メジロのお嬢様がもしもメンタルチンパンジーだったら

ただし登場人物の過半数は凶メンタルとする

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年の瀬に初投稿です。


ランニングお嬢様

 トレセン学園生徒会室にノックの音が響く。

 部屋の中央に位置する執務机に座るウマ娘は作業の手を止め、入室を許可した。

 

「ただいま戻りました」

 

 タブレットを携え入ってくるのはティアラ三冠、生徒会副会長であるエアグルーヴ。

 微笑みを以て迎えるのは七冠の『皇帝』にして生徒会長シンボリルドルフ。

 

「会長、選抜レースの結果が出ました」

「うん、どうだったかな?」

「……」

「エアグルーヴ?」

 

 生徒会室から穏やかな空気が散っていく。

 それはエアグルーヴの表情が物語るように、彼女が発する怒気によって。

 

「……撫で斬りです」

 

 レースに使う言葉ではなかった。

 

「件の生徒一人による蹂躙劇。加えて負かした相手を煽り倒し心も体も圧し折った……と監督役のフジキセキより報告が上がっております」

 

 伝統ある『中央』トレセン学園で起こったとはとても信じられない暴挙。

 70年代に流行ったという不良映画でもそうはないだろう無秩序ぶり。

 自他ともに認める厳格な性格のエアグルーヴには殊更受け入れ難い。

 惨憺たる報告にしかし、ルドルフは――

 

「っふ」

 

 薄い笑みで応える。

 常ならぬ生徒会長の反応にエアグルーヴは僅かに柳眉を歪めた。

 長い付き合いである。これが意味するところを知っていた。

 ――また、会長の悪い癖が出たのだ。

 咳払いをして気持ちを切り替える。

 副会長とはいえ一介の生徒会役員に過ぎない己にルドルフの趣味をとやかく言う資格は無いのだとエアグルーヴは自負していた。

 もっとも、口に出せばルドルフは諫言は好ましいと否定していただろう。

 そんなことには気づかずエアグルーヴは報告を再開する。

 

「その後参加者全員と殴り合いに発展しそうになり、フジキセキ・ヒシアマゾン両名により制圧されたと……」

 

 しかしその内容に頭が痛くなる。

 フジキセキから件の生徒はヒシアマゾンにロメロスペシャルを極められ撃沈し、一番食って掛かった相手はフジキセキがコブラツイストで仕留めた、ともう別の競技に成り果ててる始末を聞かされた。報告を疎かにせよとは言いたくないがそんなこと知りたくなかった。なんで選抜レースの報告書を書いているのにプロレス技を調べなければならぬのだ。

 エアグルーヴは途中から自分が何をしているのか見失った。

 

「派手にやったな」

 

 滅茶苦茶な報告にもルドルフの笑みは揺らがない。

 制圧内容を問われなかったことにこっそりと安堵の息を漏らし、すぐに告げられた言葉にエアグルーヴは声を詰まらせる。

 

「それで? 転校希望者は出たかな?」

 

 咄嗟に答えられなかった。

 何故ならそれは一番ありえない話だったのだ。

 

「いえ……そういった話は」

 

 なんと答えるのが正解なのか。

 例年であればウマ娘レースの最高学府である中央にて最初の壁となる選抜レース。

 難関を突破して入学した生徒たちはそこで『中央』というあまりにも高い頂を知ることとなる。

 現実を知り、己を知り……心折れる者が現れる最初のふるい。

 だが、今年に限ればその結果は――

 

「むしろ――絶対に見返すと燃え上がったと……」

 

 決してありえない筈の()()()()()

 無惨と言ってもいいようなレース内容でこの結果。

 その後の顛末まで鑑みれば何をどうすればこうなるのか本気でわからない。

 朗報と言っていい筈なのにどうして頭が痛くなるのだろうか。

 頭を振ろうとしたエアグルーヴはしかし、不穏な気配に固まる。

 

「ふ――ふふ」

 

 ルドルフが肩を震わせ笑っていた。

 

「っふ、はは、はははははッ!」

「か、会長?」

 

 笑いは治まらず、呵々大笑といった様相を呈してもまだ続く。

 普段の凛然とした態度はどこへやら。楽しくて仕方がないと笑いっぱなしだ。

 一分近く続け、短く息を吐き姿勢を正したルドルフは笑みの質を変える。

 

「そうだろう、あのお嬢様はそういう勝ち方をすると思っていたよ」

「……よろしいのですか?」

「良いも悪いも、普通ならこの時点で二桁は転校希望者が出る。それがゼロだ。諸手を挙げて褒め称える以外にすることがあるかい?」

「しかし、負かした相手を面罵するなど」

「それで奮起するならいいことじゃないか」

 

 まさに感奮興起だな、とルドルフは笑う。

 そこだけ切り取ればそうだろうが、と同意できずにエアグルーヴは報告書に目を落とす。

 

「……反面トレーナー契約に至れたのは過去最低ですが」

「ふふ、乱闘程度で躊躇うなど我が学園のトレーナーも脇が甘いな。己が走るくらいの気概が欲しいものだ。まあその点に関してはまだ焦る時期ではない。各チームのトライアルもこれからだし、選抜でなくとも模擬レースでスカウトするという事例は事欠かない」

 

 選抜レース自体もまだまだ続くしね、と締めるルドルフの言葉に若干の違和感を覚えながらもエアグルーヴは頷かざるを得ない。「捻り過ぎたか」と呟き僅かに耳が垂れた会長に首を傾げながら先を促す。

 

「処罰などは」

「既に制裁を受けているようだし、特に必要ないんじゃないかな? あの二人の説教は堪えるだろうしね」

 

 軽くパソコンを操作しながらルドルフは終わりを告げる。

 報告書はまとめた時点で学園のデータベースに上げられている。

 ルドルフなら会話しながら要点を読み取るのも苦ではないだろう。

 まとめられた報告を読んだ上での判断ならもう口を挟めない。

 乱闘も未遂で終わった以上確かに十分と言える。

 エアグルーヴ個人としては説教したりないと思うが学生自治を掲げる生徒会がこれ以上踏み込むのは過分である。出来るとしても先達としての苦言が精々だった。

 

「いや? 説教程度では効かないかなあの子には」

 

 質の変わった笑みが深まる。

 

「なにせ入学初日にこの私に挑むのだから」

 

 悪い癖、だ。

 エアグルーヴはもう溜息を漏らすのを隠せなかった。

 人格も実績も尊敬に値するこの生徒会長は、兎角己に歯向かう気概のある者を好む。

 普段は公明正大で贔屓などとは無縁なのにこうなると止まらない。

 傍目には口説いているようにしか見えぬほどのめり込んでしまう。

 

「会長の圧勝と聞きましたが」

 

 何十バ身差もつけてのワンサイドゲームだった。

 それだけ聞けば目をかけるほどの者ではないように思える。

 

「本格化も迎えていない幼子ではまだまだわからないさ」

 

 しかし、まだ新入生。伸びしろは計り知れない。

 未熟な中に光るものを見つけたのだろうか?

 様々な騒ぎを起こす問題児であることを帳消しにするほどの?

