元蜘蛛男で現蜘蛛女のヒーローアカデミア   作:りてらしー

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新作日間ランキング11位だった。腰抜かした。
お気に入り100ぐらいだったのに200行ってた。漏らした。
結果として恥晒した。

これを書くにあたって三話を結構編集したのでもしかしたら読み直してからのほうがいいかもしれない。


緑谷出久から見た蜘蛛女との三年間

 僕が八菜さんと初めて出会ったのは、中学一年生の一学期。

 放課後の教室で将来のためのヒーロー分析ノートを眺めていたときに八菜さんが話しかけてきたのが僕と八菜さんの長い付き合いの始まりだった。

 その日は朝から一つの噂で持ち切りだった。

 二週間ほど休んでいた男子が女子になって学校に復帰してきたという噂がその当日に流れていて、僕もその噂が気になっていたけれど、その人に会うこともないだろうと思っていた。

 まさかその日のうちに会うどころか会話までして、なんなら友達になるとは夢にも思わなかった。

 

 急に話しかけられて、一番最初に八菜さんの姿を見た時思ったのは、綺麗な人だな、ということだった。

 腰まである黒髪のロング。目鼻立ちも整っていて、当時の僕より身長も高くて、足もすらっと長くてモデルと言われても不思議じゃないぐらいの見た目をしていた。

 正直に言って、僕はその時とても可愛いと思ってしまった。実際、思うだけにとどめず口にしてしまったわけだけど……。

 

 その後、八菜さんと一緒に帰ることになったとき、正直に言ってドキドキしていた。

 元が僕と同じ男って言ったって、今はどこからどうみても可愛い女の子で、女子と話したことがほとんどない僕は本当に緊張していた。

 一緒に帰っていると個性の話になって僕はいつもの癖のぶつぶつ呟く癖を出しちゃって、引かれちゃったんじゃないかと思ったけれど、八菜さんは全然そんなことなく、僕の癖を好意的に捉えてくれた。

 僕が無個性だってことでネガティブになったときも、口調が崩れちゃうぐらい一生懸命になって励ましてくれた。

 そして、人生で初めて、僕が言ってほしい言葉を言ってくれた。

 

「あーえっとさ、長々と喋ってみたけど、簡単に言って、俺は出久がヒーローになれると思うよ、ってこと」

 ヒーローになれる。

 僕が無個性だとわかったときから言ってほしかった、ただ一つの言葉。

 八菜さんはそれを言ってくれた。

 嬉しくて、嬉しくて、僕は思わず泣いてしまった。

 

 その時に、制服の袖で涙を拭いてくれたんだけど、正直それもドキッとした。

 初日なのに、距離感が近すぎないか。

 というか、八菜さんは自分の容姿の良さをあまり実感していないと思う。

 八菜さん自身で自分の容姿が良いとは言っていたけど、傍から見た時をあまり考えていない。

 彼女は周りに距離を置かれたと言っていたが、性別が変わったことは原因ではないと思う。

 本人はそう思っているみたいだけど、実際には周りからの八菜さんへの印象は高嶺の花だったんだと僕は思う。

 自信がある男子が何人か、八菜さんの靴箱の中にラブレターをいれたりとか、体育館裏に呼び出して告白しようとしたりなどの甘酸っぱい青春を送ろうとしていたけど、そのどれもが玉砕した。

 靴箱に入っていたラブレターを読んだ後、

 

「入れる靴箱間違ってるみたいだね。これ」

 とか言って近くの女子の靴箱にラブレターを入れなおしたときはラブレターを送った男子があまりにも可哀想だった。

 

 体育館裏に呼び出されて真正面から告白されたときもあったみたいだが、

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、ごめんね」 

 と、正直に断ったそうだ。

 そんなエピソードが出回ったものだから、高嶺の花の扱いに落ち着いて誰も話しかけられなくなってしまった。

 しかも、八菜さんが悪いわけじゃないんだけど、一緒にいる僕と付き合っているんじゃないかみたいな噂も立ってしまった。八菜さんは気づいていなかったみたいだけど。 

 

