元蜘蛛男で現蜘蛛女のヒーローアカデミア   作:りてらしー

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いつもありがとうございます



蜘蛛女の体育祭⑤

 目覚めた時、そこは保健室だった。リカバリーガールもそこにいた。

 

「おはようございます。もしかしてまた私二週間寝てましたか?」

 

「こんな短期間で二週間寝るような怪我したらあんた死んじまうよ。さっきの試合からは十分程度しか経ってないさ」

 

「そうですか……。あ! さっきの試合、どうなりましたか!?」

 

「どっちも場外で、気絶してたあんたが負けってことになったさ」

 

「……そう、ですか……」

 

「まあ、仕方ないさね。退院して一日目でよくやったってぐらいだよ」

 

「それは、そうなんですが……」

 

 やはり、悔しい。

 あの場面で最後にウェブを発射してフィールドに戻っていれば私は決勝に進むことが出来ていた。

 でもやっぱり、たらればだ。

 負けは負け。

 

「というか、あんたは病み上がりの体でどんだけやってんだい! 全身やけどに口の中も派手に切って血もだらだら流れてたり右の腕の骨も折れてる! しばらく口の中で鉄の味がして気持ちが悪いだろうけど無理した罰だと思って我慢しときな!」

 

 あれ、腕の骨折れてたんだ。あ、ほんとだ。アームホルダーついてる。

 全く気付かなかったな。あれ、そういえば試合の終わりめっちゃ痛かったのは痛覚戻ったのかな。

 左腕でほっぺたを抓ってみる。全然痛くない。

 試合の終わりは全身痛かったんだけどな。

 

「……あれ、鉄の味?」

 

「ああ、口の中にまだ結構残ってるだろう。うがいしたいなら適当にして来な」

 

「わ、わかりました……」

 

 全然鉄の味なんかしないんだけど。

 リカバリーガールの勘違いで血なんて流れてなかった? いや、確かに試合途中まで口の中切って血の味してたし、あれ? 

 もしかして、私味覚もなくなった? 

 まあ、味覚ならまだいいか。スパイダーマンになるのに味覚は必要ないだろう。きっと。

 

「えっと、リカバリーガール。私は動いてもいいんですか?」

 

「ああ、構わないよ。当然だけど、激しい動きはできないけどね」

 

「それなら、私も決勝観戦してきます。えっと、ありがとうございました」

 

「ああ、これからは無理しないようにね」

 

 失礼します。と言いながら保健室を後にする。

 決勝、楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 観客席に来た私をA組のみんなが見つけると一気に騒がれる。どうしたんだ。

 

「八菜ちゃん、大丈夫? 退院してすぐなのに無理し過ぎだよ!」

 

「そうですわ。八菜さん。あんなにぼろぼろになりながら戦うなんてしなくてもいいですのに……」

 

「いやー、思ったより頑張れちゃってさ。それに、試合の途中になんか動きやすくなったしね。あ、誰かチョコレートとか持ってたらちょっと欲しいかも」

 

「雲嶋、マイペースだな……」

 

 お菓子を所望してたら砂藤くんが個性発動用にと用意していたビスケットを貰った。

 お礼を言いながらかじってみる。

 うーん……。

 

「えっと、一応質問するんだけどさ。これ砂糖とかちゃんと入ってるよね」

 

「え? ああ、当たり前だろ? 個性発動用だし、ビスケットなんだし。いや、個性発動用だから砂糖は必要量しか使ってねえんだよな。もしかして、まずかったか?」

 

「ううん、そんなことはないよ。リカバリーガールに糖分を取りなさいって言われたからさ。一応確認しただけ。おいしい。ありがとね」

 

 ビスケットをかじってたら他の人たちも砂藤くんにお菓子をたかりにいってる。そして、みんなそれを食べておいしい、と口々に言っている。

 私と同じビスケットを食べてる三奈ちゃんもおいしそうにしてる。

 

 なんとなくわかってはいたけど味がしない。

 かじってるけど味がしないせいで口がパッサパサになっていくだけの謎の食べ物になってる。

 正直に言ってまずい。

 

 口はつけていないのでどうぞ、と百ちゃんが水を渡して来てくれる。

 こちらもお礼を言いながら飲んでみると、すごい違和感がある。

 水にも多少の味がするものだが、それもしない。めっちゃ気持ち悪い。

 顔に出したら失礼だから出さないけど。

 

「ありがとね。お水もビスケットもおいしかったよ」

 

「そうか? 自分で食べる用でしかなかったから言われ慣れてねえけど、なんかうれしいな」

 