 

「アレは面白かった」

 

 エアグルーヴの思索は割り込んだ声に遮られる。

 今まで黙り込んでいた三人目が口を開いた。

 

「シンボリルドルフの首を獲る、と声に出したのなんて私以来じゃないか?」

 

 そう楽し気に口にするのはシンボリルドルフ以来のクラシック三冠――つまりは現役最強候補の一人、ナリタブライアン。

 中央の頂点に位置する強者は先日の型破りなレースを思い出す。

 神バ・シンザンが天に持ち去りし三冠を地に引きずり落したミスターシービー。

 その圧倒的な強さからただ『怪物』と称されたマルゼンスキー。

 そんな優駿たちを寄せ付けなかった『絶対皇帝』シンボリルドルフ。

 最早伝説と化し挑むことすら考えられない『皇帝』に、あのお子様は手袋を投げつけ勝負を仕掛けたのだ。

 芝居の筋書きとしてならあり得る話。だがそれを実行するなんて誰が思いつくというのか。これほど痛快なことなんて作り話でもそうはない。

 

「口だけじゃないぞあのガキは」

 

 なにせ、あの小娘は負けて泣いたのだ。

 勝てなくて当然の相手に本気で悔しがったのだ。

 圧倒的な強者に蹂躙されても未だ折れぬ心を魅せたのだ。

 

「しかもそれがつい先日まで小学生だったウマ娘ときたもんだ。これほど食いでがある奴もそうはいない」

 

 楽し気なブライアンと対照的にエアグルーヴの吐く息は重かった。

 

「貴様に御せるような輩なら私も苦労はしなかったんだがな……」

「随分見縊ってくれるな女帝殿。私じゃ勝てんとでもぬかす気か」

「これが奴の行状なんだが」

 

 不満げに歪められた目を渡されたタブレットに落とす。

 

 乱闘未遂:3件

 門限破り:28件

 授業中に指示を無視し勝手にレース開始:13件

 アグネスタキオンに追われ校内レース:2件

 ニンジンの押し売り:1件

 

「…………今年の新入生は集団でアホなのか?」

「奴の、と言ったろう。現実を見ろ。奴個人でコレだ」

「いやいやいや。ちょっと待てエアグルーヴ。まだ入学式からひと月だぞ?」

「だからひと月でこれだと言ってるだろう」

 

 問題児としての格が違う。

 レース狂いという自覚があるナリタブライアンをしてそう思わせる惨状だった。

 

「……他は、良くないが置いといて、なんだこの門限破り……毎日か? 入学からこっち毎日? 何をしているんだ」

「自主トレーニングだ。悪さをしているなら強硬手段を取れる分余計にタチが悪い……ここ一週間は私とフジキセキの追走から如何に逃れるかというトレーニング内容になってるな……はは」

「おいしっかりしろどこを見ているんだお前」

 

 うつろな視線を宙に彷徨わせるエアグルーヴの肩を掴んで揺する。

 

「部屋に入ってくるなり怒ってるなとは思っていたが……」

「……ああそうだ。日々の積み重ねと3件目の乱闘未遂が堪えてな。もうゴールしてもいいよな私。そうだゴールしよう」

「どこに行く気だアンタは!? やめろそのゴールは多分くぐっちゃ駄目なヤツだ! おい会長! 笑ってないでコイツを止めるの手伝え!」

 

 ――などと取っ組み合い、エアグルーヴを椅子に縛り付けるまで10分近くを要した。

 それでも正気に戻らないのだから相当追いつめられているのだろう。

 

「くそ……流石にティアラ三冠を取り押さえるのは骨が折れる」

「いやはや、些か倒錯的だな」

 

 バ鹿なことぬかすな色ボケ会長。

 裏拳の一つも入れたいブライアンであったが、疲労以上の気疲れで踏み止まる。

 

「あ、ちょうちょ……違うな、ちょうちょはもっとぱーっと燃えるもんな……はははここから出してくださいよぉ」

 

 燃える蝶ってなんだよそれ。

 ブライアンはツッコミを飲み込む。今は下手に刺激しない方がいい。

 執務机の椅子はエアグルーヴの拘束に使われているため二人は来客用のソファで向かい合う。

 

「ピンクの象の親戚見てる女帝殿は置いといてだ、野放しでいいのかあのガキ」

「行雲流水。縛らぬことに意味がある子もいるものさ。エアグルーヴもわかっているようだが、生徒会としてこれ以上介入する前例を作りたくないというのもある。学生自治は一歩間違えれば独裁の始まりだからね……後の世代に禍根を残したくはない」

「アンタの言い分は理解できるが……」

 

 ルドルフから視線を外し、放り出されていたタブレットを拾う。

 かの問題児の資料。

 読めばエアグルーヴでなくとも頭痛を覚えるものだとブライアンは眉をしかめる。

 

「小学生の頃から常に騒ぎの中心だったか。メジロの異端児、爆弾お嬢様、ウマ娘スレイヤー……? どういう経緯があればこんな異名がつくんだ」

「だがそれだけじゃない」

 

 ルドルフは自前のタブレットを持ち出し、少し操作してからブライアンに渡した。

 

「? なんのリストだ」

「今年の新入生の出身校。少し偏っているだろう?」

「……おい、まさか」

 

 皇帝は笑う。

 

「彼女の出身校の合格率が跳ね上がっている。そして選抜レースでの一件。偶然じゃないさ。私でも出来ないことだよ。心を砕かずに負けさせる――鋼を鍛えるが如く、負けたことでより強くさせるなんてね」

 

 狙ってやっているかはわからないが、という注釈は耳に入らない。

 一度なら偶然。だが二度なら?

 敗北を糧にさせるなどという無理難題を何度も?

 あり得ない。どんな人心掌握術だ。

 だが、しかし――ブライアンに否定する術はなかった。

 

「……信じがたい」

 

 そう呟くのがやっと。

 

「燕雀鴻鵠。やもすれば私たちは、とんでもない大器の卵を見つけてしまったのかもしれないな」

「入れ込み過ぎじゃないか。アンタらしくもない」

「私もまだまだ青いということさ。個人として抱く期待を捨てられない。卵は孵り鳳へと至るのか、それとも殻を破れず卵のまま腐れていくのか。実に楽しみじゃないか?」

 

 酷薄というには熱の籠った笑顔。

 才子が潰れる様すら楽しもうという嗜虐性。

 エアグルーヴも理解していない皇帝の真なる悪癖が顔を覗かせていた。

 ルドルフが好むのは己に歯向かう者、ではない。

 己に比肩しうる強敵を叩き潰すこと、なのだ。

 一流のアスリートなら誰もが持つ『負けず嫌い』を極めたのがこの皇帝である。

 そのサディスティックな上役にブライアンは溜息で応える。

 ルドルフに言わせれば胸襟を開いているが故に褒められたものではない悪癖さえも見せるのだ、ということだろうがそれを光栄に思えるほど心酔などしていない。ただ困った先輩だと呆れるだけである。

 溜息が招いたかのように、強い風が生徒会室の窓を揺らした。

 

「いい風だ」

 

 向かい合う先で、シンボリルドルフは様々な喜びの混じった笑みを深めた。

 

