飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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皆様、最近外がどんどん寒くなってきております。私はところてんなので大丈夫ですが、皆様はどうか体調には気をつけてください。


十一話 十分に発達した才能は、インチキと見分けがつかない

「...シッッ!!」

 

「ハァッッ!!」

 

剣撃が交差する。

振り向きざまに振り下ろした俺の剣は、彼の持つ魔剣『グラム』によって受け止められた。

俺達はしばらくの間鍔迫り合いを続ける。すると彼の魔剣が突然光り始めた。

アレだ。またアレが来る。

俺はその兆候を感じるとすぐさま後ろへと飛ぶ。

ここで剣を飛ばせるようになれば良いのだが、イメージが足りないのか思うように剣の創造ができない。

すると、彼の魔剣に魔力が十分に充填されたのか、魔剣が蒼い光を放つ。そして、

 

「いくよ!『ルーンオブセイバー』!!」

 

その言葉と共に放たれた剣撃は、地面を削り取るようにして俺に迫ってくる。

俺は全身へのパワーを全開にしてその一撃を受け止めるが、衝撃を完全に殺すことが出来ず、俺の体は徐々に後ろへと下がっていく。

 

「ッッ!!ぐぅぅぅぅぅッッ!!」

 

体の節々からは痛みを感じ、一撃を受け止めている剣には少しずつヒビが入っていく。このままではまずい。

 

「どうしたんだい!君の力はその程度か!」

「言ってろ!」

 

俺は剣を横に構え、相手の剣撃を滑らせるようにして躱すと、今まで持っていた剣を捨て、新しい剣を創造し、彼の元へと進む。

 

「年下には手加減するのが常識では!?」

「すまないね!僕としては後輩の伸びしろに期待しているんだけどな!」

「そいつはどうも!」

 

いくつもの剣撃を交わし、壊れた剣は新しく想像し、俺は彼と剣を交える。

しかし、パワーは強化しているため互角に渡り合えているのだが、片腕が無いため俺は徐々に追い込まれていく。

そして、

 

「せいッッ!」

「がはぁッッ!」

 

胴に魔剣が叩き込まれ、俺の体は宙を舞う。

 

「...ふぅっ、一撃身体に当てたから今回も僕の勝ちだね。一応威力は弱めたんだけど、大丈夫?」

 

そう言って彼、ミツルギさんは戦いの構えを解き、駆け寄って来てくれる。

 

「ありがとうございます。ミツラギさん」

「僕の名前はミツルギだ」

「失礼、噛みました」

「違う、わざとだ」

「....噛みまみた」

「わざとじゃない!?」

 

そんなコントを交わしつつ、俺はミツルギさんの手を借りて起こしてもらう。

 

「いつも鍛錬に付き合ってくれてありがとうございます。ミツルギさん」

「いやいや、僕だって色々と勉強になるよ。王都に居るのはあと三日間だけだけど、その間だったらいつでも鍛錬相手になるよ」

「始めは急にアイリス...様の頭を撫でるから、非常識な奴だと思っていたんですが、ミツルギさんって良い人ですよね」

「その話はやめてくれ!もう十分に反省してるから!」

「それなら良いですけど」

 

ミツルギさんは、この国に貢献している人達を集めた式典のために城にやって来た。

初日の謁見でアイリスの頭を撫でたため、クレアによってその場で死刑を言い渡されたことがあったのだ。

なんとかその場は俺が治めたのだが、それ以来ミツルギさんはクレアとアイリスに顔を合わせるのがトラウマになっていた。

まあ、おかげで俺はこの人と仲良くなったわけだが。

あの時のクレアの顔はすごかった。あの顔を見れば、般若だって裸足で逃げ出しただろう。

するとその時、城の隣に建てられた高台の鐘が鳴る。

 

「あっ、そろそろ時間ですね。俺、アイリス……様のところに行かないと」

 

そう言って、俺はその前にシャワーを浴びるため、城へと戻ろうとする。

すると、何やらミツルギさんから視線を感じる。視線の先は、俺の右肩に注がれていた。

 

