中央鎮守府の工廠長   作:猫神瀬笈

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今回は執務室組のお話です。
ユキが大和と武蔵を連れていった後の話となります。



第3話_裏1 電の過去

〜中央鎮守府、食堂~

ユキが大和立ちを連れていった後、咲が言った。

 

「それじゃあ、ユキちゃんが行っちゃったからみんなも動きましょう。」

「あ、電さん以外の鍛錬をする方は私達について来てください。今の鍛錬メニューには機材が使われてるので、私と夕張が動かします。今回は新たなデータを取りたいので。」

 

明石がそういうと艦娘達は鍛錬に向かった。

 

「私達も行きましょう。電さんにも色々聞きたいから」

「はい、なのです」

「分かりました」

 

咲と流、電は執務室に向かった。

 

~執務室〜

 

執務室に入ると、電が奥のキッチンへと入っていった。咲は気にすることなく座っている。

 

「ほら、流君も座りなさいな」

「あ、はい…。なんか自然と奥に行ったことに驚いたのですが…」

「電さんがいつもしていたことよ。体にあの動きが染み付いているんでしょうね。」

「あれ?僕の時は1度も入れてくれたことなんてなかったのですが…」

「あなたのところにお客さんが来たことはありませんし、仕事が遅いから出す暇なんてないのです」

 

そういうと電が奥からでてきた。手元のお盆には湯呑みが3つ乗っていた。いつもの執務中に出されたことは無いため、少し新鮮だった。色からして緑茶だろうか?気になっていると咲に「どうぞ」と言われたため、1口飲んだ。

 

う、うま!あ…す、すみません!あまりにも美味しかったもので、つい…」

「ふふ、美味しいでしょ?ゴク、ふー、美味しいわ、前よりも。どんどんあの人の味に近づいているわ、さすが電さんね」

「ありがとうございます、でもそろそろユキに抜かされるんじゃないかって思ってるのです。あの味を1番楽しみにして味わっていたのはあの子だから…。

さて流提督、私に何を聞きたいですか?

 

電からのいきなりの質問に驚いた流。だが、聞きたいことは多い。何から質問するべきなのか悩んでいるが、どこまで聞いていいのかも分からない。

 

「聞きたいことは聞けばいいのです。ユキとのことも、あの人とのことも。」

「え…。で、でも電さんにとっては触れてほしくないことも…」

「構わないのです。むしろ、そのままにして呉に戻ってから何かある方がめんどくさいのです。」

「っ!分かりました。では教えてください。あなたとユキさんのことを!あなたのことを!」

ハハハ!流君!それじゃあまるで告白よ!」

 

一気に赤くなった。そんなつもりはなかったのに告白のような事を既婚者にしてしまったのだ。

 

「あー!ごめんなさい!ごめんなさい!決してそんなつもりじゃ!」

「わかったから落ち着くのです。咲さんもあまりからかうのはやめてほしいのです。」

 

咲がしばらく笑い、落ち着いたところでじっくり話し始めた。かつての戦いを思い出しながら。

 

「まずは、ユキのことについて話すのです。ユキはレ級の中で艦娘に対する敵対心を持たずに生まれた、敵からすれば戦力外と呼ばれる存在なのです。」

「戦力外ですか…。敵対心を持たなかったのというのは…?」

「あの頃は姫級や鬼級が今の何倍もいたのです。flagshipもいて、今の敵艦の編成が可愛いぐらいなのです。その中でもレ級達は異次元の強さを誇っていて、多くの仲間達が沈んで行ったのです。そんな戦いの中1隻のレ級が呉鎮守府にやってきたのです。」

「もしかして…それが…」

「はい。迎え入れる前のユキなのです。」

 

今でこそ大規模作戦や高レベル海域でしか見ることがない姫級や鬼級が昔ではわんさかいると考えると恐怖を感じる。一体どれぐらいの犠牲か出たのだろう?そんなことを考えながら話の続きを聞いた。

 

「当時あの人は用事で遠くに行ってしまっていたので、刺激しないように住民を非難させて私達も警戒していたのです。連絡をしてすぐ戻ると言われたので、その間に会話を試みました。そうしたら、まるで子供のようについてきたのです。」