 話が大きく逸れちゃったけど、八菜さんは僕にとっての恩人ってことなんだ。

 僕自身、自分がヒーローになれるっていう確信を持てていなかったけれど、八菜さんのおかげで、ヒーローになれるという確信を持てたと思っていたんだ。

 

 そう、あの時までは。

 

 僕と八菜さんは中学三年生でも同じクラスだった。

 いつものように、同じ下校ルートで、いつもと同じ高架下をくぐって帰っていく。はずだった。

 突然、八菜さんが(ヴィラン)の気配に気づいて、僕を逃がしてくれた。

 僕は、言われるままに逃げていた。

 ヒーローを目指していたはずなのに。

 でも、八菜さんは(ヴィラン)に立ち向かって、戦っていたんだ。

 

 僕は、自分が情けなくなってしまった。

 無個性だから、自分がいたところで足手纏いにしかならないということに気づいてしまったんだ。

 でも、もしかしたら。もしかしたら八菜さんのためにできることがあるかもしれない。そう思った、いや、思い込みたかったんだ。

 僕は、走ってきた道を戻り、高架下に向かった。

 結果として、僕が来たせいで八菜さんは気を取られて(ヴィラン)に拘束されてしまった。

 あそこでオールマイトが来てくれたからよかったものの、僕のせいで八菜さんを危険に晒してしまったのは間違いない。

 本当に、僕はヒーローになれるのか、わからなくなってしまった。

 危険に晒してしまったのに、笑顔で許してくれる八菜さん。

 八菜さんみたいな人が一番ヒーローに相応しいんだろうと、思ってしまう。

 嫉妬、してしまう。

 

 助けてくれた人に対してそんなことを思ってしまう自分自身が、僕は一番嫌いだ。

 

 オールマイトに、質問をした。

 

「オールマイト、聞きたいことがあります」

 

「なんだい? 緑谷少年。なんでも答えてあげよう!」

 

「僕は、ヒーローになりたいんです。それも、あなたのような」

 

「そうか! いやー、よく言われるよ!」

 

「でも、僕は、無個性なんです。そんな、無個性の人間でも、あなたみたいに、なれるんでしょうか」

 急に、話の雰囲気が変わってしまったからか、オールマイトは言葉に詰まってしまった。

 

「なれる! ……と言ってあげたいが、それは君の努力次第さ! 頑張れよ!」

 はぐらかされただけだ。

 断言してほしい。

 ヒーローになれないと。

 無個性では、無理だと。

 

 

 そう思って、八菜さんと話を終えて、飛び立っていったオールマイトに、僕はしがみついた。

 

「全く……それじゃあ、本当に時間がないから、私は行くよ! これからも頑張ってくれ、緑谷少年!」

 

「ま、待って!」

 

「オールマイト、さっきのあの言葉は、はぐらかしただけですよね」

 オールマイトは、答えない。

 

「お願いします、オールマイト。はぐらかさないで、答えてください」

 

「僕は、あなたみたいなヒーローになれますか?」

 すると、オールマイトが湯気が立ち始め、湯気がオールマイトの体を包み込むと、その中から、肉が全然ついていない、がりがりの男の人が出てきた。

 

「はぁ……見られてしまったか」

 オールマイトの説明を聞いていた僕は、驚愕する。

 あのオールマイトが、本当の姿(トゥルーフォーム)はこんな体格の人だったということに。

 負わせられた傷のせいで活動時間に制限が掛かっていることに。

 

「君は、さっきはぐらかさないで答えてほしいと言ったね。正直に言って、この仕事は常に命がけ。個性を持っていない人間がこの仕事をやれるとは、とてもじゃないが言えないね」

 

 言われた。

 言われてしまった。

 憧れのヒーローに、僕はヒーローになれないと。

 やっと、踏ん切りがつけられそうだ。

 個性がない人間が、恩人に醜い感情をを抱いてしまった、僕がヒーローになんかなれるわけがない。

 

