元蜘蛛男で現蜘蛛女のヒーローアカデミア   作:りてらしー

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蜘蛛女のこれから

 朝起きたら体が女の子になっていたという衝撃的な出来事からしばらくたったある日。

 俺は母さんから女性としての作法の教育を受けていた。

 内容は、言葉遣い、スカートの時の歩き方、座り方まで選り取り見取りである。

 女性はこれらを日頃から気を付けているのかと思うと尊敬の念を覚えてしまう。

 学校はしばらく休むことになったので、女性の体に早く慣れて登校できるようにしなければいけない。

 

 女性としての作法も身につき始めたある日、母さんから無理難題を押し付けられる。

 

「下着買ってきなさい」

 女性用の下着、それは男性からすると縁遠い物。それを母さんは買ってきなさいと軽々しく俺に言ってきたのだ。

 恥ずかしいからと反抗するも、丸めこまれ、フード付きパーカーとおさがりのスカートに身を包み外出を余儀なくされた。

 

 外出先はショッピングモール。行くまでにバスに乗る必要がある。

 外を可愛らしい服を着て歩いていると周りから見られていないかが気になってしまう。

 自意識過剰なのだろうが、それでも気になってしまうものは気になってしまうのだ。

 できるだけ、周りを見ないように俯いて歩くことにする。

 慣れなければならないことはたくさんある。努力を続けます。

 しばらく歩いてバス停につくと、目的のバスは遅れなく来てくれた。

 バス内は混みあっており、残念ながら席に座ることはできなかった。

 バスという閉鎖空間にいると、周りから見られているような錯覚に襲われる。

 慣れろ、慣れろと心の中でぶつぶつ唱えていると降りるバス停についたので逃げ出すようにバスから降りた。

 

 ショッピングモールについてからは多少は慣れたのか、恥ずかしさは軽減されていた。

 早く、下着を買ってしまって帰ろう。そう思い、歩みを速めた。

 

 下着を購入した帰り、思ったより下着に種類があり決められずにいたところを店員さんの助けもあり購入に成功したが、時間がかかってしまい、日は暮れかかっている。

 早く帰ろう。

 その時、個性(スパイダーセンス)が叫ぶ。助けを求める人の声を察知する。

()()()()()()だ。

 どうせ助けられないんだから、いつものように無視すればいい。

 いつものように、弱個性であることを言い訳に逃げ出せばいい。

 個性を人に向けて使うのは犯罪であることを言い訳に逃げ出せばいい。

 

 ……いや、今の俺には新しい力が宿っている。これなら、もしかすれば。

 出来るのではないか。なれるのではないか。

 一度は諦めたこと(ヒーローになること)が。

 

 そう思った時にはもう、足が動いていた。

 個性が叫ぶ方向に走る。

 

 走った先には廃工場があり、その中では男が三人で女性一人を囲んでいた。

 何をしようとしているのかは大体予想がつく。

 個性の反応が正しければこれは女性にとっての危険ということになるが……。

 持っていたビニール袋を廃工場の壁に蜘蛛糸で貼り付け、フードを被り顔を見せないようにしながら近づき、話しかける。

 

「あー、確認なんですけど、ドラマの撮影とかじゃないですよね?」

 

 誰も来ないと思っていたであろう男たちは驚いたのか勢いよくこちらに向き直す。

 

「な、なんだ。ただのガキじゃねえか」

 

「ドラマの撮影ではないか……合意とかでもないですよね?」

 

「声からするにお前も女か。ラッキーだな、今日は。上玉におまけが一つついてきやがった」

 

 質問に答えてくれないのに答えは分かってしまった……。おかげさまで、心置きなくやれる。

 男たちは誰も武器の類を身に着けてはいないようだが、誰にでも個性はある。

 そして、悪事を働くような連中は人を容易に傷つけることが出来る個性を持っているだろうから、安心はできない。

 それに、俺はケンカなんて生まれてこのかたしたことがないので正真正銘初めての戦いだ。

 相手はケンカ慣れもしているだろうし数の利もあるので、随分と不利な戦いである。俺が望んでここに来たんだけれど、逃げ出したくなってしまう。

 

