元蜘蛛男で現蜘蛛女のヒーローアカデミア   作:りてらしー

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誤字報告ありがとうございます!
ユーザーネームを出していいかは分からないので出さないでおきますが、すごい助かってます。
感想評価ここすき全部モチベーションです。いつもありがとうございます。


蜘蛛女の職場体験①

 職場体験に備えたヒーロー名決めの授業のあと、オファーをかけてくれたヒーロー事務所リストをもらった。

 行く事務所はあと二日で決めなきゃいけないらしい。ちょっと短くないですか。

 

 私にオファーが掛かってる事務所で有名どころは……わからんな。ビルボードチャートなんて滅多に見ないし。

 出久に聞いてみよう。

 

「ちょいちょい、出久」

 

「まさかこんなヒーローが僕を指名してくれるなんて……! 感激だ! エンデヴァーも、ああっ! ハンマーヒーロー鉄槌まで!? うそだろ……?! 憧れのヒーローが大量に僕を指名してくれてるぞ。夢でも見てるみたいだ……! でも、行くところは一つだけだなんてくそ、もっとたくさんいきたい……! 行ってサインとか話してみたい……! でも、とりあえず今の僕に足りないものを持ってるヒーローの事務所に行くべきだよな……とりあえず自分の今できることをまとめてみよう。それで、指名くれたヒーローの特色なんかも調べて、どこに行くか考えないと……」

 

 いつものが出てる。まあ、指名数がやばかったもんな。このヒーローオタクならこうもなるだろう。……普通なるだろうか? 

 声をかけても反応しないので小突く。

 

「わっ!? ど、どうしたの八菜さん」

 

「どうしたのじゃない。声かけたよ私」

 

「緑谷さっきからずっとその調子だよ。止めてくれてサンキュー雲嶋」

 

 響香ちゃんから感謝の言葉が届く。出久の手綱は私が握るから任せな。

 

「あ、ご、ごめん……」

 

「いーよ。えっと、職場体験先について聞きたくてさ」

 

「職場体験先? 八菜さんも指名はたくさんあったんだし、選り取り見取りでしょ?」

 

「そう、そうなんだよ。選り取り見取りだからこそ悩むんだよ。出久も今そうだったでしょ」

 

「ああ、なるほど……でも、僕に聞くことってなに?」

 

「私、ヒーローの有名どころとかわかんないからさ。この中のどれが有名なのか教えてほしいんだよね」

 

「ああ……なるほど。ちょっと見せてくれる?」

 

「雲嶋の指名リストか、うちも気になるかも」

 

 リストを渡して見せてみると、出久は目を輝かせて読み上げていく。響香ちゃんも横から見ている。

 

「どう? 有名なヒーロー事務所は指名してくれてた?」

 

「うん、一件だけだけどね」

 

「ほんとに? どれ?」

 

「えっと、ここだよ」

 

 出久が指差したところは、ミルコ、とだけ書かれたところだった。

 おかしいな。他のはちゃんと何とか事務所って書かれてあるんだけどな。

 誤表記だろうか。

 

「ラビットヒーローミルコは事務所を持たずに全国を跳びまわってヴィランを退治するヒーローなんだよ! すごいや、あのミルコが指名するだなんて……!」

 

「そんなすごいの? ミルコって」

 

「雲嶋、ビルボードチャート見ないの? トップテン入りだよ、ミルコって」

 

 なるほど、それは確かにすごい。

 

「うん、それじゃミルコで提出しよう」

 

「即決!?」

 

 だって、どうせ憧れのヒーローなんて、いない、ん、だし? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうせ、憧れのヒーローなんていないんだし。

 それだったら有名なところに行って経験積むのが一番有益だろう。

 

「八菜さん!? 大丈夫? 今、フラついてたよ!」

 

「え? フラついてなんかなかったよ? 響香ちゃん、私フラついてた?」

 

「いや、うちは特に何も気にならなかったけど……」

 

「え? でも、確かに今……」

 

「おかしなこと言わないでよ出久。二週間寝たきりの後だから心配になるじゃんかよ」

 

「二週間寝たきりを自虐ネタみたいにしないで雲嶋。それ笑えない」

 

 鉄板ネタにしようかと思ったんだけど、即否定された。

 まあ、とりあえずミルコのところに行こう。決定だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、相澤先生に提出に行ったら渋い顔をされた。どうしてだ。ビルボードチャート入るぐらいのヒーローなんだろう。別に悪いところなんてないはずだ。