「子供のよう…ですか?」

「そうですよ。まるで子供…産まれたばかりの雛鳥のように着いてきたのです。それからあの人が帰ってくるまで覚えている限りの内容をなんでも話してくれたのです。」

「もしかして、深海棲艦が少なくなったことにも何か関係が?」

「ええ。相手の拠点、数が多い理由、弱点など多くの情報を貰いました。この後、あの人が帰ってきてユキの事情を聞いたらいきなり『娘にする』なんて言ってきたのです。さすがに驚いたのです。」

「反対されなかったんですか?」

「さすがに鎮守府の艦娘達にも反対されたのです。でもあの人は、『不満があるなら俺を殺せ。』なんて言ったのです。納得しない子達に『純粋な子供のようなら正しいことを教えればいい』とも言いました。あの人はできないことは言わない人です。みんなが絶対的な信頼を置いていた人なので、ひとまず様子見ということにしました。」

「すごい人なんですね。絶対的な信頼を置かれる人なんて咲さん以外見たことがないです。」

「私に彼らのような信頼はないわよ…」

 

咲は多くの艦娘、提督たちに慕われている。艦娘の中には咲のところで戦いたいと言う子達も少なくないのだ。そんな信頼を置かれる咲以上の人の信頼とはどんなものなのだろうか?

 

「私達における信頼は命を任せられる信頼なのです。『次は必ずこの行動をする。』ぐらいで動いてたのです。お互いが次に起こす行動を先読みするぐらいは必要なのです。」

「ふぁ!?先読み?!え、ど、どういうことですか?」

「それは明日にでも見せてあげるのです。話を戻します。しばらく様子見をしていましたが、ユキはあの人の傍を離れませんでした。そんなユキをあの人は鎮守府の色々なところに連れて行ったのです。するとユキも色々な事に興味を持ち始めました。家事全般をするようになったのはその頃からだったのです。尻尾の艤装の扱いもその頃からですね。最初は力加減とか分からないことだらけでしたが、いつもあの人が付きっきりで世話をしていました。そのおかげで鳳翔さんや間宮さんと仲良くなって、私のことをお母さんと呼んでくれるようになったのです。次第に鎮守府の子たちも受け入れてくれました。その後、正式に娘として迎え入れることができました。これが私達とユキの出会いであり、家族となった理由なのです。」

 

あまりにも凄まじい内容を聞いた流は脱力した。咲よりも信頼されていると言われるかつての英雄。いくら信頼されているとはいえ、敵であるレ級を娘として受け入れるなんて自分には到底できない。

 

「どうするのです?私のことも聞きますか?」

「……聞かせてください」

「分かりました。その前に一息つくのです。その湯呑み、空っぽなのです。」

「え…、あ」

 

本当だ。よく見たら空になっていた。無意識のうちに飲み干していたようだ。とりあえず湯呑みを渡した。電は再び奥のキッチンへと入っていった。

 

「ふー、あれ?咲さん、どうかしたんですか?」

「ん?ん〜、私の知らないことが多かったからさ。なんかね。当時は娘ができたっていきなり言われただけだったからさ…そんなことがあったなんて知らないじゃんか〜」

「あの人は咲さんに深く考えて欲しくなかったからそうしたのですよ。当時のあなたのメンタルが崩壊しないように配慮した結果だと思うのです。」

「さすがにそこまで……いや、あの人のことだからあり得るか…」

 

咲は深く考えるのを止めた。あの人ならやりかねないという考えの方が納得できるから。

 

「それじゃあ、私のことについて話すのです。」

「あ、お願いします。」

「まず、私がユキの母親であり、あの人の結婚艦という事はわかりましたね?」

「はい」

「なので、他のことを話すのです。私は、あの人の初期艦であり、最初に顕現した5人の中の1人でもあります。

「あの、救世主の?」

「あまりその名前は好きではないですが…、確かにそうなのです。ここの五月雨もその救世主なのです。」

「え!そうなのですか?」

「そうよ。あまりにもドジしちゃうから、厄介払いでうちに来たのよ。まぁ、偉そうなヤツらを見返してやったけどね」

「ははっ…えっと、他の救世主は?」

横須賀、舞鶴、佐世保にそれぞれ分けられました。皆同じぐらいの強さですよ。その中でも私は1番の遅咲きでしたけどね。」

「遅咲き?」

「才能が開花するのに早いか遅いかということです。あの頃は私が1番の臆病者で最弱だったのです。みんなが様々な鎮守府に迎えられて先に進む中、私は置いてけぼりでした。きっと誰にも選ばれない。ずっとひとりなんだって、そんなことを思っていた時に私を初期艦として迎え入れたいという人がいました。」