「メジロマックイーン。君はこの学園に、否、トゥインクルシリーズにどんな風を吹かすのかな?」

 

 なおエアグルーヴが正気に戻ったのはそれから30分以上過ぎてからであり、流石に拙いのではと慌てたルドルフとブライアンが医者を呼びかけたことと、正気を取り戻した彼女が緊縛された自身を見下ろし「せめて二人きりの時に……!」と口走った末に生徒会室の扉が蹴破られたことをここに記す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、生徒会室で話題に挙がった件のウマ娘は今何をしているのかというと。

 

「おぎゃあああああああッ!!」

 

 吠えていた。

 

「クソゲーですわぁッ!!」

 

 負け犬の遠吠えだった。

 敗北と表示された画面の前で手を握り締め肩を震わせるのは芦毛の少女。

 生徒会長にヤベエ目を向けられている新入生、メジロマックイーンである。

 

「あっはっは。クソなのは君のキャラセレと腕前だよ~♪」

 

 煽りに思わず『台パン禁止』と書かれた張り紙に拳が振り下ろされた。

 対ウマ娘用に備えた厚さ20㎜のスティール鋼板が悲鳴を上げる。

 

「テイオー! わたくしは兎も角キャラへの侮蔑は聞き逃せませんわ!」

 

 筐体の向こうからひょいと顔を出す白い流星が目立つ鹿毛の少女はトウカイテイオー。

 国中の上澄みが集まる中央トレセン学園をして天才児と名を馳せる実力者。

 そして、先日の選抜レースにてマックイーンに土をつけられたウマ娘の一人である。

 

「いやだってダイヤ最下位じゃんソイツ。マックイーン以外使ってんの見たことないよボク」

「ダイヤグラム何位だろうと好きなら使うのが格ゲーというものでしょう!?」

「そこはまーわからないでもないけど。ならまずは使いこなせって話なわけで」

 

 正論にマックイーンは唸る。

 言ったテイオー自身ダイヤグラム下位のキャラを使いこなして勝ったのだ。

 好きだから上手とは限らない。マックイーンの格闘ゲームセンスはお世辞にも高いとは言えず、むしろ下手と言い切れるものだった。なにせ昇●拳コマンドが入力できない。何度暴発昇龍で撃ち落とされたか。

 才能が枯渇していると言われても反論できない有様であった。

 

「ぐぐぐ……ッ、わ、わたくしにはまだカーレースとパズルとエアホッケーが……!」

「逆走すんの初めて見たし落ちゲーで自滅すんのも初めて見たしエアホッケーって空飛ばすもんじゃないって知ってる?」

 

 絶対車の免許取らないでよ? と重ねられマックイーンはがくんと顔を伏した。

 メジロマックイーン。彼女に対戦ゲームの才能は欠片すら存在しなかった。

 

「ほんとレース以外はからっきしだよねぇマックイーン」

「わたくしは! 全てにおいて頂点を極めるウマ娘ですわ!!」

「じゃあせめて波●拳確定で出せるくらいにはなろう?」

 

 志しに技術がまったく追い付いていなかった。

 目指す高みと腕前の落差はエベレストとマリアナ海溝くらいあるんじゃないの、とテイオーは思う。実際この前乱入してきた小学生にストレート負けを喫していたマックイーンを思えば憐れみで泣けてくる。

 ――とは言っても、相手がマックイーンとなればその涙も引っ込むというものだ。

 

「まあボクとしてはこんなんで勝っても溜飲下がらないしどうでもいいけどね~」

 

 空気が変わった、というより化けの皮が剥がれたことを察したマックイーンは切り替える。

 

「ふっ、まだ根に持ってるなんて器が知れますわね? テイオー」

 

 楽しいゲームの時間はおしまい。

 ここからは選抜レースの延長だ。

 正確には……レース後に始まった乱闘の続きである。

 

「あっはっはー、初めて負けたしアレだけハラワタが煮えくり返るってのを実感したこともなかったからねー。君の内臓ブッこ抜いて自分の内臓冷ますのに使おうかなって思っちゃったよ。というか今でも思ってる」

「物騒ですこと」

 

 剣呑な挑発をさらりと躱す。

 名家メジロ家の令嬢然とした態度にしかし、テイオーは鼻白むことなく続ける。

 

「あ、違うな。内臓ってあったかいもんな。んじゃ君の脂肪切り開いて冷却材にするよ。たっぷりあるしね?」

「ブチころがしますわよ貴様」

 

 優雅さの仮面は秒で剥がれた。

 彼女の名誉の為に言うならそれほど太っているわけではない。現時点では。

 ステイヤーとして見るなら多少肉付きが良いかな? 程度である。

 が、太りやすい自覚のあるマックイーンにその手の話を振れば怒りの沸点に達する速度は火薬の燃焼速度に匹敵する。要は地雷であった。

 その辺は心得ているのかテイオーも掘り下げず、すぐに話を逸らす。

 

「さーて次はクレーンゲームあたりで揉んであげようかなー」

「それで?」

 

 想定外の冷静な声。

 一瞬、テイオーのおちゃらけた仮面が外れる。

 

「選抜レースから間を置かず憎きわたくしを遊びに誘った理由をそろそろお聞かせ願えないかしら?」

 

 最初から気づいていたか。

 策は台無しだがその方が面白い。

 それこそどうでもいいとテイオーは険の混じる笑みを浮かべた。

 

「標的がどんな思考をしているのか日常から探ろうと思ってね。対戦ゲームって素が出るからさ、ちょうどいいと思ったんだけど――無駄だったかな?」

「目の付け所は悪くありませんわね。苦言を呈すなら目標がレースであるなら同じチームに誘うなどして走ることに限定し分析すべきだった、と申し上げますわ。要は非効率的ということですわね」

 

 なるほどとテイオーは頷く。

 そこまで効率を求めはしないがいち早く目的を達するならそれだろう。

 

「しかし、随分あっさり白状するのですね」

「腹の探り合いなんて時間の無駄だし。マックイーン隠す気ないでしょ」

「そう言う貴女も。スパイの真似事はお遊びでしかないのが丸わかりですわ。随分と気位の高いこと」

「ま、ワガハイはテイオー様であるからして? そーいうのは下々のやることでしょ」

 

 ピリピリと空気が軋んでいく。

 レース直前の緊張感に等しい張り詰めたものが二人の間に形成されていく。

 既に店内は不穏な空気に満たされ、関係のない客たちは狼狽える。

 

「お可愛いこと。負けたのだから下々の民の如く振舞ってもいいのですよ?」

「テイオー様が一度負けたくらいで誇りを捨てるわけないじゃん?」

 

 深まる笑みは既に凶器。

 見るだけで威圧に屈しそうになるほどの激情が込められている。

 

「確かにボクのプライドは傷ついた。だけど砕けてなんかない。ならそんなみっともない真似は出来ないね。ボクはボクのまま、マックイーンを討ち倒すんだから」

 

 だけど、とテイオーは威圧を緩める。

 

「ま、感謝もしてはいるよ。カイチョー以外見えてなかったけど、鼻っ柱折られて強敵はまだまだいるんだって気づけたからね」

 

