明日体育祭だよ、という衝撃から一日が経過した。つまり、体育祭当日。
お医者さんにそのことを話すと、
「検査したところ異常はないので、体を動かしても大丈夫だとは思うのですが……次同じことがあれば危ないかもしれませんね」
どうせならダメって言ってくれ。参加するかどうか迷っちゃうじゃん。
んー、多分火事場の馬鹿力みたいな感じで採算合わせにこうなったんだろうし、体育祭ごときで脳無と対峙するレベルでやばいことなんかないと思うんだけどなあ……。
どうしよう。
まあ、とりあえず学校行くだけ行ってみよう。
教室に入るや否や、みんなが寄ってきた。
「雲嶋! 大丈夫だったのか!?」
「雲嶋、体調とかは!?」
「雲嶋ちゃん、戻ってきてくれてうれしいわ」
「うん、私は大丈夫だから、一回落ち着いてね」
「よかった、何にも後遺症は残らねえんだな。安心したぜ!」
「うん、そうみたい」
「すごかったよね! 入口から避難してるときにちらっと見たけど、あのヴィランと殴り合ってたよね!」
「そうだね、結局負けちゃったけど」
「負けてないよ! 雲嶋はみんなを守ったんだから! 守れたら、ヒーローの勝ちだよ!」
確かに。三奈ちゃんの言う通りだな。
ヒーローは戦う職業じゃないんだ。守る職業だったことを忘れていた。
「それでよお、雲嶋、お前は体育祭に参加できんのか?」
「ああ、体には何の異常もないらしいから参加するつもりではあるんだけど。学校側からストップがかからない限り」
めっちゃ体重いけど。めっちゃ動かしにくい。
「そうなのか! 参加出来たら一緒に頑張ろうな!」
切島くんめっちゃいい人だな。明るい。髪とんがってるけど。
「お前ら、席に着け」
あ、相澤先生きた。
「雲嶋……お前、来たのか」
「はい、体に異常はないらしいので参加しようかと」
「お前、二週間寝たきりだったんだろ。やれんのか?」
「まあ、はい。多分ですけど」
「……そうか。一応出場する前に保健室で婆さんに診てもらっておけ」
「はい。わかりました」
「それじゃあ、他の奴らは更衣室で着替えて、控室で待機」
『はい!』
そう言って、各々が動きだすと、相澤先生に手招きされる。なんだろう。
「なんですか?」
「保健室に行く道中で話す。ついてこい」
廊下を相澤先生と並んで歩く。
「雲嶋、俺はお前に謝らないといけない」
「先生もですか? 昨日出久にも見当違いの謝罪されたんですけど」
「緑谷が……? まあ、緑谷の謝罪の内容はしらんが、俺の謝罪は責任のある大人としての謝罪だ」
「相澤先生の責任……? なんかありましたっけ」
「広場でヴィランと交戦しているとき、俺はお前を置いて他生徒の救助に向かってしまった。その結果、お前に大けがを負わせてしまった」
「そんな、気にしなくていいですよ。私がごねたのが悪いんですし。あの場で私の時間を使わずに救助に向かったのは合理的判断ってやつじゃないですか?」
「ああ、確かにプロとしての判断は間違っていなかったかもしれない。しかし、お前らの命を預かる教師としての判断は間違いだったってことだ。すまなかった」
「うーん、まあ。確かに?」
「……なんで腑に落ちてないんだ」
「いや、私が全面的に悪いんですもん。というか、謝るぐらいだったら反省文提出なしにしてください。書きたくないです」
「それは無理だ。というか、お前が全面的に悪いと思っているんだったら尚更反省文を提出しろ」
「はい……」
「俺が伝えたかったのはそれだけだ。それじゃあ、婆さんに診てもらったらお前も控室で待機しろ。時間がないから、少し急ぎ目で頼む」
「分かりました。その、頑張りますね。体育祭」
「……ああ、頑張れよ。応援してる」
やばいやばいやばい遅れてる! もう入場始まってる! リカバリーガールの診療長引いちゃった! お小言言われまくっちゃった!
どうしよう、最速で入場するためにはどこからだ!?
……。
そういえば、会場って天井なかったよな。
校舎の窓から飛び降り、会場の外側に回る。そして、ウェブを会場の壁に発射し、飛び上がる。
会場の屋根に飛び乗り、穴の開いている中央へと走る。
まずい! マイク先生のA組入場の放送始まってる!