 

「雲嶋……ミルコは確かに実力もトップレベルのヒーローだ。けどな、これはあくまで職場体験だ。普通のヒーローは事務所を構えていたり、サイドキックとしてその事務所で働いていたりする。ミルコのところに行って学べることは多いだろうが、そのあたりのことは学びにくいだろうな。それでいいのなら止めはしないが……」

 

「別に構いませんよ。私もヒーローになったら同じように活動すればいいだけですから」

 

「その活動スタイルをするかどうかはゆっくり決めろ。まあ、ミルコのところに行くんだったら覚悟しておくことだ」

 

「え? それってどういう……」

 

 相澤先生は、にやりと笑っていた。

 それ、怖いのでやめてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 職場体験当日。

 コスチュームが入ったケースを持って駅に集まる。

 

「学校を通して連絡された集合場所は東京だから……あっちの乗り場か」

 

 乗り場に向かおうとする。

 そのとき、出久に声をかけられる。

 

「八菜さん、東京に行くんだったら、飯田くんのこと気にかけておいてくれないかな」

 

「飯田くん?」

 

「もしかしたら、危ないことをしようとしているかもしれないんだ」

 

「……? よくわかんないけど、まあいいや。こまめに連絡とってみるよ。それじゃあ行くね」

 

「うん、ありがとう。頑張ってね」

 

「出久もね、それじゃ」

 

 

 

 乗り場で待っていると、飯田くんがいた。

 出久は飯田くんを気にかけておいてくれって言ってたけど、どういう事情があるのだろうか。

 私は情報の一切を知らない。

 下手に話しかけたりしないほうがいいか。

 

 

 

 

 結局なにも話しかけずに東京まで来てしまった。

 飯田くんも行ってしまったし、私も待ち合わせの場所に行こうといっても、この駅前広場が待ち合わせ場所なんだけど。

 ミルコ、どこから来るんだろうな。

 

 スパイダーセンスが反応する。

 反応した瞬間、私の体は宙に浮いていた。

 

「よぉ! 久しぶりだなぁ! 覚えてるか?」

 

「ミ、ミルコォ?!」

 

 私は、体をミルコに掴まれ宙を飛んでいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 適当なビルの屋上で下ろしてもらった後。

 私は心臓がバックバクだった。

 なぜなら。

 

「久しぶりだな! スパイダーマン! 元気してたか?」

 

 ヴィジランテ活動中に戦ったことがあるからだった。

 

「ハ、ハイ、元気して、ました……」

 

「いやー、まさか雄英に通ってるとは思わなかったぜ!」

 

「ハ、ハイ……」

 

「そんなにびくびくすんなよ! お前はもうヴィジランテじゃなくて雄英高校ヒーロー科から職場体験でやってきた雲嶋八菜だろう?」

 

 ミルコ。実際の姿を見るまで思い出せなかったが、私は彼女と過去に戦っている。

 写真を見ても思い出せないとか、どうなってんだ。思い出せ私。

 

 前回戦ったときはヴィジランテの活動終わりで、突然ミルコのほうからやってきた。

 

「よぉ、お前が噂のスパイダーマンだな? ぶっ飛ばして更生させてやるよ!」

 

 ミルコはそう言って私に襲い掛かってきた。

 ヴィラン相手と違って私からぶっ飛ばすことはできないし、逃げ回るにしても私と同等かそれ以上の移動速度で追いかけてくるもんだから困ってしまった。

 結局あのときは別のヴィランが出てきてそれに気を取られてくれたから助かったんだったか。

 それからもヴィジランテ活動をやってるときは度々追いかけまわされるようになっちゃったんだよな。

 一年前から活動やめたからしばらく会ってなかったけど。

 

「あー、あの、ミルコ。私のヒーロー名、スパイダーマンじゃなくてスパイダーサックなんですけど……」

 

「スパイダー"サック"ゥ? なんだサックって」

 

「……? なんでしょうね?」

 

「はぁ? まあいい、スパイダーサックなんていちいち長ったらしいし、お前はもうスパイディでいいよ。分かったかスパイディ」

 

「えっ? あ、はい。それでいいです……」

 

「ヨシ! じゃあ、早速パトロール行くぞ!」

 

「えっ!? ちょっと、荷物が……」

 

「コスチューム着替えたらパトロールのルートの途中に私の家に置きいくから気にすんな! 早くしろ! ヴィジランテは趣味でもヒーローは仕事! スピードが肝心だぞ!」

 