 ボクにコブラツイスト仕掛けてきた寮長さんとか。

 その呟きにマックイーンの四肢が痛みを思い出す。

 両肩と股関節を破壊するロメロスペシャルの味は忘れられない。

 見ればテイオーも迂闊な呟きだったようで全身の痛みを堪えるように顔が引き攣っている。

 自爆に巻き込むなや。

 視線で訴えれば顔ごと逸らされた。

 掘り下げるとお互い苦しいだけなので話を戻そう。

 

「それは重畳。新入生で一番見所があるのが貴女なんですもの。早々に潰れられては面白くありませんわ」

「あっはは。精々今の内に見下しときなよ。すぐに立場は逆転するんだから」

「ふふ、なら餞別に貴女の弱点を並べ立てた分析ノートでも進呈しようかしら?」

「これ以上君から塩をもらったら塩分中毒で死んじゃうよ。あ、それが目的?」

 

 狡いよね、という言葉は告げられなかった。

 外ならぬマックイーンの放った殺気に止められる。

 プライドが高いのはお互い様。挑発の許容量は多くない。

 マックイーンもテイオーも、挑発合戦で十二分に温まっていた。

 

「そろそろ殴りかかってくるかと思いましたのに」

「殴り倒すよりずっと屈辱を与える方法があるからね」

「あらあら。貴女にそれが出来まして?」

「ボクの心を折りたいなら百倍の敗北を用意しなよ」

「へえ――わたくしにそれが出来ないとでも」

「絶対に。無理だね」

 

 決定的な亀裂が入る。

 

 

「――ブッ殺す」

「――ブチ泣かす」

 

 

 圧し止めていた殺気を解放する。

 嵐を幻視するそれに、周囲の客たちは悲鳴すら上げられない。

 到底ジュニアクラス未満の、デビュー前のウマ娘が出す殺気ではなかった。

 

「……ふっ」

「……へっ」

「ふっふっふ」

「へっへっへ」

 

 噴き上がる殺気の衝突に人間の女子高生は人類最速に迫るスプリントで逃走し小学生のウマ娘はプロもかくやの逃げ足を発揮した。

 そして二人は営業妨害であるという至極もっともな理由でゲームセンターを閉め出されたのであった。

 

 

 

 

 

「初手出禁にしないとは府中のゲーセンはお優しいですわね……」

「君んとこの地元どんな治安してんだよ」

「どこのゲーセンも50名以上出禁の名が貼り出されてますわね」

「豊島区ってヨハネスブルクだっけ……?」

 

 二十三区内って治安悪いなと呟く。

 言いがかりである。

 

「ゲーセンにチンパンジーがいるのは当然では?」

「チンパン筆頭が言ってもさぁ」

 

 ちなみに今追い出されたゲーセンで台パンした回数は軽く二ケタを超える。

 対ウマ娘用の防御装甲が施されてなければ今頃壊滅していたであろう。

 

「んでどーする? 他のゲーセンでダンスゲーでもする?」

「うーん」

「おろ? ダンスゲーもダメ?」

「いえ、単純に反射神経を問うだけのゲームなら見栄なしに楽勝ですけれど……正直言いますと、わたくしリズムゲーの楽しさがわからないんですのよね……」

 

 合理性突き詰めて気持ち悪い動きしそうだな。

 そう思ったテイオーは撤回することを決める。

 殺したいとは思うけどキモい姿を見たいわけじゃない。

 というか仮にも人間の姿なのに虫っぽい動きされたくない。

 夢に出そう。

 

「まー楽しめないんじゃやる意味ないし他のにしよっか」

「じゃあK●F'94で」

「ウッソだろお前」

「わたくしの龍●乱舞が猛威を振るいますわよ」

「ス●5のコマンドも入れらんないヤツがS●Kの超必入れられると思ってんの……?」

「勝者とは! 勇気ある者のことを言うのですわ!」

「勇気と無謀は違うよ自分の足元見ようよ」

 

 なんで自ら負けに行こうとしてんのコイツ。

 破滅願望でもあんのかとテイオーは戦慄する。

 ついさっきの惨敗から何も学んでない。

 

「もうやめようマックイーン……小学生に3タテくらう君に格ゲーは無理だよ……!」

「敗北とは諦めた者にのみ訪れるのですわ。諦めなければそれは真の敗北ではないのです!」

「くそうかっこいい! でもそれで見れるのクッソかっこわるくオギャるチンパンなんだよなぁ!」

 

 仕留めたい相手をどうにか負けから遠ざけようとするというわけのわからない事態にテイオーは歯噛みする。この女心が強すぎて誘導も出来ねえ。

 意識を刈り取って抱えて帰るしかないかと覚悟を決めた時、新たな声が割り込んだ。

 

「見つけたよ! メジロマックイーン!」

 

 聞き覚えの無い声にマックイーンは首を傾げる。

 その動作で意識を奪おうと繰り出されたテイオーの手刀が空ぶったが気づかなかった。

 見れば小柄なテイオーよりさらに小柄なウマ娘。トレセン学園の制服を着ていなければ小学生かと思っただろう。マックイーン自身中学一年生にして成人女性の平均値を超える恵まれた体格をしている故に猶更だった。

 そんな栗毛の少女は、好戦的な表情でマックイーンを睨んでいる。

 

「んあ? マヤノじゃん」

「どなたかしら? レースで走った相手は……あと30分くらいは憶えていますけれど」

「皮肉かマジか判断に困るネタはやめなよ」

「はっ倒すぞテメエ。んんっ、それで、どちら様でしょう?」

「ボクのルームメイトの子だよ。マヤノトップガン」

 

 名を言われてもピンと来ない。

 間違いなく今まで接点がないウマ娘である。

 だが向こうはマックイーンが知ろうが知るまいが関係ないらしい。

 テイオーの言に名乗りは要らないと判断したのか、本題を切り出した。

 

「勝負だよマックイーン! マヤがブッ倒してあげちゃうんだから!」

 

 いきなり勝負を挑まれるような覚えは――数えきれないほどあるが、はいそうですかと頷くほどマックイーンはお人よしではない。

 

「ふむ? どのような理由で挑まれるのかお聞きしても構いませんかしら?」

「マヤのお友達の敵討ち!」

 

 単純明快にして断れない類のものだった。

 

「選抜レースであなたに泣かされた子、何人もマヤのお友達なんだよね。あの子たちは自分でブッ倒すって気が狂ったみたいにトレーニングしてるけど、それじゃマヤの気が済まない」

「おおっと? マヤノー、それなら直接負けたボクの方が優先権あるんじゃないの~?」

「ごめんねテイオーちゃん。マヤ、ガマン嫌いなの」

 

 幼げな顔立ちに反してその眼は肉食獣が如く吊り上がる。

 

「マヤが先にブッ倒す。負かした相手をこきおろすのが気にくわないからブッ倒す。自分が一番だって顔してるのがムカつくからブッ倒す。そして」

 

 放たれるのは殺気。併走なんぞでは絶対に生じない真剣勝負の気配。

 

「勝つのはマヤだって『()()()()()』」

 

