飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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少しの間だけだけど、ランキングに載ってめちゃくちゃ嬉しいところてんです。皆様の応援あってのことです。本当にありがとうございます!

*オリキャラ出ます。


十六話 いいお天気のはずなのに、あの子の心は雨模様

いい天気だ。

花は咲き乱れ、小鳥達はさえずっている。

柔らかく吹く風が俺の髪を揺らし、降り注ぐ太陽は身体をほのかに暖める。

今日は、この異世界に来て以来、もっとも快適に感じる日だ。きっと最高の一日になるだろう。

俺はゆっくりと深呼吸をし、その後大きく伸びをする。

 

「今日もアイリスはダンスのレッスンがあるって授業もお休みだし、解決策もなんも思いつかないし、気晴らしに散歩にでも行きますかね」

 

この天気なら中庭辺りはいい具合に日差しとなって、今なら最高の寝心地だろう。

俺は必要最低限の荷物を持ち、部屋を出て中庭へと向かう。

 

「ふぅ、いい場所なのに誰もいないな。まぁその方が俺にとっては都合が良いか。『剣製』!」

 

午前中だからか、あまり人とすれ違うこともなく中庭にやってきた俺は、剣製を使いレジャーシートを作成する。

そしてその上に持ってきた水筒や枕などを置くと、さっそく水筒を飲み、枕に頭を置き横になる。

 

「あの雲....さては中にラ○ュタとかあるな?」

 

平和だ。これ以上ないってくらい平和だ。

ここに来てからこんなにのどかな一日を過ごした日は無かったからな....。大概クレアやらアイリスやらに振り回されてたし。

俺は、久しぶりの平和と静寂に包まれて、少しづつ瞼が重くなってゆく。そしてーー

 

「ちょっと、ちょっとそこの平民!私を拝謁する権利をあげるわ!だからこっちを見なさい!」

 

「.......」

 

「無視しないでよこの無礼者!私が誰だか分かってるの!?私は.....ちょっと寝ないでよ!ねぇってば!」

 

今日も俺はゆっくり過ごすことはできないということを、なんとなくではあるが直感するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうしたんだよ。そんな木の上で座り込んで、暇なのか?」

 

木の上には、まるでこれから舞踏会に行くかのような豪奢なドレスを着ている金髪碧眼の少女が居た。年齢は俺と同じくらいか、もしくはそれ以下だろう。外見とこの態度から見るに、コイツは貴族らしい。

 

「降りれなくなってるのよ!普通考えたら分かるでしょバカね!」

 

なんて奴だ。木の上から降りれなくなってるのにその態度。流石貴族と褒めてやりたいところだ。

 

「...帰るわ」

 

「ごめんなさいごめんなさい!助けてくださいお願いします!」

 

俺がそう言ってその場を立ち去ろうとすると、彼女は若干涙目になりながら俺に助けを求めてくる。

 

「最初からそう言えよ....ほら、助けてやるからそこを動くなよ」

 

俺は少し後ろに下がり、着ていたコートを脱ぐと、足にパワーを充填させていく。

 

「そらッッ!!」

 

そして、貯めていたパワーを一気に解放して飛び上がると、そのまま木の上にいる少女を抱き抱え、地面に着地する。

 

「ほい、地面だぞ....おい、大丈夫か?」

 

「.......!」

 

彼女は俺に降ろされてもしばらくの間動かなかったが、どうやら自分が木の上にいないことに気づいたらしい。突然スイッチが入ったかのように立ち上がる。

 

「ま、まぁ、一応感謝してあげなくもないわ!だけど、平民の手なんか借りなくても私一人で全然降りられたんだからね!」

 

「そんな生まれたての子鹿みたいな足の震えでそんなこと言われても...」

 

どうしようこの子、一周回ってなんか面白いんだけど。

 

「しかし、なんでお前こんな高い木の上に登ったんだよ?降りられなくなってる所から見るに、登り慣れてるわけではないようだし」

 

「ああ、それはーー

 

彼女がそう口を開いたその時、遠くではあるがこちらに近づいてくる足音が聞こえる。

そして、その音を聞いた彼女は何故か顔を青くする。

 

