トロフィーを獲得しました ー銀色の景色ー 作:ウホホ・ウホホイ
「ぶっ飛ばしていくわよおおおおおおおおおお!!!」
現在府中を離れ、合宿先である岐阜県笠松町に向かっている。東京都から岐阜県までは約400kmほどであり、半日あれば十分到着する距離である。トレセン学園の合宿と言えば、学園のバスを使用して団体で移動するのが普通なのだが、我々は合計3名の極めて少数のチームであるため、当然バスを使う必要は無い。
そのため、笠松には一般的な自動車で向かうことにしたのだが、これを一般的な自動車と呼べるかは非常に怪しい。
ランボルギーニ・カウンタック...車の世界に明るくない私でも名前は知っている。イタリアの自動車メーカー、ランボルギーニが74年に販売開始をした深紅のスーパーカーである。そして最高速度300 km/hという破格の性能を有しているマルゼンさんの愛車でもある。
チームポルックスはそんな世界のスーパーカーに乗り込み、目的の合宿先に向かっているのだが......当のマルゼンさんの運転が色々とヤバイ。
「おいいいいいい!!お前レースには法定速度は無ェが公道にはしっかりとあるんだぞ!!!!」
「オロロロロロ...」
「大丈夫よ!
「合宿初日に察にしょっぴかれるとかシャレになってねぇ!!!」
マルゼンさんの運転はあまりにも緩急が効いており、そしてハンドル捌きはそれはもう見事なものだった。見事ではあるのだが、一般的な道路を走行するのに、そのような技術は全く必要ないんですよね。聞いてますかマルゼンさん。
「懐かしいわね!!あの頃もこうやってシロちゃんを乗せて走ってたわよね!!思い出がよみがえるわ!!」
「あの頃の方がまだマシな運転だったわ!!それにこのカウンタック、なんか前よりパワーアップしてねぇか!?エンジン音が車が出していいモンじゃ無ェんだが!?」
「あら、気付いちゃった?この日のために魔改造を施したのよ!前のタっちゃんだと2人しか乗れなかったしね!去年ドリームトロフィーの賞金をほとんど使って内装だけじゃなくエンジンもフルパワーアップしたんだから!」
「その賞金で普通の車を買えばよかったじゃねぇか!!!」
「オロロロロロロ...」
府中を離れて20分でこの始末である。
笠松まではウマホの地図アプリによると5時間ほどかかる見込みなのだが...我々は生きて合宿所にたどり着くことはできるのであろうか。
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83年6月中旬
無事かどうかはさておき、なんとか岐阜県の合宿先に到着することが出来た。
ここは岐阜ウマ娘カサマツトレーニングセンター学園、通称カサマツトレセン学園。ここにはローカルシリーズ開催地のひとつであるカサマツレース場が存在している。ローカルシリーズとは地方で開催されるエンターテインメントレースの総称であり、トゥインクルシリーズとは似ているようで別物のレースシリーズだ。
ここでは中央と同様に権威のあるレースの出走を夢見て、日々鍛錬に勤しむウマ娘が多くいる。そして非常に稀ではあるが、ここで結果を残したウマ娘が中央に転入することもある。
レースに関わる者の多くはローカルシリーズを"地方"、トゥインクルシリーズを"中央"と呼ぶ。地方のトレセン学園は言うならば中央への登竜門としての役割が大きい。これを言うと怒る人も中にはいるが、中央と地方とでは所属ウマ娘の実力は勿論、設備...人員...その他すべてが雲泥の差である。
周りの注目を避けるために地方に合宿しに行く...というのは概ね理解はできるが、中央のトレーニング環境を捨ててまですることなのか、私の正直な感想を言えばそんなところだ。マルゼンさんのスーパーカーからふらふらと降りながら、そんなことを思っていると、駐車場に一人の中年男性が立っていた。
「ようフェアリーゴッドファザー、クソ久しぶりだな」
「開幕ぶっ飛ばされてぇのか?白金ェ」
開口一番、既に目の前の中年男性とトレーナーが険悪?な雰囲気になっており、何が何やらという感じだ。
「お前は相変わらずだな、療養生活を経て丸くなったかと思えば前より生意気になってやがる」
「銀も変わらねぇな、いつまでローカルでぬくぬくやってんだ? 中央に来いよ、こんなところで骨を埋めるつもりじゃねェだろうな」
「ふん、中央なんかいつでもいけるわ。まだカサマツでやり残したことがあるんだよ」
この人がトレーナーと旧知の仲であるカサマツのトレーナーか。年齢はトレーナーと同じくらいだろうか...背丈こそは小さい方だろうが、見た目に反して非常にやり手な雰囲気を醸し出している。
「おっと、これはマルゼンスキーさんの前で失礼なことをしましたね。お目汚し申し訳ない」