 肌を粟立たせるプレッシャーを放つ小さなウマ娘に、マックイーンは頬を吊り上げた。

 

「言われてるねぇマックイーン」

「宿敵を庇うくらいしてもいいのですよテイオー?」

「いんやぁ? ボクもその通りだと思ってるし」

 

 マヤノとボクを入れ替えればね、と笑う少女に皮肉気に笑い返す。

 

「おまえを倒すのはボクだー、先にボクを倒してみろー、とか言えませんの」

「いやいや。テイオー様は熱血ってタイプじゃないでしょ」

 

 素質はあるとマックイーンは思う。

 それはさておき、マックイーンには勝負に付き合う義理も筋も無い。

 選抜レースは参加者のみの因縁。友人であろうと競わなかった相手にどうこう言う権利など無いのだ。

 

「ですが」

 

 一歩。マヤノに歩み寄る。

 

「頼まれたわけでもなく自力で抗おうとする友の姿を見た上で己が独善を良しとするその性根、気に入りましたわ」

 

 20㎝近い身長差に見下ろす形で視線を合わせる。

 気圧されるでもなく睨み返すその眼がマックイーンには心地よかった。

 一気にテンションが上がるのを自覚する。こいつは学友などではない。

 

「誰よりも我侭で! 誰よりも負けず嫌い! それが一流のアスリートの条件!」

 

 決して楽には勝てないだろう。

 それが何よりも嬉しかった。

 こいつは、敵だ。

 

「わたくしが屠るに相応しい相手と認めましょう」

 

 ああ楽しみだ。

 どのような勝負でも受けよう。

 いかなる形式でも打ち砕こう。

 さあ愛しき強敵よ、どんなダンスを踊ろうか?

 花のかんばせを喜悦に歪め、マックイーンは小さな猛獣に語り掛ける。

 

「それで? どう勝負しますの?」

「ふっ……」

 

 物質化したかのような威圧を受けながらマヤノは微塵もたじろがない。

 堂々と、決闘の形を宣言する。

 

「授業の模擬戦で当たったら勝負だよ!」

 

 タンブルウィードが転がりそうな乾いた風が吹いた。

 おかしい。そんな季節ではない。

 いやちょっと待って。

 模擬戦? 模擬レース?

 しかも当たったら? 全校生徒2000人を超えるトレセン学園で?

 マックイーンだけでなくテイオーも「何言ってんだこいつ」という顔になる。

 

「……え? いやそれいつになるかわからない……っていうかコースが空いてる時に勝手に使うとか模擬レースにしても順番代わってもらうとかすれば……」

「ずるはいけないからね!」

「そ、それ以外にも河川敷の野良レース場とか、市民公園のオールウェザーコースならレンタルしてますわよ……?」

「そうなの? 知らなかった!」

 

 東京都府中市にタンブルウィードが転がった。

 見間違いかもしれない。誰かがアフロを落としたのかもしれない――そんな現実逃避に走る程度にマックイーン達には理解しがたい反応だった。

 具体的に言うと、眩し過ぎた。

 ついさっきまでゲーセンでオラついてた自分たちの姿を否が応でも想起させる。

 ――女子中学生の姿か? これが。

 脳内で囁いてくる誰かにリバーブローをブチ込み再起動を果たすも空気は乾ききり重いままだった。

 

「……フゥー。……この子中学生ですわよね? この見識で親御さんから離して大丈夫ですの?」

「ずるいだろ。散々ヨゴレやらせといてこういうの後から出すのは」

 

 一周して心配になるマックイーンとちょっぴり闇を漏らすテイオーは視線を交わす。

 もうやめよっかこの話。続けても傷つくだけだよね。

 二人は目で語り現実を直視しないことを選んだ。

 なんにせよ、勝負しないことには話が進まないのだ。

 

「あーマヤノ? コース借りれるみたいだしそっちに移動しよっか」

「すぐ走れるの?」

「えーと、マックイーン?」

「お待ちください……近くだと、こちらですわね」

 

 スマホで調べ目的に合致する場所を見つけた一同は歩き出す。

 幸いにも徒歩圏内にその公園はあった。

 到着するとマックイーンとマヤノは更衣室に、テイオーはコース貸し出しのため事務所へと別れる。今すぐに野良レース、など想定してはいなかったがそこは花の乙女。ジャージは毎日持ち帰り洗濯するので持ち合わせてないなどということはない。

 トレセン学園指定の赤いジャージに着替えた二人に手続きを済ませたテイオーが合流する。

 マックイーンとテイオーは二言三言交わし、マヤノに視線を向けた。

 

「ちょうどコースが空いてるそうで30分借りれましたわ」

「あ、今更だけどシューズ持ってきてる?」

「シューズの貸し出しもしてたそうですわよ。というか、専用のシューズでなくば走れないそうで」

「へ?」

「こちらを」

 

 言ってテイオーから渡されたシューズをマヤノに示す。

 専用? と怪訝そうに受け取り検めると黒い蹄鉄が目に付いた。

 

「……え? なにこれ」

 

 普段使用してる蹄鉄シューズと明らかに異なるそれに思わず声が漏れる。

 

「ゴムの蹄鉄シューズですって。オールウェザーコースはゴム敷きですから、普通の蹄鉄ですと傷みが激しくなってしまうから、とか」

「えええ……そんなん知んない……」

「交換用の蹄鉄も売ってたそうですのでご自分のシューズに着けることもできますけれど、どうします?」

「うーん、時間かかるからマヤも借りてくる。30分でしょ?」

 

 慣れれば蹄鉄の交換は時間のかかるものではないが若輩である自覚のある彼女たちはおとなしくレンタルすることを選んだ。馴染んだ靴という利点は捨てがたいが時間は有限なのだ。

 見本にとテイオーが持ってきたシューズを返しマックイーンも自身に合うシューズを選択する。

 学園指定のものと比べれば些か質が落ちるように感じる使いこまれたシューズを履きストレッチがてらの腿上げついでに靴の感触を確かめる。

 

「マックイーン、どんな感じ?」

「重さは普通の蹄鉄と変わらず、地面を踏んだ感覚が微妙に異なる。といったところかしら。走ってみないことには断言しかねますわね」

「いや踏み込むとだいぶ違うよコレ」

 

 アップを終えたマヤノがジャージの下を脱ぎショートパンツ姿になりながら声をかけてくる。

 

「違うというと?」

「なんだろ、反発が弱いっていうか、やっぱり鉄じゃないってわかっちゃう」

 

 経験が浅くともそこはウマ娘。走りに関する感覚は繊細だった。

 これは走りながらイメージを修正するのが大変かもしれない。実際には走らないテイオーも慣れぬ靴で挑まねばならないことに眉を顰める。

 しかしマックイーンとマヤノは違った。

 彼女らは走る、走らねばならない。それなら不平不満を言うより足に馴染ませる方が優先される。同じ条件ならテイオーもそうしていただろう。ウマ娘にとって走るということはそれだけ重要なのだ。

 

「さて、コースは一周1000m、坂路は無し、ハロン棒も無し、と」

 

