元蜘蛛男で現蜘蛛女のヒーローアカデミア   作:りてらしー

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これ書いてる間にお気に入り100件超えてました。思ったより伸びててビビる。
めっちゃありがたいです。モチベにつなげて頑張ります。



蜘蛛女の雄英入試

 ヘドロ(ヴィラン)に襲われた日から数日。

 突如として出久が消えたあの瞬間からを出久に後で聞いてみたら、オールマイトに引っ付いて一緒に飛んで行ったらしい。なにしてんだ。

 それで何をしたかと言うと、オールマイトに無個性でもヒーローになれるだろうかと聞いて来たらしい。

 私が昔になれるって断言してあげたはずなんだけど。私の言葉じゃ信じ切れなかったということだろうか。……。まあいい。

 それはいいとして、その質問に対してオールマイトはなるのは難しいと答えたそうだ。

 それで落ち込んだ出久はとぼとぼと帰っていたらしいが、私もさっさと仕方なく帰ってしまったので一人で帰っていたらしい。

 私もスパイダーセンスで感じていたが、急な爆発音に野次馬根性で見に行ったら爆豪くんが件のヘドロ(ヴィラン)にまとわりつかれていたと。

 ヒーローが誰も助けに入らない状況にしびれを切らし、出久は無謀にも飛び出し、またオールマイトに助けてもらったらしい。

 やはり、俺とは違うんだと言うことを改めて感じる。はっきりとわかった。

 それで、その後無個性にも関わらず助けるために飛び出した精神性を評価され、オールマイトに君はヒーローになれると言ってもらったらしい。(ここは、興奮しながら強調して何回も言ってきた。私の時はそんなじゃなかっただろ)

 そして、その日から、出久は様子がおかしくなった。

 異様に嬉しそうなニヤツキ顔をしていたり、朝一緒に登校していると、あほほど疲れている様子を見せたり、授業中にぶつぶつ言ってたり。

 どうしたのか聞いてみても

「ううん、なんでもないよ!」

 と答えるばかりで何もわからない。

 こんなに疲れている出久を見たことは一回もないので異常であることは間違いない。

 流石に心配なので出久が何をやっているのか調べることにした。

 その結果見つけたのは……

 

「ヘイヘイヘイ! 走れ走れ!」

 ゴミだらけの海岸でゴミを持った出久と、その出久を走らせているオールマイトだった。

 これを見て見ぬふりは無理だろう。ということで話しかけることにした。

 

「えっと、出久と、オールマイト? 何をしてるんですか?」

 

「え、八菜さん?!」

 

「雲嶋少女……ど、どうしたんだい、こんな早朝から」

 

「いや、こっちのセリフなんですけど……」

 

「えーっとー……」

 

「いや実はね雲嶋少女。私が緑谷少年に言った言葉を知っているかい?」

 

「あー、君はヒーローになれる、ですよね。よく覚えてますとも。ええ」

 

「なんか怒ってないか雲嶋少女……。えと、それでな、私は緑谷少年に根本的なヒーローの在り方を見出した。ぜひ、彼にはヒーローになってほしいと思っている。だから、私は緑谷少年にトレーニングをつけているんだ」

 

「なるほど、だから最近の出久は様子がおかしかったんですね。憧れのヒーローに直接特訓を付けてもらって、その特訓のせいで疲労がたまって、それのストレスで授業中にぶつぶつと……」

 

「え、僕そんなに分かりやすく様子がおかしかったの?!」

 無自覚だったのか。

 

「うん、とっても」

 

「こらこら! 君は先に筋トレだ! 走れー!」

 オールマイトがそういうと、出久はハッとしたように再び走り始めた。

 

「あー、雲嶋少女、できればこの特訓のことは他言無用で頼むよ。如何せん私は人気者で有名だからな。大勢に押しかけられると困るんだ」

 

「分かりました。もともと言う気はありませんでしたけど」

 

「助かるよ! ありがとう、雲嶋少女!」

 

「あーただ、私も一緒にトレーニングしていいですか?」

 

「ああ、別に構わないけれど」

 

「よかった。ヴィジランテ活動が出来なくなっちゃったから体を思いっきり動かす機会がなかったんです」

 

「ああ……なるほどね。OKだ。頑張れよ、雲嶋少女」

 出久はオールマイトのトレーニングプランに則って鍛えているそうだ。私は怪力の個性を伸ばしたいと思っていたので適当に筋トレをすることにする。

 そして、出久はこの海岸のこの辺りの区画を担当しているようなので、私は少し離れた区画を清掃することにする。

 