「私のはただ市販の水ですから……? 雲嶋さん、大丈夫ですか? 耳が痙攣してませんか……?」

 

「え? ああ、これ? ちょっと、危険感知をしてるときとかした後こうなるんだよね。うん」

 

「あー、だからあのマスクか。なるほどな」

 

「そ、そうそう! そういうこと!」

 

 うまくごまかせた。というか、また癖を出しちゃった。どんな癖だよ、ほんとに。

 そうだ、決勝戦始まる前に出久と戦った人にいろいろ聞いておきたいんだよな。

 一回戦は確か、心操くんだっけ? どこの人かわからんしいいや。二回戦は、轟くんか。

 

「あー、轟くん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

 

「雲嶋……お前、怪我は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ。気にしないで。それで、出久との試合で出久がどんな感じだったのか教えてほしいんだよね。私ずっと保健室で寝ててさ」

 

「だから観客席にいなかったのか……。緑谷との試合か、そうだな……」

 

 しばらく考える轟くん。そんな考えることがあるのか? 

 

「緑谷は……いいやつだった」

 

「わかった。聞き方が悪かった。試合の展開はどうだったか教えてほしい」

 

 散々考えて出した答え短すぎるだろ。 

 

「試合は、そうだな……」

 

 簡単にまとめると、轟くんがすぐに試合を終わらせようとしたところ、出久が風圧を伴う威力の打撃を氷が間合いに届いた瞬間それを殴りつけ破壊して突破してたらしい。

 その時に自分の体を痛める様子はなかったらしいし、自分の個性に慣れてきたのかな。

 そして、その後隙を見つけられて近接戦を仕掛けてきた出久に対処するために左側の炎も使って応戦した、と。

 最終的に出久のフルパワーのパンチと熱膨張を利用した膨冷熱波という技がぶつかり合って出久が腕をぼろぼろにしながら勝利したらしい。

 また怪我する戦い方をしたのか。私が言えたことじゃないけど。

 

「なるほど……わかった、ありがとう。えっと、出久の準決勝の相手は誰だっけ……」

 

「飯田だが……あいつはどっか行っちまった。俺も試合は見てたから説明できるが、したほうがいいか?」

 

「ほんとに? じゃあおねがいしてもいいかな」

 

「おう」

 

 こちらの試合も簡単にまとめると、飯田くんは意外にも防御に徹していたようだった。てっきりあの速いやつでぶっ飛ばす作戦かと……。

 そして、痺れを切らした出久が突っ込みパンチ、それに合わせてあの速いやつのキックで相殺。

 出久がその勢いで蹴り飛ばされそうになった時に体を反らして避け、カウンターのパンチで場外勝ち。

 

「うーん……」

 

「どうした? どこか痛むのか?」

 

「いや、どこも痛まないけど、私自身が痛々しくはあるかな……」

 

「……? どういうことだ?」

 

 轟くんが首をかしげる。

 

 私今すごい恥ずかしい。

 始まる前に私を超えてみろよ! とか言ってたけど、話を聞く限り、もう私より強いか、私並に強くなってる気がする。

 風圧を飛ばして攻撃に転用できるって、私より個性の増強率高いんじゃないか。

 というか、一気に強くなり過ぎじゃないか? 

 二週間前までは5%ぐらいが精々でしたよねあなた。今の話を聞く限り25%とか行ってるんじゃないか。

 この二週間で何があったんだよ。何がきっかけなんだ。

 

「雲嶋、俺もお前に聞きたいことがある。いいか?」

 

「え? 別にいいけど、どうしたの?」

 

「俺が緑谷との試合が終わったとき、聞いたんだ。なんで急にそこまで強くなったんだって」

 

「あ、聞くんだねそれ。気になってたけど」

 

「ああ。それで、緑谷に『雲嶋さんのおかげかな』って答えられた」

 

「んん?」

 

「お前、二週間寝てる間になんかしやがったのか?」

 

「寝てるって分かってるなら聞かないでよ。なんもしてないに決まってるじゃん」

 

「ああ……けど、お前なら確かにそんなことがあってもありえるかもしれねえって思ってな……」

 

「いや、ほんとになんもしてないよ?」

 

「……そうか。けど、ならなんで緑谷はあんなこと言ったんだ?」

 

「さあ……?」

 

 

『鈍感二人合わさって地獄みたいになってる……』

 

 二人を除いたクラスメイトの意見が一致した瞬間だった。

 

「すまねえ、あと一つ聞きてえことがある」

 

「ん? どうしたの」

 

「お前、怪我だけじゃねえ、何か悪いところがあんだろ」

 