 人間用と比べれば三倍近くはあるけれど、トレセン学園で見慣れたコースと比べるとやはり短い。おおよそ半分の距離。ローカルシリーズのレース場がこれくらいだと聞いたことがあるマックイーンだが、現地に足を運んだことがない故に今一ピンと来ない。

 同じように知らないのかたったひと月でトレセン学園のコースに慣れてしまったのか、マヤノも物珍し気にコースを眺めている。

 

「1000かぁ。何周もするってのはきびしいかなー」

「長距離想定ですの?」

 

 うん、とマヤノは頷く。

 

「得意距離は中長距離。マイル走はあんま好きじゃないかなー」

「ふぅん……」

 

 マヤノの四肢に視線を向ける。細い。見てわかるほどの筋肉はついてない。

 視覚情報だけで得られるものは少ないが、それでもスプリンターではないように見受けられる。確かにこの細さなら中長距離が適正というのは嘘ではなさそうだ。

 だとすればマックイーンと同じ適正。

 勝負は単純な地力のぶつかり合いになる。

 マックイーンに油断は無い。

 一挙一動に嘘がないか鵜の目鷹の目で確かめる。

 勝負事にブラフはつきもの。騙される方が悪いのだ。

 ちらとテイオーの表情も窺う。

 友人のように振舞っているがマヤノが勝つことは望んでいないだろう。

 マックイーンを倒すのはボクだと宣言した以上他に負ける姿など見たくない筈。

 入学からひと月程度で距離適性がはっきりしているのは少数派だが、テイオーは彼女のことをどこまで理解しているのだろうか? テイオーの態度からマヤノが嘘を言っている、勝負を有利に運ぼうとしているといった感じは見られない。

 なら純粋にステイヤー対決?

 そう判断していいのだろうか……?

 

「うーん、でも、オールウェザーか……」

 

 思考は呟きに遮られる。

 

「どうしまして?」

「マックイーンはこのコース、走ったことある?」

「いえ、この公園に来たのも初めてですし……オールウェザーは知識としては知っていても実際に走ったことはありませんわね」

「マヤもなんだよね。うーん……ぶっつけで長距離走るの危なくない?」

「……確かに」

 

 ウマ娘の脚は強靭であれどガラスに例えられることもある。

 不慣れなコースで全力を出すなど無謀もいいところだ。

 適性距離と実際に走り切れるかというのは別の話。

 特にオールウェザー用の硬質ゴムの蹄鉄シューズなんて初めて存在を知った。

 ウォーミングアップ程度では慣れれるのか不安が残る。

 

「短距離にしよっか。1200……いや1000で」

「妥当、でしょうね」

 

 互いに適性外の勝負。

 不満はあれど不安なまま走るよりはマシだろう。

 1000m。

 ウマ娘の脚なら一分少々で走り抜けれる距離。

 リスクを極力減らす妥協点としては悪くない。

 

「一周1000だっけ? じゃあボクはスタート位置でゴール係でいいか」

 

 テイオーの言に二人揃って首肯する。

 スタートラインに並ぶ、それだけで心臓が高鳴った。

 日常からレースへ。

 身体機能が切り替えられていくのを自覚する。

 マックイーンからは笑顔が消え、マヤノは笑みを深めていく。

 まだか。ゲートも無いのに窮屈で仕方ない。

 まだか。全力稼動に備えた身体が熱を以って吠え猛る。

 まだか。足が疼いて爆発してしまいそうだ。

 まだか――

 

「スタート!」

 

 テイオーの手が振り上げられるのと二人の脚が踏み出すのはどちらが早かったのか。

 そんな無意味な思考を誰もが切り捨てた。

 何故なら。

 

「な――にィッ!?」

 

 スタート直後にマヤノトップガンがメジロマックイーンを突き離したからだ。

 驚愕が動揺の呼び水となる。マックイーンは瞬時に混乱に陥った。

 先行、差し、追い込み、いずれのスタートでもない。

 ならば逃げ? それにしたって適性外じゃ破滅的な加速――

 

「ま、さか……!?」

 

 このこなれた加速……!

 適性外? そんなわけあるか!

 まるっきりスプリンターの加速じゃないか!

 公平なんかじゃなかった。

 自分の適性距離に引き込んだ……!

 短距離選手だった? 否、体格は嘘をつかない。

 間違いなく中長距離適性の体だった。

 それが意味する答えは一つ。

 体格からは見抜けない天性の才能。

 かつて『怪物』と称えられた一人のウマ娘だけが持っていたモノ。

 初代『怪物』タケシバオーが誇った圧倒的才能……!

 普通ならあり得ない全距離適性――!

 

「オールラウンダー……ッ!」

「あったりーッ!」

 

 嘘である。

 マヤノトップガンの適性はマックイーンと同じ中長距離型。

 ただ得意とは言えずとも短距離も出来ないわけではないという程度の話。

 マックイーンが体格を見て適性を測ったようにマヤノもマックイーンの体格、重心移動、動作の偏りから彼女の距離適性を断定した。

 マヤノトップガンの誇る天才性。

 それは僅かな情報から答えを組み上げる超速理解。

 マックイーンの極端な長距離適性を見抜いたマヤノは同時に短距離の適性が完全に無いことに気づいた。故に本来なら同じ中長距離型として走るのだが、自分はマックイーンほど極端に短距離が苦手ではないことを逆手に取りあえての短距離勝負に持ち込んだのだ。得意分野ではなく苦手分野での叩き合い。おまけに相手の適性まで見誤らせる。負けた後の言い訳の道を作りながらそれを潰す策も用意しているという徹底した『心を圧し折る』ための準備。

 見て測る、という能力一点のみが明確に勝るのを利用した戦術。

 マヤノトップガンはメジロマックイーンの流儀に乗った上で見事に出し抜いたのである。

 

 ――スタートから10秒。

 

 もう200m以上走っただろうか。

 初めて走るコースで目安となるハロン棒も無いから判断がつかない。

 作戦通りだとマヤノはほくそ笑む。

 出し抜かれたと、適性距離だったと誤認させた。

 しかも史上ただ一人、あの『シンザン』も『シンボリルドルフ』も至れなかった本物の『天才』タケシバオーと同質であると思い込ませた。

 マックイーンは間違いなく掛かる。

 スタミナの配分を誤り走りそのものも崩壊する。

 この短距離では修正など間に合うどころか試す暇もない。

 まだレースは半分以上残っているが勝ちは決まったも同然だ。

 

 ――スタートから15秒――

 

 だが、マヤノトップガンは知らなかった。

 300m地点で異音が響く。

 反射的に耳を後ろに向けると――

 

 

 

「ぶっ殺す」

 

 

 

 真後ろから届かない筈の声がした。

 

「え」

 

 マヤノトップガンは表層的な怒りだけで勝負を挑んだ。

 対戦相手の性格を知り尽くしていなかった。

 だからメジロマックイーンはこの程度で折れないと気づかなかった。

 

「なっ、マックイーン!?」

「逃がしませんわよクソガキィッ!!」

 

 マヤノの観察眼で見た限りマックイーンにこの距離で詰めるほどの加速力は無い。掛かっているにしても速過ぎる。これじゃ結果的にではなく、狙って破滅へ向けて走っているようなものだ。

 狙って?