 そんなことから始まった私を合わせた雄英入試までのトレーニング。

 今まで体を鍛えるということをしてこなかった出久は非常に疲れている様子を見せていたが、着実に筋肉がついていっているのが見てわかった。

 途中、余剰なトレーニングをしていた出久がぶっ倒れるというトラブルも発生したが、

 

「他の人より何倍も頑張らないといけないんだ。そうじゃないと、追いつけない。僕はなりたいんだ、あなたみたいな、ヒーローに……!」

 という出久の覚悟を受け取ったオールマイトがプランを調整して解決した。

 そして、遂に、入試当日の朝……。

 

 出久は、吠えていた。

 集めたごみ山の上で、吠えていた。

 十か月ほど前は流れ着いたゴミや、不法投棄のゴミで水平線どころか波も見えないような海岸が水平線が綺麗に見えるようになった。

 私が担当したのはほんの少しの区画だけ。

 ちょっと前まではひょろひょろしてただけの中学生だったのに、すっごい逞しくなっている。

 出久が倒れそうになっていたので、急いで、支えに行く。

 

「大丈夫だよ……八菜さん、自分で立てるから……」

 

「いやでも、そんなにフラフラしてるし……」

 

「うん、それでも、大丈夫だよ」

 どっからどう見ても意地を張っているだけだが、その意地を尊重することにする。

 少し遅れて、オールマイトがやってくる。

 

「おお、指定した区画以外も……! 雲嶋少女も清掃していたとはいえ、やり遂げた……!」

 

「ああ、すまないな、雲嶋少女。少し緑谷少年と二人きりで話したいことがあるんだ。家に帰っておいてくれるかな」

 

「わかりました。それじゃあ、またあとでね。出久」

 

「うん、またね」

 そう言って私と出久たちは別れた。まあ、入試に行くときまた会うんだけど。

 

 

 

 

 海岸で別れて約一時間後、私は駅で出久を待っていた。

 

「あ、八菜さーん!」

 

「やっほ、出久。どう? 体調は」

 

「結構疲れてるけど、やりきった、って感じで清々しいよ」

 

「そっか。そういえば、朝オールマイトと話してたけど、何を話してたの?」

 

「あ、あれは……えっと、お疲れ様、入試頑張れ、的な?」

 

「なるほど、激励か。よかったじゃん、憧れのヒーローからの応援メッセージだよ?」

 

「……うん。本当に嬉しい。だから、絶対僕は合格しなきゃいけない。僕は人に恵まれたんだ。その人たちのために」

 そう言う出久の目は、意を決した目をしていた。

 

「あ、電車来るよ。乗ろうか」

 

「あ、うん」

 雄英入試、これに合格しなかったらただの不合格者じゃなくて犯罪者なんだ。絶対に落ちることは許されない。

 ……意識したらプレッシャーがすごいな。

 

 

 

 雄英につくと、改めて思う。

 でかい! 

 流石は国立の名門校だ。そこらの学校とは規模が違うぞ規模が。

 

「どけよ、デク、蜘蛛女」

 おや? この声は、爆豪くんじゃないか? 

 

「かっちゃん! えっと、頑張ろうね、お互い!」

 

「あー、爆豪くん、一緒に、がんばろー!」

 ……いや、きついな。

 爆豪くん、行っちゃったし。

 

「……行こうか、出久」

 

「うん、行こう」

 そうして私と出久は一歩を踏み出したのだが、出久は早速一歩目を踏み外した。

 私が蜘蛛糸を出久のカバンに発射するのと同時に、別の誰かが出久の体に触れる、

 

「大丈夫? ごめんね、勝手に個性使って。私、何もしなくてもよかったみたいだし。なんか空回りした感じで恥ずかしいな」

 彼女は頭を掻きながら照れ笑いをする。

 

「えっと、ありがとね。出久を助けようとしてくれて。ほら、出久も挨拶すんの」

 発射した蜘蛛糸を引っ張り、出久を転んだ姿勢から起こす。

 

「え、あ、えっと、その、アリガトウ、ゴザイマス!」

 