 急いでコスチュームに着替えて、制服を荷物に詰め込みもう跳びたっているミルコをウェブスイングで追いかける。

 

「ミルコ、なんで私を指名してくれたんです?」

 

 ウェブスイングをしながら聞いてみる。

 

「なんでって、私を何回も撒いたやつだぞ。そんなやつが雄英のヒーロー科にいたらおもしれえだろ」

 

「そーですか……いや、なんでスパイダーマンが私だとわかったんですか?」

 

「は? お前の戦い方何も変わってねえじゃねえか。体育祭のお前ほぼばらしてるようなもんだろあれ。わざとじゃなかったのか?」

 

「そんなバレやすいの?!」

 

 確かに、ウェブスイングとか……観客にジョーク言ったりしたかも。

 ……思い返せばバレやすいな。

 これからは気を付けよう。

 

「それで、ミルコ。今回の職場体験はどうするんですか? あなたは全国どこでも活動できるのに今回東京を指定したのは何か訳があるんでしょう?」

 

「よくわかってるじゃねえか! 今回はなあ……ヒーロー殺しを蹴っ飛ばしに行くのさ!」

 

「ヒーロー殺し、というと最近ニュースで報道されてるあいつですか」

 

「ああ、もともとは行くつもりなかったんだけどよ、お前を職場体験で呼ぶことにしたからな! 経験積ませてやろうと思って」

 

「その口ぶりからするに、私も交戦するんですか?」

 

「当たり前だろ! お前の実力なら早々死なねえだろうからな!まあ、危なかったら逃げてもいい!」

 

 お前が死にかけるぐらいの相手なら逃がしてくんねえだろうけど! と笑うミルコ。

 普通、職場体験って来た学生を戦闘で前面に押し出さないよなあ……。

 別にいいけれど。

 

 パトロール中だし、と思いスパイダーセンスを研ぎ澄ます。

 助けを求める声が近くで聞こえる。

 

「ミルコ、単独行動はありですか?」

 

「おう! 好きにしろ!」

 

 ウェブスイングの方向を変え、助けを求める声のもとへ向かう。

 

「ひったくりよ! 誰か捕まえて!」

 

 どうやら今回のはひったくり被害のようだ。

 ひったくり犯が人の流れに逆らいながら逃げているのを見つける。

 

「前も似たような奴いたんだよね! 状況も似てるし!」

 

 ひったくり犯の目の前にウェブスイングに使っているウェブを掴んだまま地面に着地する。

 

「これ、そのバッグの代わりに持っててよ」

 

 ウェブを男の体にくっつけ、一瞬のうちに男の手からバッグを奪い返しておく。

 引っ張られて伸びていたウェブは弾力が働き、男を連れて空へと戻っていく。しばらく捕まえておくんだぞう。

 

「えーっと、このバッグの持ち主は誰かな?」

 

「あ、私です! ありがとうございました!」

 

「いえいえどうも。気を付けてくださいね」

 

 なんかスパイダーセンスが反応してるけど、多分別の事件だろう。バッグを返す。

 その瞬間、女性は走り出しどこかへ行ってしまった。

 急ぎの用事でもあったのだろうか。

 女性を見送っていると、後ろから女性が息を切らしながらやってくる。

 

「ちょ、ちょっと……バッグを取り返してくださったんですよね、ありがとう、ございます……」

 

 と、いうことは。

 

「今からもう一回取り返してきます!」

 

 再びひったくりを追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕日に照らされるビルの屋上。

 コスチュームから制服に着替えた私は今、同じくコスチュームから私服に着替えたミルコに笑われていた。

 

「ブハハハハハハ! ほんとにおもしれー!」

 

「そ、そんな笑わないでくださいよ……」

 

「なんで返した瞬間にまたひったくられるんだよ! スパイディ、お前を指名して正解だったわ!」

 

「というか、見てたなら助けてくれてもいいじゃないですか!」

 

「結局どうにかなったんだしいいだろ? それに、お前も有名になってるぞ。ほらよ」

 

 そう言って、スマホを投げ渡される。私のじゃん。

 

「……なんで私のパスコード知ってるんです?」

 

「知らん。勘で適当に打ったら開いた」

 

「そんな無茶苦茶な……」

 

 開かれているスマホの画面を見ると、そこにはネットのニュース記事のページだった。

 