 意図的に?

 そんなことをする意味がどこに、

 

「マック、イーン……!」

 

 わかってしまった。

 理解してしまった。

 自覚のある暴走。意図的な自殺行為。

 これは壊滅的な短距離適性を覆すマックイーンの戦術だ。

 普通なら間に合わぬ加速を強引に間に合わせる自爆戦法。

 だけど暴走であることに変わりはない。

 たとえ計算づくだとしても……!

 

「アクセルを踏みぬけば、加速しっぱなしですわよねぇ!!」

「は、あ――ッ!?」

 

 なんだその脳筋走法は。

 戦術でも理論でもなんでもない。

 最初から最後までスパートをかけるなんて丸っきり子供の走り方じゃないか。

 短距離と言ってもヒトの短距離走とはわけが違うのに。

 たった1000mとはいえそんな走りでスタミナがもつわけがない。

 だが今はその子供の走りに追い詰められ恐怖している。

 身長差がそれなりにあり、かつ後方にいる相手の方が大きいのだからスリップストリーム効果も十全ではなく意味が薄い。なのに背中に張り付かれる気持ち悪さは理屈を超えた恐怖をマヤノトップガンにもたらしていた。

 逃げなきゃ、位置を変えなきゃ、少しでもスタミナを温存させたら抜かれてしまう。

 恐怖は焦りを生み焦りは体力を豪快に削り取っていく。

 加速度的にスタミナが失われていく感覚がさらなる恐怖を巻き起こす。

 典型的な悪循環に囚われたマヤノトップガンに本来の走りは出来なかった。

 

「でも……ッ」

 

 それは同じ条件のはずだ。

 スタートで騙されたと思い込まされたマックイーンだって崩れてなければおかしい。

 頭に血が上ってろくに走れなくなるはず。

 なのに何故策通りに走り出した自分に追いつけているのだ?

 マックイーンは最初から騙されてなかった?

 冷静さを欠片も奪えなかった?

 そこまで地力の差がある?

 認めたくない答えにマヤノトップガンの走りはさらに乱れる。

 しかし、追いつめているマックイーンは全く別のことを考えていた。

 

(無邪気を装って騙し討ちとはやってくれやがりましたわねこのお排泄物がああああッ!!)

 

 煮えくり返っていた。

 

(負かす。泣かす。虹色の乙女の尊厳まき散らすまで追いつめたるわダボがぁッ!!)

 

 大噴火していた。

 

(こちとらブッチギレてんですわよテッペンまでなぁ!)

 

 マヤノトップガンはマックイーンという女を見誤っていた。

 煽り散らす悪辣なウマ娘は冷静だからこそ罵倒できるのだと勘違いしていた。

 煽る奴はその時点で相当に頭に血が上っている。

 煽られた方と同じくらい頭が沸いていなければ罵詈雑言なんて出やしない。

 つまり、メジロマックイーンというウマ娘は沸騰した状態が平常なのだ。

 騙される奴が悪いと言っていたにも関わらずキレ散らかす。

 都合の悪いことは忘れた。

 なので怒る。怒って思考が狭められる。

 だからどうした。

 いつもの戦闘状態に入っただけだ。

 激怒に染まった眼で隙を見つけろ。

 沸騰した頭で最適解を導き出せ。

 興奮を燃料に心臓を回せ。

 敵を倒すことに専心しろ。

 その状態で勝ち筋を見出す者こそが勝者である。

 十数年、体と魂にそうあれかしと刻み続けてきたウマ娘。

 メジロマックイーンにとってマヤノが嵌めた罠こそが主戦場なのである。

 

「う――あ、ああ……!」

 

 走行音がずれる。

 優れたウマ娘の耳は僅かな位置のズレさえ正確に聞き取った。

 今何mを走っているのか。あと何m残っているのか。

 

「あ、あ、ああ、ああああ!」

 

 勝負を仕掛けてきた。

 並ぶ、抜きに来る、追い抜かれてしまう。

 

「い、や、だあああああッ!」

 

 叫んでも足が重く速度を上げられない。

 どれだけ焦っても遅くなる一方だった。

 元々適正外、ほとんど無かった余裕はマックイーンに全て削られた。

 負ける。負けてしまう。勝ちたいのに負けちゃう。

 息が苦しい。涙が溢れる。ゴールラインさえ見失った。

 もうフォームもバラバラで走っているのか歩いているのかもわからない。

 それでもとマヤノは手を伸ばす。

 見えないこの先に勝利があると思いたくて。

 だけど。

 なのに。

 

「っらああああああッ!!!」

 

 伸ばした指先をかすめたのは、何重もの罠に沈めた筈の女の背。

 一歩だけ。

 鎖を引き千切るように、その女はマヤノの先を走っている。

 

 

 ――スタートから、1分30秒が過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴール! アタマ差でマックイーンの勝ちー!」

 

 その声が聞こえたのか聞こえなかったのか、減速しないまま二人は100m以上離れていった。

 ゴール役を果たしたテイオーはストップウォッチに目を落とす。

 大したことない、はっきり遅いと言い切れるタイム。

 デビュー前だからなんて言い訳も通じないほどに情けない。

 当然だとテイオーは時計をリセットする。

 二人してあんなガッタガタの走りしてちゃまともなタイムなんて出るわけない。

 

「……」

 

 だけど、だからあのレースはつまらなかったなんて、言えない。

 胸が躍った。

 楽しかった。

 羨ましかった。

 自分も走りたかった。

 たった一分の間に目まぐるしく変わる戦況。

 ガタガタで、華麗なんて言葉とは程遠くて、いっそ惨めな二人きりのレース。

 なのにゴールする二人の姿はとても、とてもキレイで――

 

「――あは」

 

 テイオーは嗤うのを抑えられなかった。

 もし、もしボクが勝ったら、あの子は同じようにゴールできるだろうか。

 あんなにキレイな顔で走りきれるだろうか。

 それとも――歪んで、崩れて、泣いてしまうのだろうか。

 マックイーンの泣き顔。

 想像しただけで気持ち悪い笑い声が漏れそうになってしまう。

 

「ふ、ふ……ふひ」

 

 我慢できない。

 今すぐ走りたい。

 レースで叩きのめしてこれ以上ない敗北を刻み付けたい。

 だから今は、できない。

 万全の体調で、こんな野良試合でなく、大観衆の前でどんな言い訳もできない敗北を。

 たぶん、きっと、それが最高に気持ちいい勝ち方だ。 

 

「ボクと走るまで折れないでよマックイーン」

 

 最高の君を倒したい。

 瑕疵無き傲慢な君を砕きたい。

 誰にも穢されてないキレイな君を――敗北の汚濁に沈めるのは、ボクなんだから。

 ゆっくりとようやく止まった二人の下へ歩み寄る。

 暗く澱む、されど純度の高い感情をテイオーは張り付けた笑みの下に隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「げぇっほごほぉぇ」

 

