元蜘蛛男で現蜘蛛女のヒーローアカデミア   作:りてらしー

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調整平均ラッキーセブン感謝



蜘蛛女の体育祭④

 一回戦二回戦と同じように保健室で睡眠をとり、控室に向かった私は、爆豪くんとの戦闘方法について考えていた。

 

 爆豪くんの何が強いのか。それは、天性のセンス、つまり才能とそれに加えて爆破の個性があるからだ。

 戦闘訓練で見た爆破の威力、方向の調整による高速移動や立体的な運動。

 そして、何よりタフネス。

 いつか出久から聞いたヘドロ事件で、爆豪くんはヴィランに捕まっても長時間耐えていたらしい。

 もとより長期戦をするつもりはないが、もしそうなった場合私の負けはほとんど確定したと言っていいだろう。

 真っ向から戦って勝利するのはいつも通りならともかく、現在の体調では難しいだろう。

 それなら、小細工や策で爆豪くんを出し抜くしかないが、あの平坦なフィールドで爆豪くん相手にできる小細工が全く思い浮かばない。

 反射速度も勘もやばいからな。ちょっとの量の蜘蛛糸を発射したところで爆破で焼き尽くされるのがオチだろう。

 

 考えているうちに、マイク先生の実況が流れてくる。

 

「ここまで超短期決戦で終わらせてきたスパイダーガール! 今回も同じように行くのか!? 雲嶋 八菜アアアアアアアア!」

 

 いや、いけないと思います。

 

 フィールドに上る。

 爆豪くんは既にフィールドに上っていた。

 

「あー、爆豪くん。さっきも言ったかもだけど、手加減してくれると嬉しいなあ」

 

「さっき言ったかもしれねェが、手加減してほしかったなら、体育祭に出場するべきじゃなかったなァ?」

 

 くそ、正論パンチ二発目だ。

 仕方ない、少し卑怯かもしれないが、盤外戦術を使うことにしよう。

 そして、これが最初で最後の勝ち筋だ。

 

「じゃあ、仕方ないね爆豪くん。私は今からここから一歩も動かない。だから、攻撃してきていいよ」

 

「あァ……? 舐めてんのか?」

 

「いやいや、そんな意図は全くないよ」

 

 爆豪くんがキッとこちらを睨んでくる。怖い。

 

「……両者、準備はいいようね。それじゃ、試合開始!」

 

 聞きなれた試合開始の声が聞こえると同時に、聞きなれてしまった爆発音が鳴り響く。

 

「死にたくねえなら動けや蜘蛛女ァ!」

 

 爆破の個性を使いながら突っ込んでくる爆豪くん。

 息を吸う。障害物競走のラストでしたのと同じように、右腕に力を籠める。

 

 爆破で急接近してきた爆豪くんは右手を突き出してきて、大爆発を食らわせてくる。

 爆風の圧で体が吹っ飛びそうになるが、地面に足を張り付かせ、何とか耐える。

 

 爆発の煙で辺りが全く見えなくなるが、スパイダーセンスは反応し続けている。

 ここだ。

 爆豪くんが攻撃に転じた瞬間、私がカウンターでどうにか沈める。

 私がまともにくらったと思っているだろうから、不意はつけるはずだ。

 

 力を籠めていた右腕をスパイダーセンスの反応する場所へと振りかぶる。

 煙の中からの攻撃。

 普通なら当たるはずだ。

 普通なら。

 

 突き出した拳になにか当たる感覚は一切なかった。

 拳を突き出したときに生じた風圧で煙が晴れる。

 そこに、爆豪君はすでに居なかった。

 

「やっぱり、回避するよね。爆豪くんなら」

 

「てめェはなんか企んでやがったからな。騎馬戦の時、どういう仕組みか知らねえが俺の爆破をくらっても反撃して来てただろ」

 

「うーん、警戒されちゃってたか。当たり前なんだけど」

 

 ここから私にできることはなにもない。

 精々足掻くだけだ。

 ウェブを発射してみるが、すぐに爆破で焼き尽くされる。ずるいよそれ。

 

「あー、嘘ついて悪いけど、やっぱり動くね」

 

「やっと本気になったか! 遅えんだよカス!」

 

 体力はもうない。爆豪くんの爆破と合わせた高速の攻撃を躱して戦えるかと言われればそれはノーと言わざるを得ない。

 けど、諦めるのは、違う。

 足掻くのが精々なら精一杯足掻くことにしよう。

 

 再び、爆豪くんが爆破を利用して飛んでくる。

 横に回避しようとするがうまく体が動かず爆破をもろにくらう。

 そのまま爆豪くんは上に飛び上がり私の後ろに回りながら爆破をくらわせてくる。そして、後ろに回ったと同時に一撃どでかいのをまた食らう。

 特に踏ん張ってもいなかった私はフィールドの場外ギリギリまで吹っ飛ばされる。

 もう流れで負けてしまって休みたいと一瞬考えるが、振り払いどうにか立ち上がり、爆破で飛んでいる爆豪くんに構える。

 