 轟くんに肩を組み屈ませ、声が響かないようにさせる。

 

「なんだ急に」

 

「ちょっと、誰から聞いたのそれ……!」

 

「別に誰からも聞いてねえが、というか、その反応はやっぱりお前……」

 

 あっ。

 

「お前、どこがわりいんだ。隠してえなら言わなくてもいいが……」

 

「……痛覚がないんだよ。USJのときから」

 

「やっぱりか……。なんでそれ隠してんだ? 別に隠す必要なんてないだろ」

 

「だって、みんなやさしいからさ、言っちゃったら心配してくれるでしょ? でも、無駄に心配させたくないからさ」

 

「そうか……。なら、それでなんか困ったことがあったら言え。どうにかしてやる」

 

「ああ、うん? うん。なんかあったらね。お願いするね」

 

 なんかそんな感じだったっけ? 今まで全然関わってこなかったのに、急に優しくないか? 

 というかせっかく隠してたのに、バレちゃった。幸いすぐにこそこそ話に切り替えたから全員にはバレてないけれど。

 というか、轟くん軽々しくどうにかするとか言っちゃっていいのか? 詐欺とかにあいそう。忠告しておこう。

 

「轟くん。詐欺とかには気を付けるんだよ。ちゃんと注意深く話を聞くんだよ」

 

「おう。けど、多分お前も気を付けるべきだと思うぞ」

 

 詐欺なんか引っ掛からないって。

 今まで詐欺行為というか、私のことを騙そうとしてきたやつらは全部スパイダーセンスに引っかかってるしな。

 モデルのスカウトを装ってやってきたときはびっくりしたな。スパイダーセンスが反応してたけどスカウトを信じてついていったら男が大人数で拘束してこようとしてきたんだよな。あの時からスパイダーセンスを絶対信じるようになったんだっけか。

 うん? 

 あれ、スパイダーセンスがあっても引っ掛かってね? 

 まあこれからは引っ掛からないだろうし。多分。

 

「あ、決勝始まるよ。轟くんはどっちが勝つと思う?」

 

「……緑谷だ」

 

「その根拠は?」

 

「戦った時のあいつの執念と言うか、雰囲気だ」

 

「……そんな感じあったっけ?」

 

「今まではなかった、けど、今はある」

 

「へー。でも、執念とかそういうとこで言えば爆豪くんも負けてないと思うけどね」

 

「それもそうだな。やっぱり、どっちが勝つかはわかんねえ。雲嶋はどっちが勝つと思うんだ?」

 

「私もわかんない!」

 

「そうか」

 

 

『決勝戦まで超パワーの個性で勝ち上がってきたスーパーボーイ! 緑谷 出久ゥゥゥゥゥ!』

 

『対して、爆破の個性で勝ち上がってきた、準決勝のスパイダーガールとの試合で名試合を生み出したボンバーボーイ! 爆豪 勝己ィィィィィ!』

 

「ボンバーボーイなんてくそダセェ通り名付けんなやクソがァ!」

 

 フィールドから爆発的な暴言が聞こえてくる。私との試合でもう疲れてしまったかと思ったけど全然元気そう。よかった。

 あ、試合始まった。

 

 試合が始まると同時に、お互いに自分の間合いへ相手を入れるため前方へ飛び出した。

 出久、やっぱり増強率上がってるな。めっちゃ速い。絶好調の時なら勝てるか。

 

 前方へ飛び出した2人は間もなく間合いに入り、各々の攻撃を打ち付け合う。

 正直、出久の攻撃の威力が異次元過ぎる。

 爆豪くんが勝つためにはあの速さと威力を兼ね備えた拳の雨あられを拳によって生じた風圧も含めすべて躱してからの爆破を当てなければならない。

 うん、とんでもない。

 脳無ほど強いとまではいかないけど、十分やばい。

 

 あ、案の定爆豪くんが上に吹っ飛ばされてる。けど流石は爆豪くん。すぐに爆破を応用して空中で体勢を立て直す。

 威力で勝てないのなら、小細工でどうにかするしかないけど、どうするのかな。

 しばらく二人は睨み合う。

 

 しびれを切らした出久が跳び上がり、爆豪くんを殴りつけに行く。

 それを予見していたのか爆豪くんは、スタングレネードを参考にしたであろう、激しい光を発生させる爆破の後、戦闘訓練の時のような爆破の応用で、出久の後ろに回り込み爆破を食らわせる。

 しかし、出久も過去に一度経験した攻撃、裏拳を食らわせようとするが、視界が奪われているせいでもろに食わせることはできなかった。風圧は発生したから爆豪くん吹き飛ばされていったけど。