「もう、どうとでもなれ!」
中央の穴へといつものウェブパチンコを使って飛び込む。既にA組の人たちは入場をほとんど終わらせている。
そして、A組の列の一番後ろに着地する。
スーパーヒーロー着地、というやつだ。
『おおっと乱入者か?! いいや、彼女も一年A組のメンバーの一人! 抜け駆けで目立ちやがったこいつは、雲嶋 八菜だあああああああ!』
『急ぎ目だつったのになんで結局遅れてんだあいつは……』
やめて、目立たせないで。恥ずかしいんだから。
「雲嶋さん、どういう入場の仕方をしているんですの?!」
「リカバリーガールに診てもらってたら長くなっちゃって普通に移動してたら間に合わなかったから……」
「それでも、限度ってものがあるでしょうに……」
「私も今後悔してます」
十八禁ヒーローのミッドナイト先生が体育祭の主審を務めるそうで、次の競技の発表も行うらしい。
「第一種目は……こちら! 障害物競争!」
雄英の広い敷地を大胆に活用したその障害物競走はもはやマラソンに近い物を感じる。
こんな距離普通の人なら走り切ることすら難しいだろう。それに加えてコースに設置されている障害物を避けながら進まなければならないのだから、流石雄英体育祭というところであろう。
ルールは、コースからでないこと、個性の使用ももちろんOK。それ以外は何してもOK! といったむちゃくちゃルール。
こんなきっついこと病み上がりにやらせんなって叫びたいけど、やるって決めたのは私なんだよな。文句言う相手がいない。
「それじゃあ、出場者はスタート地点に移動して!」
スタート地点の第一関門はこのせっまい通路なんじゃないかと思うほど、人数とこの通路の広さが比例していない。もっと広く作れ。
スタートしたら上走ろう。
「それじゃあ、第一種目、スタート!」
早速始まった。通路の天井に飛びつき、走ろうとする。
そのとき、横の壁に緑色の電流が走ったのが見えた。
「へっ? 出久!?」
出久が発したものであろう電流は、すぐに通路の外へと飛び出て行く。
「あいつ、私と同じ発想に辿り着いたのか。なんか成長を感じるなあ」
置いて行かれるわけにはいかない。昨日病院であんなこと言っちゃったし、簡単に追いつかれちゃ恥だ。
でも……
「体、重いなあ……」
なんて考えてると、スパイダーセンスが反応する。
急いで通路から飛び出す。
その瞬間さっきまで居た通路は凍り付いていた。
「轟くんか! やっばいな、この個性!」
私が飛び出すと、それに続くようにみんなも飛び出してくる。爆豪くんや百ちゃん、色々出てくる。
でも、それより先に出久が飛び出してる。ってことはたぶん、出久が現在一位。
やるなあ、出久。でも、私も負けるわけにはいかない。
すぐに走り出す。すると、轟くんが私の後ろを追いかけてくる。
「轟くん、やっほー。すごい個性だね」
「雲嶋か……すまねえが無駄口叩いてる暇はねえんだ」
「つれないなあ。私たち二位と三位だよ? 少しぐらい余裕持ってもいいじゃん」
「俺が狙うのは、一位以外ありえない。二位なんかじゃ、ダメなんだ」
「私が轟くんに追い越されるのは確定なんだ……。まあ、追い越されるつもりなんてないんだけどね!」
全力で走ってはいるが、筋肉が凝り固まっていて、うまく走りづらい。
途中の障害物でどうにか差をつけるしかないだろう。
出久は既に先に進んでいるようだし。
走っていると、大量の入試の時のロボットが出てきた。0ポイントヴィランもいるし。というかあんなにいるんだったら壊しても良かったんじゃねえか。後悔してて損した!