 嘔吐いていた。

 マヤノに撒き散らせると心中で叫んでいた乙女の尊厳を自分が出しそうになっている。

 全力疾走した故に真っ赤に染まっていた顔が一瞬で青くなりまた赤くなる――と歩行者用信号機もかくやの有様をしばし繰り返し、マックイーンは立ち上がる。

 

「わた、わく、わたくしの、勝ちですわ。ぉぇ」

 

 まだ嘔吐いていた。

 しかしマヤノもそれを指摘するような余裕はない。

 呼吸は乱れ心臓は跳ね回り棒のようになった脚は微塵も動かせない。

 汗と涙でぐちゃぐちゃの顔を、マックイーンに向けるだけで一分以上かかった。

 

「あ、んな……ッ、めちゃ、くちゃな、走り、で――ッ」

 

 声を出すのも苦痛。

 針を吐き出すように、それでも認めがたい敗北に抗った。

 

「っふ、っふ、っふ――綺麗に、速くを望むのなら……個人競技に移られることをお勧めしますわ」

 

 スタミナの差で一足先に息を整えたマックイーンは最後の足掻きを蹴り落とす。

 

「無様であろうと遅かろうと、相手より数㎝でも先にゴールを切った者が勝つ。お忘れですの? これは、レースですのよ」

 

 どんな理屈を持ち込もうがソレが唯一絶対のルール。

 他のどんな要素も入り込めないシンプルな真実。

 だけどマヤノは受け入れられない。

 あんな惨めな走りが誰もが望む『勝利』だなんて。

 違う、あんなのマヤが欲しかったものじゃない。

 マヤは、ワタシは、もっと、もっとキラキラしたものが欲しかったのに――

 

「あなた、は……それを、受け入れてるの? そんなに速く、キレイに走れるのに……そのキラキラを、捨てられるの?」

「愚問ですわね」

 

 苦渋に満ちた言葉は切って捨てられる。

 

 

 

「貴女に勝ったわたくしが、キラキラしていないとでも?」

 

 

 

 勝ち誇る笑顔。

 あのグダグダな走りを、恥だなんて思ってない。

 誇れる勝利だと、微塵も疑っていなかった。

 ――眩しい。

 ああ、悔しい。

 悔しくて悔しくて、見返したくてたまらない。

 まだ走りたい。

 もっともっと走って、そして――

 

「――はっ」

 

 勝ちたい!

 

「はは、あはははは」

 

 いつの間にか涙は止まっていた。

 こちらを見下ろす憎ったらしい笑顔が鮮明に見える。

 その笑顔をいつかぶっ壊してやると心に決めた。

 

「マックイーンは、キラキラってよりギラギラだね」

「あら、ようやくわたくしの輝きを理解しまして? 貴女の脚と違って遅すぎますわ」

 

 火花を散らす交わされた視線が遮られる。

 お疲れー、と呑気さを装って二人の間に割って入ったのはテイオーだった。

 虚を突かれマヤノを目を丸くする。完全にいるのを忘れていた。

 思えばゴールに立っていたはずなのに見た憶えも無い。

 

「どーよ。倒し甲斐あるでしょ? マックイーン」

 

 自慢するようにテイオーは笑う。

 否、本当に自慢しているのだ。

 この女の最初の敵はボクだぞと。

 

「テイオーちゃん……」

 

 その自慢が悔しい。殴りたくなるほど憎らしい。

 ワタシがこの女のハジメテになりたかった。

 何もかもをマヤノトップガンで埋めてしまいたかった。

 それはもう叶わない。

 トウカイテイオーが最初に認められた敵なのだ。

 だから、マヤノは微笑む。

 挑発には挑発を返すのが礼儀というもの。

 

「テイオーちゃん」

 

 まだ勝負は決してない。

 誰もが彼女に挑む権利を持っている。

 そう、マックイーンは倒した相手に罵倒という再戦の招待状をばら撒いているのだ。

 泣かされた皆が次は勝つと奮起した理由が今なら理解る。

 拘りなんか捨てろと罵られた。

 数㎝差でもお前の負けだとこき下ろされた。

 この天才的頭脳を、回転が遅いと嘲笑われた。

 

 ――なんてステキな招待状! こんなの絶対断れない!

 

 ああハジメテは奪われた。

 出遅れて間に合わなかった。

 だけどそれだけだよねテイオーちゃん?

 自分だけだと誤解してるテイオーに、笑顔という名の凶器を突き付ける。

 

「マヤが盗っちゃったらゴメンね?」

 

 剥がれ落ちる張り付いた笑み。

 無表情になったテイオーの脇を通り過ぎ、マヤノはマックイーンに手を差し出した。

 握手の構え。それが宣戦布告だとマックイーンは瞬時に理解する。

 宣戦布告は一方通行。拒否も辞退も許されない。

 だからこそ面白い。それ故に気に入った。

 差し出された手を、しっかりと掴み返す。

 

 

 

「絶対実家空爆してやるから対空砲用意しときなよクソステイヤー!!」

「二度と夜道歩けなくなりたいらしいな小娘??」

 

 

 

 握手と共に交わされたのは暗殺宣言だった。

 

 





 ウマ娘にゲーミングお嬢様のエッセンスを加えてみました。
 どちらも根底にスポ根要素があるので相性良さそうだな、と感じまして。
 年の瀬の暇つぶしにでもなれれば幸いです。
 猫井でした。




~登場人物紹介~

・メジロマックイーン

メジロ家の誇りが変な方に突き抜けたメンタルがゲーセンのチンパン並なお嬢様。
勝者は敗者を踏みにじるのが礼儀と心の底から信じている。
ご実家の方々は育て方を間違えたと頭を抱え同期のウマ娘たちは修羅に堕ちた。
スタイルは本来のマックイーンと異なりゲームで言うとデバッファー。スタミナがクソみたいにあるナイスネイチャ。強制的に自分の土俵に引きずり込んでスタミナ勝負に持ち込む……固有結界かな?


・トウカイテイオー

選抜レースを流して勝つつもりでいたらブチ抜かれ本気を出さなかったことを見抜かれて、ひと六倍煽り倒された。
邪知暴虐なるマックイーンの抹殺を決意する。
多分その過程で性癖がひん曲がった。


・マヤノトップガン

マックイーンの傍若無人な振る舞いに正義感を燃やし打倒しようとした。
惜敗しAIM-54フェニックスミサイルをブチ込むことを誓う。
レース後は遊びに行く仲だが敵認定のままなためマックイーンに「ちゃん」はつけない。


・シンボリルドルフ

入学初日に勝負を挑まれ本気で叩き潰し24バ身差で圧勝した大人げない生徒会長。
泣き喚くマックイーンを優しく煽り倒した。
テイオーと似たような性癖をしているがこちらは多分素。


・エアグルーヴ

入学初日から問題を起こしまくるマックイーンのせいで胃薬が手放せなくなった常識人の副会長。
後日胃壁は崩壊することとなる。
SMは好きじゃないし理解も無いが会長が望むなら受け入れる派。


・ナリタブライアン

おもしれー女が来たことを喜んだレースジャンキーの副会長。
だがその対処でエアグルーヴが壊れたのを見てドン引き。
ドン引いているがエアグルーヴと違って頭チンパンの適性はかなり高い。

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