 

「漢だ、漢の戦いだぜアレ……! 感動だッ!」

 

「今のところ優勢なのは緑谷なんかな。威力やっべえし」

 

「いや、一発もらった爆豪は動きを見切ったような立ち回りをしている。案外爆豪が優勢なのかもしれない」

 

「八菜ちゃん、どう思う?」

 

 後ろに座っていたお茶子ちゃんに話しかけられる。

 

「えっ、私? そうだなぁ……」

 

 どっちが優勢か、うーん。

 

「どっちが優勢かはわかんないけど、次に攻撃を食らわせたほうが勝ってこの試合はもう終わる、と思う」

 

「え! もう終わっちゃうの?」

 

「うん。多分ね」

 

 試合が動く。

 フィールドに着地した二人。

 再びお互いに飛び出した。

 出久が爆豪くんが間合いに入った瞬間、顔面に向かって容赦なく拳を振り抜く。私が教えたフォームだ。……なんか洗練されてるな。練習したのかな。

 爆豪くんは、その拳を体を捻りスレスレで避ける。

 風圧を受けるが耐えた爆豪くんは、出久に向かって爆破を繰り出す。威力がとんでもない。

 

「あれ、うちとやったときぐらいの威力のやつや! もろにくらって大丈夫なんかな……」

 

「いや、くらってないよ。多分だけど」

 

 爆発の煙が晴れる。そこには、出久はいなかった。

 爆豪くんが上を見る。その視線の先に出久はいた。上空に回避していたようだ。なんか私みたいな回避の仕方してるな? 

 やっぱり、爆豪くん強いな。あの速さの攻撃にもう慣れてる。

 上空の出久を追いかけて爆豪くんが爆破で飛んでいく。先ほどとは立場が逆だ。

 出久が爆豪くんを迎え撃つために、デコピンをして、その風圧で爆豪くんを地上に押し戻そうとするが、爆豪くんは爆破を器用に使いこなし、戦闘機のローリングのような動きで風圧を躱し出久に接近する。

 急接近した爆豪くんは出久に再び、先ほどの威力、いや、それよりも威力がアップした大爆発をゼロ距離で出久に繰り出す。

 対して、出久は爆発に飲み込まれながら、拳を爆豪くんに打ち付ける。

 

「……ねえ、八菜ちゃん、これ同時にくらった場合どうなるん?」

 

「威力の高い方が勝つ。当たり前じゃん」

 

「じゃあ、威力が高い方はどっちなん?」

 

「多分、出久」

 

「あんなに大きい爆発やったのに?!」

 

「うん。確かに、今まで試合中出していた増強率なら、出久は多分押し負けてる」

 

「なら……って、それ以上の威力を出してるの? デクくん」

 

「うん。爆発に飲み込まれる前に、少し見えたんだ」

 

「見えた、ってなにが?」

 

「出久の腕がぼろぼろになるところ」

 

 大爆発の一際濃ゆい煙が少し遅れて生じた風圧によって晴れる。

 上空には既に二人はおらず、フィールドに着地していた。

 一人は倒れ、一人は立ち上がっていた。

 

「爆豪くん気絶! よって、勝者及び雄英体育祭一年の部優勝者は緑谷出久!」

 

 勝利宣言が響くと共に、会場中から歓声が沸く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一年の部の授賞式が終わり、帰りのホームルームも終わった後。

 出久と私は、帰路に立っていた。

 

「出久、優勝おめでとう。決勝の試合、かっこよかったよ」

 

「ありがとう。ギリギリだったけどね……」

 

「えっと、それと、その、ごめんね。約束してたのに」

 

「えっ? ああ、そんなの気にしなくていいよ! それより、謝ることは他にあると思ってたんだけどな。僕には怪我するなとか言っておいて当の本人は怪我しまくる戦い方だったんだけど?」

 

「それは、その……仕方なかったと言いますか……」

 

 出久にため息をつかれる。だって仕方ないじゃんね。

 

「八菜さん。僕は、君を守れるぐらい強くなれたかな」

 

「うん。なんなら私より強いんじゃない?」

 

「……そっか」

 

 出久が急に私に向き直る。どうした。

 

「八菜さん。助けてほしい時は迷わずに僕を頼ってほしい。絶対に、助けるから」

 

「うん? まあ、いいけど」

 

 なんか、轟くんといい出久といい、私を助ける宣言する人多くない? 

 しかも出久にっこにこだし。何があったか知らんけどよかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強くならなきゃ。




出久超強化
USJで脳無にボコられたあの人のせいです。
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