「ううん、気にしないで。それじゃあ、お互い頑張ろうね!」

 そう言ってその女子は会場へ向かっていった。

 出久を見ると、なんか、見たことがない顔をしている。けど、なんか嬉しそうっていうのは伝わる。

 というかこいつ、女子と話してめっちゃ緊張してなかったか。そりゃ中学校じゃ女子と話してるところなんかろくに見たことなかったけど。

 私も一応今見た目は美少女の部類に入る女子なんだけど。やはり中身の差だろうか。

 まあいい。

 

「出久、起き上がったところで早く行くよ」

 

「あ、うん!」

 出久を引き連れて筆記試験会場に向かう。

 

 

 

 

 

 筆記試験がとりあえず終わった。次はヒーロー科のみ実技試験だが、その間に別室で昼食が挟まれる。

 一人で食べなきゃいけないわけでもないので、ほとんどの人は同じ学校同士で集まって食べているが、中には一人しか受験しなかったのかぼっちで食べている人がいる。

 とりあえず出久を誘って昼飯を食べることにするが……爆豪くんは十中八九合格するし、それならあらかじめ多少は仲を良好にしておいた方がいいかもしれない。よし、ご飯に誘おう。

 辺りを見渡すと爆豪くんが一人で食べようとしていたので誘いに行く。

 

「爆豪くん、よかったら、一緒にご飯食べない?」

 

「ああ? なんで俺がテメエと一緒に飯食わなきゃなんねえんだ?」

 

「いいじゃん。どうせ一緒に食べる人いないんでしょ。折角なら一緒に食べようよ」

 

「るせえ! テメエはデクと一緒にイチャイチャしながら食ってろ!」

 

「いや、別に出久とはそんな仲じゃないんだけど。まず中身男だし」

 

「そりゃそうだろ。デクは男だ」

 

「いや、出久の話じゃなくて、私の話ね」

 話しながら弁当箱を開けようとしていた爆豪くんの動きが止まる。

 そして、ギギギという音が鳴りそうな動きと共に私を見てくる。

 

「蜘蛛女が、女じゃなくて、男だとォ……?」

 

「あー、厳密に言うと、男の体から女の体に性別が変わったってことね。というか、一年間一応同じクラスだったんだけど。知らなかったの?」

 

「知らねえよ。誰もテメエの話はしやがらなかったからな。二年間違うクラスで、そんなだったからテメエの事情なんて全く知らなかったんだよ……!」

 なんか、すごい顔になってる。

 

「まあ、なんでもいいけど、一緒に食べようよ」

 

「……うるせえ、とっととデクとどっかに行け」

 

「わかったよ、仕方ない……」

 

 仕方がないので、出久と集まり、二人で話しながら食べた。

 

 

 

 昼食も終わり、遂に実技試験が始まる。

 今はヒーロー科の試験説明の会場に来ている。

 

 ステージのライトがつき、でっかいモニターと人が照らし出される。

 

「受験生のリスナー! 今日は俺のライブへようこそ! エビバディセイヘイ!」

 答えは沈黙。

 となりで出久がぶつぶつ言いだしたので小突いておく。

 

 説明された実技試験の内容を大まかにまとめると、

 

 会場をA,B,C,D,E,F,Gに分けて試験を行うよ! 

 会場に徘徊してるロボットを倒して(ヴィラン)ポイントをゲット! 

 お邪魔ムシの0ポイントロボットがいるから立ち向かってもいいけど避けて行動することをおすすめするよ! 

 会場は市街地モチーフだよ! 

 

 ということだった。

 他にも、同じ学校同士で協力ができないようになっているから、出久が少し心配だ。

 説明の途中で他の受験生に出久がキレられてたけど、流石にこれは弁明ができないだろう。あのいい方もちょっとあれだったけど。

 

「それではみんな、良い受難を」

 

 

 会場を移動する道中、出久と少し話す。

 

「出久、大丈夫? ロボットを殴って壊せる?」

 

「え、う、うん! 任せて、オールマイトに鍛えてもらったんだ。やってみせるよ!」

 

「そっか、頑張れ」

 

「うん、頑張る。八菜さんも、大丈夫だとは思うけど、頑張ってね」

 

「任せて。それじゃ、会場Cあっちだから。じゃあね」

 

「うん、またね」

 

 そうして、出久と別れる。

 

 

 

 ヴィジランテの時の、パーカーとスカートとスパッツに着替え、実技試験会場に着く。

 ぱっと見て思うが……

 やっぱりでかい! 

