飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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今回は短めですが、次回からはもっと長くする予定です。

もっとアンケート回答してくれても...良いのよ?


十八話 誰かさんは大変な物を盗んでいきました....彼の正気です....

「グガアアアアアアア!!」

 

「ッ!くっッッ!!」

 

俺の真横に紅い線が走る。瞬間、凄まじい風圧が横を駆け抜けていく。

力も速さも、そして技量すらも先程とは明らかに格が違う。

さっきまでは手加減をしていて、これが奴の本気だったのだろうか。

 

「グギギギギギギギギアアアアア!!」

 

いや、あの様子だとそれは違うだろう。どちらかと言えば、あれはナニカに操られている感じだ。白目を剥いたまま戦ってるし。

 

「おい、どうした新入り!いくら決闘に負けたからってそれはやりすぎだ!」

 

そんな彼を隊長は止めに入る。というかアイツ新入りだったのか、偉そうだったからてっきり高い地位に立って天狗になったタイプだと思ってたんだが。

いや、それよりも、

 

「隊長さん!ソイツ自分の意思で戦ってるんじゃなくてなんかに操られてる感じだから!とりあえずソイツから離れて!」

 

俺は隊長にそう叫ぶ。

隊長は一瞬驚いたようにしていたが、そこは流石に兵士達の頭。自身に振るわれた槍の一撃をなんとか躱し、その場を離れる。

 

「隊長と、あとクレアとレインは倒れている兵士達の避難をお願いします!俺はその間コイツを足止めします!」

 

「分かった!ではこの場はお前に任せる!」

 

そう言って三人はすぐさま行動に取り掛かってくれる。

普段は色々やらかしたり、アイリスにボコボコにされていたりするイメージがあるがこういう時はすごく頼りになる。

 

「セイヤさん!私も戦います!」

 

「いや、アイリスは三人の補助を頼む!」

 

「どうして!」

 

「もし、これが俺がアイリスの近くに居るのが気に食わない奴らの差し金だったとしたら、コイツの暴走すら折り込み済な可能性がある!だとしたらその目的は俺の信用の失墜、具体的に言うならアイリスが害されるというところにあるんだ!」

 

「でも「それにッッ!」

 

俺はそんなアイリスの言葉を遮るようにして振るわれた槍の一撃を止める。

 

「コイツは俺と同郷の奴だ。自分の国のことくらい自分でなんとかしなきゃ....なッッ!!」

 

そして俺は腕にパワーを集中させ、槍もろともリヒターを吹き飛ばす。

彼は空中に吹き飛ばされつつもその場で体勢を立て直し、地面へと着地する。

 

「いまだ!行けッッ!」

 

「ッッ....はい!」

 

アイリスは少しの葛藤のあとに力強く返事をすると、倒れている兵士を抱えて医務室へと走っていく。

 

「さて、これで戦いの準備は整ったな!勝負といこうじゃねぇか!」

 

「グルルルルルル.....ガアアアアアアア!!」

 

もはや言葉を喋ることすら忘れてしまった怪物(リヒター)は、俺を今すぐ殺すとばかりに一直線に槍を突き出してくる。槍から放たれる光により彼が通った先には紅い光の線が走っている。

俺は奴の攻撃を剣で受け流すようにして躱すが、それでも俺の持っている剣は砕け、奴の攻撃の反動が身体中を伝わってくる。

 

「クソッッ!一撃でこれかよ!?」

 

今さっき作った新品の剣だぞ!?

最低でも兵士達全員の避難が終わってクレア達が戦闘に参加できるくらいの時間は稼がないといけないのに!

俺は奴の攻撃を新しい剣を作り続けながら受け流し、なんとか対処する。

そして、奴が自身の体勢を少し崩したその一瞬、俺は奴の槍を遥か上空へと蹴り上げる。

もし、この暴走が彼の槍のせいなのだとしたら、槍から離れた時点で終わりのはずなんだが....

しかし、俺の考えを文字通り一蹴するかのように奴の蹴りが飛んでくる。そして俺との距離を取った奴は空に向けて手をかざし、その手の中には槍が戻ってくる。

 

「グラムといいあの槍といい!どうして転生者の武器ってのは!!」

 

神は転生者が人類に牙を剥くとは考えなかったのか!安全装置とか付けとけよ!