「そう、ですか。ありがとうございます……」

 オールマイトが僕のことを励ましてくれているが、頭に入ってこない。

 いつの間にか、オールマイトはそこにはおらず、屋上には僕一人しか残っていなかった。

 

「ごめん、八菜さん……」

 ヒーローになれると、そう言ってくれたのに。

 僕は、諦めてしまうよ。

 

 その後、屋上から降りて、帰っていると、爆発が起こる。

 (ヴィラン)だろうか。

 

 思わず、足が向かってしまう。諦めたのに。

 現場に着くと、そこにはオールマイトが捕まえたはずのヘドロの(ヴィラン)が暴れていた。

 しかも、ヘドロの(ヴィラン)はかっちゃんを拘束していた。

 まただ。

 また、僕が余計なことをしたせいだ。

 

 誰か、ヒーローが助けに入らないのか。

 かっちゃんは、もがいてもがいて、抵抗を続けている。

 

 かっちゃんの顔を見た。

 助けを求める顔。

 それを見た瞬間、僕は足が勝手に動き始めた。

 

 なんでだよ、僕が行ったところで足手纏いになるって、今分かったばかりだろ。

 自分に問う。

 なんでって、それは……。

 

「お前、さっきの隠れ蓑……」

 この状況は、どうすればいいか。

 唯一流動体になっていないのは目。

 背負っていたバッグをヴィランの眼球に向かって投げつける。

 かすかに開いていたジッパーから、筆箱が飛び出し、命中し、(ヴィラン)の拘束が緩む。

 かっちゃんが、呼吸ができるようになってむせている。

 ヘドロを掻いて、助けようとする

 

「っ……デク、なんで、テメエが……!」

 

「わかんない、わかんないけど!」

 

「君が、助けを求める顔してた……!」

 自分に、答える。

 

 (ヴィラン)が、僕に液体で殴りかかってこようとして来ている。

 終わりか、そう思った時、風圧を感じる。

 

「本当に、情けない。君に諭しておいて、己が実践しないなんて……!」

 

「プロはいつだって、命がけ……!」

 

「デトロイト、スマアアアアアアアアアッシュ!」

 オールマイトの振りぬいた拳で発生した風圧が、ヘドロ(ヴィラン)を散らす。

 

 

 その後、僕はヒーローたちに散々怒られた。

 当然だ。無謀に飛び出して、何もできなかった。

 オールマイトが来たからよかった。

 僕は八菜さんの時と、何も変わっていない。

 

 その日の帰り道、いろいろなことを考える。

 そういえば、八菜さんを一人にしちゃってたな。それも、謝らないと。

 八菜さんに、ヒーローを諦めるって、伝えないと。

 

 ヒーローを諦める。

 思わず、泣きそうになってしまう。

 泣くなよ。心のどこかでは分かってただろ。

 

「おい、コラ! デクゥ!」

 かっちゃんの声が後ろから聞こえる

 

「デク、テメエ、俺に恩を売ったつもりか!? アァ!?」

 

「そ、そんなつもりじゃ……」

 

「俺はテメエに助けられてなんかねえ! 一人でどうにか出来てたんだ! 無個性の出来損ないが、俺を見下すんじゃねえぞ! クソナードが!」

 言うだけ言って、かっちゃんは帰っていく。

 その通りだ。かっちゃんはきっと、一人でどうにか出来ていたんだろう。

 僕とは違って、才能マンのかっちゃんなら。

 また、歩き出すと足音が前から聞こえる。

 

「HA-HAHAHA! 私が来た!」

 

「オ、オールマイト!? さっきまで、取材陣に囲まれて……」

 

「抜けるぐらいわけないさ! なぜなら私は、オールマイ──」

 オールマイトは言っている途中で吐血してトゥルーフォームになる。

 

「少年、礼と訂正。そして、提案をしに来た。まず、さっきはありがとう。君がいなければ、私は口だけになってしまうところだった」

 

「いや、そんな、僕が悪かったんです。仕事の邪魔をして、無個性のくせにヒーローになりたいだなんて言って……」

 

