今日は呉鎮守府の提督と艦娘たちが来るため、咲は門の前で到着を待っていた。呉から中央鎮守府まではかなりの距離(広島〜東京ぐらい)がある。もうすぐ08:00、到着するだろうと待っていると、1台のバスがやってきた。バスの見えるところに「呉鎮守府様」と書かれている。目の前でバスが止まり、1人の青年が降りてきた。
「おはようございます!呉鎮守府より参りました!大将の
「長い距離をご苦労さま。元帥の綾谷 咲です。と、社交礼状はこれぐらいにしましょう、流君。執務室に案内するからついてらっしゃい。艦娘の子たちもついてきてね。」
「了解です、咲さん。それじゃあ行きましょうか」
呉鎮守府の提督、海原 流。咲が、元帥になってから数年後に出会った少年であり、艦娘との絆を大切にする数少ない存在である。妖精達とは何となく言っていることが分かる関係で世話焼きという面もあり、特にちびっこ達に好かれている。また、艦娘や妖精から信頼を置かれる程に慕われている。
~執務室〜
執務室では、咲と五月雨、呉鎮守府のメンバーが揃って今日の予定を話し合っている。
「今日の予定だけど、大和と武蔵の艤装のチェック及び改装、それと演習で良かったかしら?」
「はい、それで大丈夫です。それにしてもいきなり良かったんですか?大和と武蔵の艤装なんて、うちの明石がひーひー言いながら修理や点検をしてますけど、工廠の方も大変なんじゃ…」
「それは大丈夫よ。今日の分は昨日済ませたらしいから、あなた達の艤装のチェックが終われば特に仕事は無いし、あの子にとっては問題ないわ。」
「え!それは申し訳ないです。後で謝罪しに行かないと!あ〜、どうしたらいいんだろ?菓子折りのひとつぐらい持ってきたら良かったのかな?いや、でもそんなの渡されても困るか…?うぅ…」
流は頭を抱える。急なお願いで許可を貰い来訪したが、工廠長の予定を加味していなかったのだ。そんな流を見て、武蔵達が謝罪した。
「すまないな、元帥殿。いつもこんな感じになってしまうんだ。もう少しポジティブに考えろと言ってはいるのだがな」
「武蔵はポジティブ過ぎるのよ。でも、そこにおいては同感ね。咲さんに迷惑かけないといいんですけど…」
「大丈夫よ、この子の性格はよく知っているもの。そういえばあの子は来てないの?来ると聞いてたのだけれど。」
「あれ、そういえばいない。翔鶴姉、何か聞いてる?」
「そういえば、伝言を預かってたわ。少し用事があるから、先に行っててって。昼頃にはこちらに来ると言ってましたよ。」
「分かったわ。それじゃあ、流君。そろそろ工廠に行きましょう。今頃準備も終わっているだろうし。」
「あ〜、怒られそう…やっぱり失礼すぎるかな…?」
「武蔵…、担いででも連れていきましょう。」
「そうするか…。はぁー、それじゃあ皆行くぞ」
気づけば09:30を過ぎていた。移動中、明石から準備ができたとの報告が来たため、武蔵はとてもワクワクしていた。自分の艤装を見てくれるのがどんな人なのか、どんな艤装にしてくれるのか楽しみなのだ。この間も流は米俵のように肩に担がれている。
〜工廠〜
工廠に着くと、明石と夕張がスタンバイしていた。艤装のチェックをするために装備を外してほしいとのこと、大和と武蔵以外の艤装も見るそうだ。最後に秋月の艤装を外すと、秋月の艤装である「長10cm砲ちゃん」が急に装備から抜け出し、奥の休憩室と書かれた部屋に飛び込んで行った。すると…
「うわぁ!ちょっと待てって!分かった!分かったから落ち着けって!」
「キュ!キュー!キュキュ!」
「しっかり見てやるから!引っ張るなって!服が伸びる!」
「キューキュー! 」
そこにいる皆が驚いているが、秋月が1番驚いていた。いつも元気に頑張ってくれる相棒達だが、こんなに喜んでいるような声を聞くのは初めてだからだ。明石と夕張、咲はくすくすと笑っていた。声が収まったと思うと、休憩室の扉が開いた。
「イタタタ、こいつら元気ありすぎだよ。島風の艤装の方がまだ大人しかったって。」
「なっ!お前は!」
「ん〜、あ〜今日来る予定の呉鎮の人達?こんな姿だから驚くよね〜。」
呉鎮の艦娘達は身構えた。まさかレ級が普通に話しながら出てくるとは思わなかったからだ。しかし、頭と腕の中には「長10cm砲ちゃん」が嬉しそうにしているのを見たため、武蔵はすぐに警戒を解いた。
「レ級だからと警戒した。気を悪くさせてしまったな。」
「気にしなくていいよ~。前に青葉が来た時は大泣きしてたし、初対面だとこんな感じでしょ?」