「話は後で聞かせてあげるから、これから来る人に私は何処かへ逃げていったと伝えて!」

 

「ちょ、おい、何を....」

 

彼女はそう言って、俺に何の説明もせず草むらへと隠れてしまう。

聴こえていた足音はこちらに近づいてきて、しばらくすると中庭に数人の男達が入ってくる。身なりはきちんとしているので、おそらく雇われの人達なのだろう。

 

「どうしたんですか?そんなに慌てて」

 

「ああ、すみません!先程ここにドレスを着た貴方ほどの年齢の少女が来ませんでしたか?」

 

なるほど、どうやら彼らは先程草むらへと隠れた彼女のことを探しているらしい。

 

「その人だったら、さっきそっちの方を走っていきましたよ」

 

まぁ、隠れるってことはなにかしらの事情があるのだろう。

俺は目についた適当な道を指差す。

 

「情報提供、感謝します!ああ、ユリエール様、一体何処に!」

 

男達は俺の言葉を聞くが早いか、一目散に駆け出して行く。

俺はそんな男達が何処かへと走って行くのを見て、少女改めユリエールに声を掛ける。

 

「行ったぞ」

 

その言葉を聞くと、ユリエールは草むらからガサガサと音を立てながら出てくる。

 

「ふぅ、撒いたか!」

 

マジかお前。

 

「おい、お前一人で撒けたわけじゃないだろ。まずは協力した俺にお礼の一つでも言えよ」

 

「嫌よ!平民にお礼を言うなんて、貴族の品格が疑われる...ああっ!ひたいひたい、頬を引っ張らないでよ!分かった分かったわよお礼するから!幾ら欲しいのよ!」

 

「すぐ金で解決しようとしようとすんな!誠意を見せてくれればそれで良いから!」

 

彼女は俺の言葉に少し考えた様子を見せると、頬を赤らめ、

 

「....エッチ、変態」

 

「どういう思考回路してたらそんな結論に辿り着くんだよおおおお!!」

 

クソッ!やっぱり貴族にはまともな奴は居ないのか!

 

「頭を下げてくれればいいんだわ!ほら、俺の言ったことを復唱してみろ!『ありがとうございます』さん、はい!」

 

「....ありがとうございます」

 

「そう、それだけでいいんだよ」

 

良かった、これで俺が犯罪者にならないで済む。いや、同じ年齢だから犯罪にはならないのか。そもそもなんで犯罪になると思ったんだ?

俺がそんなを考えは、何処からか聴こえてきた音によって遮られる。

その音は、ユリエールの腹から鳴っていた。

 

「〜〜〜〜///」

 

「次から次へと、忙しい奴だなお前は」

 

俺は持ってきた荷物から弁当を取り出すと、彼女へと手渡す。

 

「ほれ、食うか?」

 

ユリエールはそんな俺の問いかけに、顔を恥ずかしそうに伏せながらコクリと頷くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「☆♪+=%×〒:*$¥€$°*ーー

 

「食ってから喋ってくれ、なんて言ってるのか全然分からん」

 

弁当を手渡してから少し経ち、俺達はレジャーシートの上へと座り、弁当をつついていた。

 

「そういえば自己紹介もしてなかったな。俺はセイヤ、いろいろあってこの城で暮らしてる。よろしくな」

 

すると、俺の自己紹介を聞いたユリエールが突然立ち上がる。

 

「私の名はキリエス・フォン・ユリエール!伯爵家の令嬢にして、王族の血を引く者よ!」

 

俺は彼女の言葉に少し驚く。さっきコイツは王族の血を引くと言った。つまり、コイツはアイリスの血縁者ということだ。

 

「王族の血を引くってことは、お前アイリス....様の従姉妹なのか?」

 

「そうね。再従祖叔母にあたるわ」

 

「ほぼ他人だろそれ」

 

八親等の親族とか誰が予想できるかよ。そもそも再従祖叔母は親族ですらねぇよ。

 

「んで、そんなお前がなんで木の上で座り込んでたんだよ?言っとくが恥ずかしいから言えないとか無しだからな」

 