 市街地モチーフというか、市街地そのものじゃないか。これ。

 待ってる人たちもみんな自信満々だなあ。流石国内トップレベルのヒーロー科を受験するだけはあるな。

「スタート!」

 周りを観察していたら、そんな声が響き渡る。

 

「ほらほら、スタートよ! 実戦じゃよーいスタートだなんて言ってくれないわよ!」

 

 同時に、みんなが駆けだす。

 

 

 市街地ならば、私の蜘蛛糸の技術が役に立つ。ウェブスイングで会場を飛び回り、(ヴィラン)役のロボットを見つけ次第蜘蛛糸を発射して高いところに振り上げて落下の衝撃で破壊したり、弾丸のような蜘蛛糸──今更ながら言いにくいのでウェブと呼び方を改めることにする──を発射し破壊したり、またはウェブスイングで加速した勢いで仮面ライダーがするようなライダーキックもどきで破壊したり。

 ロボットと戦っていて劣勢の他の受験者がいたらウェブをロボットに貼り付け、ウェブスイングの勢いでロボットを引きずり回し受験生との距離を引きはがしたら粘着性のあるウェブでロボットの動きを多少妨害しつつ放置する。

 オンラインゲームとかでも漁夫はマナーとしてよくないからな。これぐらいなら支援止まりで私の破壊判定にはならないだろう。

 

 

 そんな感じで、ウェブスイングで飛び回ってはロボットを見つけ次第破壊。他受験生の救助をというサイクルを繰り返していると、急に轟音が轟くと同時に、巨大なロボットが、市街地のビルの間から顔を見せる。

 あんなでかいロボットは初めて見た。どんなことまで想定されてるんだ、あれ。

 多分あれが説明の中でちらっとでてきた0Pのロボット(ヴィラン)なのだろう。

 避けるべきだとは言っていたけれど、あれを好きなように活動させていたら、この市街地に大きな被害が出るのは間違いないだろう。

 何より、出久ならきっと、あれに立ち向かうはずだ。何ができるからという理由じゃなくて、何かをするためという理由で動く人だから。

 出久は誰かを助けるために動く。なら、私もそうする。

 

 そうと決まれば、行動だ。

 ウェブスイングで0Pロボットのもとへ向かう。

 ウェブスイングの勢いで0Pロボットの肩のあたりに飛び出す

 

「やあ、ロボットくん。君とコミュニケーションがとれるかどうかは知らないけど、ほとんど癖だから、仕方ないよね!」

ロボットの頭部にウェブを発射し、ウェブスイングで生まれた直進する力を体を揺らし、ロボットの周りを回転する力の向きを変更する。

手首から発射しているウェブをそのまま途切れさせずに伸ばし、0P(ヴィラン)をウェブで足まで簀巻きにして身動きが取れないようにする。

そして、無理に動こうとした0P(ヴィラン)は簀巻きの状態のまま転倒しそうになるが、背中に貼りつき、ウェブで周りのビルと0P(ヴィラン)を繋ぎ、転倒を防ぐ。

 

「多分これでもいいんだろうけど、折角だからトレーニングの成果を目に見える形で出したいな。申し訳ないんだけど、ちょっとだけ付き合ってね」

後頭部まで歩いて行き、パンチを撃ってみる。

拳より一回り大きい凹みが出来る程度でオールマイトのようなパンチには程遠い。

 

「まあ、一発で壊れないんだったら壊れるまで殴れば解決だよね」

右と左と、とにかく殴りまくると、いつの間にか後頭部の鉄板には穴が開いており、機械部分が露出していた。

 

「多分、私の体なら感電しても問題ないでしょ!」

穴の中の機械部分に向かってウェブを発射し、勢いよく引っ張る。

思っていたより簡単に、どこかの部品は剥がれ、飛び出してくる。

 

「よっしゃ、0P(ヴィラン)討ち取ったりー!」

…。待てよ?

完全に破壊することに固執してたが、これ、転倒しないように防いだとこまででよかったんじゃ?

私がここで壊さなかったら来年も使えて、修理費もかからなかったろう。この高性能ロボットの修理費を想像して血の気が引く。

 

「やばい、やばいぞ」

頭の中をたくさんの不安と申し訳なさがぐるぐるする。

結果、俺が選んだ行動は。

 

 

ウェブの大量の使用による疲労と不安から逃げたいという気持ちが合わさった、気絶、だった。




雲嶋の現在の筋力 ワンフォーオール10%程度
  現在の頑丈さ 衝撃への耐性のほかに感電や温度の変化にも耐性を持つようになった。

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