっけ?」
「そうだよ。ボクは大精霊パック。可愛い見た目だけど君をなぶり殺しにする力があるよ。ヨロシクね」
「めちゃ物騒な自己紹介だな。てかそれは知ってるよ。エルザとの戦闘みてれば分かるわ」
「リアから君のことは聞いてるよ。ボクがいなくなった後、リアを守ってくれたんだってね。ボクにも何か君にお礼をさせてくれないかな?」
「パックもお礼してくれんのか。正直もうお腹いっぱいなんだけどな」
うーんと唸るナツキ・スバルの周りをふわふわと浮かぶパック。
「そうだな。それなら呼吸させてくれ!!」
「呼吸?」
ナツキ・スバルはパックを手のひらに乗せるとそのお腹に顔を埋める。
「スーハースーハー」
「え?何してるのスバル?」
いきなり訳の分からないことを始めたナツキ・スバルに驚くエミリア。パックの猫吸いに満足するとエミリアの質問に答える。
「これは猫吸いと言ってな。ケモナーには堪らない至福の瞬間さ」
「ね、猫吸い?」
「エミリアちゃんもやってみるといい、すぐ癖になるから」
困惑するエミリアにパックが報告した。
「大丈夫だよリア。スバルに悪意や敵意なんてものは感じられない」
「へー。パックはそんなこともできんのか」
「うん。ぼんやりとだけどね」
「すっげーなー」
会話する猫と男に向けて少女は呟く。
「そういうことじゃないんだけどね」
しばらくするとユリウスが応接室に戻ってきた。
「席を外してしまい申し訳なかった」
椅子に座り直したユリウスが開口一番謝罪する。
「それで、スバルのロズワール邸訪問の予定だが4日後でどうだろうか?」
「承りました」
ユリウスの提案に青髪のメイドが了承の意を示した。
「スバルもそれでいいね」
「おう」
ナツキ・スバルのロズワール邸行きは4日後ということで、その間、エミリアと従者の青髪メイド─レムはユークリウス邸に泊まることとなった。
「それにしても治癒魔法ってスゲーんだな」
早速エミリアに治癒魔法を全身に施して貰ったナツキ・スバルが庭で剣を振るう。ユリウスと修行をした証である身体の節々の痛みがない。
「お役に立ててよかったわ」
エミリアもお礼が出来て満足気な笑みを浮かべていた。そして、少し離れた所から二人を見つめるのはエミリアの従者、レム。
「おーい!!君もこっちに来たらどうだ?」
ナツキ・スバルが声を掛けても特に反応はない。付かず離れずの距離を維持されてる感じだ。
「ごめんね。普段のレムは素直ないい子なのよ」
「あー大丈夫大丈夫。女の子に声を掛けても滑って無視されんのは慣れてっから」
自分で言ってて悲しくなるナツキ・スバル。
「よし!!早速ユリウスに剣の修行付けてもらってくるわ!!」
ユリウスとの剣の修行を終えたナツキ・スバルはユリウスと休憩がてらに会話していた。
「そういや、あのエルザとの戦いの最後で盗品蔵が白く爆発してたけど、あれってエミリアちゃんの魔法なのか?」
「いいや、あれは私が放ったものだ。あそこの住人には申し訳ないことをした、エミリア様の徽章を盗んだとはいえ今度会ったときにはきちんと詫びなければな」
「え!?ユリウスって魔法も使えんのか?」
しかし、この最優の騎士ならさもありなんと言ったところか。
「ああ。正確には魔法ではなく精霊魔法というものだが」
「どう違うんだ?」
「魔法を扱うには例外なくゲートと呼ばれる器官を利用するが、魔法は自分のゲートを介して、精霊魔法は契約した精霊のゲートを介してという違いがある」
「精霊ってパックみたいなやつだよな。ユリウスはどんな精霊と契約してるんだ?光の精霊?」
「実際に見た方が早いだろう」
ユリウスはそういうと、手のひらに6属性の精霊を顕現させた。
「これが私の蕾たちだ」
「まさかの全属性!!」
目の前でクルクル回る6つの光に目を見開くナツキ・スバル。
「白い光の魔法はこの白い子の力か」
「いや、違うよ。あの魔法はこの子たち全員の力を借りた複合魔法。私の切り札だ」
「全部合わせられんのか。近衛騎士のレベルって高過ぎじゃね?」
「まあ私は騎士の家系に生まれた騎士だからね」
ユリウスが手を引っ込めるのと同時に6つの光も消える。
「ユリウスって一体いつから剣とかやってんだ?」
「覚えてないな。物心つく頃から剣を振っていた」
ここへ来た最初の二日間に比べてユリウスと手合わせする時間が少なくなったように思う。ナツキ・スバルはそんな事を考えながら庭で剣を振っていた。
「物心ついたときからか……きっと想像もつかないような努力を重ねて来たんだろうな」