「ああ、そうさ。無個性で小心者の君だからこそ、私は動かされた」

 

「トップヒーローは学生時から逸話を残している」

 

「彼らの多くはこう言葉を結ぶ。考えるより先に、体が動いていたと」

 僕はなぜか、4歳の頃の記憶と、二年前の記憶を思い出していた。

 

「君も、そうだったんだろう?」

 僕は、オールマイトに、ヒーローになれないと言ってほしいと思っていた。

 それで、踏ん切りをつけようとしていた。

 でも、本当は違ったんだ。

 僕が、本当に言ってほしかったのは

 

「君は、ヒーローになれる」

 

 二年前の、八菜さんの言ってくれたことを思い出す。

 

『あーえっとさ、長々と喋ってみたけど、簡単に言って、俺は出久がヒーローになれると思うよ、ってこと』

 

 とっくの昔に、言ってもらいたかったことは言ってもらっていたのに。

 情けない。

 今、覚悟を決める。

 オールマイトに、八菜さんに背中を押してもらった、今。

 必ずヒーローになるという覚悟を。

 そして、いつか、最高のヒーローになって、八菜さんに言う。

 ありがとう。その一言を。

 

 その後、オールマイトにはワンフォーオールという個性についての説明と、譲渡の提案をしてもらった。

 拒否する理由は一切ない。

 

 

 八菜さんに、あの後何をしてたか聞かれたのでワンフォーオールやオールマイトの秘密については隠して答えていたら、いつの間にか八菜さんは機嫌が悪くなっていた。

 なんでか全くわからない。同じ話を何回も話していたからだろうか。

 

 オールマイトとの出会いの二日後から朝のトレーニングをしていると、ある日の朝、八菜さんが訪ねてきた。

 どうやら、僕の様子がおかしいことに気づいて、様子を見に来ていたようだ。

 心配をかけていたことを申し訳なく思うと同時に、全然鍛えられていない体を八菜さんに見られることに恥ずかしさを感じる。

 どうせなら、鍛えた後の体を見てほしかった。

 

 なんでかは知らないが、その日から八菜さんも一緒にトレーニングをするようになった。

 ただ、そのおかげで一層トレーニングに気合が入るようになった。

 情けない姿は見せられない。

 そう思っていたのに、ぶっ倒れたり、入試当日の朝なんかは体を支えられたりしてしまった。

 八菜さんに支えられることに恥ずかしくなって意地で立っていたが、八菜さんが帰った後すぐに倒れてしまった。

 オールマイトには、「意地で立ってるなんて、君も男だなあ! おじさん、キュンキュンしたよ!」なんて言われたが、なんのことだかわからない。

 

 

 雄英高校に入ったとき、僕は早速つまずいてしまった。

 情けない姿を何回も見せてしまうな……と悲しくなっていると、ふわふわ浮かぶ感覚がしていた。

 やさしい女子が助けてくれたみたいで、八菜さんが代わりにお礼を言ってくれた。僕もお礼を言ったけど、がちがちに緊張してしまった。

 なんでかわからないけど、この時も八菜さんは機嫌が悪そうにしていた。

 

 昼食の時、八菜さんが一緒に食べようと言ってくれたので、一緒に食べることにした。

 八菜さんは、自分で作ったお弁当を持ってきていて、とてもおいしそうだった。

 

「母さんがね、花嫁修業だーとか言って料理教えてきてさ。どうせだったら覚えた技術は使わないと勿体ないから」

 しぶしぶ、みたいな言い方をしていたが随分手が込んでいて、乗り気なんじゃないかと思わざるを得ない弁当の中身だった。

 一つ玉子焼きを食べさせてもらったけどとてもおいしかった。

 

 

 昼食と試験説明をはさんで、遂に実技試験。

 僕は八菜さんとオールマイトの期待に応えなければならない。

 これはもう、僕だけの挑戦じゃないんだ。

 覚悟を再確認し、試験開始を待つ。




なんか書いてる間にお気に入り300行きそうになってた。
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