しかし、今それについて文句を言っても始まらない。重要なのはコイツをどうやって倒すかだ。

さっきも見たように、コイツの槍は暴走とは関係無いようだ。

しかもコイツから槍を取り上げた所で、槍は持ち主の元へと返ってくる。

だとしたらもうコイツを直接倒すしかない。それが一番安全で、確実な方法だ。

 

「殺しはしない!だけどお前を傷つけなきゃならん!恨むなよ!」

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!!」

 

俺は向かってきたリヒターに対し、剣製で作り上げたナイフを投擲する。

 

「◾️◾️◾️◾️ッッ!!」

 

当然、奴はそれを全て打ち払い、俺の元へと向かってくる。

しかし、それはただの牽制ではない。俺は打ち払われたナイフに付けていた糸を引き、奴を拘束する。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️!?」

 

「ほらよっ!ついでだ!『ティンダー』、『トルネード』!」

 

そして俺は奴へニ枚の魔導札を投げ、それを起動する。

起動した二つの魔法は、俺の作戦通り巨大な火災旋風のようになり、奴を巻き込むようにして燃え上がる。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ッッ!!!」

 

奴の苦悶する声が火災旋風の熱と共にこちらへ届く。燃え上がった炎で中を見ることは出来ないが、おそらくダメージは受けてるのだろう。

しかし、

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!!」

 

拘束、火災旋風、そして周りにある物を全て吹き飛ばし、奴は吠える。

 

「まぁ、こんな簡単に転生者が倒せたら魔王軍は今頃世界を侵略できてるだろうよ!」

 

俺はすかさず奴の腹に拳を叩き込み、壁へとめり込ませる。凄まじい轟音と共に、砂埃が舞う。

 

「これ以上の被害を出さないように、ここで止める!」

 

そして、俺はさらなる追撃を喰らわせるため、奴の元へ飛び込む。

その瞬間、砂埃の奥から紅い線が放たれる。

俺はかろうじてそれを躱すが、その一撃は俺の左肩を深々と貫く。

凄まじい痛みが襲う。同時に、槍の威力により俺の身体は後方へと吹き飛ぶ。

 

「ぐっッッーー『ファイアボール』!!」

 

しかし、俺もただ攻撃を食いっぱなしというわけにもいかない。

俺は懐から三枚の魔導札を取り出し奴に向かって投げつけると、血反吐を吐くかのような声で魔法を起動、奴に着弾させる。

そして先程の槍の威力と、目の前で爆発した三つの火球の余波により、俺の身体はそのままゴロゴロと地面を転がっていく。

なんだ、今のは。

俺の強化した拳は確かに奴の腹に入った。防御もしていなかった。で、あるならば気絶はなかったとしても数秒間まともに動くことは出来ない筈だ。

しかし、現実はどうだ。奴は俺に反撃を喰らわせるほどに動いているし、奴の放った一撃は強化した俺の身体を易々と貫いている。まるで痛みや自身の限界値を考えていないかのような動きだ。

 

「だとするならコイツは...」

 

俺は自分の中でおおよその予想を立てる。

ただ、もしこの予想が正しいのならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()().....

とりあえず今、それを考えるのはやめておこう。コイツを倒した後にでもじっくり考えれば良い。

 

「セイヤさん!兵士達全員の避難、完了しました!私達も加勢します!」

 

と、その時、後ろからレインとクレアが現れる。

レインはその手に大量に指輪を付けており、クレアは以前、俺を追いかけるのに使ったと思われる家宝の首飾りを付けている。

どうやら、完全武装で駆けつけてくれたらしい。

 

「アイリスは!」

 

「貴様の読みを聞き、私達もそうではないかと思ったのでな。今は信頼できる友人に預けている」

 

なに、友人だと!?

 

「お前に友人なんて居たのか!?」

 

「奴より先に私に切り殺されたいようだな!」

 

「落ち着いてください!王族の護衛が同僚を殺害とか、それこそあの人をけしかけた人達の思う壺ですから!」

 

「そうだぞクレア、お前はもっと落ち着きというものをだな」

 

「セイヤ様も、クレア様を煽るのはやめて下さい!ーーーって、セイヤ様!その肩の傷!」

 

レインが俺の左肩を見て、悲鳴を上げる。

見れば、俺の肩はくり抜かれたかのようになっており、その傷口からはとめどなく血が流れている。

現代社会においてはこの傷は明らかに重症だと思われるのだが、傷が痛むこと以外特に何も感じなかったからすっかり忘れていた。シュレイブニルに右腕を消されてから修行としてミツルギさんとか兵士達とずっと戦ってきたから、いつのまにか痛みに耐性ができたのかもしれない。