 とにかく、この位置はまずい。すぐに中央辺りに位置を取らなければ。

 そう思い中央に移動すると同時に飛んでいた爆豪くんが突っ込んできて爆破で振り出しに戻される。

 

 横から回ろうとしてみたり、ウェブで爆豪くんを地面に引っ張り落そうとしてみたりしたが、どれもが失敗。

 場外負けだったり、気絶をしてないのが奇跡のレベル。

 痛みはないけど、爆破をくらうたびに熱いという感覚と体が動かなくなっていく感覚が強くなっていく。

 爆破でぶっ倒れて転がったときに口の中切って血の味するし。

 やっぱりこのままぶっ倒れて休んでしまいたい。

 いや、もうそうしよう。

 気絶負けってことにしとこう。うん。そうしよう。

 

 

 

 

 

 

『ダメだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだった。私はスパイダーマンにならなきゃいけなかったんだ。そういえばそうだった。

 

 約束だったな。そういえば。

 

 スパイダーマンは倒れてもいい。けど、立ち上がらなきゃいけないんだ。

 

 倒れて終わるなよ。雲嶋八菜。

 

 なにか、犠牲にしてもいい。あとで何かなくなっててもいい。立ち上がれ。

 

「ッ……よし、まだいける」

 

 自分で自分のことを激励し、どうにか立ち上がる。

 不思議と、体力も戻ったような気がする。血の味も、もうしない。

 

「爆豪くん、なんかいけるわ。私、勝つわ」

 

「じゃあさっさとかかってこいやァ!」

 

「お言葉に甘えて!」

 

 爆豪くんに向かって飛び出す。

 私に手のひらを突き出して爆破の体勢を取ってくるので、右側に回避する。

 動かなければ間違いなく当たっていた。

 すかさずもう一度狙ってくる爆豪くん。

 連発できるのか。なら、もう突っ込んでしまおう。

 初めに失敗したカウンター戦法も、私が動けるのなら成功するだろう。

 

 スパイダーセンスがとんでもなく反応しているが、無視して正面から爆破をもろに食らう。

 

 

 関係ない。

 

 突っ込むだけだ。

 

 

「てめェ、まさか……!」

 

 爆豪くんの目の前に飛び出し、右足でハイキックを食らわせ、そのまま回し蹴りで追撃する。

 だが、流石は爆豪くん。ほとんど不意打ちみたいなもんなのに追撃のほうを右腕で防いで完璧に防御してる。

 後ろに跳んで距離を取りながら、ウェブを乱射し、腕を拘束する。

 

「ちょっと動けるようになったから、本気出しちゃおっかな!」

 

 拘束を爆破で無理やり解いた瞬間の爆豪くんにウェブを発射し、それを引っ張りもう一度距離を詰めながら上から殴りつける。

 空いた左腕でウェブを発射し、それを掴む。

 

「なんかこれよくやるから慣れちゃった! 爆豪くんにも慣れてほしいな!」

 

 掴んだウェブを上に引っ張り、爆豪君を宙に浮かせる。

 すぐに爆破でバランスをとるのは流石としか言いようがない。しかし、すぐに私も跳び上がり追撃を狙う。

 

「空中戦ラウンドツー! いくよ爆豪くん!」

 

「かかってこいや……! 蜘蛛女ァ!」

 

 爆豪くんと同じ高さまで跳び、顔を殴る。改めて見ると綺麗な顔してるな。日頃の言動がもったいない。

 殴られて姿勢を崩していた爆豪くんもすぐに体制を整え私に爆破を食らわせてくる。

 

 空中で殴って爆破されてを繰り返し、地上に着地してお互いに大きい一発を食らわせて吹っ飛び、お互いにフィールドの端に着地する。 

 おそらく、ここが勝負の分かれ目。

 お互いに攻撃を相手に多く食らわせてるこの状況。あと一発大きいのが入れば勝負は決まる。爆豪くんは、そう考えるはず。

 

 一瞬の睨み合い。

 スパイダーセンスが反応した瞬間、私も動く。

 爆破も合わせて突っ込んでくる爆豪くん。私もウェブを地面に発射して突っ込む。

 右腕を引き絞る。力を籠める。

 爆豪くんの爆破のタイミングに合わせ、拳を振り抜く。

 

 

「今度は、外さない!」

 

「これで終わりだ! 蜘蛛女ァ!」

 

 

 

 お互いに、攻撃を食らわせ合い、フィールド外へ吹っ飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、私の体に、久しく感じていない激痛が走った。

 爆破で食らった衝撃、熱さ、やけどのヒリヒリとする痛み、体のだるさ。

 それに加えて脳みそを直接掴まれているかのような激しい頭痛。

 USJの時のそれと類似した痛みが私を襲った時。

 血の味は、しなかった。

 地面に落下したとき、更に痛みが走る。

 

「両者……場外……に……を……ます!」

 

 ミッドナイト先生が何か言ってるが、聞き取れない。

 

 まただ。

 また、気絶してしまう。

 

 いつか出久に怪我しないでほしいとか、心配してしまうとか、言ったけど。

 私が言えたことじゃ、なかったな……。

 

 

 また、意識を手放してしまった。




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