「俺の腕が気になりますか?」

「あー、うん、気にしているんだったらすまない。たしか君がそんな腕になった原因って、()()()()って言う邪神のせいなんだろう?」

「えぇ、まぁ、直接的な原因ではありませんけど、大体そうです。それが何か?」

「いや、君をこんな腕にしたダメガミってやつはどれだけ凶悪な邪神なのかと思ってね。セイヤくん、もし君がそのダメガミと戦うことになったとしたら、遠慮なく僕を呼ぶと良い。必ず、君の助けになろう」

 

そんなことを言って、彼はニコリと微笑む。

……なんだろう、常識的に考えればソードマスターのミツルギさんならすごく頼もしいはずなのに、なぜだか全く役に立つ気がしない。

 

「まあ、そうなったら呼びます」

「うん、じゃあ僕は王都のギルドでパーティメンバーを探さないといけないから。また明日」

「はい、今日はありがとうございました。ミツルギボッチさん」

「ミツルギキョウヤだッ!事実だけどその不名誉なあだ名はやめてくれ!」

 

 

 

 

ミツルギさんと別れ、シャワーで汗を流した俺は、約束された時間となったので、俺はアイリスの言っていた中庭へと向かう。

 

「あっ、おはようございます。セイヤさん」

「おはよう、アイリス」

 

そこには、日傘と共に椅子やテーブルが備えつけられており、テーブルの上にはボードゲームが置かれていた。

アイリスはその椅子に座り、ボードゲームのコマを設置していた。

 

「今日は習い事がお休みなので、このゲームの相手をして欲しいのです」

 

アイリスは、そう言って微笑む。

俺の主観だが、アイリスはここ三週間で俺に対してのみ遠慮がなくなった気がする。良い兆候だと思うが。

俺は椅子に座り、アイリスの駒並べを手伝う。

 

「このボードゲーム、セイヤさんはやったことがあるのですか?」

「いや、無いけど、ルールブック的なものはある?」

「はい、ありますよ」

 

するとアイリスは、現代の法律の本くらいはありそうな分厚い本を手渡してくる。

 

「……何これ?辞書?」

「違います。ルールブックです」

 

……まあいいや、そこら辺のルールはやりながらルールブックを参考に覚えていこう。

 

「じゃあ、やるか。俺相手じゃ歯応えないかもしれないけどな?」

「ッ!はい!城の人達は私に気を遣って誰も相手にしてくれないんです!私が負けても全然いいので、全力で来てください!よろしくお願いします!」

「ああ、よろしく」

 

俺は、盤上の駒を手に取ると……

 

 

 

 

「ーーあの、アイリスさん?そろそろ暗くなってきたし、今日はもう終わりにしませんか?」

「いやです!こんなの絶対おかしいです!あなた、絶対このゲームを知っていましたよね!」

「いや、本当に知らなかったんだって!というか、負けても良いって言ってたじゃん!?面倒臭いな!!」

「今王族に面倒臭いって言いましたね!このインチキ男!」

「インチキなんてしてないっての!」

 

現在、勝負は10対0。何故か俺が全勝していた。いやまあ、勝とうと頑張ったわけだし、こんな結果もありえなくはないんだけどさ。

すると、ゲーム盤を前に言い争っている俺達の元に、レインがやってくる。

 

「アイリス様、セイヤ様、夕食の準備が整いました……えっと、どういう状況ですか?」

「ボードゲームに俺が勝ってそれにアイリスが駄々をこねているだけです。ほらアイリス、夕食の時間らしいから早く行こうぜ」

「このまま勝ち逃げする気ですか!ズルい、もう一度です!レインからも言ってやって!ねぇ、お願い!」

「えっ!ええ!?」

 

レインは突然のアイリスのワガママに、どうしていいか分からずにオロオロしていた。

 

ーー次の日

 

「昨日は負けましたが、今日は負けません!さぁ、勝負です!」

「いや、待ってくれ」

 

俺はアイリスの言葉に待ったをかける。

その理由は、テーブルに広げられているボードゲームの駒にあった。

 

「俺の駒、いくつか足りなくないか?」

「....気のせいです」

「おい、顔逸らすな」

 

俺がそうツッコミを入れると、アイリスはバツが悪そうにし始める。

 

「だって、この作戦なら勝てるってクレアが...」

「発案者はお前か!」

 

俺は、アイリスの隣に立っているクレアに目を向ける。

いや、作戦でもないけどね?普通にイカサマだけどね?

