飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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自分の小説を見返したら、矛盾に気づいて慌てて直した男!ス○イ・ダーマ!


十三話 夜中の部屋で二人っきり、何も起こるはずは無い

辺りはすでに闇に包まれていた。

太陽は沈み、満月が爛々と空の真ん中で輝いている。

自分の部屋には時計がないため正確な時間はわからないが、おそらく正午は過ぎているだろう。

そんな時間帯で俺はというとーー

 

「剣製による剣の定義は結構曖昧なんだな。この資料に書いてある大概の剣なら作れるし、ナイフとかも作れるのか....。他の道具は簡単な物は作れるけど、仕組みが理解できない物は作れないし、作れたとしても時間がかかるから戦闘には使えない。今更どうしようもないけど、技術の授業をもっと真面目に受けておくべきだったな....」

 

ベッドへと座り、隣に積まれた資料とにらめっこをしながらうんうんと唸っていた。

足元にはレジャーシートのような物を敷き、その上には多種多様な武器が乱雑に積まれている。これらは全て、俺が剣製によって作り出した物だ。

そして俺は、俺の手の中に淡い光と共に作り出された新しい剣を積まれた武器の上に投げるようにして置く。

 

「せめてアイツみたいに、空中に剣が出せるようになれたら戦闘の幅が広がるのにな....」

 

俺よりもよっぽど剣製の能力を上手く使えていたアイツのことを思い出し、思わずため息が出てしまう。

しかしこのチート、自分の思っていたよりも謎が多い。

()()なのだから言葉通り剣しか出せないのかと思いきや、他の道具も出せるし、アイツが空中にそれを出現させられたのも謎だ。

どちらかというと、このチートは単一の物ではなく、いくつかの能力を掛け合わせたチートなのかもしれない。

そんなことを考えていると、部屋のドアが小さく叩かれ、外から声が掛けられる。

 

「セイヤさん、私です。まだ起きていますか?」

 

声を掛けてきたのはアイリスだった。

 

「ああ、起きてる。鍵は開いてるからそのまま入ってきていいぞ」

 

俺は先程まで制作していた武器やら資料やらを傍に寄せるようにして片付けると、アイリスに対して返事を返す。

 

「すみません、こんな夜分遅くに...」

 

入ってきたアイリスは、少し恥ずかしそうにしながらそう呟く。

俺はロリコンじゃないから別に何もしないのだが、こんな真夜中に護衛も連れず男の部屋に来るなんて、少し不用心すぎではないだろうか。

 

「どうしたんだよこんな真夜中に、何かあったのか?」

 

そんな俺の問いにアイリスは首を左右に振る。

 

「いえ、そういうわけではないのですが...少しお話しがしたいと思いまして...」

 

「まさか、怖い夢でも見たのか?」

 

俺がそう言うと、アイリスは顔を赤くして縮こまってしまう。なるほど、そういうことか。

 

「いいよ、じゃあ話すか。と言っても、何を話せばいいのかはわからないけどさ」

 

俺はそう言って、アイリスと話すために椅子とテーブル、飲み物としてココアを用意する。

 

「では、あなたの住んでいた国の話をしてくれませんか?」

 

アイリスは俺の用意した椅子に座ると、少しだけ神妙な顔をしながらそんなことを聞いてきた。

 

「俺の国の話?」

 

「はい、駄目ですか?」

 

「別に駄目ってわけじゃないが...」

 

どうしよう。俺の住んでいた所は異世界なんです、なんて言えないし。かと言ってここで何も言わないのも不自然だ。

俺はしばらく考え、一つの解決策を思いつく。

 

「俺の住んでいた国は、この国からめちゃくちゃ離れた所にあるんだよ。だから、この国の常識範囲で話せるかなと思ってな」

 

「大丈夫です。わからない所があったら教えてくれれば良いですから」

 

「了解、それじゃあ、色々話していこうかな」

 

俺はそう言って、多少誤魔化しつつではあるが、俺の元いた国の話をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

体感1〜2時間は経っただろうか。 

アイリスは、俺の国の話をよほど気に入ったのか眠そうな気配も見せないまま、未だに興味深そうに俺の話を聞いていた。

 

「それで?その、ガッコウという所について詳しくお願い!」

 

「そうだなぁ、学校ってのはアイリスと同学年くらいの子達が集められて、みんなで勉強をしたり、運動したりする場所だよ」

 

アイリスは、俺にとってはあまりに退屈で、不満に満ちていたその場所を、とても興味深そうにして思いを馳せている。

 