「期待の新星、スパイダーガール現る……アメリカンコミックのスパイダーマンをモチーフにしたコスチュームに身を包んだ先日の雄英体育祭でも素晴らしい活躍を見せてくれたヒーロー科のヒーロー名スパイダーサックが連続ひったくり事件を解決……過去にスパイダーマンと名乗る似た個性を持つヴィジランテがいたが、関係は不明……って、なんでこれはヒーロー科学生って分かってるんです?」

 

「そりゃ私がインタビューに答えてやっといたからな」

 

「えっ?!」

 

「お前がひったくり犯を追いかけてる間に耳の速いインタビュアーが来たんだよ。お前はあいつ追いかけてたし、私が答えてやっといたぞ。ちゃんとスパイダーマンだってバレないように答えといたから。安心しろ」

 

「やっぱり、勘づかれてはいるんですね……」

 

 スマホを握ってると、思い出した。

 

「そうだ、連絡しないと……」

 

「誰にだよ」

 

「クラスメイトです。なんか事情があるらしくて……」

 

「いっちょ前に恋人か! お前もなかなか隅に置けねえな!」

 

「違いますよ……私も東京で職場体験してます。そっちはどんな感じですか……っと」

 

「お前、クラスメイトにも敬語なのか?」

 

「口頭じゃ敬語じゃないですよ? 文面上だと日本語の誤読が怖いので、できるだけ丁寧な言葉遣いを心がけてるんですよ」

 

 へぇ~、と感心したような声を出すミルコ。

 

「っつか、ヴィジランテん時、お前そんな喋り方じゃなかったろ。キメェ」

 

「そんなこと言われても……素はこんな感じですし」

 

 ハァー……と溜息をつかれるがどうしろってんだ。

 

「そうだ、明日からもパトロールしてヒーロー殺しを探すんですか?」

 

「いや、明日は最初にちょっと別のことをする」

 

「別のこと?」

 

「まあ、それは明日のお楽しみってことだ。じゃあ今日はもう遅いし私の家で飯食って寝るぞ」

 

「え、私ミルコの家で寝泊まりするんですか?」

 

「おう、事務所ねえからな」

 

「……そうですか」

 

「なんだよ。なんか文句でもあんのか」

 

「いいえ、全然ないです」

 

 すっげーガサツな感じするけど、ゴミ屋敷だったりしないだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがミルコの家なんですか。意外と普通のマンションの一部屋ですね」

 

「ああ。家っつってもヒーロー活動で家空けることが多くてほぼ使ってないがな」

 

 なるほど。それならゴミ屋敷の可能性は低そうだ。

 

「あと、ヒーロー活動外とでは分けとけ。私はお前のことを八菜と呼ぶし、お前は私のことをルミと呼べ」

 

「わかりました。ミル……ルミさん」

 

「ルミでいい。敬語も使うな。そんな感じは慣れん」

 

「年上に敬語つかわないのって慣れてないんだけどなあ……ルミ、ルミ、ルミ。よし」

 

「何復唱してんだ……? とっとと入るぞ」

 

「はーい。お邪魔しま……」

 

 中を見ると絶句した。

 

「このパターンだったかぁ……」

 

 滅多に帰ってこないからこそ、掃除をする時間もなく、ゴミがちりつもで溜まっていくアレだった。

 レジ袋だったりコンビニ弁当の器だったりインスタントラーメンの器だったり……。

 

「ルミ、これって食材とかあるの?」

 

「人参だけあるぞ。ほら」

 

 いつの間にか奥に進んでいたルミが冷蔵庫から袋詰めの人参を放り投げてくる。

 キャッチして袋の商品シールを見てみると、消費期限はとうの昔に切れている。

 

「これ、賞味どころか消費が切れてるんだけど……」

 

「しばらく家空けてたからな。仕方ない」

 

「ルミ、スマホ持ってる?」

 

「おう。当然だ」

 

「連絡先交換して。そしたら買ってきてほしい食材のリスト送っておくから、買ってきてほしい。あと調理器具と箸と皿もリストに書いておくからそれも。私はその間部屋を掃除しておくから」

 

「ええ? 別に料理しなくともコンビニ弁当とか、人参丸かじりとかでいいだろ」

 

「ヒーローは体が資本です」

 

「でも今まで……」

 