「それがあの人…、先輩だったのね?」

「はい。最初は頑張ろうって必死になってました。でも、沈んでいく敵も助けたいって思いもあって、上手くいかなかったのです。そんな時あの人はこう言ってくれました。」

 

『守るということは誰かと敵対するということだ。必ず相容れない者が現れるだろう。だから俺はお前たちを、大切なものを守ると決めた。今は出来なくていい。どんな過激な戦いであっても、誰の命も散らさず終わらせれるほどに強くなると決めた。だからお前もゆっくりでいい。自分はどうしたいかを考えてみてくれ。「異論はないな、レディ?」』

 

「あの言葉を聞いて、決心したのです。強くなって目の前にある大切なものを守ろうと。そのためにあの人と共に歩みたいと。それから私は仲間を守ることを優先とした戦い方を始めたのです。その結果、仲間の被弾率が減り、敵の轟沈数が増えました。そこから様々な鍛錬を行い、今では指導する側になったのです。」

「電さんが強くなったのも納得だわ。私の艦隊に初めて黒星をつけたのも納得できたわ。」

「咲さんの艦隊は負け無しでは?」

「今はそうだけど、昔はほぼ負け無しよ。あの人との演習は勝ち星が一度もないから」

 

中央鎮守府の艦娘たちも弱い訳では無い。全員が実力者で苦しい激戦を戦い抜いてきた先鋭達だ。流はそんな艦隊から勝ち星が取れる艦隊の戦い方を知りたいと思った。

 

「あなたが咲さんに勝とうと思えばできますよ。」

「え!本当ですか!?」

「はい、咲さんの出す指示を全て先読みしてください

「………はい!?」

「大丈夫ですよ。今のあなたなら寝ずに1ヶ月頑張れば咲さんに勝てますから。」

「い、いやいや!寝ずに1ヶ月なんて無理ですって!死んじゃいますよ!」

「まだ良いじゃない、私なんてあなたが何年頑張ってもあの人には勝てないのですって言われたのよ。あなたに勝てる見込みがあるってことは私もまだまだってことよ」

 

そんなこんなで話していると外が暗くなっていた。時間を見ると18:06となっている。

 

「さてと、いい時間だからこの辺でお開きにして、そろそろお風呂にしましょうか」

「そういえば…僕はどうすれば…」

「確かお客さん用のお風呂場があったはずなのです。艦娘のことを考えてかなり離していますが、露天風呂だったはずですよ。」

「確かにあるわ。場所は案内するけど、ちょっと遠いから我慢してね。」

「分かりました。また、色々と話しましょう。」

 

3人は執務室を出て、施設から離れたところにある小屋に向かった。どうやらそこが露天風呂らしい。流提督はそのまま小屋の中へ。咲と電は入渠施設へと向かった。その途中にボロボロになった呉鎮の艦娘達を見つけたため、一緒に入渠施設へ向かい、溺れそうになる彼女達がお風呂から上がるまで付き添ったのだった。




電と咲の先輩提督との関係、ユキとの関係が見えましたね。
そして、どこかの宇宙の戦士に向けられた言葉が出てきましたね。元ネタ知ってる人いるのかな?(かなり後半に書く予定の話にも出てくるかも)
次回は2話続けて発見されたボロボロの艦娘達の話を書きます。本当は1話分の予定だったのに書く途中で色んなものが浮かぶんだもん!
今後の話も裏で起きたことはこんな感じに書いていきます。そのため次回の話は「裏2」となります。
それでは次回もお楽しみに
感想待ってまーす( ´ ▽ ` )ノマタネ
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