「おい銀、なんでマルゼンにはそんな丁寧なんだよ。俺とは雲泥の差じゃねェか」
「うるせぇ、俺は生粋のマルゼンスキーの大ファンなんだよ。てめぇのチームのサブトレになったって聞いたときは本気でキレそうになったわ」
「お前、気味が悪いぐらい羽振りが良いと思ったらこれが狙いかよ...」
「あはは...」
やれやれといった感じでトレーナーは頭を搔く。一方でマルゼンさんはまんざらでもない表情をしている。
「それで、そのウマ娘がシルバーメモリーか。なるほどなるほど、噂に違えぬとは正にこの事だな」
中年男性は私の体を一瞥すると、何か納得するような表情に変わった。視線の動きから察するに、私の関節部分を注視していたことから、ウマ娘の人体構造に精通しているように思える。
「はじめまして、シルバーメモリーと申します。この度は合宿のために、カサマツトレセンの設備をお貸し頂きありがとうございます」
「俺は"六平銀次郎"と言う。こちらこそ中央の、それこそ中等部の頂点に近いウマ娘に、こんな辺鄙なところに足を運んで貰えてありがてぇ。是非中央の走りをカサマツのやつらに見せてやってくれ」
そう言って、六平トレーナーと握手を交わす。
「メモリー、マルゼン、悪いがここから右手奥に宿舎があるから先に荷物を置いてきてくれ。そのあと昼食を取ってから練習すっぞ」
「合点承知の助!」
「...わかった」
まだ若干酔いは残っているけど、本格化後まともな練習をしていなかったので、ようやくトレーニングが出来ると思うとテンションが一気に上がる。思わずスキップしそうになるが、何とか堪えてカウンタックから3人分の荷物を担ぎ、マルゼンさんと宿舎に向かっていく。
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「それでどうだ銀?お前の眼からしてもやっぱりメモリーは違ぇか?」
「...なぜミドルディスタンスに拘って走らせる。なぜダートを走らせない...そんな感想しか出んよ。長い事トレーナーをやってきたが、あんなタイプのウマ娘は流石に見たことねぇ。適性距離もバ場適性も脚質も、なにもかもが理解らねぇなんざ初経験だ」
経験豊富なトレーナーはウマ娘を一瞥するだけで、ある程度の能力を見抜くことが出来ると言われている。中央ではチームシリウスの七市トレーナーがその能力に長けていると言われており、ウマ娘の能力が数値として見えるらしい。
「それでもメモリーの目標は、芝中長距離でミスターシービーとシンボリルドルフを撃破することだ。あいつがそう言うんだからしょうがないだろ」
「聞き忘れてたが、何故カサマツに合宿に来た。メイクデビューを控えた時期に、芝中長距離が本命のウマ娘に砂を走らせる意味が理解らん。メディアの煩い連中を煙に捲くためだったら、札幌辺りの芝でも走らせればいいじゃねぇか。まさかパワーを鍛えるために砂を走らせるとかいう安直な発想じゃねぇよな」
シルバーメモリーは主戦場として芝中長距離を選んだウマ娘である。芝を走らせる以上、ターフの上で鍛錬を積むことが通常とされているが、合宿先のカサマツレース場は1周1100mの右回りのダートコースである。ウマ娘のパワーを鍛えるために砂浜やダートを走らせるという練習もあると言えばあるが、効果的かと言われるとそこまでじゃない。芝を走る以上、芝で練習した方が効率的なのだ。
「あいつは本格化を迎えたばかりだ。そんな状態で以前と同じ感覚で芝を走っちまえば、幾らあいつでもフォームを崩しかねん。あいつの走りの技術の根幹はイメージと理論だ、常日頃からイメージトレーニングと研究を重ねてきたからこそ出来る走りなんだよ」
「つまり芝でフォームを崩すぐらいなら、未経験のダートを走らせることでフォームの基礎とイメージを再構築させるってことか?」
「ご名答、それに個人的に地方のレース場っつったらカサマツが一番レベルが高いと思ってたしな。しかも......中央の大人気芝中距離ウマ娘なんぞ、カサマツのウマ娘からしたら
シロガネは悪魔のような顔をする。
「...ははっ、全然丸くなってねぇじゃねぇかお前。安心しろ、ここにいるウマ娘どもは中央の奴を嫉妬半分で憎んでいる連中ばかりだ。張り合いのある練習ができるだろうよ」
「カカッ!頼むぜフェアリーゴッドファザー、お礼に今日の飲み屋でマルゼンに酒を注がせてやるからよ」
「それは死ぬほど嬉しいが、その呼び方はやめろ」
ダートの時間だああああああああ!!
多くの感想・高評価・お気に入り誠にありがとうございます。
誤字報告も感謝いたします。本当に助かっております。
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続々とコメント投稿して頂き誠に感謝いたします。
参考にさせて頂きます。