 

「とりあえず治療します!」

 

そんなことを考えていると、レインが俺に小瓶に入った高そうなポーションをかけてくれる。

左肩の傷は時間を巻き戻すようにして埋まっていき、最終的には傷口が完全に塞がる。

それと同時に、奴がめり込んだ壁から抜け出し、一際大きな雄叫びを上げる。

先程までの動きの反動だろうか。全身からは決して少なくはない血が流れている。

 

「早く暴走を止めてやらないとアイツの命に関わるぞ....」

 

「だが、気を抜けばこちらが殺される。迅速に奴を無力化させる必要があるぞ。セイヤ、何か案はあるか?」

 

「俺かよ!?.....無いわけじゃないが、回復職(ヒーラー)が圧倒的に足りない。レインがあれ以上の回復魔法を使えるっていうなら話は別なんだけど.....うん、ダメそうだな、どうしようか」

 

レインは首が引きちぎれるんじゃないかってくらいブンブンと左右に振っている。

すると、いつまでも話し合いを続けている俺達にしびれを切らしたのか奴が槍を構え、俺達に猛進してくる。

 

「ッ!やばッッ!」

 

話している最中だったことで気が抜けてしまったのだろう。レインは奴の攻撃に対し反応が遅れてしまう。

奴の槍がレインの心臓へと伸びていく。剣製で矛先を逸らすことすら間に合わない。身体強化もこれ以上酷使すれば肉体の自壊は免れないだろう。どちらにせよ。待っているのはどちらかの死だ。

俺は身体強化によってスローモーションのようになった視界の中、そんなことを考える。

 

「諦めるのはまだ早いわよ!」

 

突然、奴は上から落ちてきた何者かに弾き飛ばされるようにして吹き飛んでいく。凄まじい衝撃から考えるに、降りてきた人間は相当な強者らしい。

落ちてきた時に発生した砂埃が晴ると、そこには女性用のナース服の中にはち切れんばかりの筋肉を詰め込み、こちらに向かってウインクをしてくる、まごうことなき変態の姿があった。

 

「ベルゼルグ城医療室勤務ジェシカ。あなたのために出張営業よ☆」

 

やめて下さい。そんなバカみたいな格好してこっちにウインクしてこないでください。吐きそうです。

 

「ジェシカ様!?貴方にはアイリス様の護衛を頼んだはずなのですが!」

 

信頼できる友人ってコイツかよ!

 

「それに関しては大丈夫、強力な結界を張っておいたから、今のアイリスちゃんを傷つけようと思ったら対城兵器がいるわね」

 

何この人のハイスペック度、もうコイツが魔王倒しに行けよ。

しかし、この状況ではこの人のハイスペック度は大きな戦力になる筈だ。

 

「突然で悪いんだが協力してくれ!アイツを正気に戻してやりたいんだ!」

 

「ええ勿論!何をすれば良いのかしら?」

 

「それはーーッッ!」

 

瞬間、奴は再び身体を起き上がらせる。その双眼は俺達を射殺すとばかりに爛々と輝いていた。

 

「作戦は戦いながら説明する!ジェシカは俺と一緒に奴のヘイトを集めてくれ!クレアは俺達が作った死角から攻撃、足とか腕を重点的に叩いてくれ!レインは魔法攻撃の準備!俺達が足止めしている所で確実に詠唱した魔法を当ててくれ!」

 

「「了解!!」」

 

「初めての共同作業...!これはもうビンビンにきちゃうわ!エクスタシー!」

 

「お前はさっさと前線を張りに行くんだよ!」

 

いつまでもくねくねしてんじゃねぇ!

 

「20才は歳下の男の子に命令される....!嫌いじゃないわ!」

 

「冗談はその服装だけにしてくれ....ほら、冗談抜きで行くぞ!」

 

非常に締まらない始まり方であり、非常に不安が残るメンバーではあるが、こうして戦いの火蓋は切って落とされるのだった。




次回の更新は少し期間が空くかもしれません。

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いつも感想をくださる方!忙しすぎて中々返信できませんがいつも楽しんで読んでいます!本当にありがとうございます!

王都でのストーリーは大体決まっているんですが、長いです。どうすればいいでしょうか?

  • 王都での話をフルで書いても良いんだゾ☆
  • 早くアクセルに行くんだよ。あくしろよ
  • ちくわ大明神
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