 睨みつけると屈してくれた。こんなイカれた部屋でイカれた食生活してたらイカれるよ。

 この辺りの地域のゴミ出しの曜日が分からないが、とりあえずゴミ袋にまとめよう。

 ……。

 ゴミ袋どこだ。

 メッセージアプリにゴミ袋も買ってきてという趣旨のメッセージを送り、とりあえず転がってるレジ袋にゴミを詰めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。まあ、気に入らないところもあるけど、だいぶ綺麗になったかな」

 

 細かいところのチリとか埃とかはまだ残ってるけど、最初に比べればすっごいマシ。

 

「おーい、帰ったぞー」

 

「おかえりなさい。片付けといたから。あと、ゴミ袋と食材は?」

 

「安心しろ。ちゃんと買ってきた」

 

「よし。ゴミまとめるのは……後ですればいっか。先にご飯作ろう」

 

「私は料理なんて出来ねえからな。任せたぞ」

 

「うん。そこそこできる自負はあるし、任された」

 

 

 もう夜も遅いし手軽に作れる奴がいいよなってことで、豚バラとピーマンを一緒に炒めて、野菜炒めで一品。

 個性的にも、滅多に来ない家に人参を買っておいてたことからも、人参が好きなんだろうし人参のきんぴらとか作って二品目。お米炊いたら食卓かな。

 全体的に油っこくなる気がするからプチトマトとか添えて置いたら色合い的にも良くなるかな。

 よし、そんな感じで完成だ。

 

「八菜……お前、料理上手いんだな」

 

「まあ、毎日作ってるしね」

 

「普通に美味そうだな、これ。人参もあるし。最高だぜお前!」

 

「ありがとう。それじゃ、冷めないうちに食べよう。いただきます」

 

「いただきます!」

 

 うん。味がしない。気持ちルミに多めに配膳したのが功を奏したな。

 まあ、私が作った料理を美味しそうに食べてくれる人がいるのは悪い気分ではない。

 食に関しては楽しみがなくなったと思っていたが意外とまだ残っていた。

 

「あ、これ撮ってみんなにも見せてみようかな」

 

 飯田くんにも連絡しておかないといけないしな。そういえば、返信は来ていただろうか。

 一度箸を止めてスマホを見てみる。

 

「なんだ、彼氏からか」

 

「違いますってば。ただのクラスメイトです」

 

 メッセージアプリを見てみると、返信が来ていた。

 

「なになに? ……俺の方は取り立てて言うことは何もないな。心配してくれてありがとう……。心配されてると思ってる内容を私は知らないんだけどなあ……」

 

 一つ溜息をついてからカメラアプリを起動させ、ご飯を撮ってみる。

 カメラの上の方にルミのピースが映りこむ。

 

「これクラスのグループに上げるつもりだったんだけど、いいの?」

 

「別にいいぜ。減るもんじゃあるまいし」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 クラスのグループに、『ミルコとディナーなう』というメッセージと共に写真を送信しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が、クソ親父の事務所の一室で寝ようとしていたとき。スマホに大量の通知が来て音声が鳴る。夜間モードにし忘れていたらしい。

 ゲームとかそういったのは一切スマホに入れていないから、必然的にメッセージアプリからの通知もしくはニュースアプリからの通知ということになる。

 通知に気づいてしまったわけだし、スマホを手に取って来た通知を見てみる。

 来た通知はメッセージアプリからの通知で、クラスのグループのメッセージだった。

 

「こんな夜遅くに、なんで急に騒がしくなんだ……?」

 

 通知を見てみると、みんなが『どうしたんだ雲嶋!』というメッセージを送りまくっている。どうしたんだ。

 まさか、雲嶋の身になにかあったのか? 

 痛覚がないと言っていたことも相まって、心配になる。

 ログを遡っていくと、雲嶋からメッセージと写真が送信されていた。

 

『まるきつだにーのい』

 

 謎のメッセージと一緒に送信されている写真は、おいしそうなご飯と、褐色肌の筋肉質な手がピースをしているのが映りこんでいる画像だった。

 どういうことだ……? 

 

 疑問に思っていると、緑谷から長文が届く。

 

『八菜さん、パソコンとかは使えるくせにスマホ苦手だから誤字しまくったんだと思う……! 多分伝えたかったのは「ミルコとディナーなう」っていう文章だと……』

 

 ……。

 なるほど、そういうことだったのか。ミルコとご飯食べてるのか。すげえな。

 みんなも気持ちは一緒だったようで、再び通知が大量に届く。

 

『なんで読み解けるんだよ』

 

 ちょっと違った。




これミルコの口調合ってる?
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