綾小路......誰さんですか?   作:せーちゃん

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まさかホワイトルーム時代のイカレたテンションをもう一度書く事になろうとは......。

皆様ハッピーバレンタインです。
ぶっちゃけ生まれてこの方、毎年何がそんなにハッピーなのかは全く理解出来ていませんが、世間様がハッピーらしいので私はそれで良いのです。
この時期は不思議とソシャゲのログボも美味しくなりますし、悲しくなどありません。



【バレンタイン編 番外−1】『美味くもなけりゃ不味くもない、それはきっと“春の味”』

「....ああ、今日“バレンタイン”じゃん」

 

「......“ばれんたいん”?」

 

 

 昼食時に出されたデザート兼“栄養食”である『チョコレートバー(白部屋特製ホワイトチョコレート仕様)』の摂食行為から零コンマ零秒の事。俺は今日が二月十四日である事を思い出した。

 

 そう、俺は坂柳有栖襲来事件にて、銀髪ロリから外界の暦に関する正確な情報を得ることに成功していたのである! 故にカレンダーの撲滅された白部屋内部でも正確な日付を推理する事が出来るわけだ。

 

 まぁ、西暦と日付が分かった所で、原作の進行に影響が出るわけでもなければ、そもそも白部屋には季節行事なんてのも一切ないから殆ど意味はないんスけどね!

 

 アーッハッハッハ!!

 

 

 ───────────は?

 

 

 

 いや、ホント何やってんだろ、俺......。

 

 今頃外では恋人共がキャッキャウフフしてるわけだ。それなのに僕サマときたら─────はぁーーーーーー!!!

 

 

 つっまんねぇな! オイ!

 今日も白部屋は通常カリキュラムだよクソが!

 俺ちゃん、イケメンチートオリ主やぞ!?

 何でバレンタインデーもお勉強してんだよ馬ッ鹿じゃねぇの!?

 

 普通、もっとこう、あるだろォゥン!?

 甘酸っぱいのがさァ!

 

 

 

 例えばホラ─────

 

 

 

 

『はいコレ。今年のバレンタインチョコ。何時もありがとねー』

 

『んー、さんくー。これからもよろしくなー』

 

 

 

 

 みたいな!?

 “もはやバレンタインが恒例行事と化した熟年夫婦バリのおっとり系幼馴染みに日常っぽくもちょっと甘い感じ”でチョコを手渡しをされたかったなァ!

 

 

 

 

 

 

 あとはホラ─────

 

 

『か、勘違いしないでよねっ! 別にアンタの為に作ってあげたわけじゃないんだから!

 

 で、でもその......まぁ?

 折角作ったわけだしぃ.....?

 た、食べてくれると、その............うれしい、かも』

 

 

『ん。作って貰った以上、有り難く頂くわ。ホワイトデー期待しとけよ?』

 

 

『...............言っとくけどアンタの手作りは受け取らないからね。............自信無くすし』

 

 

『ん? 何か言ったか?』

 

 

『何も言ってないわよ!』

 

 

 

 

 み、た、い、な?

 “俺より料理が下手なくせに、指とかボロボロにして何とか手作りしたツンデレ幼馴染みのチョイマズチョコレートクッキー”とかを俺は猛烈に食いたかった......!

 

 

 しかし、現実は非情だ。俺に与えられたチョコレートは、憎っくき白部屋から支給された栄養バー(チョコ味)一本のみ。

 クソが! 前世含めて、妄想するような甘々なイベントなんて一回も無かったぞ今まで!

 俺イケメンだぞ!?

 勉強も出来るんだぞ!?

 歌も上手いしダンスも出来るし運動も得意だし芸術家としての才能もあるんだぞ!?

 性格だって............まぁ、性格は置いておくとして。

 

 なんで此処までハイスペックなのに、俺にはラブコメ的なイベントが一切来ねぇんスかねぇ!?