ユキは気楽に話しかける。本来、深海棲艦は上位の者でないと喋らない。喋ったとしても、ここまで人のように話すことはない。そんなユキに瑞鶴は疑問を投げかける。
「本当に、レ級なの?なんか随分イメージと違うんだけど…」
「ん〜、そうだね。レ級であってレ級でないって感じかな?とりあえず、自己紹介しようか。僕の名前はユキ。戦艦レ級であり、中央鎮守府の工廠長をしてるよ。数日間だけど、よろしくね 」
お互いの自己紹介が済み、ユキは艤装のチェックをしていった。相変わらず「長10cm砲ちゃん」が構ってほしそうにするため、尻尾の艤装を出して相手をしてあげている。この状態でも、仕事は怠らない。一つ一つの艤装を入念にチェックしていく。
「うん、大体分かった。空母の2人は弓の張りが緩んでるからすぐに良くなるよ。五十鈴さんのソナーは索敵範囲を広げてもいいかもね。機銃に問題は無いから、この数日で索敵範囲の拡大限界を調べようか。この2機も元気過ぎるから、秋月の装備も大丈夫だね。ちゃんと整備されてる証拠だよ。ただ、武蔵と特に大和の艤装が…ね。」
「私達の艤装に何か問題があったのか?」
「武蔵の艤装は、戦艦によくある砲塔のダメージの蓄積なんだけど、これは武蔵用に1から合わせた方がいいね。多分、戦艦たちで使い回してるでしょ?スペアの主砲は余りまくってるから、武蔵用にカスタムしようか。」
「いいのか?私が言うのもなんだが、随分荒く使うぞ?」
「だからこそ合わせるんだよ、普通のやつより頑丈なやつにしてね。もし肉弾戦をするならそれ用の艤装も作るけど、どうする?」
「考えておくよ、時間が余ればそれもいいかもしれないな。」
「おっけー。とりあえず武蔵はいいとして、問題は大和なんだよね〜」
「私の艤装、そんなに酷いですか?」
「酷いも何も、艤装全体にダメージ入りすぎだよ。誰か庇ったの?それもタックルするみたいに海上を滑って」
「えぇっと……あはは…」
「はぁ〜、とりあえず大和のは今日中だね。資材はあるから、集中すれば3時間ぐらいかな?もう少ししたらお昼だから、それまでに大和の艤装は1回バラバラにして、終わってから作り直そう。とりあえず大和は今日は何も出来ないけどそれでいい?」
「はい…、いろいろとごめんなさい。ここまで言われるほど酷いとは思わなかったから。」
「これだけ酷いと、明石でも直せないし分からないからね。むしろ、ここまで戦い続けれたことに感心するよ。咲さん、流さんたち連れて食堂に行ってて。すぐに終わるから。」
「分かったわ、明石と夕張はユキちゃんといてね。また、食事のこと忘れるかもしれないから。」
「了解しました。夕張はユキさんを見てて、私はスペアを探してくるから。」
「はーい」
「明石〜、今回のスペアは47と276と281ね〜」
ユキは整理整頓をしっかりしないと気が済まないため、装備にそれぞれナンバーを振り、分かるように整理している。この鎮守府には現在存在している全ての艤装が揃っているため、スペアも潤沢しているのだ。明石は、言われた番号の装備を運び、全て運び終えた時にはユキの解体作業も終わっていた。
「それじゃあ、食堂に行こうか」
「お疲れ様~、久々にユキさんの料理も食べたいですね」
「今日はさすがに無理だから、明日になるかな」
「お〜、それは楽しみです。」
「私も楽しみにしてますね。明石ばっかりずるいし」
そんなやり取りをしながら、3人は食堂へと向かっていった。
〜呉鎮守府~
「ここに来るのも久々ですね。」
ユキの作業が終わった頃、呉鎮守府には来訪者が来ていた。
「あの子のお願いだから仕方ないわね。とりあえず、誰かいないかしら?」
「あの、どちら様ですか?ここは関係者以外立ち入り禁止なのですが。」
来訪者に声をかけたのは空母の「加賀」だった。今は五航戦の2人が中央鎮守府に行っているため、鎮守府を散歩していたのだ。
「あら、ごめんなさい。私はここの秘書艦の子に頼まれてきたの。それに、一応関係者なのよ。はい、これが証明書。」
「あの人が…。それに関係者…。分かりました。一応、拝見しますね。……え!もしかして…あなたは…」
「ふふっ、初めまして加賀さん。私は赤城。今は現役ではありませんが、一応艦娘ですよ。」
一航戦の赤い方、訳ありな赤城が呉鎮守府に訪れていた。
ユキは艤装から色んなことが分かっちゃいます。
大和さんのやつはわかる人は分かりますよね?タグ付けないといけないかな?
いろいろ気になることが増えてきましたね。
さて次回は、大和の艤装修理、そして今回来なかった方が来ます。
それでは次回をお楽しみに
感想お待ちしておりますm(_ _)m