とりあえず、先手必勝と言うことで一番俺の近くにいた男の顔面に蜘蛛糸を発射する。

 勢いよく発射された蜘蛛糸は男の顔面に張り付き、視界を妨害することに成功した。

 

「うおっ、なんだこれ!?」

 

「お前、よくも!」

 

 仲間が攻撃されたことに反応し残りの二人が近寄ってくる。

 個性(スパイダーセンス)がガンガンに反応しているので、やはり人を傷つけることが出来る個性を持っているようだ。

 近寄ってきたうちの一人の男は腕を伸ばし、伸びた腕を横薙ぎに振るい、鞭のようにしなった腕が俺に襲いかかってくる。

 急に腕が伸びたことに驚きつつも慌てて高くジャンプして回避する。

 

「ちょっと、危ないでしょ!」

 

 息をつく暇もなしに、もう一人の男がまだ空中にいる俺に手のひらを向け、バチバチと音が鳴っている電流のようなものを発射してくる。

 それを回避するため廃工場の壁に糸を発射し張り付かせ、それを引っ張り無理やり体の位置を動かし、その勢いで壁に貼りつく。

 意外と、動けている。これなら、これならいける。

 歓喜に体を震わせながら、相対する男たちの動向を観察する。

 一人は電流発射の個性。一人は腕を伸ばす個性。あと一人は分からないが今顔から糸を剥がし終わったのですぐに個性が判明するだろう。

 ……。回避することはできているが、どうやって倒せばいいんだ? 

 壁に貼り付いていてもどうしようもないので、壁から降り地面に着地する。

 

「じゃあ、とりあえずそこの君! 君から倒すことにするよ!」

 腕を伸ばす個性を持った男──長いので鞭男と言うことにする──を指差しながら宣言する。

 

「こんの、クソガキ……!」

 鞭男が悪態をついてくるが無視して、鞭男の左右にあったもう随分使われていないであろう何かの機械に両手首を向けて糸を発射する。

 俺は糸を引っ張りながら自分も鞭男に向かって地面をけってパチンコの要領で跳びだす。

 

「あ、やば、思ったより速い!」

 想定していたよりも勢いよく発射された俺は、男に向かって拳を突き出す。

 男も回避しようとするが、トリッキーな動きに翻弄されたのか、男はあえなく回避に失敗し拳が命中する。

 

「ちょ、思ったより力強かったかもしれないんだけど、大丈夫?」

 問いかけてみるが、鞭男からの返答は帰ってこない。やってしまったかもしれない。

 

「とりあえず、次は君!」

 電流男に両手首を向け、蜘蛛糸を乱射する。

 しばらく撃っていると、男は蜘蛛糸まみれになり、下手に動こうとすると逆に倒れてしまった。

 

「うーん、こっちのほうが安全かもなあ」

 

「じゃあ、あと一人なんだけど……」

 

 いつの間にか俺の後ろに回り込んでいた最後の一人は腕を刃物に変化させ、俺を刺そうとしてくる。

 しかし、個性(スパイダーセンス)でそんなことはとっくに気づいていたので、男の攻撃をバク宙で回避しつつ、頭を蹴り、気絶させた。

 

「あの人は死んでないかな。大丈夫かな」

 倒れている鞭男に近づき、脈を確認する。よかった。あった。

 

 そして、残った女性一人に近づく。

 

「あー、えっと、こんばんは」

 

「こ、こんばんは……」

 

「あ、えっと、もちろん危害を加える気はないので、安心してくださいね、えっと、それじゃ」

 

「待って! ……あなたは、誰なんですか?」

 しまった。まずいぞ。

 顔は見られていないから大丈夫だろう……見られてないよな? 