羨望や嫉妬の感情を剣を振るうことで紛らわす。何もしてこなかった自分がいて、人生全てを剣と魔法に捧げてきたユリウスがいるだけだ。
「騎士か」
ナツキ・スバルが何気なく口にするその言葉はとても重い気がした。
「おにーさん、精が出ますな!!」
声を掛けられて振り向くと、そこには杖を持った小さな猫の獣人いた。この少女は王都にいたとき、一度目のループで一緒に保護者を探した迷子の子だ。
「ミミ!!」
こんなところで再開したことにナツキ・スバルは驚く。その様子にミミは首を傾けた。
「むむむ?ミミ、おにーさんと何処かで会いましたかな?」
「そっか、やっぱり覚えてねぇよな」
ミミと会った一度目の世界はナツキ・スバルの中にしかない。忘れられたことに言い表せない感情が胸の中で渦巻いた。
「んじゃ改めて自己紹介だ!!俺の名前はナツキ・スバル!!無知蒙昧にして天下不滅の無一文だ!!よろしくなミミ!!」
「おおー!!コージョーってやつですな!!」
「前にお前が全部食ったやつまだ残ってるぜ、持ってきてやるよ」
一度目のループでミミに食べられたものの、時間を巻き戻す過程で復活したスナック菓子がまだあった事を思い出したナツキ・スバルは自分の部屋から持って来る。
「ほら、これやるよ」
袋を破いてミミに渡したナツキ・スバル。ミミは匂いを嗅ぐだけで手は出そうとしない。
「とてもうまそうな匂いがしますな!!これなーに?」
「俺の故郷から持ってきたもんだ。食っていいぞ」
しかし、それでもミミは手を出さなかった。
「ん?どうした?」
「おにーさんが先に一つ食べて」
「お、おう」
ミミの言葉に従って一つ食べると、それを確認したミミはいきなりがっつき始めた。ナツキ・スバルがもう一つ食べようとしてもやはりミミのガードは鉄壁で手が出せない。結局、王都の時と同様に最初の一つを食べるだけで終わってしまった。
「これチョーおいしー!!ミミは満足!!満足!!」
「さいですか」
ミミはあっという間にスナック菓子を完食する。そんなミミに気になることを聞いた。
「どうしてミミは全部食わなかったんだ?俺に最初の一つを食われることもなかっただろ?」
「ミミは傭兵ですからな。常に毒は疑うもの!!」
この子は見かけ通りの可愛いらしい存在ではないようだ。パックにもそう言われたばかりのナツキ・スバルは改めて肝に銘じることにする。この世界、本当に何があるのか分からない。腸狩りであるエルザが美しい見かけによらない様に。
「ところで、ミミはどうしてこの屋敷に?」
「ミミはおじょーの付き添い!!」
「おじょーって誰だ?」
「おじょーはおじょー!!」
ミミからは何も分からない。
「いつから来てたんだ?」
「今日の昼くらいですな」
この屋敷におじょーなる存在が来ていることは間違いない様だ。どこか引っ掛かるが休憩を終えたナツキ・スバルは再び剣を振るうことにした。
あっという間に4日が過ぎた。その間、ナツキ・スバルはユリウスと稽古したり、ミミと遊んだり、エミリアやパックと話したりしていたが、結局おじょーなる人物とは出会えなかった。そして今日、ナツキ・スバルはユークリウス邸を出て、ロズワール邸へ向かうことになる。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるぜ!!」
「ああ、旅の無事を祈ろう」
ユリウスと別れの挨拶を済ませると、エミリアと同じ竜車に乗ってロズワール邸を目指す。竜車に揺られて暫くエミリアとの会話を楽しんでいると、突然竜車が止まった。
「エミリア様!!どうか外へ!!」
切羽詰まったレムの声に従って竜車を降りるエミリア。それに続いてナツキ・スバルも竜車を降りた。竜車の周りをぐるっと取り囲み、行く手を阻むのは黒い服にフードを被った連中。
「なんだこいつらは?」
驚愕の声をあげるナツキ・スバルの耳に低い声が届いた。
「魔女教徒……」
その声の持ち主であるレムはナツキ・スバルを親の仇でも見るような目で見る。
「やはりお前は魔女教徒だな!!」
「何だよ魔女教徒って?」
当然、ナツキ・スバルにはそんな心当たりはない。
「白々しい!!そこまで魔女の匂いを漂わせて!!こいつらと同じ匂いを発していて、しらを切るにも限度がありますよ!!」
魔女の匂い?死に戻りを暴露しようとした際に現れたアイツが魔女なのか?
混乱するナツキ・スバルを余所にレムは行動に移す。
「お前たち魔女教徒は全員殺す!!死ね!!魔女教徒!!」
「待ってレム!!」
目の前に迫る黒い何か。それはナツキ・スバルの頭蓋を砕き、中身をぶちまける。ナツキ・スバルは二度目の死を迎えた。