「なるほど、あなたの住んでいた国では国に住む国民全員に教育をしていたのね。みんなで勉強...とっても楽しそう!でも、それをするのに必要なお金は一体どこから出るのかしら....」

 

11歳の少女とはいえ流石は王女、現実的でいらっしゃる。

俺は、そんなアイリスの言葉に苦笑いをしつつ見ながら。

 

「そういうのは国民に税金として出させて、それを集めて資金にしてるんだ。この国には、そういうのは無いんだよな?」

 

アイリスはコクコクと頷く。

まぁ、こんな中世みたいな世界に学校なんてある訳ないよな。

俺がそう考えていると、アイリスはガッコウ...と呟く。

そんなアイリスに、俺は何気なく言った。

 

「そんなに気に入ったなら、いっそのことここに学校を作っちゃえば良いんじゃないか?作って損になるとは思わないが」

 

そんな俺の言葉に、アイリスは少し悲しそうにすると、

 

「それはできませんよ。今この国は魔王軍襲来のかなり前線ですもの。とてものんびりと、学業だけに勤しんではいられません」

 

忘れてた。この世界、魔王のせいで色々ヤバいんだった。

俺はこの世界に自分のような転生者が送られている理由を思い出す。

 

「そういうことならしょうがないな。そんじゃ、今度は違う話をしてみるか。アイリスもそれで良いか?」

 

少し強引すぎる話題変更だったか。しかし、このままこの話をしてもアイリスが悲しくなるだけだろう。

 

「...?ええ、構いませんよ。次はどんなお話をしてくれるんですか?」

 

アイリスは、急な話題変更に少し戸惑っていたが、新しい話が聞けるということに目を輝かせ、前のめりとなって俺の話を促してくる。

 

「そいじゃ、次は俺の国に伝わる御伽話でも話して行きますかね」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど!では、モモという方から生まれたモモタロウは魔獣使いで、初心者殺し、アーマードゴリラ、グリフォンの三体のモンスターを連れて、村に悪さをする悪魔を倒すため、パンデモニウムに向かうんですね!」

 

「大体合ってる」

 

いや、違うだろ。どうしてこうなった。

桃太郎が桃から生まれてないし、いや、原作的に考えるのであれば合ってるんたけどさ。それに連れてるお供ゴツすぎるだろ。しかもパンデモニウムってなんだよ。完全に桃太郎がエクソシストになってるだろうが。

いかん、このままでは桃太郎が異世界でyou are shock!!!的な世界観でお送りされてしまう。

 

「よし、次は水○黄門の話をしようか!これならアイリスに身分が近い人が主人公だし、わかりやすいだろ!」

 

そうして、俺はアイリスにさまざまな物語を話し、夜は明けて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

「それで、お前はアイリス様と一日中一緒に仲良くおしゃべりした挙句、疲れて二人で寝てしまったということだな?」

 

「すみませんでした」

 

翌日、俺はなぜかクレアとレインに叩き起こされ、廊下に正座をさせられていた。

 

「でも、とっても楽しかったんですよ?セイヤさんが色々な話をしてくれて...」

 

「そういうことではありませんアイリス様!いいですか?今回はセイヤ殿が紳士的な対応をしてくれたから良かったですが、男は狼なんですよ!大体、アイリス様がお部屋に居ないということで我々護衛がどれだけ心配したか!」

 

護衛に説明してなかったのかよ。そんな視線をアイリスに送ると、アイリスは顔を気まずそうに逸らす。おい、こっち見ろ。

 

「まぁ、セイヤ様が護衛をしてくれていたのであれば安心です。それでは今日一日、引き続き護衛をよろしくお願いしますね」

 

「え?」

 

「私達、アイリス様の捜査に夜中駆り出されてロクに睡眠を取っていないので...」

 

よく見ると、レインとクレアの目の下にはクマが出来ていた。きっと寝ている所を強引に叩き起こされたのだろう。

 

「.....お疲れ様です」

 

「そう言っていただけるだけで昨日の努力が報われます....」

 

「では、後は任せるぞ...」

 

レインとクレアはそう言い残し、各自の部屋へと戻っていった。

 

「....アイリス?」

 

「....なんでしょうか?」

 

「次、俺の部屋に来る時は誰かにアポを取っておいてくれ」

 

「善処します」

 

しかし、それからもアイリスは時々夜中に俺の部屋に来るようになり、城の警備の人達は、しばらくの間寝不足に悩まされるようになったという。

 

「「........」」チーン

 

「し、死んでる......」




日常話を何回か挟んだ後、メインのストーリーへと向かいます。

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