出久は……大量のロボットを一人で相手していて攻めあぐねている。
逆転を狙うなら、ここがチャンスか。
「やあ、出久! 成長を感じてちょっとうれしかったけど、まだ追い越されるわけにはいかないんだ!」
「八菜さん! もう来たのか……!」
また、スパイダーセンスが反応する。
攻撃を受ける前にロボットにウェブを発射し飛び上がって置く。
すぐに、地面が凍り付く。また轟くんの個性か。
「出久、轟くん、ばいばい! ゴールで会おう!」
凍らされた0ポイントヴィランにもう一度ウェブを発射し、ロボットヴィランの上を越えていく。
引っ張ったせいか0ポイントヴィラン倒れちゃったけど、まあいいでしょ。妨害ありだし。
地面に着地してそのまま走るが、すぐに出久も後ろから追いかけてきている。轟くんも氷で坂を滑り倒れたヴィランの上を越えて来たみたいだ。音からして爆豪くんも来ているようだ。
くそ、もっと体動くようになってから参加していれば差をつけることが出来ていただろうに。
走っていると、地面の大部分が穴になっており、残った地面と地面の間にロープがかかっている障害物へとたどり着く。
別に、ロープ使わなくてもいいな。
穴へと飛び込み、残っている地面にウェブを発射し、ウェブスイングで進む。
これでだいぶ差はできたんじゃないだろうかと期待して、後ろを見る。
出久は跳び、爆豪くんも飛び、轟くんは滑っている。
「全然差つかないじゃん……!」
微妙に私が勝っている状態で進んだ障害物競争ももうゴールが見えるところまで来た。
しかし、障害物も見えている。地雷ゾーン、らしいけどやることはもう決まってるな。
ウェブをゴールの壁に発射し、ウェブパチンコだ。
「させるか!」
轟くんが叫び、私の発射していたウェブが生成された氷で切られる。
「ちょっと、妨害なんてずるっこいことしないでよ!」
「お前も一番最初にしてただろが! ぶちころすぞ蜘蛛女ァ!」
爆豪くんが爆破で攻撃してくる。
「ちょちょちょ、病み上がりの病人なんです! もっと気遣ってよ!」
「気遣ってほしいなら体育祭出るべきじゃなかったな、蜘蛛女!」
くそ、ウェブパチンコですっ飛んでいこうにも妨害される。
普通に走って行ってもいいけど爆豪くんに攻撃されながらだときついな。
うん、じゃあ走らずに一瞬で決めよう。
立ち止まり、クラウチングスタートの体勢をとる。
追いかけてきていた爆豪くんたちは驚いたようだがすぐに私を追い抜いて行った。
USJ事件で私が出した馬鹿力。
火事場の馬鹿力だったとしても、あれは私が出せる力の範疇なんだ。
なら、今も出せるだろう。
もしかしたら、また気絶するかもしんないけど。
「そうなったら、もう一度、立ち上がるだけだ」
息を大きく吸い込み、足に力を籠める。
地面を蹴る。
体勢をまっすぐにし、体を宙に浮かせ進む。いつか見たオールマイトの移動法を真似てみる。
成功だ。
USJの時ほどじゃないけどいつもより強い力が出せた。オールマイトの30%程度だろうか。
地面を蹴ったときの力の余波で埋まっていた地雷が爆発するのが分かる。後続の妨害にもなるだろう。
前を進んでいた爆豪くんと轟くん、そして出久を追い抜いた。
ゴールの通路に入ったところで体勢を戻し着地。あとは走りぬくだけだ。
いや、多少差をつけたと思ったのに、もう来てるわ。
正直、今ので疲れちゃった。体動かしにくいのにこんな無茶したから当然だけど。
もう一回やる時間も体力もない。
あとは一位を維持できるように祈りながら走るしかない。
その瞬間。後ろから、鋭い風切り音が聞こえた。
緑色の閃光が、私を追い抜いていく。
キャラクタープロフィール
名前:雲嶋 八菜
個性:『蜘蛛女』
身体能力全般向上、蜘蛛糸発射、危険感知、壁に張り付く等できることたくさんの個性。
そして性別が女になる。なぜ?
身体能力向上の筋力の部分は瞬間的にワンフォーオールの力の30%程度を出せる。火事場の馬鹿力で50%程度を出したことがある。
カフェインをとると酔っぱらう。
血液型:B型
出身地:静岡あたり
身長:165cm
好きなもの:男だったころ→焼肉
現在→特になし
戦闘スタイル:近接格闘・遠距離攻撃(雑魚狩り限定)
備考:中学一年生時に個性『蜘蛛』が現在の『蜘蛛女』に変化。『蜘蛛女』に変化後はヴィジランテ『スパイダーマン』として活動。知名度は全国でたまに取り上げられるほど。インターネット上にコアなファンがいる。
アメコミの『スパイダーマン』を知っていて、戦闘スタイルだったりで参考にしている部分が大量にある。どこでスパイダーマンを知ったかは覚えていない。
現在は雄英高校ヒーロー科一年A組に所属。ヴィジランテ活動は行っていない。
恋愛感情なし痛覚もなしのヒーロー志望のTSJK
プロフィールで一話取ったりした方がいいですか?
-
とれ
-
とるな
-
後書きで済ませろ