「そ、そんなこと言うわけないじゃない!」

 

....言うつもりだったなコイツ。

 

「ほら、キリキリ話せ。どうせロクな理由じゃないんだろ?」

 

「分かったわよ!言えばいいんでしょ!言えば!」

 

ユリエールはやけくそ気味にそう叫び、ポツリポツリと話し始める。

 

「ほら、近いうちに舞踏会があるじゃない?それに私は出席する予定なのよ。だから少しでもそこで綺麗に踊れるようにってお母様がダンスレッスン教室を私に受けさせたの。でも私はこんな性格だし、手先もそんなに器用じゃないからみんなみたいに綺麗に踊れなくて。そんなだから一緒に踊ってくれるバディも見つからないし、教室のみんなには笑われるし....それで嫌になってそこから逃げて....それで....それで....」

 

「OK事情は分かったありがとう!だからもうなにも言わなくていい!俺が悪かった!...泣くなよ!ほら、もう大丈夫だ。話してくれてありがとう!」

 

「うわああああああああああああん!!!」

 

重い!予想以上にこの子の事情が重い!ヤベェしくじった!せいぜい友達と喧嘩して拗ねてるくらいの事情かと思ってた!

俺は赤子のように泣き始めたユリエールを慰めながら、周りに人が居ないかを確認する。よかった、誰もいない。まだ俺は社会的に死んでない。

その後も彼女は泣き続け、体感にして10分は経過しただろうか。ようやく彼女は泣き止み、俺から離れてくれる。

 

「ほら、そこの井戸で濡らしたハンカチだ。目の下に当てておけ、腫れが引く」

 

「ううっ.....ぐずっ....ありがど....」

 

なんだろう。俺と同い年くらいの子のはずなのに、何故か子供をあやしている気分になる。

 

「それで?どうするんだよこれから。泣いた直後のお前に言うのは酷かもしれないけど、逃げてるだけじゃどうしようもないぞ」

 

「....そうね、色々言えたからスッキリしたし、今日は帰るわ。一旦家に帰ってから、色々考えてみる」

 

「あ、ちょっと待て!」

 

俺は、そう言って家に帰ろうとする彼女を呼び止める。

 

「何よ?」

 

「頼みがある。俺と一緒に舞踏会に出てくれないか?」

 

「.....へぇっ!?」

 

彼女は、その青い瞳を見開いて驚いている。まあ、当然といえば当然かもしれない。こんな見知らぬ男が急にダンスのバディになりたいと言い始めるのだ。びっくりもするだろう。

 

「ああいや、別に変な意味は無い。ただちょっと事情があって舞踏会の現場に当日居なきゃいけないんだ」

 

「なるほど。たしかにそれならバディのいない私はまさに、渡るに船ってやつね」

 

「そういうこと」

 

クレアから聞いた俺に化された誓約は、俺が舞踏会に()()()()()()()()()()()参加することを禁ずるというものだった。

つまり、俺が参加者として舞踏会に参加することに関してはなんら問題無いということだ。

 

「嫌なら断ってくれてもいい。俺はお前と今日会ったばかりだし、信用できるかと言われると「いいわよ」...へ?」

 

「いいって言ってんの!アンタのその頼み方から見るに、相当大事なようなんでしょ?だったら、私が手を貸してあげようじゃない。...ただし!」

 

「えっと...ただし?」

 

彼女は少し躊躇うが、意を決したかのように息を吸うと、

 

「私は踊りで、私のことを笑ってきたアイツらを見返してやりたい!それが出来るなら、この手を取りなさい」

 

そう言って、俺に向け手を差し出す。

.....なるほど、そういうことならやりやすい。

俺は差し出された手を力強く取り、

 

「もちろん、やってやる」

 

そう言って、獰猛に笑いかけた。




再従祖叔母の使い方と、舞踏会の解釈があっているのか分からん。教えてエ○い人!

あと、今更ですが主人公の外見を決めるのを忘れていました。とりあえず、黒髪黒目のちょいイケメンくらいにしてご想像ください。

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