 

 

 ────Answer ホワイトルームに居るから。

 

 

「はいクソ。もう、潰すべ......この白部屋────って、おん......? いや、いるじゃん俺にも可愛い幼馴染み。なぁ、茶髪ちゃん。お前、もしかして俺のヒロインだったりしない?(錯乱中」

 

 

「?」

 

 

 

 うーん............なさそうですねコレは。

 この娘、バレンタインが何なのかも分かってなさそうだし。

 

 俺はコテンと首を傾げると同時に、スープに浸かりそうになっていた茶髪ちゃんの長髪を一つに纏めてやりながら、一向に訪れない春に絶望した。

 

 ......見てろよ白部屋。

 あと数年の辛抱だかんな?

 直ぐにでも綾小路くん見つけて、絶対に脱出してやるから......震えて眠れ。

 

「で? 茶髪ちゃんはバレンタインが何なのか知ってるん?」

 

「....知ってる。日本のお菓子会社による大規模マーケティング戦略の一例」

 

 

 ......うん???

 

 

「....起源はキリスト司祭の処刑を背景に打ち出した複数企業の共同ミーム的「オーケー分かった。一旦バレンタインに関する認識を改めようか」............?」

 

 

 もうやだこの場所。

 

 

「....でも、そう教わった。バレンタインは企業による市場戦略」

 

 

 うん、そうだね。

 この前も、企画経営能力向上の為の授業で企業戦略の成功例として紹介されてたもんねバレンタイン。

 

 けどさ、違うだろ?

 もっとこう! ね? 年頃の女の子のバレンタインに対する認識がこれって....許されるんですかね?

 いや、ホント何でもかんでも学習教材にしてんじゃねぇよホワイトルーム!

 テメーは、もっと情操教育に力入れろや!

 

 

 はぁーーーー、ホント清隆パパ無能オブ無能。なんかムカついたし......後で意味もなく腹パンしたろ。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 〜十分後〜

 

 

 

「と、いうわけで、バレンタインはもっとこう甘いイベントであるべきなんだよ。具体的には俺に対して甘くあるべきなんだよ分かるかねチミィ!」

 

「分かった」

 

 

 ......ホントに分かってんのかなぁ、この娘。

 

 

「......けど、疑問も残る。同じ教育を受けているのに知識量に差があるのはおかしい」

 

 

 ......おっと。

 相変わらず主語をどっかに置き忘れている彼女だが、しかし言いたい事は分かる。俺の知識は白部屋生としては確かに偏りすぎているわけだし。

 

 しかし俺ちゃんにはアリバイがあるのだよ。

 

 

「俺は有栖ちゃんに聞けたからな」

 

「......“ありす”?」

 

「おう、ちょい前......つっても、もう数年前か。ほら女の子来たろ? 銀髪の杖持った可愛い子」

 

「................」

 

 

 うーん、コレは憶えて無さそうですね。

 てか、急に黙らんでくれよ。

 流石に黙られると無表情も相まって何考えてんのか読み取りにくいんだが......。

 

 

「おぼえてる。チェスの人」

 

 

 おー、憶えてたか。

 てか、毎度思うけど覚え方が雑すぎなんだよなぁ。この娘、俺の事とかちゃんと憶えてんのかね?

 流石に“白い人”とかそんな感じの認識だとショックなんですが。

 

 

「まぁ、俺はグローバルな男だからな。NO受動的、YES積極的の精神だぜ。茶髪ちゃんもなるべく自分の方から情報を取りに行くようにしたほうがいいぜマジで。世界はこんなちっさい施設の中だけで完結してないんだから」

 

 具体的には情操教育についてもっと積極的になってください切実に。

 てか、斯く言う俺も、外の世界については詳しいわけじゃないんだけどね。ただ、積極性が大事だとは心底思う。マジで何もしてないと二十年弱くらいならソッコーで終わるからな。あ、ソースは前世の俺ね。

 

 

「......のー受動的。......いえす積極的」

 