 

「おい、文句が多いぞ。さっさとやれ」

「イカサマってわかってて大真面目にやるバカがいるわけないだろうが!こんなのは無効だろ!」

 

俺は机をバシバシと叩き、抵抗の意を見せる。

 

「無礼者!これはイカサマではない!我がシンフォニア家に代々伝わる伝説の作戦だ!分かったらさっさと始めろ!」

 

コイツゴリ押しする気だ!

 

「チクショウ!分かったよ!もうヤケクソだ!」

 

勝負!

 

 

 

「ねぇなんで!どうして勝てないの!」

「おいキサマ!やっぱりどこかでイカサマをしてるだろう!」

「してねぇ!俺は何もしてねぇ!」

 

現在、勝負は20対0、またもや俺が全勝していた。

途中からはクレアがアイリスに助言をしだし、実質二人を相手にしているようなものだったのだが、それでも俺が負けることはなかった。

意地になってやった俺も悪いのだが、いかんせん勝ちが続き過ぎじゃないだろうか。

レインには早く来てこの二人の仲裁をしてほしい所だ。

 

 

 

 

「あのーハイデルさん」

「なんでしょうか、レインさん」

「アイリス様に夕食のお知らせをする仕事、嫌な予感がするので代わっていただいても……」

「今日の時給を半分にしてもいいなら、私がやりましょう」

「行きます」

 

 

 

 

ーーそのまた次の日

 

「さて、セイヤくん。今日は私が相手をしよう」

「待って下さい」

 

俺の目の前には、このベルゼルグ王国が誇る国王、ベルゼルグ・ワイルド・ソード・エイムズの姿があった。

 

「どうした?私がこの場にいるのがそんなにおかしいか?」

「いや、まあそこもなんですけど、そこじゃないんですよ」

 

俺はそう言い、ゲームボードに置いてある俺の駒を指さす。

 

「昨日よりも減ってますよね。明らかに」

 

正確に言えば、俺の駒はアークウィザード、アークプリースト、クルセイダー、それと冒険者の4つしかなかったのだ。

 

「ああ、なんだそのことか。実は昨日誤ってメイドの一人が君の持っている駒以外の駒を壊してしまったんだ。仕方ないね。じゃ、始めようか」

 

そうはならんやろ。

そうツッコミを入れたいが、今回ばかりは相手が悪すぎる。そんなことを言ったら本気で首が飛ぶ。手を抜いて負けたいが、そんなことは周りのギャラリーが見逃してくれないだろう。

 

「……分かりました。やります」

 

刮目せよ。これが俺の生き様だ!

 

「「勝負!!」」

 

 

 

「あの……」

「……認めたくないものだな、どうやら私は気がつかぬ間に随分と老いてしまったらしい。獅子王と呼ばれた私がこの体たらく……なんと情けないことか……」

 

俺に負けた国王は、なにか意味深なことを呟きながら悟っていた。

 

「おいキサマ!どうしてくれるんだ!お前のせいで我らの王がご自身の半生を振り返り始めたぞ!」

「しかも目に一切の覇気が感じられない!」

「いや俺にどうしろと」

 

俺は国王の部下に責められるが、そんなことを言われても俺にはどうすることもできない。

すると国王はヨロヨロと立ち上がり、どこかへと歩いていく。

 

「あの、一体何処へ?」

「……今からジャティスに政権の交代をーー

「止めろオオオオオオオオオ!!!」

 

俺のその魂の叫びは、城中に響き渡ったという。




時系列に誤りがないか、私大変ビビッております。違っていたら教えてください。

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