 

「えっとー、ヒーロー、です、かね」

 

「ヒーロー名は?」

 ヒーロー名なんて決めてないし、なんならヒーローですらないと言ってしまいたいが、言わないとばれてしまう。

 必死に、それらしい名前を考える。

 そういえば、昔個性を持った人類が生まれない時代、アメリカンコミックに俺みたいなスーパーヒーローがいたな。もう、それでいいだろ。

 

「あー、えー……。スパイダーマン、です」

 

「マン……? 女の子じゃないんですか?」

 

「えっと、それは、声が高いだけの男、ですから」

 

「そう、だったんですね。えっと、助けてくれてありがとうございました!」

 

「いえいえ、当たり前のことをしただけですから……。それじゃ、そろそろ行きますね!」

 そう言って廃工場を飛び出したが、すぐに戻ってくる。

 

「こいつら、吊るしておくので警察に通報しておいてもらっていいですか?」

 

「あ、はい」

 なんか、恥ずかしい。

 少し急ぎ目に、男たちを蜘蛛糸でぐるぐる巻きにして廃工場の天井から吊るしておく。

 

「それじゃ、えっと、気を付けてくださいね。さようなら」

 そう言って、今度こそ廃工場を飛び出した。

 

 家に帰ると、すっかり辺りは暗くなっていた。

 

「ただいま~」

 

「遅かったわね。何かあったの?」

 

「え、え? いや、なんにもなかったよ。うん」

 

「怪しい……。まあ、いいわ。下着は買えた?」

 

「うん、この通り……。あっ」

 

 廃工場の壁に貼り付けたビニール袋を取ってくるのを忘れていた。

 俺は、再び難関ミッションを達成しなければならなくなった。

 

 ────────────────────────────────────────

 翌日の朝、テレビをつけるとニュースをやっていた。

 内容は、新しいヴィジランテについてらしい。

 

『昨日の夕方頃、女性一人が男性三人に襲われていたところを、スパイダーマンと名乗るヴィジランテが助け出したとの事です』

 

『男性三人は天井から糸で吊るされて捕縛されていたということです』

 

『スパイダーマンは声が高く、男と名乗っていたようですが、廃工場の壁に貼り付けられていたビニール袋の中には女性ものの下着が入っていたため、実際には女性なのではないかという推測もされています』

 絶望した。

 ……ともかく、俺はヴィジランテとして放送されてしまった。流石に、これ以上やるのはまずいか……。

 これ以上をやるのは、正式にヒーローになってからだ。

 俺は、ヒーローを目指す。

 大いなる力には大いなる責任が伴う。それを理解するための後悔(人の死)は、知ってる。

 この力は、人を助けるために使わなければならない。




個性『蜘蛛女』

できること
『怪力』 現在はワンフォーオール5%程度
『頑健』 高層ビルから落下しても骨折する程度で済む
『超回復』骨折しても一晩寝れば治る。
『蜘蛛糸』 両手首から蜘蛛糸を発射する。発射された蜘蛛糸は粘着力があり、壁や人に貼り付けることができる。雲嶋は糸の粘着力をある程度操作することができ、味方にだけくっつかないようにすることなどができる。 耐久性が素晴らしく、原作スパイダーマンのようなウェブスイングのようなこともできる。
『吸着』 全身がなにかにくっつくことが出来る。2tまでなら体にくっつけて空中にぶら下げていても落ちたりしない。
『動体視力』 ウェブスイングのような高速の移動をしていても相手を見失うことがない
『平衡感覚』 ウェブスイングで空中に飛び出している状況でもバランスを安定して取ることができる。妨害があってもある程度ならバランスを取れる。
『スパイダーセンス』 危険を感じ取ることが出来る。感じ取る危険は自分だけでなく他人の危険も。他人の危険を感じる時は、その人の助けの声が聞こえるように反応する。危険だけでなく自分に向けられている視線なども感じ取れる。
『女体化』 最強の能力
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