 

「そうそう、人生短いからね」

 

 

 と、なんやかんや有栖ちゃんの名前を出す事でバレンタイン他、俺の前世知識から話を逸らしつつ、人の一生が短いという事を再確認する。

 

 ......結局、生まれ変わったというのに何も出来ていないからな。折角出来た件の“友達”ともあれ以来会えてないわけだし。

 

 まったく。こんな所に居る暇は俺ちゃんには無いのだよ。まだ魔法だって使えないし、前世では出来なかった事、やりたかった事が俺には余りにも多いのだ。まぁ......残念ながらこの分だと、今世でも小学校や中学校には通えそうにないのだが。......いや、絶対高校には行ってやるかんな! 高育ではバレンタインだって絶対体験してやるんだかんな!

 

 

 ─────さて。

 

 

「......人生短い。......積極的」

 

 

 未だに何かブツブツ言っている茶髪ちゃんを他所に、俺は空になった食器を重ねてトレーの上に纏めていく。

 

 そろそろ昼食の時間も終わってしまう。

 非常に非情な事だが、白部屋は名前とは裏腹にクッソブラックなので、例え今日がバレンタインだろうと平常運転のままだ。

 夕食は基本、テーブルマナーの教材にされてしまうので、ゆっくりと食事が出来るのは実質、昼の時間だけだというのに。例え徹底的に栄養管理されたクソ不味い飯でも憩いは憩いなので、今日ぐらいは時間延ばしてくれてもいいんですがねぇ清隆パパさん?

 

 

 なんて......まぁ、あと数年の辛抱だ。何だかんだ言いながらも、結局我慢するしかないしな。

 

 

 

「さてと、んじゃ俺先行くから茶髪ちゃんも早く食っちま────────ムグゥ!?」

 

 

 

 そう言いながら立ち上がる────と同時に、俺の口内を軽い衝撃が襲った。

 

 

「ム、ムガ.....ムグ......ちょ、茶髪ちゃんさん......? 急に何......?」

 

 

 何故か俺の口元へと伸びている彼女の片手。

 

 加えて────俺の閉じかけた口には美味くもなければ不味くもない微妙な味の、ホワイトルーム仕様の真っ白な栄養バーが突っ込まれていた。

 

 

 

 

「のー、受動的............いえす、積極的」

 

 

 

 一言。俺の名状し難い現状を他所に、いつの間に食べ終えていたのか、空皿の乗ったトレーを片手に先に席を立つ茶髪ちゃん。

 

 

 

 それを見送りながら、一口で食べ切るには大き過ぎるソレを何とか噛み砕いて嚥下する。

 

 

 

 

「うん......やっぱ、微妙だわ」

 

 

 不味くはない......が。

 やはり、無理に二本も食べるような味では無い。

 

 

 ......しかも食べかけじゃねーかコレ。

 

 

 

 

「なんすかね、俺は残飯処理係ですかね......」

 

 

 柑橘系のエキスでも入っていたのか、二本目のソレは妙に甘酸っぱい。

 

 

 一本目ではそれが気にならなかったのが妙に腹立たしい。おかしいですね。俺、味覚チートも持ってたはずなんですが。

 

 

 

「あー、クソ。......まーた、外に出ないといけない理由が増えやがったじゃねぇか」

 

 

 そんな事を小さくボヤキながら、少し遅れて席を立つ。

 気付けば周りには他に誰も居なくなっていた。

 時計を見ると、既に午後のカリキュラムが始まっている時間だ。

 

 

「やーべ。こりゃ、また清隆パパに怒鳴られるわ」

 

 

 

 どうせ怒られるのは確定してるし、急ぐ理由も特に無し。走るのもみっともないし、ゆっくり時間をかけて歩く事にした。

 

 

 

 

 

 ......はぁ。にしても、返せるのは何年後のホワイトデーになる事やら。

 

 ......三倍返しに利子が付かなきゃいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

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